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東大で昆活! 昆虫食で本郷の夏を味わう 記者が実食、レシピも紹介 

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 今年もセミの声が鳴り響く本郷キャンパス。自然豊かなキャンパスでは、実はおいしい昆虫が多く観察できる。身近な昆虫の採集、調理、試食を東京大学新聞社編集部員が実践し、昆虫食の魅力に迫る。

*本ページには、昆虫食の写真が含まれます。苦手な方はお気を付けください。

(取材・安保友里加、撮影・渡邊大祐)

 

食の未来に広がる可能性

 

 昆虫を食べ続けてはや20年、昆虫食の普及に努める内山昭一さんに、昆虫食の魅力と実践について聞いた。

 

昆虫料理研究家の内山昭一(うちやま・しょういち)さん。

 

━━一般的に、昆虫を食べることには抵抗感が抱かれがちです

 

 見た目の工夫次第で、食べやすくなると思います。市販のコオロギパウダーを使ったスナック菓子や、ミールワームを練り込んだチョコブラウニーなど、虫が入っているとは思えない料理も多くあります。

 

━━食用の昆虫はどのようにして用意するのですか

 

 採集と飼育、市販が挙げられます。私の場合多くは自ら採集し、その場で調理します。その場で調理しない場合、加熱して冷凍保存しています。

 

 自分で育てた昆虫を食べることもあります。飼育ならではの利点もあり、例えば草食のトノサマバッタは、それ自体を食べるのみならず、ふんを集めてお茶にすることもできます。

 

 食用の昆虫は市販されています。乾燥、冷凍、缶詰など多様な保存形態があります。タイ食材店、オンラインショップや自動販売機から入手できます。

 

━━昆虫食を実践する上で注意しなければならないことはありますか

 

 火を十分に通すことは鉄則です。ふん抜きなど、特殊な作業が必要な昆虫もあるため、初めは昆虫食に詳しい専門家の下で実践してみてください。

 

 安全に採集するための装備や振る舞いはもちろん、どんな昆虫が安全に食べられるのか知ることも重要です。昆虫食に関する書籍などで参照できます。

 

 甲殻類アレルギーの方は反応が起こる可能性があるため、注意が必要です。自己責任でお願いします。

 

━━この季節におすすめの昆虫は何でしょうか

 

 夏はやはりセミです。セミは種類によって大きさや形が異なるので、食べ比べるのも面白いです。食べ応えのあるアブラゼミ、小さくて食べやすいニイニイゼミのように、夏ならではの楽しみがあります。

 

 秋になると、蜂の子がおいしいです。駆除業者から譲ってもらうことが多いです。蜂の子は、食べるために細かな手作業が必要となりますが、食べ方も多様で面白いです。しゃぶしゃぶにしても良し、炒めても良しと盛り上がります。

 

━━昆虫料理研究家の職業病はありますか

 

 昆虫食レシピに使えるなあと思いながら、料理番組を見ることもあります。私は、肉も魚も食べて生活していますが、昆虫だけを食べて生活しているのかとよく聞かれてしまいます(笑)

 

━━昆虫食の魅力を教えてください

 

 何より、昆虫はおいしいです。食感の楽しみも昆虫食ならでは。食べられる昆虫の種類やレシピの豊富さと、魅力が詰まっています。

 

 昆虫食への興味がきっかけで集まって、採集、調理、何よりも実食を通した、面白い人との出会いも素晴らしいと思います。私が開催しているワークショップでは、交流することで新たな発見や気付きがもたらされ、楽しいです。

 

 タンパク質源としての昆虫摂取には価値があると考えています。食の未来の選択肢として可能性が広がっていると思うと、わくわくします。

 

 7月下旬、筆者を中心とした東京大学新聞社編集部員は、本郷キャンパスでセミの成虫と幼虫を採集した。同行した編集部員らは、食用としてセミを観察したのは初めてだと話す。童心に帰り、セミの鳴き声に心をときめかせた筆者は、採集済みのセミを熱湯で処理し、冷凍保存した。セミは、冷凍保存しておけば、季節を問わず、必要な分だけ味わえる。

 

 

一匹一匹楽しめる食感

 

 内山昭一氏の指導の下、採集した昆虫や冷凍の蜂の子、市販の昆虫食を用いた調理を行った。

 

【セミの唐揚げ】

 

 

(材料2人分)セミ(成虫も幼虫も可)適量・唐揚げ粉適量・揚げ油

(1)採集したセミを約2分間ゆで、キッチンペーパーで水気をよく切る。

☆ポイント 水気をよく切ることで揚げた後のセミの食感がよく楽しめます。

(2)180度の油で、ゆでたセミを素揚げする。

(3)唐揚げ粉を濃いめに水に溶き、素揚げしたセミによく絡める。

☆ポイント セミによく絡ませるため、唐揚げ粉は濃いめがおすすめです。

(4)180度の油で、唐揚げ粉を付けたセミを揚げる。お皿に盛りつけて完成。

 

 

【ゆで蜂の子乗せ卵焼き】

 

 

(材料二人分)蜂の巣適量・だし巻き卵1本・塩適量

(1)蜂の巣から、蜂の子をピンセットで抜く。

☆ポイント 冷凍の蜂の巣は、電子レンジで解凍します。ピンセットで蜂の子が滑らかに抜けることが確認できる程度まで温めます。

(2)抜いた蜂の子を、サッとゆでて軽く塩を振る。

(3)出し巻き卵を一口大に切り、中心に切れ目を入れて蜂の子を挟んで完成。

 

【イナゴとジバチ(クロスズメバチ成虫)のクラッカー】

 

 

(材料2人分)イナゴのつくだ煮(市販)4~6匹・ジバチ適量・クラッカー・ミニトマト2個・マヨネーズ適量

(1)ジバチを軽く空いりする。

(2)クラッカーの中央にマヨネーズをのばす。

(3)イナゴのつくだ煮といったジバチをクラッカーに乗せる。

(4)クラッカーの左右の隅に、半分に切ったミニトマトを乗せて完成。

 

【カイコ蛹のかまぼこはさみ えごま粉散らし】

 

 

(材料2人分)カイコ蛹適量・かまぼこ1本・三つ葉適量・えごまパウダー・塩

(1)カイコ蛹をゆでて、軽く塩を振る。

(2)かまぼこに切り込みを入れ、ゆでたカイコと三つ葉をかまぼこに刺す。

(3)上からえごまパウダーをかけて完成。

 

【セミくんのちくわ刺し】

 

 

(材料2人分)セミ4匹(幼虫)・ちくわ1本・

しょうゆ・みりん

(1)薫製器を用い、しょうゆとみりんを3:1で加えてセミの幼虫を薫製にする。

(2)ちくわを4等分し、薫製にしたセミの幼虫を刺す。

(3)お好みで三つ葉を添えて完成。

 

 

 昆虫の調理に初挑戦した編集部員らは「想像をはるかに上回るおいしさだ。初めての食感で面白い」と感想を述べた。セミをゆでる作業や、蜂の子を抜く作業では、抵抗感を見せていた編集部員も「セミの唐揚げはおいしい」と感動していた。「虫と、普段食べている食材が絶妙なバランスで合っている」と、セミくんのちくわ刺しやイナゴとジバチのクラッカーは好評だった。

 

 昆虫食の実践経験のある筆者の感想としては、セミの唐揚げは、成虫と幼虫で食べ応えが異なった。セミ成虫の腹部の肉感と衣が非常に合う。セミ幼虫は、口に運びやすい大きさで軽やかな食感。身近なセミを使用している上に、調理方法は繰り返し熱を通す過程以外はなじみがあり、初心者でも挑戦しやすい一品だ。

 

 かむと口の中でプチっとはじけるような蜂の子、かみ応えのあるイナゴやジバチは、味付け次第で非常に食べやすくなると内山さんは話す。昆虫の採集、調理、試食…昆虫にまつわる活動「昆活」はまだまだ続いていくだろう。

 

 東大新聞オンラインでは、今後も昆虫食の魅力に迫る。次回「東大で昆活!コオロギは地球を救う」公開は、10月26日公開予定。


この記事は2019年9月3日号に掲載された記事の拡大版です。本紙では他にもオリジナル記事を公開しています。

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企画:総合図書館が残す「歴史」とは 『サーギル博士と歩く東大キャンパス』拡大版
企画:昆虫食を始めよう 記者が実食、レシピも紹介
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サークルペロリ:東京大学運動会相撲部
キャンパスガイ:武田直樹さん(文Ⅰ・1年)

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赤門恋愛相談室 悩める東大生にプロの処方箋 恋人の作り方とは…?

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 「赤門恋愛相談室」は恋人がおらず寂しい思いをしている東大生と、恋人がいて関係を長く続けたい東大生の悩みに、恋愛や結婚を応援する活動に取り組む新上幸二さんが答える連載企画です。今回は恋人がいない3人の悩みを取り上げます。

━━今まで他人に対し恋愛感情を持ったことがありません。20歳を過ぎてから、少しそのことについて不安に思っています。どうすれば良いでしょうか。

(理Ⅱ・2年 女性)

 

 背景が分からないので具体的なことは言えないですが、恋愛感情は分からない人には分からないし、無理に見つけるものではありません。恋愛とは、相手を大事にすること、そして相手から大事にされること。まずは、友達との間で自分が認められている、大事にされていると思える関係を作ってみたらどうでしょうか。恋愛感情がなくても、自分を大切にしてくれる人がいれば人生を豊かにできますし、恋愛にもつながるはずです。

 

━━東大のサークルにいる他の大学の女子とは出来るだけ付き合いたくないと考えております。もちろん他の大学の学生の中にも素晴らしい人がいると思うのですが、男子に養いに来てもらっている感が強くてどうにも好きになれません。しかし、学内にはなかなか出会いがなく、部活内、クラス内という自分にとって重要なコミュニティーの中で恋人を作ることにも抵抗があります。どうお考えになりますか?

