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【東大受験生応援連載】第二外国語を決めよう!「TLP」で世界に通用する言語力を

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 3月10日(金)の東大の合格発表後、11日(土)から15日(水)の間に新入生は入学手続きを行います。その際に書類へ記入した第二外国語で、所属するクラスが決まります。第二外国語の選択が学生生活を大きく左右する要因になるといっても過言ではありません。東大新聞オンラインでは第二外国語決定に役立つ情報をお伝えします。今回は、選抜された少人数制の授業で高度な第二外国語の能力を身に付けることを目指すTLP(トライリンガル・プログラム)について紹介します。


 2013年度から始まり今年で5年目を迎えるTLP。高度な英語力に加え、もう一つの外国語の運用能力を集中的に鍛えていくために設けられた制度です。

 

 TLPを入学時から履修できる条件は東大の2次試験外国語科目の全ての設問で「英語」を選択し、なおかつその成績が上位10%程度であること。参加するにはかなりの狭き門を通り抜ける必要があります。当初は中国語のみでの開講でしたが、16年度からはドイツ語、フランス語、ロシア語でも開講されています。長期休暇中に実施される各国への短期研修制度なども整備されつつあり、TLPはますます充実しつつあるといえるでしょう。

 

1年間履修して

 入試で英語の成績の基準を突破し、1年の前期に当たるSセメスターからTLPに参加したAさん(文Ⅱ・1年)は、通常は1年生の間に終わる第二外国語の必修授業が、2年生まで続くことを魅力の一つだと話してくれました。意識の上でプラスの面が大きかったというAさん。「TLPを受ける周りの優秀な人たちから刺激を受けていました。また、TLPではないクラスの人に負けたくないという気持ちから、勉強のモチベーションが生まれました」

 

途中参加も可能

 参加者が限られているために一見閉鎖的に思われるTLPは、実は履修者が固定されているわけではありません。授業意欲や毎学期の期末試験の成績に応じて、メンバーの入れ替えが行われるのです。1年の後期に当たるAセメスターからTLPに途中参加したBさん(文Ⅰ・1年)は「TLPに参加したいという意欲をSセメスターの勉強のモチベーションにしていました」。ロシア語選択のBさんは、非TLPとTLPのそれぞれの授業について「やることが大きく変わるわけではありません」と話してくれた一方、ロシア語TLPクラスは約15人という少人数のため、授業内外で先生とコミュニケーションを取りやすく「先生と個人的な関係を築けるのが大きいです」。

 

 第二外国語の勉強に意欲がある学生には、TLPは大きなプラスになるでしょう。第二外国語を真剣に勉強したいという場合にはぜひ履修することをお勧めします。仮に入試での英語の成績が芳しくなく、Sセメスターから参加できなかったとしても、Aセメスター以降からの編入を見越して勉強するのもいいでしょう。


 第二外国語は、数年来の勉強の蓄積で実力に差が出てしまう英語とは違い、スタート地点は誰もが同じ。今回が最終回となる「第二外国語を決めよう!」の連載を参考にして、悔いのないよう第二外国語を選択してもらえるとうれしいです。第二外国語の勉強を通じて見ることができる、大学での知の世界を楽しんでください!


【東大受験生応援連載】

2次試験の次は入学準備を 東大生協が入学準備説明会を開催

合格後のスケジュール 計画的に入学準備を進めよう

第二外国語を決めよう!履修者から見た中国語の姿

第二外国語を決めよう!履修者から見たイタリア語の姿

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第二外国語を決めよう!履修者から見た韓国朝鮮語の姿

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入学直後に東大を飛び出す「FLY Program」とは

【東大受験生応援連載】第二外国語を決めよう!「TLP」で世界に通用する言語力を東大新聞オンラインで公開された投稿です。


ヤフー!は東大女子に何を見せたい? オフィスツアーレポ

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 先日に開催された、弊社主催のプログラミングコンテスト「東大ガールズハッカソン」に関わった東大女子に向けて、協賛の一つであったヤフー株式会社から「オフィスツアーにご招待します」という招待状が届いた。

 

 ヤフー株式会社のオフィスといえば、去年の十月に移転したばかりであり、社外の人が自由に利用することのできるコワーキングスペースを備えていることなどで話題になっていた。筆者は男子であったが、企業を見る際の女子の目線や、また女子に限定したツアーをヤフーがどのように組み立てるのかに強く興味を抱いたので、取材させてもらうことにした。新オフィスで働く人々の声やその設計の意図などは検索すればいくらでも出てくるので、本記事ではツアーを通して、見て聞いて感じたことをなるべく率直に記すことを心がけようと思う。

(文・写真:千代田修平)

 

 十時半、永田町駅から直結の東京ガーデンテラス内にあるオフィスに到着する。十八階の受付ロビーにいる「けんさくとえんじん」というキャラクター前で集合。

 

えんじんは猿人。けんさくは、これは一体……?

