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飲み放題に代えごちそうを 学生団体が提案する新しい食事会の形

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 大学生の夜の集まりといえば、大抵飲み放題の食事会。しかしコースに付く料理では満腹にならず、解散後にラーメンを食べに行くという光景がよく見られる。「飲み会には参加したいけれど、せっかく数千円払うならおいしいものを食べたい」。心の内にそんな不満を抱える人々のために、学生団体「想食系幹事」が提案する「ごち会」を紹介する。

 

(取材・石沢成美)

 

「シックな雰囲気」の中、満腹に

 

 想食系幹事と飲食店が協力して現在14店舗で展開する「ごち会」コース。飲み放題ではなく、3千円程度でごちそうと飲み物2杯を味わえるコースだ。今回はその中でサークルの新入生歓迎イベントなどでの利用を想定し、飲み物をソフトドリンクとした新歓「ごち会」コースを、実際に編集部と新入生が体験した。

 訪れたのは、下北沢駅南口から徒歩4分ほどの「IBIZA」。明る過ぎない照明、穏やかなBGMが落ち着いた雰囲気を醸し出している。新入生からは「シックな雰囲気」「こんなところにデートで来たい」という感想が聞こえてくる。

 

 新歓「ごち会」コースはカプレーゼなどの3種のタパス(スペインの小皿料理)盛り合わせから始まる。おしゃれな前菜に期待が膨らむ中、皿いっぱいに盛られたサラダ、チキンやポテトなどの揚げ物盛り合わせが続く。主食はピッツァとパスタが付き、コースが終わる頃には満腹だ。

 

 IBIZAお薦めの飲み物は、グレープフルーツとライムにトニックウォーターを合わせた「ピュアフレスカ」、クランベリーとグレープフルーツの酸味が効いた「バージンブリーズ」の2杯。食事の味を邪魔しない、さっぱりとした後味のノンアルコールカクテルとなっている。

 

 十分な量の食事に新入生は満足した様子。おいしい食事を前に会話も弾み、上級生からも「またこのコースを利用したい」という声が多数上がった。


駒場付近でも舌鼓

 

 駒場キャンパス付近の渋谷や下北沢でごち会コースを提供している店について、想食系幹事に紹介してもらった。

 

 

■デ・サリータ(渋谷)

 

「デ・サリ―タ」のコース料理1人分(左)、パスタの例(写真は想食系幹事提供)

 

 トリュフのホワイトクリームパスタが一人1皿出るお店。ごち会だけのコースです。初めは北海道産ロースの生ハムや、スモークチーズのサラダ。お次はぷりぷり海老のアヒージョです。温かいスープに、ほどけるように柔らかな海老たち。アヒージョはにんにくとオリーブの煮込みのことで、一緒に出てくる焼きたてのフォカッチャをひたして食べるのもおいしい。メインのトリュフのホワイトクリームパスタが一人1皿なのは、ごちそうをたっぷり味わってもらうため。ちなみにワインセラーが2階まであり、世界中のワインふくむドリンクが2杯、選べます。

 

アクセス 渋谷駅から徒歩5分
電話 050・3482・0705
定休日 なし
ごち会コースは日〜木曜、2980円、2人〜

 

■雷や(下北沢)

 

「雷や」のコースで味わえる料理の例(写真は想食系幹事提供)

 

 牡蠣のカン缶焼き(1キロの牡蠣を蒸し焼きにしたもの)が名物のお店。牡蠣のおいしさが詰まっています。

 コースは、サラダっちょ、ローストビーフ、店長のおまかせおばんざい盛り、カン缶焼き、締めの雑炊。野菜は鮮度にこだわっていて、みずみずしい。そしてなんといってもおいしいのは、店長のおまかせおばんざいの盛り合わせ。店長のお薦めが少しずつ食べられる一品です。最後は牡蠣の旨みが詰まった雑炊で満足。

 

アクセス 下北沢駅南口から1分

電話 03・3413・0452

定休日 なし

ごち会コースは月〜金曜、3000円、4~30人

 

■夏火鉢(下北沢)

 