(文Ⅱ・1年 男性)

 

 大学1年生の頃に付き合っていた人と結婚する可能性はほとんどないです。今の時代東大生だからと言って出世できるわけではないですから、相談者さんが必ず相手を養う、なんてことはありません。最近の若者は空気を読むようになっていますが、空気を読むと恋は無理。とにかく今は思い込みによる自分のくだらないルールを壊して多くの人と付き合ったらどうでしょうか。学生時代は短いです。きっと後悔してしまいますよ。

 

━━相手をアタックするのは恥ずかしくないし距離を一気に縮めるのですが、相手が好意を返してくれた途端に怖くなってしまい、冷めて相手が私に向けてくれている好意が本格的に疎ましくなります。本当に最低だと思います。

(文Ⅰ・1年 女性)

 

 追いかけるのは好きだけど追いかけられると疎ましくなるのは一般的に男性的な考え方。でも、女性にも十分あり得ます。決して、最低ではありません。しかし、相手がどういう気持ちでいるのか、何を考えているのか、に思いをはせる共感性が恋愛において最も大事です。アタックも大事ですが、相手の心に寄り添うことにもフォーカスしてみてはどうでしょうか。 (談)

 

 

新上 幸二さん

02年医学部健康科学・看護学科(当時)卒。IBMビジネスコンサルティングサービスなどを経て、16年より現職。株式会社TOBE取締役。恋愛・婚活に勝つための情報サイト「愛カツ」編集長。恋愛結婚学研究所所長。

 


この記事は、2019年8月27日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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推薦の素顔:湊杏海さん(理Ⅱ・1年→農学部)
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赤門恋愛相談室:悩める東大生にプロの処方箋
キャンパスガール:平田裕子さん(理Ⅱ・1年)

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Campus Girl 白﨑千惠さん(文Ⅲ・2年)

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白﨑 千惠(しらさき ゆきえ)さん(文Ⅲ・2年)

 

思い切って世界広げる

 

 自身も「フッ軽ですね」と認めるほどの行動力の持ち主。高校時代には生徒会長を務め「大学ではいろんな人と関わりたいと思って」駒場祭委員会に入った。現在は広報・渉外担当として東奔西走の日々を送る。

 

 最近お気に入りだという「1+1は3かもしれない」という言葉も、友人の紹介で知り合った社長にもらったのだとか。せっかくの機会だからと勇気を出して会ってみたことで、先入観を疑い、物事の可能性に賭けることの大切さを学ぶことができた。

 

 出会いの対象は人に限らない。忙しい合間を縫っては文学や映画に親しむ。「違う世界で暮らす誰かの人生を追体験できるところが好きですね」

 

 取材終了後「記事にしやすいように話したつもりですけど、大丈夫でしたか?」はい、バッチリです。この気遣いが、人を引き付けてやまないのでしょうね。

(取材【刻】・撮影【英】)


この記事は2019年9月10日号(受験生応援号)から転載したものです。本紙では他にもオリジナル記事を公開しています。

インタビュー:固定観念を打ち破れ 気鋭の歴史学者が「考える」を考える 呉座勇一助教(国際日本文化研究センター)
ニュース:4点差逆転で2連勝 ラクロス男子立大戦 後半に好セーブ連発
ニュース:アメフト 昨季王者・早大にあと一歩及ばず
企画:英語以外の「外国語」という選択肢 独・仏・中国語受験者に聞く
企画:現役東大生による勉強法アドバイス
企画:教科別 東大教員からのエール
企画:合格者得点分析 本社独自アンケート 東大入試2016〜2019
企画:貪欲な姿勢で自分に合った対策を 推薦生・予備校担当者が語る東大推薦入試
青春の一冊:『火の鳥』 近藤尚己准教授(医学系研究科)
キャンパスガール:白﨑千惠さん(文Ⅲ・2年)
社告:小社発行『東大20XX』シリーズの魅力を現役東大生が解説! 地方から東大へ導く一冊

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Campus Guy 武田直樹さん(文Ⅰ・1年)

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武田 直樹(たけだ なおき)さん 文Ⅰ・1年

 

鍛えた肉体と光る知性

 

 日焼けした肌に、長身、引き締まった体。小学生の時にアメフトをかじり、中高は野球に夢中になった。大学ではゴルフ部に所属し、サッカー観戦も趣味だ。「スポーツは人をつなげ、熱くさせるところが好きです」。将来もスポーツに関わり、人が熱狂できる場を提供したいという。

 

 一方ですずかんゼミと高山ゼミに所属し、勉学にも力を注ぐ。第2外国語にフランス語を選んだ理由の一つも「高校時代に読んだ哲学書をより深く理解したかった」という勤勉ぶり。

 

 旅行も好きで、暇を見つけては電車で一人旅へ。「乗客の方言などの変化に伴い、車内の雰囲気も変わっていくのが面白い」と観察眼が光る。

 

 いかにもスポーツマン、という「見た目で判断しないでほしい」。話してみるとまさに好青年。爽やかな笑顔の向こうに、多面的な魅力がうかがえた。

 

(取材・撮影 【晴】)


この記事は2019年9月3日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナル記事を公開しています。

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貪欲な姿勢で自分に合った対策を 推薦生・予備校担当者が語る東大推薦入試

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 2016年度から開始された推薦入試。毎年さまざまな分野で活躍する多彩な推薦生が入学し、弊紙でも連載『推薦の素顔』で紹介している。では、東大の推薦入試に合格するためにはどのような対策をすれば良いのか。この企画では、推薦入試で入学した3人の学生と、予備校で進路情報を扱う担当者に話を聞いた。

(取材・撮影 小田泰成、山中亮人)

 

対策は千差万別

 

(左から)安保さん、樋野さん、越田さん

 

 

 学部によって、求める学生像や推薦要件は異なる。合格者の高校時代の探究活動も人それぞれだ。

 東京都出身の越田勇気さん(理Ⅰ・2年→理)は、国際地学オリンピックで銀メダルを獲得し、国際物理オリンピックの日本代表候補でもあったため「自然科学において卓越した能力」の実績の例示に合致していた。所属していた地学部の活動では、観測や考察で自然科学への興味や関心を深めた。

 

 宮城県出身の樋野菜々子さん(文Ⅲ・2年→文)は、高校3年間、文芸作品の創作に取り組み続け、各種コンクールでの受賞歴もあった。文芸部での日頃の活動をレポートにまとめ「自主的な研究活動の具体的内容や成果」を示した。

 

 千葉県出身の安保友里加さん(文Ⅲ・2年→育)は、旧満州(現在の中国東北部)へ渡った開拓移民が語る戦争体験の継承についての問題意識を基に、探究活動に取り組んでいた。コンクールで受賞した論文だけでなく、戦争体験の継承に携わる人々への聞き取り調査や実習の記録を提出し、教育学部の求める「卓越した探究心」の根拠とした。

 

 3人が異口同音に「手こずった」と述べたのは、各学部の書式に合わせた志願理由書などの出願書類。3人とも、学校の先生に添削を依頼し、客観的に主張が伝わるか何度も相談することで対処した。越田さんは「夏休み明けから、一般入試の勉強と並行して取り組みました。自分の考えてきたことや、実績、大学で学びたいことを論理立てて書くのに苦労しました」と語る。

 

 第1次選考合格者は面接を中心にプレゼンテーション、口頭試問などが課される。形式は学部によりけりだ。「面接では志望理由書や提出した書類について、どんなことも自分の言葉で説明できるまで考え続けることが一番です」と3人は口をそろえた。

 

 「情報収集も戦略の一つ」と話すのは越田さん。理学部に推薦入試で合格した学校の先輩や、通っていた一般入試対策の塾から、過去の面接などの情報を入手した。面接で聞かれる質問事項や、難易度の高い課題の遂行能力を試す口頭試問があることを知って、対策に役立てたという。塾の大学生チューターと相談しながら、難易度の高い問題を想定し、勉強した。

 

 一方で、樋野さんは、そもそも過去の試験の実施回数が少ないからか、インターネット上にも詳細な情報はほとんどない状態だったと振り返る。「地方では通える塾や予備校にも限りがあり、首都圏に比べると情報格差があると思います」と、情報収集の難しさを懸念する。

 

 安保さんは「情報収集も戦略の一つとして大事だが、その人の特性に合わせて対策を考える必要がある」と言う。書類の提出後、プレゼンテーションでの質疑応答を想定し、学校の先生と練習を繰り返した。「学校の先生など、自分の志望動機や探求活動を評価してくれる人と試験形態に合わせた対策をすることが役立ちました」

 

 推薦生として入学してから1年以上経過した今、安保さんは、推薦入試を「自分の考えや学びの動機、将来像について直接評価をしてもらえる貴重な機会」と捉える。樋野さんは、推薦入試に対して「自分がなぜ文学部で学びたいのか、これまでの創作活動を見直しながら深く考える絶好の機会でした」と振り返る。

 

 推薦入試ではどのような力が求められているのか。「とがった人材でありながら、一芸に秀でるだけではなく、多角的な見方を備えて考え続ける力」が求められると3人は推測する。受験生には「貪欲な姿勢で挑んでほしいです」と締めくくった。

 

自分の熱意を伝える

 

石原 賢一(いしはら けんいち)さん(駿台教育研究所)

 

 推薦入試合格者の共通点について、駿台教育研究所の石原賢一進学情報事業部長は「高い学力を前提に、思い入れの強いものを持っている人」と分析する。そのため合格者が生まれる高校には、スーパーサイエンススクールなど、学校の授業の枠組みを超えた取り組みを支援している高校が多いという。

 

 一方で「やりたいことが明確な人材を集める」目的で実施される推薦入試で、科学オリンピック出場経験などの学力が重視されると誤解されがちなことに石原部長は疑問を抱く。「重要なことは具体的な成果よりも、自分が高校3年間何をしてきたかを示すこと。各学部が求める学生像はあくまでも例であり、ハードルの高さは気にしなくても良い」と説明する。

 

 では、推薦入試で求められる能力とはなんだろうか。石原部長は、面接、プレゼンテーション、小論文を通して必要になるコミュニケーション能力と文章作成能力を挙げる。「口頭でも文章でも、自分のやりたいことを丁寧に伝えられるように練習しましょう」

 

 石原部長が所属する駿台予備学校では現在、東大の推薦入試に向けた対策は、希望する生徒に文章添削を行う程度で本格的には実施していない。客観性が求められる一般入試とは違い、東大の教員が主観的に学生を選ぶ推薦入試に「必勝法」はないという。そのため、過去問演習などのパターン学習では対策し切れない。「もし不合格だったとしても『運が悪かった』と切り替えられるだけの余裕も必要かもしれません」


この記事は2019年9月10日号(受験生特集号)から転載したものです。本紙では他にもオリジナル記事を公開しています。

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青春の一冊:『火の鳥』 近藤尚己准教授(医学系研究科)
キャンパスガール:白﨑千惠さん(文Ⅲ・2年)
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東大教員の選ぶ青春の一冊 『火の鳥』(手塚治虫著)

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 「青春の一冊」は主に東大の教員に、自身の青春を彩った書籍などについて寄稿してもらう連載です。今回は、近藤尚己准教授(医学系研究科)が選ぶ一冊『火の鳥』(手塚治虫著)です。


手塚作品に魅了され医学の道へ

 

©手塚プロダクション

 

 「ああそうか、ロボットづくりは人間の生殖本能による行為なのだな」

 

 手塚治虫を読んでこう考えたのが高校時代。西のはずれの都立高校に通っていた私は、学内のオタクのたまり場であった自然科学部で部長をしていた。当然私も科学オタク。物理・生物・哲学・宗教と、雑多に本を読みあさった。SFとノンフィクションが大好きだった。そんな中から青春の本を選べというなら、手塚治虫の作品群のなかの『火の鳥』だ。「一冊」に絞れというなら、初めて手にした『復活編』を挙げる。