 

 まずはお昼まで社員による「キャリアトーク」が行われるということで、会議室に案内された。「キャリアトーク」という言葉に既に就活めいた空気を感じる。いったいどのようにして東大女子にヤフーをアピールしていくのだろうか? 続々と集まってくる女子たち。部屋に男子一人という状況に筆者は少しドギマギしていたが、女子の皆さんはいたってリラックスしているようだった。

 

華やかな会議室

 

 まずは自己紹介ということで、それぞれ名前と所属と、現在やっているアルバイトを答えていった。ガールズハッカソン参加者なだけあり工学部が若干多かったが、法学部や教育学部もおり、また学年はバラバラでバラエティに富んでいたように感じた。しかし、しているアルバイトは東大生らしく、塾のチューターや添削バイトといった教育系が目立った。

 

 そしてヤフー社員によるキャリアトークが始まる。一番手は大森さんという方で、「私の経歴と仕事について思うこと」と題したトークを行った。

 

社員も華やかな方が多かった印象だ

 

 大森さんは一度新卒でヤフーに入社した後、パートナーについてアメリカに移住した際に退職し、その後再びヤフーに入り直したという経歴の方だ。なぜヤフーなのか。大森さんは後半で就活について話した。強調していたのは「仕事における優先順位をはっきりさせよう」ということだった。大森さんは、給料などは二の次で、「とにかく楽しいと思える仕事ができればよい」という基準を持っていた。それに合致するのがヤフーだったとのことだ。ツアー参加者の女子たちのほとんどはまだ就活を始めておらず、きたるべき時に備えてのアドバイスを熱心に聞いていた。

 

 続いては総務省に勤めていたという今村さんの「霞が関とヤフーでのお仕事」と題したトーク。

 

 

 総務省での仕事とヤフーでの仕事の両方を紹介し、それぞれに共通することという切り口で比較を行った。共に。総務省ではテレワークを推進し、ヤフーでは「どこでもオフィス」やフレックスタイムの導入することによって、子供を持つ女性の活躍を支援している。ヤフーが取り組んでいる、月に五日間はオフィス外のどこでも業務を行えるという「どこでもオフィス」は面白い試みだ。

 

 他にも、人事部の吉竹さんによる「数値でみる女性活躍状況」や、Yahoo!ニュース担当の涌井さんによる、「公共性と社会的関心の二軸をもってニュースを配信している」という話、このトークでは唯一の男性となった塚本さんの「ヤフーにおけるデータとサイエンスを用いたビジネスの改善」についての話があった。

 

真剣に聞き入る参加者たち

 

 キャリアトークは全体を通して、企業説明会のような雰囲気のなかで企業説明会のような内容が話された印象だった。それで十分と考えているのかもしれないが、せっかくならもう一歩踏み込んだ話があればと思った。例えば女性の働き方についての話題は五人中三人が触れるなど比重が大きかったが、実際に育児の経験がなく、ましてや就活も行ったことがなく他の企業の水準もわからない学生にはどの話もピンとこなかったのではないかと思う。例えば「数値でみる女性活躍状況」において、2015年度の育児休業取得者数が227人であるという数字が出てきたが、これがどうすごいことなのか理解できた学生はあの場にはいなかったのではないだろうか? それよりも、育休の具体的な取得しやすさや、育休を取得したことでどう具体的に子育てや仕事が円滑になったのか、エピソードを交えた実体験を話してくれたほうがわかりやすかったように思う。(これは就活において、往々にして学生側に求められる態度だ。)

 

 また五人のトークテーマにも統一性が感じられず、なぜこの五人なのだろう?という疑念は終始拭えなかった。それぞれの話す内容はそれぞれの面白さがあったが、五人の話をこの場で聞く必然性は記者には感じられなかった。例えば五人を個別にOBOG訪問しても同じような効果が、あるいはより大きな効果が得られたかもしれない。せっかくこうした場を用意するのであれば、五人の話を通して、会社としてどのようなメッセージを学生に伝えたいのかを、もっと明示的に示したほうが良かったと思う。