「夏火鉢」ではタンづくしの料理を楽しめる(写真は想食系幹事提供)

 

 創作牛タン料理が楽しめるお店。前菜から最後までとにかく牛タンづくしです。お肉好きにはたまらない。

 コースには、バケット前菜盛り合わせ、牛タンと狛江野菜のグリーンサラダ、牛タン薄切り炭火焼き、牛タンポテトグラタンまたは牛タンバーグ、牛タンのミートスパゲティが含まれています。右を見ても、左を見ても牛タン。なかなかお目にかかれない創作牛タン料理をここでは味わえます。おいしいのが牛タンバーグ。コリコリした食感とハンバーグならではの凝縮された旨みが楽しめます。ワインにもこだわりをもつ贅沢なお店。

 

アクセス 下北沢駅南口から5分

電話 03・3414・5206

定休日 なし

ごち会コースは月〜木曜、3240円、4~33人

 

(寄稿)


飲酒中心の食事会に疑問、ごちそう通じた交流を文化に――仕掛け人の思い

 

 「想食系幹事」は、飲み放題の数千円でごちそうを味わう「ごち会」を提案し社会への浸透を目指す学生団体だ。飲み放題で安い酒をたくさん飲むのではなく、食事も味わってもらいたい人向けに、ごちそうと食事に合う2杯がついた「ごち会コース」の作成を行っている。

 

想食系幹事メンバー。左から東さん、會澤さん、野並さん

 

 想食系幹事創設者の東成樹さん(15年総合文化研究科修了)は学生時代、飲み放題で食べ物はえびせんや枝豆、という飲み会で3千円もの金額を払うことに疑問を感じていた。「満腹にならない飲み会に行くなら家でご飯を食べたいけど、飲み会での交流が大事ということも分かっていました」。そんな中、少し高価なフレンチを食べて「お金を払えばおいしいものが食べられる」と実感。飲み会の幹事を務めた際、食事中心で飲み物は数杯というコースの作成を店に依頼したことから活動が始まった。現在は複数の大学から理念に共感した学生が集まり、協力店舗数も広がっている。

 

 前代表の會澤美佳さん(東京学芸大学・3年)はごち会コースの魅力として、大学生が自分の舌で選んだ店を扱っていることを挙げる。想食系幹事メンバーが創設時から100軒以上を回り、「おいしい」で終わるのではなく記事を書けるほど良い店にごち会コースへの協力を依頼しているという。東さんは「学生ミシュランのようなものです」と自信をのぞかせる。

 クラスやサークルのコンパなど、大学生の飲み会は飲み放題のコースで行われることがほとんど。現代表の野並新さん(養・4年)は「コースの選択肢として飲み放題しかないのが問題」と話す。飲み放題を好まない人がいても、従来通り飲み放題にするのが安全策という幹事の思いから、消極的に飲み放題が選ばれることもある。「ごち会コースの提案で、その選択肢を増やしたいです」(野並さん)。加えて飲み放題の場合、酒を「酔うための液体」として摂取する人もおり飲酒事故が起こりやすい。料理と数杯の酒を味わうことは、安心して同席者との会話を楽しむことにもつながる。

 

 今年新たに導入したのが、新入生向けにソフトドリンクを充実させた「新歓『ごち会』コース」だ。會澤さんは入学当初、あるサークルの飲み会で一気飲みやコールが何度も行われるのを目にし「これが楽しいのかと疑問になった」という。まだ新入生の多くは未成年だが、初めて飲み会に接する機会はその後の飲酒との向き合い方に大きな影響を及ぼす。「新歓『ごち会』コースで、新入生においしいご飯を食べて仲良くなることを知ってほしい」と期待する。

 

 東さんは「ごち会」が想食系幹事の手を離れて広まってほしいと考えているという。「『ごち会』を文化にして、自分たちが言わなくても自然に開催されるようにしたい。『今日はごち会しよう』と言われる日が来たら成功です」


この記事は、2017年4月25日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

 

 

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飲み放題に代えごちそうを 学生団体が提案する新しい食事会の形東大新聞オンラインで公開された投稿です。


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