 

 空飛ぶ車:エア・カーから墜落したレオナ。衝撃で吹き飛んだ脳の半分を人工脳にすげ替えたレオナは廃棄物処理工場の旧型作業ロボットのチヒロに一目ぼれする。生物は無機物に、無機物は美しい生命体に見えてしまう〝錯視〟という人工脳の副作用。レオナは工場の社長に掛け合い、愛するチヒロを〝買い取り〟しようとするも拒否され、2人は逃避行。そこから、レオナの死の謎解きが始まる。遺産の奪い合い、不死への欲望、狙撃、セックス、マフィア、陰謀、そして禁断の恋。あらゆるエンターテインメントのエッセンスが織り交ぜられた彼一流の紙上演劇に没頭した。レオナとチヒロは、ロビタという新型ロボットの電子脳の中で〝結ばれる〟。

 

 医学とともに、舞台演劇、宗教、神話と、様々な芸術や古典、思想をどん欲に吸収した手塚が描く世界絵図は、火の鳥の作品群の中で、時空を縦横に旅しながら組み立てられていく。        

 

 神話の猿田彦は宇宙船の船長となり、神となり、時空を超えた存在として万物を創造し、創造した世界が滅びまた勃興するのをうろたえながら目撃する。時間軸が、かくも小さく、無意味なものに思えてしまう。人間は意思・知能・思考をデジタル化して人工頭脳にインストールすることで、肉体という制限を取っ払い、地球環境が激変する中でも子孫を存続させようとする。地球が赤色巨星化した太陽に飲み込まれる50億年後、人類の存続のために、その技術は必要になりそうだ。ロボットづくりは、そのための準備的取り組みなのかもしれない。高校生の私はそう考えた。

 

 人間をもっと知りたい、世界を知りたい。人文的にではなく、サイエンティフィックに、知りたい。ならば医学だ。そうやって医学部を受験することを決めていったように思う。

 

 手塚治虫を紹介してくれたのは、同級生のKさんだ。高校入学のころから、幼少期の怪我でできた大きな顔の傷が気になりだして他人と面と向かって話すのが苦手になっていた私に気さくに声をかけてくれた。Kさんは手塚治虫の『ブラック・ジャック』を貸してくれた。朝、読み終えた巻を返し、Kさんが次の巻を貸してくれる日々が続いた。でも結局目を合わせて話せるようにはならなかった。30巻くらいまで来て、「なんか、私、押し付けてる? 迷惑かな?」とけげんそうに尋ねてくるようになった。ほどなく、『ブラック・ジャック』の貸し借りは途絶え、会話も減っていった。翌年、傷を消す手術を受けた。淡い恋心とすれ違い。酸っぱすぎる青春も演出したのが手塚作品だった。

 

近藤 尚己(こんどう なおき)准教授(医学系研究科) 05年山梨医科大学大学院医学系研究科博士課程修了。博士(医学)。ハーバード大学公衆衛生大学院研究フェローなどを経て、14年より現職。

この記事は2019年9月10日号(受験生特集号)から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を公開しています。

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Campus Girl 髙橋明李さん(PEAK・2年)

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ありのまま温和に交流

 

 幼稚園から高校まで全て異国で過ごした国際人は、2歳で中国に渡って以来の日本暮らしを楽しんでいる。人にあふれた東京のにぎやかさが気に入り、日本語よりなじんだ英語で授業が行われるPEAKを選んだ。

 

 バルセロナでの高校時代、スペイン人からは日本人と珍しがられることもあり「自分は普通な感じに振る舞わないといけない」と思っていた髙橋さん。少し変わっているというPEAK生の中で「自分はそのままでいいんだと思えました」とおっとりした様子で話す。同級生や先輩とは寮が一緒なことも多く、仲良くなりやすいのだとか。

 

 最近は国際交流の学生団体に参加したり、サークルでホルン演奏を始めたりするなど交友をPEAK生以外にも広げている。「1人でいるのが好きじゃなくて」と髙橋さん。持ち前の穏やかさはどんな環境でも人を集めるはず。

取材・撮影【綿】

東大進学に地方高校は不利なのか? 東大女子の母校訪問②

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 生徒の前での発表を終えると、先輩方と進路室でお茶をもらってちょっと一息。続いて長年札幌南高校(札南)の進路部長を務める高桑知哉教諭に、進学状況や進路指導について話を聞いた。札南は「堅忍不抜」「自主自律」の校風の下、例年現浪合わせて10人程度の東大合格者、50人程度の国公立大医学部合格者を輩出する、共学の公立校だ。

 

 

━━近年の札南の国公立、私大への進学状況を教えてください

 

 国公立については、北海道だけでなく、首都圏、関西圏など全国から行きたい大学を探して受験するという傾向がずっと続いています。私大についても同様で、特に首都圏が多いです。昔はうちの学校は浪人が多かったですが、ここ数年は3分の2くらいは現役で進路を決めていくという状況になってきました。

 

━━学校としては現役での進学を勧めているのでしょうか

 

 いや、それにはこだわっていませんが、世の中全体を見ると現役で大学に入る人が多くなってきていると思うんですよね。時代の流れもあるし「入った大学で頑張って社会に出る」ことも大事でしょう。場合によっては大学院から他の大学に行くという選択肢もあります。ですが「どうしても医者になりたい」などと自分のやりたいことが見つかっていて、その大学でしかできないというのであれば、こだわるのも悪いことではないと思っています。

 

━━今年の東大への進学状況はどうでしたか

 

  この卒業学年は、文理ともに東大合格者が例年に比べてとても多かったです。2年生くらいまでに英数国をしっかりやった生徒が多く、3年生になってから理科・地歴公民に時間を回すことができたのだろうという分析をしています。今年の現役合格者14人というのは11年前の15人に次いで、過去2番目の実績です。

 

━━以前(2014年)のインタビュー時(http://www.todaishimbun.org/sapporominami1010/)は実施していなかった東大の推薦入試対策は、今は実施しているのでしょうか

 

 特に実施していません。東大の推薦に関しては、初年度(2016年度)に2人合格者が出たのですが、それ以降は出願者自体もいないです。東大に推薦でチャレンジできるようなものを持つにはまだ至っていないようですね。初年度に合格した生徒たちは、自主的に研究して、その内容を実際に海外に行って確認してきたり、学会で発表したりして、大学でも継続して研究をしたいと考えていました。東大に継続研究ができる先生がいたため推薦を希望したようですね。今後も意欲的な、面白い生徒がいればフォローする体制は整えたいです。

 

━━首都圏の高校と地方高校の情報量の違いをどのように捉えていますか

 

 教員としては、札幌は不利になるとは思っていないです。今はネットでいろいろな情報が仕入れられる時代であり、教員は各予備校主催の研究会にも必ず参加するようにしています。東京で行われる研究会に行くこともあって、生徒に伝えた方がいい情報は我々が適切に伝えるようにしています。現在の情報化社会では間違った情報、なびいてはいけない情報も間違いなく存在しているので、惑わされないように心掛けています。

 

   生徒たちは、周りに東大生がそんなにいない状況で3年間過ごすかもしれませんが、卒業生と語る会や東大セミナーを実施し、この環境の中でしっかり力を付けさせるように心掛けています。

 

━━他校、特に首都圏の高校との進学実績の比較はしていますか

 

 全国の公立のトップ校とは比較しています。また、会議で同席したときに情報交換もしています。

 

━━首都圏の高校との情報格差を埋める取り組みを具体的に教えてください

 

 「卒業生と語る会」は生徒に対しての情報提供、モチベーションのアップという面ではすごく効果があると思っています。地理的にすぐには東大まで行けないので、せめて東大の学生に雰囲気を伝えてもらうのは生徒の役に立っているでしょう。進路部では昨年秋から、東京で行われる各予備校主催の東大入試研究会で得た情報を、3年生の東大志望者に伝える「東大直前セミナー」を始めました。以前から実施していた医学部バージョンに加え、今年は京都大学バージョンも予定しているんですよ。あとは生徒に配っている「進路だより」で適切な時期に適切な情報を伝えるようにしています。

 

━━授業のカリキュラムの違いはあるのでしょうか

 

 うちは文理分けが3年からになっているので、理系に行ったけれども最後に文系に変えることは可能なんですよね。ほとんどの全国の学校は2年の時に決めてしまうので、戻れないんですよ。それも札南の自由度をカバーしているのではないでしょうか。全員に2年次に政経、3年次に倫理を取らせる学校も少ないと思います。理系の人にも取らせるのは珍しいですが、幅広い知識を身に付けられ、視野を広げるためにも役立っていると思っています。生徒は当然だと思っているかもしれませんが。

 

━━東大全体では女子が少ないですが、札南からの東大受験者の男女比はほぼ同じですね

 

 うちは女子頑張りますよね。京都大学も医学部もそうです。そこもうちの特徴になっているのかもしれません。地方在住の女子の場合、自宅から大学に通わせたいと考える親御さんもいらっしゃるので、全体としては少なくなるのかもしれませんね。

 

━━確かに私も「東大を目指そうかな」と母に初めて言った時、難色を示されました(笑)

 

 (笑)やっぱり北海道全体で1年間に50人入るか入らないかくらいですからね……100人くらいに増やそうと考えている先生もいるようですが、なかなかハードルは高いですね。

 

   東大は日本一の大学で、誰もが憧れる大学ですが、京都大学行きたい人もいれば、医学部行きたい人もいるでしょ。一橋大学や東京工業大学を選ぶ人もいる。生徒一人一人が、自分の考えに基づいてベストの大学を選んでほしいと思っています。

 

━━札南はいろいろな人がいますよね。東大に数カ月通った今でも、札南生は個性的な人が多く、自由な雰囲気だったと思います

 

 そうでしょ。それをこちらも許容しているし、生徒自身も「あいつ面白いな」と受け入れる度量の大きさがありますよね。なるべく方向性をつけず自由にさせたいけれど、野放しにするのではなくて、必要な情報やヒントを与えてみんなに考えさせる。その上で最終的に決めさせるのが我々の責任だと思っています。「知っていればそうしなかったのに」という不利になる選択だけはして欲しくないので、そこだけは気を付けたいところですね。

 

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あしたから消費増税 東大生協の軽減税率・還元事業への対応は

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 あした(10月1日)から消費税率が8%から10%に引き上げられる。これに伴って始まるのが、飲食料品を主な対象とする軽減税率制度と、中小店舗でキャッシュレス決済を行ったときのポイント還元事業だ。そもそもこれらはどのような取り組みで、私たちの生活にどのような影響があるのか。これらの取り組みに対する東大生協の対応を聞いた。

(取材・衛藤 健)

 