 

 さらに、「ガールズハッカソンに参加した東大女子」向けに最適化されたトークとも思えなかった。「女子」向けといった程度である。ターゲットが絞り切れていないために、参加者にも深く刺さったようには思えなかった。この記事の末尾に参加者からの感想を掲載しているのでそちらを参照していただきたい。少々優等生的な回答になってしまってはないだろうか。

 

 少しの休憩を挟んでから、午後はメインとなるオフィスツアーを行った。ここからは写真を中心に様子を伝えていこうと思う。

 

ツアー前にこのオフィスのコンセプトが語られる。特に印象に残ったのはハッカブル(未完成)というもの。オフィスのところどころに建築途中の雰囲気を残すことで遊びを作り、自由なアイデアを生み出そうという試みだそう

 

オフィスはどこもカラフルで遊び心を感じさせ、こうして写真を撮っている姿はどこかのテーマパークに来たのかと錯覚するほどだ

 

社員の方に案内していただく。ところでヤフーは私服勤務である。よく考えればベンチャー企業であるから自然なことだが、なぜか筆者にはヤフーがベンチャーであるという意識が薄かったので少し驚いた。それはオフィスの雰囲気についても同様だ

 

ペッパーくんもいた

 

そして食堂に到着。この写真ではわかりにくいが、奥のテーブルで仕事をしている人が何人かいる。オフィス全体にフリーアドレス制を導入したために、食堂を含めたあらゆるエリアで仕事を行うことができるようになっているのだ

 

食堂ではグラム量り売りのビュッフェのほか、セットランチもあった。筆者はAセットランチを選択。社員食堂とは思えないほど洒落た料理が出てきた。そして美味しい

 

ランチの間も写真の方と熱心に話し込む参加者たち。筆者のいたテーブルでは就活に関する話題と育児をしながら働くことについての話題が多かった

 

最後に参加者全員で記念写真をパチリ。こうしてオフィスツアーは終わった

 

 参加者の一人は、オフィスの印象を以下のように語っていた。

 

 オフィスツアーではヤフーの開放的な社風を一番に感じました。多くの社員さんの話を聞いた「キャリアトーク」ではさまざまな分野を手掛けるヤフーならではの自由なキャリア選択や、結婚し子育てを続けながら管理職として働く女性社員の方の話を聞くことができ、自由な働き方が可能な社風に魅力を感じました。オフィス内も壁が少なく、フリーアドレスで席が流動的になっているなど、開放的な空間でした。場所ごとにテーマが設定された遊び心のある空間で、オフィス全体がテーマパークのような素敵な雰囲気でした。

 

 全体を通した筆者の感想は、「ヤフーはベンチャー企業の要素と大企業の要素の良いとこどりを試みているな」というものだ。未完成さや偶然の要素といった遊びの部分を作ることでイノベーションを生む仕組みを構築する一方、「働き方改革」に見られるような多様なライフスタイルを支援する制度を充実させ、そのイノベーションの土壌を守ろうとしているのを感じた。キャリアトークではもう少し丁寧に話を聞きたかったが、それは興味を持った人が個別にOBOG訪問などを行えばいいのかもしれないと思いなおした。

 

 これから先、これらの施策の効果がどう出るのかは興味深いところだ。

 

追記:キャリアトークのメンバー選出の意図について「4人のうち3人が東大卒のOB、OGであることと、ニュースはヤフー!の根幹であり、学生から聞いてみたいとリクエストがあったから」との回答が記事執筆後に得られた。

ヤフー!は東大女子に何を見せたい? オフィスツアーレポ東大新聞オンラインで公開された投稿です。

【2017年2月アクセスランキング】東大女子の座談会特集、入試関連記事に注目

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「東大受験生応援連載」のタイトル画像(左)/東大ガールズハッカソン参加者の座談会

 

 東大新聞オンラインで2月に公開した記事の2月中のアクセス数を調べたところ、1位は2016年開催の「東大ガールズハッカソン」に参加した女子学生と社会人の座談会を特集した記事だった。座談会では、東大内の女子率が2割弱にとどまる中で学生が抱える悩みや、将来の働き方などが話題に。東大女子の本音が垣間見えた座談会に注目が集まった。

 

 2位には、日本語ラップ界を牽引(けんいん)するダースレイダーさんのインタビュー記事がランクイン。東大を中退した経歴を持つダースレイダーさんに、ラップとの出会いや自身の学生生活について語ってもらった。音楽活動での挫折や脳梗塞で倒れた過去などを振り返る中で、違う道を模索していくことの大切さを強調。「困難迎えれば誰でもヒップホップできる」という見出しに表されるダースレイダーさんの生き方や考え方が話題を呼んだ。