中央食堂での飲食にも、10%の消費税が課されることになる。

 

東大生協での対応状況

 

 東大生協では、消費増税に伴って原則的に「消費増税分をそのまま転嫁するため値上げとなる」(東大生協・矢野正悟さん)。特に、食堂は持ち帰り対応を行っていないため、全ての商品で増税分値上げとなる。

 

 しかし、飲食料品の持ち帰りが可能な購買部では、飲食料品を対象に消費税率を8%にすえおく軽減税率制度に対応する。ただし柏店はカフェを併設しており、そこで飲食する場合には「外食」とみなされて軽減税率は適用されない。また、生協食堂から配達するオードブルや会議などでのコーヒーデリバリーサービスは軽減税率の対象になるという。

 

 東大生協は、キャッシュレス決済を使用した時に決済額の一部が還元される「キャッシュレス・消費者還元事業」の対象店舗だ。今月6日、事業を主導する経済産業省が全国の対象店舗を公開し、そのリストに東大生協の各店舗も掲載されていた。

 

 東大生協は27日、ウェブサイト上で事業への対応状況を公開。それによると、9月以前に交通系ICカード、学食パス、クレジットカードを使用できた店舗のすべてで、原則として還元が受けられる。

 

 ただ、クレジットカードの使用には注意が必要だ。本郷、弥生、駒場の各キャンパスに設置された食堂では還元が受けられないほか、他の生協が設置する店舗でも還元の開始が遅れる見込みだという。つまり、10月1日の消費税率引き上げ時は東大生協の店舗でクレジットカードを使用しても還元の恩恵を受けられない。

 

 また、生協食堂で使用できる「学食パス」も還元事業の対象決済サービスだ。1カ月間に利用した金額の5%が翌月上旬にポイントとして付与される形で還元が行われる。還元されたポイントは、学食パスのマイページ上で確認できるという。

 

軽減税率制度とは

 

 軽減税率制度とは、酒類や外食などを除く飲食料品と週2回以上発行される新聞の定期購読に対し、これまでの消費税率8%が引き続き適用される制度のこと。低所得者の負担軽減として導入が決まった。

 

 この制度の複雑な点は、同じ商品を購入しても消費税率が異なるケースがある点だ。例えばコンビニやファストフードで食品を購入する場合、店内に設置されている座席やイートインスペースで消費すれば「外食」とみなされ税率は10%となる一方、持ち帰れば税率は8%となる。混乱を避けるため、各食品チェーンでは本体価格を調整することで8%適用時と10%適用時の税込み価格を統一する動きも出てきている。

 

 なお、東京大学新聞は週1回発行のため、軽減税率の対象とはならない。

 

軽減税率制度の導入に伴い、同じものに違う税率が適用されることも。

 

キャッシュレス・消費者還元制度とは

 

 経済産業省が主導する「キャッシュレス・消費者還元事業」は、事前に登録された店舗で現金を使わず決済した場合に、その決済額の一定額が還元される制度。中小店舗では5%、大手チェーンのフランチャイズ店では2%が還元される。クレジットカードやSuica、PASMOといった交通系ICカードはもちろん、QRコード決済、nanacoやWAONといった電子マネーでの支払いが対象だ(主な対象サービス)。

 

 対象となる店舗は大手チェーンのフランチャイズ店を含む中小の店舗で、6日に公表された対象店舗リストによると全国で約58万店が登録済み。リストに記載されていないコンビニなど大手チェーンの直営店でも、企業側の負担で2%還元が行われている場合がある。

 

 この制度は増税に伴う消費落ち込みの軽減策として一時的に導入されるもので、10月1日から来年(2020年)6月末まで行われる予定。

 

経産省は、還元の対象となる店舗を検索できる
「ポイント還元対象店舗検索アプリ」を公開している。

 

還元を受けるには?

 

 ポイントの還元方法は、使用する決済サービスによって異なる。

 

 一つ目の方法はポイントや残高による還元。この方法をとるのは、交通系ICカードやQRコード決済といったチャージ式のサービスが多い。決済から数カ月以内にポイント付与や残高付与の形で還元される。

 

 この方式をとる交通系ICカードは、東大生協でも使うことができ、東大生にとって特に身近な決済手段だろう。しかし、自分が持つ交通系ICカードが還元に対応しているか、またポイント還元のために事前登録が必要かどうか、確認が必要だ。JR東海のTOICAやJR北海道のKitacaなど還元に参加しないICカードも存在するほか、SuicaやPASMOといった還元に参加するICカードでも、SuicaのJRE POINTなど事前に登録が必要な場合がある。

 

 二つ目は引き落とし額を減らす方法。この方法をとるのは、クレジットカードに多い。使用額の引き落とし時に還元額相当を割り引いて引き落とす方式だ。

 

 また、使用する決済サービスが還元、引き落とし額の減額のどちらを採用していようと、決済する時に即時値引きを行う方法を行う店舗もある。コンビニ各チェーンではこの方法をとることが決まっている。

 

 使用するサービスによっては月当たりの還元額の上限が定められている場合もあるため、注意が必要だ。各サービスがどのような形で還元を行うかは、経済産業省の特設サイトで確認できる。

サーギル博士と歩く東大キャンパス④ 本郷キャンパス 総合図書館 【前編】

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 我々が日々当たり前のように身を置いている「場」も、そこにあるモノの特性やそれが持つ歴史性などに注目すると、さまざまな意味を持って我々の前に立ち現れてくる。この連載企画では、哲学や歴史学、人類学など幅広い人文学的知見を用いて「場」を解釈する文化地理学者ジェームズ・サーギル特任准教授(教養学部)と共に、毎月東大内のさまざまな「場」について考えていこうと思う。第4回は、本郷キャンパスの総合図書館だ。

(取材・円光門)

 

ジェームズ・サーギル特任准教授(教養学部)14年ロンドン大学大学院博士課程修了。Ph.D.(文化地理学)。ロンドン芸術大学准教授などを経て、17年より現職。

 

歴史とは痕跡の取捨選択

 

 「『歴史』とは痕跡を選択し、提示することであり、これらの痕跡が積み重なって層を成してできるのが『場』なのです」。サーギル特任准教授の言う「歴史」と「場」の関係性は、総合図書館周辺の空間に顕著に表れている。

 

 総合図書館(図1)は、1877年の東京大学の創設と共に旧図書館として建てられた。関東大震災の火災で焼失した後、1928年に再建され、現在に至るまで幾度か改修工事を経験している。86年に図書館前広場の改修を任された工学部の大谷幸夫教授(当時)は、自分が東京帝国大学在学中に戦没した同輩や後輩への追悼の意を込めて、広場の地面に曼荼羅(まんだら)のモザイク画を施した。

 

(図1)2015年から改修工事を行っている総合図書館

 

 だが2015年から始まった地下書庫の建設を伴う改修工事により、曼荼羅のモザイク画は失われることに。他方、工事の過程で旧図書館の土台と加賀藩邸時代の水路石が発見された。土台は噴水周辺のベンチとして加工、再利用され(図2)、水路石については石の表面が切り取られ、広場の同じ位置にはめ込まれた(図3)

 

(図2)ベンチとなった旧図書館の土台
(図3)加賀藩邸時代の水路石

 

 このように総合図書館周辺の空間には複数の異なる時代の痕跡が存在するが、ある層の痕跡は保存され、別の層の痕跡は排除される。一部の痕跡が選択、提示されることが「歴史の語り」を形成するのだ。

 

 江戸時代の水路石、明治時代の旧図書館の土台、そして戦争の記憶である曼荼羅。なぜ前者二つは保存され、後者は排除されたのであろうか。サーギル特任准教授によると、痕跡がその場に根差しているか否かという「正統性」が理由の一つとして論じられ得る。「水路石も旧図書館の土台も、元からその場にありましたが、曼荼羅は後から恣意的に添えられました。従って、曼荼羅は保存にふさわしいほど『正統』ではないと判断されたのかもしれません」

 

 だが、このような「正統性」の議論は短絡的だとサーギル特任准教授は言う。「水路石にしろ土台にしろ曼荼羅にしろ、全てある時点で人の手によって恣意的に作られたものです。古いか新しいかという相対的な違いしかありません」

 

 もう一つの理由として考えられるのは、戦争という極めて政治的なものに関わる記憶を排除することで図書館前広場を非政治的、中立的な場にしようとする意図の存在だ。「近隣住人が犬を散歩させ、家族連れが談笑し、学生が学問や将来について語り合う場であるこの広場が政治色に染まってはいけないと考えられているのかもしれません」とサーギル特任准教授は指摘する。

 

 だが、政治的でない場など存在するのだろうか。あらゆる痕跡は、今は存在しない時間や空間に関わるものであるから、ある種の記憶に他ならない。故に水路石や旧図書館の土台といった過去の痕跡も、言い換えれば記憶である。アイルランドの地理学者カレン・ティルは、記憶の場は「行為」と「政治」の相互作用の中に生まれると主張した。公の場に記憶が保存され得るのは、人々が定期的にその場に来て出来事を想起するという「行為」があるからであり、また特定の権力が、継承するにふさわしく、正確で正当な記憶とはどれかということを規定する「政治」があるからである。そしてこの記憶の規定に際し、さまざまな意志を持つ権力者同士の力関係が作用する。「故に、一見政治とは関係ないように思える水路石や旧図書館の土台も、図書館前広場に置かれることでその場を政治化しているのです」

 

 そもそも、場から政治性を排除しようとすること自体が政治的だ。「本来曼荼羅は戦没者の純粋な追悼を目的として設計されたものです」とサーギル特任准教授は語る。「にもかかわらず、寛容で先進的であるべき大学という場において、帝国や排他主義を喚起する戦争のイメージはふさわしくないと判断された可能性もあります」。そしてこのような判断は政治的な判断に他ならないのだ。

 

後編は約一カ月後に公開予定です。

 


 

【英訳版】

Take a Walk through Todai’s Campuses with Dr. Thurgill #4 General Library, Hongo Campus 【Part 1】

 

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Take a Walk through Todai’s Campuses with Dr. Thurgill #4 General Library, Hongo Campus 【Part 1】

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We, without doubt, lay ourselves in “places,” which, if we heed the specialty of things therein or the history therewith, appear to us as having a variety of meanings. In this serial article, we aim to contemplate various “places” found in Todai’s campuses with the cultural geographer Dr. James Thurgill, who interprets “places” by employing a knowledge of the humanities that spans philosophy, history, anthropology, and so on. Our fourth meeting is at the General Library on Hongo Campus.

(Interviewed, Written and Translated by Mon Madomitsu)

 

Dr. James Thurgill graduated from the graduate school of University of London in 2014. Ph. D (Cultural Geography). After serving as an assistant professor at University of the Arts London, from 2017 he is a project associate professor of the University of Tokyo.