 

 5位にランクインしたのは、2月8日に最終合格者が発表された東大の17年度推薦入試の結果を伝えるニュースだった。今回の推薦入試では、全学部・学科合計で100人程度の募集に対し前回より6人少ない71人が合格した。東大の担当者は「一般入試より女子学生、地方学生の比率が高く、多様性を確保できた」と評価。一方、高校との連携の必要性など今後の課題にも言及した。アクセス数の多さから、2年目を迎えた推薦入試に高い関心が寄せられていると分かる。

 

 7位には、硬式野球部の宮台康平投手(法・3年)をデータで読み解く寄稿記事がランクイン。打者との対戦で三振を取った割合である「K%」といった指標を用い、過去のドラフト候補投手と比較しつつ宮台投手の現状を分析した。昨季はけがに苦しんだ宮台投手が今季どのような投球を見せてくれるのか、期待が高まる記事だった。

 

 その他には【東大受験生応援連載】が10位以内に複数ランクインした。2月25、26日に行われた東大の2次試験前には、文系と理系で異なる試験会場の注意点や、ミス・ミスター東大による応援メッセージなどを公開。受験生など受験への関心が高い読者に多く読まれたようだ。

 

【2017年2月アクセスランキング】

1       東大女子の座談会 ―私たちの悩みと理想の働き方―

2       東大中退ラッパーを直撃 「困難迎えれば誰でもヒップホップできる」

3       【東大受験生応援連載】16年度ミス・ミスター東大から受験生へ送る応援メッセージ

4       【東大受験生応援連載】2次試験会場、ここに気を付けよう!~文系受験生編~

5       推薦入試、前回比6減の71人合格 「高校との連携途上」

6       【東大受験生応援連載】2次試験会場、ここに気を付けよう!~理系受験生編~

7       データで読み解く東大のドラフト候補・宮台の現在地

8       【東大受験生応援連載】現役東大生が語る!東大合格の秘訣とは

9       【東大受験生応援連載】現役東大生が語る!入試当日の後悔とは

10      【東大受験生応援連載】2次試験の次は入学準備を 東大生協が入学準備説明会を開催

 

※当該期間に公開した記事のみを集計

 

過去のランキング

【2017年1月アクセスランキング】1位はブラックラボ検証 受験関連記事も人気

【2016年アクセスランキング】東大新聞オンラインで今年1番読まれた記事は……?

【2016年11月アクセスランキング】トップは図書館閉鎖問題 アメフト、制作展の記事が続く

【2016年10月アクセスランキング】ボカロ講義録が1位に 2位は新設の研究者支援制度

【2016年9月アクセスランキング】1位は進学選択 七大戦、秋のスポーツにも注目

【2016年8月アクセスランキング】ジェンダー企画、リオ五輪寄稿企画が上位に

【2017年2月アクセスランキング】東大女子の座談会特集、入試関連記事に注目東大新聞オンラインで公開された投稿です。

【こんなところに東大が】チリ・アタカマ砂漠 世界最高水準の望遠鏡設置へ

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 南米チリ。その北部には「世界一乾燥した場所」として知られるアタカマ砂漠がある。そこに東大が天文台を建設する計画が進んでいることは意外にも知られていない。この場所は、東大の入試問題の題材にもなった。

 

「世界で一番乾燥」するアタカマ砂漠。ここの高度約5600メートルの地点に望遠鏡が設置される

 

 アタカマ砂漠に東大が天文台を建設する計画はTAO計画と呼ばれ、現在進行中だ。世界最高となる標高約5600メートルに望遠鏡を設置するこの計画。今後設置される世界最高水準の口径6.5メートル望遠鏡に先駆け、2009年には既に口径1メートルの望遠鏡が設置された。

 

 東大入試に登場したのは15年度の英語大問3(A)。長文リスニング問題の題材として紹介された。アタカマ砂漠では世界各国が天体観測施設を建設しており、取り上げられたのも欧州諸国が共同で建設する口径39メートルの望遠鏡。「アタカマ砂漠の空気がとてもきれいで、乾燥している」という環境的利点や「天文学者にとっては、南半球から見える星空が興味深い」という学問的利点が紹介された。

 

 いずれにせよ、まさに「地球の裏側」であるチリに東大の施設が建設されているとは。初めて知った時は驚きを隠せなかった。なおTAO計画については、4月11日発行の新入生歓迎号Ⅰで詳しく扱う予定だ。


この記事は、2017年3月21日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

 

 

ニュース:交付金削減で増える非常勤 基礎科学研究の現状は
ニュース:駒場キャンプラなど解体か 自治会「代替施設の検討を」
ニュース:代替措置詳細を公表 総合図書館 十分な学習席確保
ニュース:日本学術会議声明案 軍事研究禁止を継承 4月に採決予定
ニュース:新コーチに元日本代表 ア式蹴球 社会人クラブと連携
ニュース:合奏のテンポ加速に体内メカニズムが影響
ニュース:駒場に新ジム開設 スポーツ先端科学研究拠点 研究成果を還元
企画:ゼミで迫る障害者問題 障害者は生きにくい 東大生だって生きにくい
企画:視聴者に親近感抱かせる 「東大生テレビ」人気の秘密
東大新聞オンラインアクセアスランキング:2017年2月
研究室散歩:応用生命化学
こんなところに東大が:チリ・アタカマ砂漠 世界最高水準の望遠鏡設置
東大CINEMA:ラビング 愛という名前のふたり
キャンパスガール:田中茉由子さん(文Ⅰ・1年)

※新聞の購読については、こちらのページへどうぞ。

【こんなところに東大が】チリ・アタカマ砂漠 世界最高水準の望遠鏡設置へ東大新聞オンラインで公開された投稿です。

訪問してもわからない?研究室のオモテウラ【調査報道:ブラックラボとは何か③】

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 ブラックラボは果たして実在するのか、それとも都市伝説じみた虚構なのか?この連載を通して調査し、研究室におけるブラックさとは何か、前回前々回に引き続き考察する。今回は現役の理系学生に話を聞いた。

 

 文系学生と比べ、院への進学率が圧倒的に高い理系学生。研究職に就く条件として修士号または博士号を掲げる民間企業も多く、専門的な研究ができるのは大学院からと考えられているようだ。東大の理系学生の約7割、国家資格取得を目指す6年制の医学部医学科、農学部獣医学科、薬学部薬学科を除くと8割近くが大学院に進学する。学部で配属された研究室に引き続き所属するものもいれば、他の研究室や他学部、他大へと移る学生もいる。

 2015年(第65回)学生生活実態調査の結果報告書より

 

 平成28年度大学院学生の入学状況によると、東京大学大学院の入学者は3200人程度で、その半数近くを占めるのは他大からの外部進学者だ。数ある大学院の中で東大の大学院を志望した理由は「自分の志望した研究科(専攻分野)があったから「スタッフ・環境・設備が優れているから」「将来の進路を考えて」などが挙げられる。

2015年(第65回)学生生活実態調査の結果報告書より

 

 他大の研究室の情報は、内部に親しい人がいない限りなかなか入ってくることはない。そのため事前に研究室のHPを見比べ、研究科主催の説明会に行くなどして候補を絞り、最終的には研究室訪問で得た感触で行きたい研究室を決めるというのがよくあるパターンだ。

 

 今回話をきいたCさんも外部進学者の1人。Cさんは都内の私立大学から東大の院へ進学した。元々やりたい研究テーマがあり、院試を受ける前は複数の研究室を訪問した。最終的には「一番自分の興味にあっていて、教授も魅力的だ」と感じた東大のとある研究室を第一志望に据え、見事合格を果たした。「合格して第一志望の研究室に行けることがわかった時は本当にうれしかったです。研究も就活もこの調子で上手くいくと思っていました」と語る。

 

研究室訪問とは違った先生の素顔

 

 しかし入学してひと月もせずに、研究室を訪問した時とは違う雰囲気を感じるようになった。

 

 初めに小さな違和感を持ったのは入学して3日目、Cさんの同期が数分遅刻して登校した時だったという。Cさんが配属された当初、研究室のコアタイムは9時半~17時と定められていたが、先輩が数分遅刻してきたところ「時間通りに来ないとはどういうことだ、過ぎてるぞ!」と声を荒げきつく叱りつけた。その日がたまたま不運だったわけではなく、それ以来研究室の空気が張り詰めていると常に感じるようになった。「教授は学生室に誰がいて誰がいないかを常に見ていました。長時間いない人がいるとどこへ行ったかを周りの学生に聞いていて、監視されているような気がしました。研究室を訪問した際は先生はとても物腰が柔らかくて、理路整然と話すかっこいい先生だと感じただけにギャップに驚きました」と語る。