 

History as a Curation of Traces

 

              “’History’ is a curation of traces, and ‘place’ can be thought of as sites where these traces pile up.” The relationship between “history” and “trace” which Dr. Thurgill describes is represented prominently in the space around the General Library.

 

              The General Library (Photo 1) was built in 1928 after the original library, which opened in 1877 with the founding of The University of Tokyo, was destroyed by fire in the wake of the Great Kanto Earthquake. Since its opening, the General Library has undergone several periods of repair and renovation. In 1986, Prof. Sachio Otani from the Faculty of Engineering took charge of the renovation of the library square and set mandala mosaics into the ground there to express mourning for his former Todai classmates who had died in the Second World War.

 

The construction of the underground section of the General Library began in 2015

 

              However, due to the construction of the underground section of the library that began in 2015, the mandala mosaics were removed and have never been replaced. Instead, the foundations of the original library along with a collection of stones that once formed a water channel for the Kaga Family were discovered during the renovation process and have taken the place of the commemorative mandala. The former was processed and reused to form benches around the fountain (Photo 2), while the surfaces of the latter were cut off and set into the plaza’s surface, positioned just as they would have been during the Edo Era (Photo 3).

 

The foundations of the original library were shaped into the benches
The water channel for the Kaga Family

 

              As such, within the space around the General Library there exist multiple traces from different ages: but while some traces are conserved, others are removed. Ultimately, the curation of these traces comes to form and represent the “historical narratives” of the place now occupied by the General Library.

 

              The Edo period water channel, the library’s original Meiji Era foundations and the mandala stones that once acted as a material memory of the war: why were the former two conserved but the latter removed? According to Dr. Thurgill, some might hold the notion that the reason for managing this area’s spatio-historical narrative in such a way arises from a sense of “legitimacy”, urging us to question whether or not the trace is historically rooted in the place. “The water channel and the foundation of the original library were originally there, physically in this place, but the mandala were placed there somewhat arbitrarily at a later stage. In this sense, perhaps the mandala stones were not viewed as ‘legitimate’ in the conservation process of the site,” says Dr. Thurgill.

 

              However, Dr. Thurgill points out that such an argument regarding “legitimacy” is short-sighted: “Be it the water channel, the foundation, or the mandala stones, they were all arbitrarily created by human hands at some point. The only difference is that each is either older or newer than the other, relatively speaking.”

 

         Another reason that can be considered in the removal of the mandala stones is that there might be an active attempt to depoliticize and neutralize the library square by removing the memory concerned with the war, which, after all, is an extremely political and contested topic. Dr. Thurgill maintains, “It may be thought that this square, where the neighbors take their dogs for a walk, families have pleasant talks, and students discuss their academic topics, futures, and such, is not an appropriate place for political features to be displayed.”

 

              However, is there such a place that could not be considered political? Every trace is related to a time or space that no longer exists: thus, a trace is nothing but a kind of memory. The water channel and the foundations of the original library are, in other words, material memories. The Irish geographer Karen Till maintains that a memorial place is created within the interplay between “performances” and “politics”. A memory can be preserved in a public space both because there are “performances” in which people regularly go there and remember an event, and because there are “politics” in which a certain authority determines which memory is accurate, legitimate, and appropriate for future conservation. In the determination of memory, there functions a power-balance among authorities with various agendas: “Therefore, even the water channel and the foundation of the original library, which at first glance appear to be unrelated to politics, politicize the library square simply through their being positioned there.”

 

              The act of depoliticizing is itself a political action. “The mandala stones were originally designed purely as a memorial to the war dead,” says Dr. Thurgill. “In spite of this, it might have been judged that the image of war, which is often associated with empire and exclusionism, is not appropriate in the place of the university, a place which is supposed to be inclusive and progressive.” Nevertheless, in the end, such a judgement can be nothing but political.

 

The Part 2 will be released a month later.

 


 

【Japanese Version】

サーギル博士と歩く東大キャンパス④ 本郷キャンパス 総合図書館 【前編】

 

【Serial Article】

サーギル博士と歩く東大キャンパス① 本郷キャンパス赤門

Take a Walk through Todai’s Campuses with Dr. Thurgill #1 Akamon, Hongo Campus

サーギル博士と歩く東大キャンパス② 本郷キャンパス三四郎池

Take a Walk through Todai’s Campuses with Dr. Thurgill #2 Sanshiro Pond, Hongo Campus

サーギル博士と歩く東大キャンパス③ 駒場Ⅰキャンパス 1号館

Take a Walk through Todai’s Campuses with Dr. Thurgill #3 Building 1, Komaba Campus

癒やしの空間にようこそ 温泉の魅力に迫る

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 日本は3千余りの温泉地を持つ世界屈指の温泉大国だ。しかし時間や距離の問題で、実際に温泉に赴くことがそれほど頻繁でない人も多いだろう。今回は、多種多様な発信活動を通し温泉好きの輪を広げる活動を行う東大温泉サークルOKRの代表の高舘直稀さん(法・3年)と、上山和輝さん(工・3年)に温泉の魅力や楽しみ方を聞いた。

(取材・田中美帆)

 

東大温泉サークルOKR代表高舘直稀さん(左)、上山和輝さん

 

五感で気軽に楽しむ

 

 「OKRでは温泉を楽しむため、五感を重んじ体験を鮮明にすることを大切にしています」。例えば、風や湯の音に耳を澄ましたり、肌に触れたお湯の感触を確かめたりする。湯の色や透明度も目で楽しむ要素だ。とはいえ温泉の楽しみ方は十人十色。高舘さんはその温泉を過去に訪れた偉人の資料を見て、過去に思いをはせるという。また、泉質にこだわる上山さんは「鉄成分が多く鉄サビの匂いが強い温泉や、CO2が多くシュワシュワな温泉(炭酸泉)が好きですね」。飲用スペースや湯口に準備されたコップで源泉を飲める温泉を好む人もいる。他にも昔ながらの建築を見たり、風呂上がりに縁側で風を感じたりするなど、自分なりの楽しみ方を発見するのが良いという。

 

 温泉地というと敷居が高く感じる人もいるかもしれないが、身近なところにも温泉はある。都内の銭湯の中には温泉水を使ったところがあるという。東大からアクセスが良い温泉銭湯を2人に紹介してもらった。

 

六龍鉱泉

 根津駅徒歩5分と本郷キャンパスから抜群のアクセス。古風な建物も魅力の一つだ。都内有数の熱湯で、墨汁より少し透明度が高い黒色の湯が名物。銭湯内の壁のタイルには、美しい自然を背景に錦帯橋が描かれている。「ワンコインで入浴可能なため、1人暮らしの東大生に薦めたいです」

 

男湯(写真は六龍鉱泉提供)

 

高井戸天然温泉 美しの湯

 高井戸駅徒歩2分と駒場キャンパスから行きやすい。特徴的なのは琥珀(こはく)色の湯。湯の成分に塩が多いため湯冷めしにくい長所がある。炭酸泉(週替わり)もあり健康に良いだけでなく、水風呂やサウナ(2種類)、地下のリラクゼーションスペースなど、設備が整っている点も魅力だ。

 

女性露天風呂(写真は高井戸天然温泉 美しの湯提供)

 

 どちらも大学が終わった後、帰宅の前に気軽に寄れる。「カフェやカラオケのノリで、友人と気楽に遊ぶ場としても楽しんでみてください」

 

 気軽に行ける都内の銭湯だけでなく、全国津々浦々の温泉も訪れて魅力をもっと知ってほしいと口をそろえる2人。大きな湯船で安らげることや、美肌効果などの温泉ごとに異なる効能を得られることにとどまらず、温泉には日常から離れ心理的に解放される効果も期待できる。「温泉がある宿も、ない宿と宿泊費は大きく変わりませんし、もっと気軽に温泉に行ってほしいということに尽きます」

 

湯治で安くのんびり

 

 OKRが温泉の楽しみ方の一つとして挙げるのが湯治。湯治とは、長期間温泉に滞在し療養することを指し、元々は上流階級の人々が行っていた。江戸時代になると、閑散期の農民や漁民も家財一式を宿に持ち込んで、自炊をしつつ長期間滞在したという。「当時の姿を完全に再現することは不可能ですが、長期間の滞在や宿泊者が自炊を行うといった点で現在も湯治のエッセンスを受け継ぐ旅館があります」

 

 湯治を味わえるOKRお薦めの温泉は二つ。近接しているため一緒に楽しむ人も多いという。

 

大沢温泉(岩手県)

 豊沢川沿いの景観が美しく広い露天風呂「大沢の湯」が名物。古くから湯治場として親しまれ、昔ながらの建物からはおもむきが感じられる。「食事時に共同炊事スペースで和気あいあいと自炊を楽しめました」

 

混浴露天風呂「大沢の湯」(写真は大沢温泉提供)

 

鉛温泉(岩手県)

 同じく自炊を満喫できる。源泉を沸かしたり薄めたりしていない掛け流しの自然のままの温泉が売り。深さ約1・25mの立って入る温泉「白猿の湯」が有名。全身に湯圧がかかることで健康効果があるという。

 

「白猿の湯」(写真は鉛温泉 藤三旅館提供)

 

 

 湯治の魅力は、宿泊者が自炊をしたり布団敷きを自分で行ったりするため、通常の温泉旅行に比べて宿泊費が安価になっていること。お金に余裕のない学生時代に特にお薦めできる。また、2泊以上の連泊が普通なため、1泊2日の忙しない旅に比べて中日もあってゆったりとした時間を過ごせる。「楽しい予定を詰め込み最後はくたくたになりがちな旅行ですが、湯治でのんびり過ごすことで、疲れや病気を癒やす観点から温泉を満喫できます」

 

OKR厳選 泉質と景観が魅力の温泉

 

 温泉に行こうとしても数ある候補の中から選ぶのは至難の技。そこでOKRお薦めの温泉2選を紹介する。

 

韮崎旭温泉(山梨県)

 

 少し足を延ばした日帰り温泉として、山梨県の韮崎旭温泉がある。営業時間は午前10時から午後8時で、料金は大人600円。炭酸泉の中でも泡がしっかりとしていて「発泡入浴剤を30個入れたくらいの刺激を楽しめますね」。泡を保つため通常低温のことが多い炭酸泉の中でも、比較的高温であることも特徴。源泉を入浴中に飲むことも持ち帰ることもできるのも魅力だ。

 

大浴場(写真は韮崎旭温泉提供)

 

乳頭温泉郷(秋田県)

 

 景観の美しさでは秋田県の乳頭温泉郷が有名だという。東京駅からは新幹線で2時間50分。七つの温泉宿があり、入湯料金は600円前後で宿泊費は8千円台後半〜約2万円。宿自体が一つの町のようになっている。「広い露天風呂からは美しい景色を満喫できます。冬の雪景色は格別です」。いずれかの宿の宿泊者は、「湯めぐり帖(1800円)」を購入し泉質の異なる七つの温泉を巡ることもできる。

 

七つの宿のうちの一つ、休暇村乳頭温泉郷の露天風呂「田沢湖高原の湯」(写真は休暇村乳頭温泉郷提供)

この記事は2019年9月24日号に掲載された記事の拡大版です。本紙では他にもオリジナルの記事を公開しています。

ニュース:東大の非常勤講師 下 待遇改善の道半ば 非常勤講師雇用今年から制度変更 常勤との格差課題
ニュース:世界大学ランキング 総合36位に上昇 国際性38点台にとどまる
ニュース:決勝Tに進出決定 ラクロス一橋大戦 残り40秒で同点弾
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ニュース:開幕連敗スタート 硬式野球明大戦 延長12回の激闘も
ニュース:力負けで開幕2連敗 アメフト明大戦 スピードに圧倒される
ニュース:秋季入学式 五神総長「『知』の蓄積を共存させ統合し、未来を切り開いて」
企画:変化していく「日常」を守る 香港デモの動きを振り返る
企画:癒やしの空間にようこそ 温泉の魅力に迫る
世界というキャンパスで 分部麻里③
研究室散歩@高分子ゲル 吉田亮教授(工学系研究科)
サークルペロリ UTSummer
キャンパスガイ 星合佑亮さん(文Ⅱ・2年)

※新聞の購読については、こちらのページへどうぞ。

Campus Guy 星合 佑亮(ほしあい ゆうすけ)さん(文Ⅱ・2年)

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人を巻き込むチカラ

 

 1年次は「とりあえず行動」をモットーに企業などのイベントに多数参加。2年次前期は徹底した自己分析を。現在は地元三重県出身者をつなぐ学外団体「みえフェス」の代表を務めつつ、東京五輪を視野に、現在開催中のラグビーワールドカップで外国人と積極的に関わる。「自分の『人を巻き込むチカラ』が外国の人相手にも通用するのか試してみたくて」

 

 行動力の源は「自分にしかできないことをしたい」という情熱。高校時代のバスケ部では、他の部員が技術を磨く中、初心者の自分にこそ出来ることを考えた。進路に関しても、より範囲の広い「経済」に目を向ける。

 

 「地元伊勢の温かさを守りたいという思いが常にあります」。地元で受けた恩、人との縁。全ての人を愛する心を大切に、自分にしか生むことが出来ない価値を生み出したい。そう語る瞳は野心に燃えていた。

 

取材・撮影【丼】

注目の若手が続々 現在進行形の落語に迫る 簡素な形態に詰まる妙技

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 新たな落語ブームの到来が叫ばれている。東大卒落語家の春風亭昇吉が話題になっていたが、新しく東大卒落語家が生まれるなど、落語に注目する東大関係者も増えつつある。そこで、東大を卒業して音楽雑誌の編集長を務める傍ら、落語評論家としても活躍する広瀬和生さんと東大落語研究会のメンバーに、落語の魅力や楽しみ方を聞いた。

(取材・中井健太)

 

演者選びにはご用心

 

広瀬 和生さん(落語評論家、音楽雑誌編集長)

 

 1世代前の落語ブームは、05年、ドラマ『タイガー&ドラゴン』(TBS系)をきっかけとして起きた。現在落語評論家として活動する広瀬さんは、当時「落語評論家が落語を見ていない」「本当に面白い落語の情報を伝える、落語ジャーナリズムが存在していない」と感じていたという。当時の落語評論家らは、破天荒な振る舞いで有名だった立川談志が創設した立川流をタブー視。「一流の落語を演じていた」にもかかわらず、評論として取り上げなかった。

 

 落語に興味を持った人が「どこに行って何を聞くか」のガイドを欲していると感じた広瀬さんは『この落語家を聴け! いま、観ておきたい噺家51人』(アスペクト)を著した。「当時も、寄席の存在を紹介して『とにかく寄席に行け』という雑誌特集やムックはありました。ただ、本屋に行けば本がある、映画館に行けば映画をやっている、ということを紹介するだけのものを評論とは呼びません」。落語ファンとして現代の落語、落語家を追い続けていた広瀬さんの著書は落語関係の書籍として異例の売り上げを見せ、落語ブームの追い風となった。

 

 落語の聞き方には2種類ある。一つは毎日落語を催す寄席で聞く方法で、もう一つは事前にチケットを買い決まった演者が出演するホール落語で聞く方法だ。広瀬さんが落語初心者に薦めるのはホール落語。「主催者が演者を選ぶホール落語は、寄席と違ってクオリティーがある程度担保されています。寄席にふらっと入って楽しめるのは相当なマニアといえますね」

 

 固定されたテキストがない落語。演者によって演じられ方が全然違うため、誰を聞くかが重要になる。今、特にお薦めなのは春風亭一之輔、桃月庵白酒、三遊亭兼好、柳家三三の4人だという。「この人たちが出ているホール落語のチケットを取れば間違いありません」。初心者に一番理想的な入門は立川志の輔。「独演会も1席目で分かりやすい新作、2席目で分かりやすい古典の大作をやるなど、初心者に優しい構成が多いです」

 

 落語の魅力はそのシンプルな形態にあると話す広瀬さん。「使うものは扇子と手ぬぐいだけ。最低限の道具でシンプルにやるからこそ、観客の想像力で世界が広がる、何でもできるのが最大の魅力ですね」。着物を着て座布団の上に座り、上半身だけで表現する制約があるからこそ、観客の想像が広がる。

 

 ストーリーの中にある矛盾、無理を感じさせないのも落語家の腕だ。文七元結という話の中で、主人公が娘を売って得た50両という大金を、自殺しようとしている人にあげてしまう場面がある。「普通はそんな大事なお金を見ず知らずの人に渡しません。そこで、悩んだら渡せないと考え、思い切って渡す演出にする落語家、悩む過程を見せることで感情移入させる落語家など、さまざまな工夫をして噺を聞かせます」

 

 落語を聞きに行く際、気を付けるべきことは「特にない」という。昔は着物で行くべきかなどを聞かれることが多かったというが「今は落語を聞きに行くのにルールがないことは知れ渡っています」。しかし「とにかく誰かを聞きに行けばいい」というのは間違いだとのこと。同じネタでも演者によって雲泥の差があり、それこそが落語の良さだという。「落語を見てつまらなかったら、落語がつまらないんじゃなくて、その落語家が面白くなかったんだと思ってください」

 

 娯楽を楽しむのにこんなことをするのも面倒かもしれませんが、と前置きして広瀬さんは語る。「一度聞いた落語がつまらなかったからといって落語に見切りをつけず、根気よくいろんな演者の落語を聞いてください。1回はまってしまえば、落語のユニークさ、エンターテインメントとしての底の深さから抜け出せなくなりますよ」

 

 

番組から入るのも手

 

今道さん(左)と伊東さん

 

 東大落語研究会の伊東広香里(東京外国語大学・2年)さんは、落語の魅力は「準備の必要のなさ」にあると語る。手ぬぐい、扇子は必要だが、それがなくても自分の身一つで成立させられるのは大きな魅力だという。今道周作さん(農・3年)は「自分1人のしゃべりで、客を30分間笑わせられ続ける、独占できる」のは他のお笑いにはない魅力だという。

 

 伊東さんお薦めの落語家1人目は春風亭百栄。「マッシュルームカットの中年男性です。不思議な雰囲気があって、はまると抜け出せなくなりますね」。2人目は桂春蝶。「落語を好きになるきっかけとしては邪道かもしれませんがとても声がいい落語家です」

 

 今道さんは落語家よりも、落語のネタから入るタイプ。「落語のばかばかしさが好きですね。好きなネタを見つけて、いろんな落語家の演出の違いを聞き比べても面白いです」

 

 初めて落語に触れるのはテレビやラジオなどの落語番組でもいいのではないかという今道さん。「最初はそういう形の方がとっつきやすいかもしれません。もし生で見たくなったら、落研の寄席に来てもらえれば(笑)」


この記事は2019年9月17日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を公開しています。

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診断・治療は慎重に 発達障害の実態に迫る

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 「東大には発達障害の学生が多い」という話をたまに耳にする。近年、発達障害はメディアで取り上げられることも多く、自分が発達障害ではないかと悩む人も増えている。その増加の要因や発達障害で悩む人への適切な教育やサポートについて東大教員に話を聞き、実際に発達障害と診断され悩みを抱えている学生にも話を聞いた。

(取材・本多史)

 

変人らしく堂々と

 

中邑 賢龍(なかむら けんりゅう)教授(先端科学技術研究センター)84年広島大学大学院博士課程後期単位修得退学。香川大学助教授などを経て、08年より現職。

 

 

 

 「発達障害は誰もが有する認知や性格特性の偏りが環境とマッチせず不適応を引き起こした状態だと考えます。発達障害で悩む人の多くは、読み書きやコミュニケーションで困っているだけです」。そう切り出したのは、中邑賢龍教授(先端科学技術研究センター)。中邑教授は、発達障害で悩む人の増加原因として、産業構造の変化を挙げる。かつての日本では農業や工業が中心となっており、それほどコミュニケーションが必要とされなかった。しかし、サービス業のような第3次産業が中心となったことで、読み書きやコミュニケーションが必要となる職業が増えた。結果、仕事に悩む人が増え、その救済のための枠組みとして発達障害が注目されるようになったと分析する。

 

 一方で、そのような枠組みにとらわれ過ぎてしまい、子供を発達障害と診断して治療することには慎重になるべきだという。学校では「あいさつが出来て明るい子」が、企業では「コミュニケーション力のある学生」が求められる。そのため、あいさつや会話が苦手な子は、規範の押し付けによって苦しむことになる。「今の学校では集団に入らず1人でいることが暗いとされ否定される。周囲の人間はその子の特性を尊重してあげるべきです。特性を否定せず、目も合わせてはっきりした声であいさつできない人でも認められる世の中になるとすてきだと思います」と中邑教授は話す。

 

 治療の過程でストレスを抱えて苦しむ人も多い。発達障害という枠組みによって福祉面でのサポートは充実したが、発達障害を理由に物事への挑戦をためらってしまうというデメリットもある。発達障害で苦しむ人が社会で活躍するには、その人の得意なことを生かしたり好きなことができたりするような、仕事の多様化が求められるだろう。

 

 中邑教授は入試制度にも改善の余地があると話す。例えば、ほとんどの大学入試で英語は必須科目だが、そのことで他の科目に突出して秀でている学生に不要な負担をかけている可能性があると指摘する。日本の学校教育は平均的な学力を付けることを目標としており、得意科目を伸ばすのではなく、苦手科目をなくすことが指導の方針になっている。結果として、一部の分野に突出した能力や好奇心を持つ生徒は他のことに時間を割かれ、自分の好きなことを追求する機会が失われてしまう。この背景には、何でも型にはめてしまう効率主義があると考えられる。標準化をすることで管理がしやすくなり、反発も減らすことができるからだ。