 

 また、コアタイムである17時を過ぎれば帰っても構わないという説明を受けたものの、17時過ぎに研究を終え帰り際に「失礼します」と声をかけると不機嫌そうに一瞥するだけで返事はない。20時頃までいないと挨拶すらしてもらえないのだと気づいて以降、コアタイムを過ぎても帰りづらく、研究室で過ごす時間は徐々に伸びていった。

 

休日の連続メール

 

 こうして平日は研究室に出ずっぱりになったが、土日はコアタイムもなく登校する必要はない。休日は研究を離れ息抜きがしたい、そう感じていたが研究の進捗や共同研究に関するメールは休日もお構いなしに届く。

 「メールが来るだけならいいのですが、返信をしないとせっつきのメールが何度も届き、挙句の果てに高圧的な電話がかかってきました。教授の言い分としては『土日も平日も学生である。嫌なら籍を外せばいい』というものでした」と語った。

 

SNSでの監視

 

 連投はメールだけではない。facebook上で研究室のグループページを作りメンバーとして半強制的に追加させられた。

 「教授に見られていると思うと、写真をあげたり文章を投稿したりということはできなくなりました。さぼっていると思われないように、ログインは必要最低限にとどめました」

 

就職 < 博士課程

 

 大学院修了後は民間企業での就職を考えていたCさん。就活はスムーズに進めることができたのだろうか?

 「先輩は大変そうでした。面接がある日も、朝に研究室によって荷物を置きPCを起動させ、さも研究室内にいるかのように装ってから面接会場へと出かけていきました」

 

――就活をすると伝えることはできなかったのですか?

「『博士課程にいかない人間は(研究しても)無駄だ』というようなことを言う先生でしたので、就活すると堂々と伝えることができませんでした」

 

――Cさんの時も就活しづらかったのでしょうか?

 「先輩方ほどは厳しくはありませんでした。別の教授から何か言われたからかもしれません。私は研究の内容に関して突っ込まれないように、常に進捗を出すようにしていました。ただ何かにつけて博士を勧められたのには閉口しました」

 研究室を選ぶ際、研究室訪問だけでは分からないことはある。研究室を選ぶ際には教員だけではなく、その研究室の先輩にも話を聞いたほうがいいだろう。また、この先「就活」をするのか、「研究者」になりたいのか研究室訪問時に伝えることも重要かもしれない。

 

訪問してもわからない?研究室のオモテウラ【調査報道:ブラックラボとは何か③】東大新聞オンラインで公開された投稿です。

【東大新聞お試し】地域の顔:知るカフェ 東京大学前店 大学外の交流の場

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 この記事は、2016年11月1日号からの転載です。東京大学新聞の紙面を限定公開 お試し読みのご案内の一環で4月28日まで限定公開しています。


 学生なら飲み物が1杯無料で、Wi-Fiやコンセントも自由に利用可能。こんなカフェが本郷キャンパス赤門前にあることを知っているだろうか。全国展開している学生限定の無料カフェ「知るカフェ」の東京大学前店で店長を務める、相馬快星さん(文・3年)に、その経営の裏側を聞いた。

 

知るカフェ東京大学前店店長の相馬快星さん

 

 午前11時の開店とともに次々と東大生らが来店。運ばれたコーヒーは無料とは思えない香ばしさで、コースターには「ご来店ありがとうございます」と手書きの文字を添える気遣いも。「コーヒー豆にはこだわり、その場でひいているんです」と相馬さんは話す。

 

 至れり尽くせりの「知るカフェ」の運営資金は、スポンサー企業から提供されている。企業はカフェ内で社員と学生の交流会を開催し就活情報を届けることで、学生と企業が互いに利益を得る仕組みだ。運営するのは主に学生スタッフで、経営やインテリア選びのほか、スタッフの査定まで担っている。

 

 近隣の大学に通う学生スタッフが運営のアイデアを出すため、その店舗ならではの取り組みも多い。2015年にオープンした東京大学前店では、勉強のため来店する学生が多いことからカウンター席を増やし、店内は暗い茶色に統一して落ち着いた雰囲気に。東大生の特性を「話すより書いて伝えることが得意」と考え、自由にサマーインターンシップの情報を交換できる掲示板を置いたこともある。掲示板は一面就活情報で埋まり、大好評だったという。

 

落ち着いた雰囲気の店内(写真は相馬さん提供)

 