 

 発達障害で悩む人にとって最大の懸念事項の一つが就職だ。中邑教授は、自分の好きなことで起業したり、好きなことを副業でやることを勧める。生活のためのベーシックインカムとして企業で働きながら、副業で好きなことを追求するなど、柔軟な働き方が考えられる。また、コミュニケーションが苦手な人は、無理に集団行動しなくても良いと考える。「集団が苦手なのに、ストレスを抱えてまで、集団で結束しようとする必要はないです。ハブとなる人間が個人とつながっていれば十分ではないでしょうか」

 

 中邑教授は、長時間働けない人のために、「超短時間雇用」という取り組みを行っている。一か所でずっと働くのが苦手であれば、短時間で複数の箇所で働けば良いという考えだ。

 

 中邑教授は、ユニークな子供たちが自分らしさを発揮できる環境をつくるため、「異才発掘プロジェクトROCKET」の運営もしている。ROCKETでは、ユニークさ故に学校になじめない子が多く、その中には発達障害と診断された子もいるという。同プロジェクトに、キノコマニアの子供が参加した。彼はキノコに夢中だが、理解してくれる子供は周りにいないため、学校で友達ができない。しかし、彼がとってきたトリュフなどをシェフたちに見せると、高値で買うという。子供たちは学校という狭い世界の中に閉じこもっているから、ユニークな子供は理解者を得ることが難しい。だが、価値が認められる場所を用意することで、人一倍の輝きを放つ可能性を秘めている。必要とされているのは、輝ける場所を見つけて用意してあげられるプロデューサーだ。自分と合わない場所にいるとストレスがかかり二次障害に発展する場合もあるので、周囲の助けを借りながら自分に合った場所を見つけるのが大事だ。

 

 中邑教授は、発達障害で悩む東大生にも同じようなアドバイスをする。「周りの言うことを気にし過ぎず、自分の得意なことを見つけて、同じことをやっている仲間の所に行きなさい。自分に合った環境を見つけて、変人は変人らしく堂々と生きましょう」

 

当事者の声

 

コミュニケーション・サポートルームの相談室。東大生の発達障害に関わる悩みの相談にも応じている(写真はコミュニケーション・サポートルームより提供)

 

山中優里さん(仮名)(理・3年)

 

 今年ADHDと診断された山中さんに話を聞いた。

 

━━ADHDを診断された経緯は

 

 1年の秋ごろに他のメンタル系の悩みで保健センターの精神科を受診したところ、ADHDの傾向がありその2次障害ではという話になりました。ただ、2次障害の方が重くその治療に専念したため、ADHDについては後回しになりました。3年になって、ADHDの先輩に勧められコミュニケーションサポートルームに行きました。予約もその先輩がとってくれたのですが、自分では何が問題なのか分からず、何でも相談室や学生相談所にも相談しました。

 

━━診断されたときはどう思いましたか

 

 「もっと早く知りたかった」という思いが強かったです。出来ればメンタルがしんどくなる前に知りたかったです。努力して東大に入ったのに、授業に集中することができず、成績も思うように取れなくて悩みました。その時ADHDと分かっていれば、適切なサポートを受けてメンタルの負担を減らせたかもしれません。

 

━━ADHDに関連していそうな悩みはありますか

 

 一番困っているのは、大学の授業と実験ですね。授業はとにかく集中して聞けないです。実験では器具を割ってしまったり、試薬をこぼしたりすることが多いです。他にも、頻繁に物をなくしたり、物事を後回しにしがちです。

 

━━自分なりの対策はありますか

 

 最近ではなくしものを減らすために、必要なものを一つの袋にまとめて、袋ごとかばんに入れるようにしています。他にも、洗い物を後回しにしてため込んでしまうので、使い捨ての皿や箸を使うようにしています。

 

━━大学の支援体制はどうですか

 

 おおむね満足ですが、実験の際にミスを減らすために机を広くしてほしいという要望を伝えても通らなかったので、少し融通が利かないと思います。コミュニケーションサポートルームは非常に混んでいるのですが、理学部支援室は同じような支援をしてくれて空いているので、利用しやすかったです。


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【研究室散歩】@海上貿易史 島田竜登准教授 史料と向き合う喜び胸に研究

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島田 竜登准教授(人文社会系研究科)01年ライデン大学大学院上級修士課程修了。Ph.D.(文学)。西南学院大学准教授などを経て12年より現職。

 

楽しむ気持ちエネルギーに

 

 16~20世紀前半のアジアの海上貿易史を専門とする島田竜登准教授(人文社会系研究科)。オランダ東インド会社の史料を用いて、アジアの貿易商人について研究している。最近は、歴史学の方法論としてのグローバル・ヒストリーにも注目。グローバル・ヒストリーを扱う『世界史論』は前期教養課程の人気授業の一つだ。

 

 学生時代は早稲田大学政治経済学部で江戸時代の海外貿易を研究。休業期間には「研究対象とする場所に実際に行った方がいい」と思い、九州各地をたびたび訪れた。その中で長崎の人々はおっとりとしていると感じるなど、次第に長崎の風土が分かるようになった。大学図書館の書庫に入るのが好きで「休業期間に、書庫で洋書や変わった本を探すことに夢中でした」と笑う。宝探しのような気分だったそう。本を夢中で読み込む研究姿勢の源流がうかがえる。

 

 修士課程修了後は近世東洋史で有名なオランダのライデン大学に留学。国立公文書館にあるオランダ東インド会社の史料を直接閲覧できる環境は、島田准教授にとって魅力的だった。留学時期はオランダ東インド会社設立400周年に当たり、そのプロジェクトのため留学していた多くのアジア人と交流。「今母国の大学で教えている彼らとのつながりは、私にとって大きな存在です」

 

 当初は日本経済史を研究対象としていたものの、次第に輸出品の行き先、輸出先の事情などに興味が広がり、東南アジアやインドの魅力に取りつかれていった島田准教授。日本と似ているようで違う世界を魅力的に感じるようになったという。アジア貿易に関するオランダ語の史料は手付かずのものも多く、研究の可能性がある分野だと思ったそうだ。

 

マレーシアのムラカの漢人街

 

 多くの史料を読むうちに何かつながりが見えたときや、面白いことが言える発見をしたときに研究の喜びを感じるという。一方で、分かったことを人に伝えるために、論理を組み立てながらの執筆作業が大変だそう。特に、5年間の留学中に英語で執筆した博士論文で苦労した。「でも自分の成果が人に伝わるとやりがいがありますね」。今後はグローバル・ヒストリー的視点からオランダ東インド会社を捉えた、これまでの研究成果についての本を書きたいという。学術書だけでなく、一般向けの本も執筆する予定だ。

 

 現在島田准教授の研究室には10人前後の学部生と数人の院生が所属しており、それぞれの興味に沿って研究をしている。最近は院生だけでなく学部生の留学が増えたそうだ。留学中の院生にはインターネットを通じた論文執筆指導もしている。研究者を目指す学生は3分の1ほど。着任8年目の島田准教授は自分の研究室に所属していた学生と、共同研究をするのが夢だそう。残りは官公庁や民間企業に就職する。就職先は幅広く、過去には法科大学院に進学し、弁護士になった人もいたという。

 

インドのコチ

 

 歴史研究を志す学生には「面白い、楽しいという気持ち」が研究を続けていくために必要だと伝える。長い時間を要する研究でも、努力しただけの成果は返ってくる、とエールを送る。「10年も研究すればたいていその分野の世界一になれます」。思ってもいなかったようなことを発見することもあるため、研究過程で生じる副産物を見逃さないことが大事だという。文学部を志望しない学生に対しても「あらゆる学問において、現在の社会は歴史が積み重なってできているものであり、歴史は未来を創り出すものであるという視点を常に持っておいてほしい」と語った。

(上田怜)


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火ようミュージアム 恐竜博2019 The Dinosaur Expo 2019

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デイノケイルス全身復元骨格 ©Institute of Paleontology and Geology of Mongolian Academy of Sciences

 

最新の「太古のロマン」を体感

 

 上野の国立科学博物館で開催されている「恐竜博2019」。会場に足を踏み入れると、白亜紀に生息した小型の肉食恐竜・デイノニクスの足の化石が、ライトに照らされ目に飛び込む。鋭い足の爪で獲物を押さえ付ける様子がありありと浮かび、心は一気に太古の昔へ連れていかれる。

 

 本展の目玉展示の一つは「恐ろしい手」を意味する大型恐竜・デイノケイルスだ。近年その全容が明らかとなり、全身復元骨格を本展で世界初公開する。頭骨、脊椎骨、足にそれぞれ異なる恐竜の特徴を併せ持ったこの恐竜は、展示パネルでは「へんてこな恐竜」と形容されている。しかしその復元骨格は手の爪だけでも人間の顔ほどの大きさがあろうかというスケール感。子供も大人も夢中になってシャッターを切る中、記者も「恐ろしい手」の在りし日の姿を想像した。

 

 もう一つ見逃せないのが、むかわ竜。03年に北海道勇払郡むかわ町で発見されたこの化石は、当初地元の博物館の倉庫に放置されていた。しかし後にその学術的価値が認識され、さらなる発掘・調査が進んだという異色の経歴の持ち主。全長8メートルを超える全身の骨格がほぼ完全に残された貴重な存在だ。このたび新属新種であることが認定され「カムイサウルス・ジャポニクス」という学名が決定した。記者がお目にかかるのは17年のむかわ町での公開以来2度目だが、当時よりも化石のクリーニングが進み、復元骨格を構成する骨の数が増えたため、より精密な姿でお披露目されている。場内のミニシアターでは、むかわ竜の生活の様子を再現したハイビジョン動画も鑑賞できる。

 

 隕石の落下で恐竜など生物の大量絶滅が起こった、地質年代上の中生代と新生代の境を表すK/Pg境界に見立てたトンネルも見どころの一つ。トンネルをくぐると、境界前後の生物の化石標本などが展示され、その後現代に至るまでの生物の盛衰が視覚的に分かりやすく展示されている。恐竜自体の迫力を体感するだけでなく、地球の生命の営み、そして彼らが現在の生物たちと少なからずつながっていることに感動を覚える。

 

 会場内には恐竜研究に貢献した人物たちの業績を紹介するパネルや、恐竜に対するイメージ・常識を覆す契機となった化石の展示・説明も設置。読むことで得られる情報の豊富さも魅力の一つだ。恐竜を知り尽くせる本展覧会に、ぜひ足を運んでほしい。

【柴】

 


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【研究室散歩】@高分子ゲル 吉田亮教授 研究の根本は「美」

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研究で芸術家のように自己表現

 