 東京大学前店の未来について「目指すビジョンは二つある」と相馬さん。一つは「お客さまにもスタッフにも愛される店」。経営の持続のためにはスタッフ自身が店を好きになることが大切だという。もう一つは「オフラインの双方向コミュニケーションの場となること」。現代はSNSの発達などによって対面でのやりとりが減っているが、このカフェでは学生同士や社会人との何気ない会話が実現する。「4年生と就活の話をしていると、隣の3年生が乗ってきて盛り上がることもある。自然に将来を考える機会を提供していければいいなと思います」

 

 キャンパス内では出会えない学生や社会人、新たな情報との偶然の出会いをもたらす「知るカフェ」。「空きコマは図書館にこもる」という人も、たまにはキャンパスを出て勉強してみてはどうだろうか。


営業時間 午前11時~午後9時(ラストオーダー午後8時半)
定休日 土日・祝日
電話 03-3830-7717
ウェブサイト 知るカフェ 東京大学前店

 

【東大新聞お試し】地域の顔:知るカフェ 東京大学前店 大学外の交流の場東大新聞オンラインで公開された投稿です。

【東大新聞お試し】生命科学研究で情報科学を活用 大規模データで生命を数理的に捉える①

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 この記事は、2016年9月20日号からの転載です。東京大学新聞の紙面を限定公開 お試し読みのご案内の一環で4月28日まで限定公開しています。

後半の記事:生命科学研究で情報科学を活用 大規模データで生命を数理的に捉える②


 ビッグデータ、スーパーコンピューター、人工知能。情報科学の分野で耳にする技術が生命科学研究に変革を起こしている。大規模データを用いた従来にない研究が可能になり、多くの新発見が生まれた。情報科学はどのように生命科学研究を変えているのだろうか。スーパーコンピューターを使って革新的な研究をしている宮野悟教授(医科学研究所)に話を聞いた。

 

(取材・古川夏輝)

 

宮野悟教授(医科学研究所)
79年九州大学大学院修士課程修了。理学博士。九州大学教授などを経て、96年より現職。

 

がんを大局的に理解

 

 従来のがん研究は特定の遺伝子に注目し、その役割を調べることが主流だった。その結果、がん形成を促進する「がん遺伝子」やがん形成を抑制する「がん抑制遺伝子」が数多く発見された。近年、「オミックスデータ」と呼ばれる、大規模な臨床データも得られるようになり、がんの診断法、予防法、そして治療法が急速に発達すると期待された。しかし、実際には既存の知識と臨床応用には大きな距離があることが判明。「がんはそれほど単純ではなかったのです」と宮野教授は語る。

 

 そこで宮野教授が提唱したのが「システムがん」。特定の遺伝子に集中するのではなく、がんをシステムとして捉え、より俯瞰(ふかん)的な理解を目指した学問領域だ。数理的手法とスーパーコンピューターの圧倒的な計算力を駆使し、がんの病態とオミックスデータの関係性を調べることでがんの理解を深めていく。

 

 その一例として、骨髄異形成症候群の研究がある。骨髄異形成症候群の患者は血液の成分を産生する骨髄に異常があるため、血液成分をうまく産生できない。最終的に血液のがん、すなわち白血病へと進行する。原因は不明で、治療法は骨髄移植しかないのが現状だ。しかし、体力的な問題から骨髄移植は一般に60歳以上の人には適応されない。「骨髄異形成症候群はお年寄りが多く罹患するにその一例として、骨髄異形成症候群の研究がある。骨髄異形成症候群の患者は血液の成分を産生する骨髄に異常があるため、血液成分をうまく産生できない。最終的に血液のがん、すなわち白血病へと進行する。原因は不明で、治療法は骨髄移植しかないのが現状だ。しかし、体力的な問題から骨髄移植は一般に60歳以上の人には適応されない。「骨髄異形成症候群はお年寄りが多く罹患するにもかかわらず、お年寄りは治療が難しいのです」

 

 骨髄異形成症候群の原因を特定するため、宮野教授は小川誠司教授(京都大学)と骨髄異形成症候群患者29人分のがん細胞を取り出し、遺伝子のうちタンパク質の情報を担っている部分の配列を全て調べた。数理的な手法を用いて特定の配列が変異を含むか含まないかを推定するプログラムを構築し、スーパーコンピューターに実装。29人分の遺伝子配列をスーパーコンピューターに読み込ませ、解析を行った。

 

スーパーコンピューターを使って骨髄異形成症候群の原因となる変異を突き止めた

 