吉田 亮(よしだ りょう)教授(工学系研究科)93年早稲田大学大学院博士課程修了。博士(工学)。東京女子医科大学医用工学研究施設(現・先端生命研)助教、工業技術院物質工学工業技術研究所(現・産総研)研究員、筑波大学講師などを経て、01年より現所属准教授、12年より現職。

 

 96年に「自励振動ゲル」を実現した吉田亮教授(工学系研究科)。「自励振動ゲル」は温度やpHなど外部環境の変化に応答する従来のゲルではない。生体の心筋のように自律的に拍動し、一定環境下で周期的な動きをする。このゲルにはBZ反応(化学振動反応)という周期的な反応経路が内蔵されている。BZ反応は生体内の代謝経路として知られるTCA回路の化学モデルであり「自励振動ゲル」が生体のような動きを実現しているのは、生体反応を手本に設計されたからだといえる。バイオ材料システム工学研究室(吉田・秋元研究室)では自励振動ゲルを利用した人工心筋の他、尺取り虫のように自ら歩くゲル、管の収縮が波として伝わることで管内の流体や物質が移動する人工腸、ゾル―ゲル振動する人工アメーバなど、新材料としてのゲルを幅広く扱う。

 

吉田・秋元研究室では、生体の機能を代替・模倣する材料やシステムを、高分子ゲルを使って人工的に設計することを試みている。図はその代表的な例。将来的に医療に貢献する新しい材料システムの創出を目指す(図は吉田教授提供)

 

 これまでのゲルにはさまざまな課題がある。その一つが酸性溶液中など限られた条件の下でしか反応が進行せず、ゲルがうまく機能しないことだ。しかし、少なくともゲルの内部だけが酸性であればいい。吉田教授は、ゲルの外部環境は生理条件でありながら、ゲルの内部環境を反応条件に保てるようなシステムを構築し、医療への貢献を目指す。

 

 現在は高分子ゲルの研究を行う吉田教授だが、学部生時代は透析やろ過の機能を持った人工臓器に使われる膜の研究をしていた。大学院生の時、共同研究生として派遣された東京女子医科大学の研究施設(現在の先端生命医科学研究所)で、体温上昇などの刺激に応答する高分子ゲルを用いた薬の送達システムに関する研究課題が与えられたことを契機に、ゲルに対する興味を持ち始めたという。その後、ゲルが硬い金属などとは異なり、内部と外部の間で物質やエネルギーのやり取りができることに目を付け、刺激応答性ゲルとは異なる、生体内で見られるような自律性を持った周期的なシステムの設計を試みるように。「学生時代は化学工学が専門だったので高分子ゲルを研究することになるとは思いもしませんでした」と吉田教授は話す。当時の研究室は自由に研究できる雰囲気があり、また現在も第一線で活躍している多くの人たちとの出会いがあったことが研究者を志す決め手となった。

 

 大学で研究をする上で苦労するのは、研究と学生の教育の両立。毎年学生が入れ替わる中で、教育を行いながら研究のレベルを保つのは大変だという。一方で毎年博士号取得者を輩出しており、その多くがアカデミックポジションで活躍している。「研究室に所属していた学生にとって自分が重要な役割を果たしたことに充実感を覚えます」

 

 吉田教授は「研究者が何を美しいと思うかという美学に、なぜその研究を行っているのかの根本があるように思います」と話す。例えば化学の分野では分子構造そのものが美しいのか、規則正しく分子を並べることが美しいのか、静(平衡状態)が美しいのか、動(時間的な変化)が美しいのか、というようにあらゆる美の対象があり、それぞれが研究テーマとなる。「研究者の誇りを感じる研究を見たとき芸術作品に触れたように感動します。研究を通して芸術家のように自己表現ができるところにやりがいを感じますね」

 

 研究室のメンバーは毎年15人程度でコミュニケーションが取れた良い雰囲気だという。メンバーの中には吉田・秋元研究室に配属されるまで全く違う分野を専門としていた学生も。進路は多岐に渡るが、化学系の企業への就職が多い。

 

 今後も細胞と類似する物性を持つゲルを利用し、細胞と同等の機能を持つ材料を作りたいという思いがあり、将来的には人工生命体を作る研究がしたいという。「大学の研究者である以上、企業が行うような製品化とは違う形で、社会に貢献するような研究ができたらいいですね」

 

 これから研究を志す学生には「オリジナルな仕事」をしてほしいと話す。先人の研究を追従するのではなく、概念を根本から確立しようとする姿勢が、研究者として独立し研究組織を持ったときに生きてくるという。「何が独創的で先駆的なのかを見分ける目を養ってほしいです(鏡有沙)


この記事は2019年9月24日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を公開しています。

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サークルペロリ UTSummer
キャンパスガイ 星合佑亮さん(文Ⅱ・2年)

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サークルペロリ ➡UTSummer

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中高生に対話の場を

 

 UTSummerは、年に1度、中高生を対象に3泊4日のサマーキャンプを開催する団体。「アットホーム」と「非日常」が共存する檜原村のコテージで、参加者は体験活動・ワークショップ・グループ対話を通し、自己分析や他者理解を進める。1日だとお互い踏み込めず、長過ぎても本音で話せない。「行きずりの4日間がちょうどいい」と創設者の塚原遊尋さん(養・3年)は語る。

 

 塚原さんは高校時代、自分を「作っている感じ」がして、楽しいが自分の居場所はここではないという違和感・閉塞感を抱いていた。昔の自分のような高校生が「キャラを演じる」ことを気にせず話せる場をつくりたいと、17年にUTSummerを立ち上げた。

 

 メインプログラムのグループ対話では、大学生2人と中高生5人でグループになり「音楽をなぜ聴くのか」などのテーマに沿って自由に発言し合う。誰もお互いを否定せず、テーマから離れた発言をしても構わない。大学生の役割は「補助線を引く」こと。参加者の発言を踏まえて新たな視点を加えたり、話を掘り下げる方向を決めたりする。ただしこの時間はあくまで練習。運営側が考える「本番」は自由時間だ。対話を楽しいと思ってもらい、自由時間に自然発生的に対話が始まるのが理想だそう。

 

意見の違いを認め自由に語り合う(写真はUTSummer提供)

 

 対話の目的である自己分析と他者理解はともに、学校でのキャラに縛られた人間関係の中ではなかなかできない。キャンプでの対話を、自分を見つめ開き直る場、自分と他人との違いに気付き人間関係を捉え直す場にしてほしいという。

 

 何よりうれしいのは人として彼らを知ったり、今までやってきたものが形になったりすること。アンケートを通し、自分たちの思いが届いたと知るのも感慨深いそう。この4日間で参加者の問題は必ずしも解決しないため無力感を抱くが「自分と向き合ってくれた人がいる」と思ってもらうことで「何かしら彼らの力になれたらうれしいです」。

 

 一方で難しいのは安全面。学生なので一層信用が問われる。教師1人に引率を頼み、広報では高校に出向き説明することも。ホームページに当日日程を載せ、安全マニュアルも作成。後援団体の存在も、信頼の確保を後押ししている。また、大学生になったことで忘れてしまった感覚を思い出すことも大変だという。しかし「中高生が自分の悩んでいる問題を言語化し向き合うしんどさを僕らは知っているので、力になりたいです」と語る。

 

 たった4日間のために全力を注ぐ。何度も何度も語り合い、より良いものを目指し続ける。決して現状に満足せず歩み続ける彼らには「妥協しない」という言葉がよく似合う。

(西森優)

部員約24人。


この記事は2019年9月24日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を公開しています。

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世界最高水準の教育にふさわしい制度を 非常勤講師の「働き方改革」【東大の非常勤講師㊤】

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 今年度から、東大で勤務する非常勤講師が無期雇用への転換を申し込める通算勤続期間が、10年から5年に変更された。2018年9月1日から業務請負契約が雇用契約に変化するなど、東大の非常勤講師に対する待遇は移り変わっている。連載「東大の非常勤講師」の前編に当たる今回は、制度変更の理由や意図について、東大内の人事労務を担当する里見朋香理事に話を聞いた。

(取材・山中亮人)

 

 

 18年9月から東大は非常勤講師と雇用契約を締結することとなったが、それまでは業務請負契約を締結していた。業務請負契約では労働基準法などの労働関係法令は適用されないため、労働者災害補償保険なども適用されない。里見理事は業務請負契約からの転換については「非常勤講師の労働者性に配慮した」と説明する。13年に改正された労働契約法で、通算5年(注1)を超える有期労働契約で働く労働者に関しては、無期契約へ転換できることが定められていた。東大は18年秋に施行した就業規則において、非常勤講師については教員任期法による特例対象者として、無期転換申込権発生までの通算期間を10年としていた。

 

 今年1月25日、東京大学教職員組合と首都圏大学非常勤講師組合は厚生労働省で記者会見を実施。東大が19年度から無期雇用転換の申し込みが認められる通算期間を10年から5年に変更することを発表した。東大が昨秋の規定を撤回したと見ることもできる。

 

 里見理事は今回の変更について「東大における講義または実験の指導等に従事する非常勤講師は、常勤教員とともに質の高い教育内容の提供が期待され、東大のビジョンを実現する上で重要な構成員。世界最高水準の教育機能を維持する上でふさわしい制度設計であり、5年を超えて継続して雇用している非常勤講師の無期雇用への転換は妥当」と見ている。非常勤講師の雇用期間については、一の会計年度を限度としてセメスター等の授業実施期間に応じた期間とすることとしている。

 

 教員任期法により任期を付して雇用された常勤教員については、通算して10年を超える場合に無期転換申込権が発生する。里見理事は「非常勤講師には長期的な参画を通じて教育研究成果を求められる常勤教員とは異なる性質が認められる」と説明する。現在、無期雇用転換を申し込む権利を持つ非常勤講師は100人程度。無期転換申込権の発生した非常勤講師に対しては「無期雇用転換申出書」を交付し、契約更新ごとに本人の意思確認を行っている。申し込みは通年で受け付けている。

 

 里見理事によると今年度4月から5年での無期転換を実施したことを受けて改めて非常勤講師に関する新制度の導入については「特に考えていない」という。しかし「将来を見据えて東大にとって必要な非常勤講師の雇用の安定させつつ教育の質を向上させることは、経営改革として大変重要。人事マネジメントの機能向上を促進し、東大が将来にわたり持続可能な世界最高水準の教育機能を支える組織体制の強化を図る」という。

 

(注1)「大学の教員等の任期に関する法律(教員任期法)」と「研究開発力強化法(現在は科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律)」に定められる特例対象者は10年。

 

【東大の非常勤講師㊦】に続く

待遇改善の道半ば 非常勤講師雇用今年から制度変更 常勤との格差課題【東大の非常勤講師㊦】


この記事は2019年9月17日号から転載したものです。本紙では他にもオリジナルの記事を公開しています。

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