 解析の結果、骨髄異形成症候群の患者で頻繁に見られる変異を268個同定。その中にはそれまでがんの遺伝子として知られていなかった遺伝子が四つあり、詳細に調べた結果、RNAスプライシングという生命現象に関わる遺伝子だと判明した。「RNAスプライシングの異常ががんの原因となり得るというのは世界で初めての発見でした」

 

 スーパーコンピューターと数理的な手法を組み合わせることで、「システムがん」はこれまでの研究手法では明らかにできなかった数多くの成果を生んだ。それでも、「がんの本質に迫るには多くの課題が見えてきました」と宮野教授。これらの課題を乗り越えるために、宮野教授は「システム癌(がん)新次元」を提唱した。

 

 「システム癌新次元」では「システムがん」に人工知能の知見を導入することで大量のデータから適切な解釈を得ようとする。遺伝子情報を読む技術が発達し、今や莫大な量の遺伝子データが蓄積されている。発表される論文の数も指数関数的に増えていて、生命科学系の論文データベースであるPubMedには2016年までに2600万件が登録されている。「データの量が膨大になり、文献情報も氾濫した現在、もはや人間の力ではデータを解釈することが難しくなっています」と宮野教授。

 

 宮野教授はIBM社が開発した人工知能、Watsonを用いて研究を行う。Watsonは自然言語処理により文献の情報を理解でき、機械学習により与えられた課題に対する最適解を導き出せる。遺伝子情報の解析に特化した「Watson for Genomics」には2000万件以上もの文献データ、1500万件以上の特許データ、そして遺伝子に関わる各種のデータベースが搭載されている。「Watson for Genomics」にがん細胞の遺伝子配列を渡すと、どんな遺伝子に変異が入っていて、どのような治療法が適切なのかを根拠となる文献情報とともに教えてくれる。

 

 医師の診断では大腸がんの患者には大腸がんに用いられる治療薬の中から適切な薬を選ぶが、「Watson for Genomics」は症状を基にした診断を行わないため、大腸がんの治療には使われていない治療薬を提案することもある。そのため、変異の情報と提案された薬を見ることで、原因が不明な病気についても新たな治療法が生まれる可能性がある。「人工知能の導入によって人知を超えた世界が見えてくると期待しています」

 

情報解析に人工知能

 

 「システム癌新次元」では倫理的な問題も扱っている。遺伝情報の測定が一般的になると、自分は将来高い確率でがんになるという「不都合な事実」を突き付けられる可能性がある。「最近では女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが高確率で乳がんを発症すると診断されて乳房を摘出したことが話題になりました。遺伝情報を誰もが知れる時代では誰もがこのような不都合な事実に出くわす可能性があるのです」。社会としてこうした事実にどのように対応していくのか、どのような法整備を進めていくのか、基礎研究と並行して議論をしている。

 

 スーパーコンピューターと人工知能を駆使することで、将来的にはがん患者一人一人に最適な治療法を提供する個別化医療が可能になるかもしれない。しかし、そのためには乗り越えるべき課題も多いと宮野教授は話す。「Watsonをもってしても診断や治療薬の選択ができない症例はあります」。大量のデータが得られたが、まだまだ基礎となる知識が足りていないという。法的な問題、倫理的な問題も乗り越える必要がある。現在の枠組みでは巨大化するデータベースを維持することができず、データベースを管理するための新たな枠組みを構築する必要もある。それでも、個別化医療に向けて着実に進歩している。「未来はとっくに始まっているのです」と宮野教授は語る。

 

スーパーコンピューターと人工知能を組み合わせれば最適な治療法が導ける可能性がある

 

 

【東大新聞お試し】生命科学研究で情報科学を活用 大規模データで生命を数理的に捉える①東大新聞オンラインで公開された投稿です。

【東大新聞お試し】生命科学研究で情報科学を活用 大規模データで生命を数理的に捉える②

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 この記事は、2016年9月20日号からの転載です。東京大学新聞の紙面を限定公開 お試し読みのご案内の一環で4月28日まで限定公開しています。

前半の記事:生命科学研究で情報科学を活用 大規模データで生命を数理的に捉える①


超高速で計算するコンピューター:スパコン

 

 スーパーコンピューターは超高速で計算を行うコンピューターを指す。日本で最も高性能なスーパーコンピューター「京」は1秒間に1京回計算をすることができ、コンピューターシミュレーションなど莫大な計算量を要する研究に用いられている。

 

 「京」は実際に計算や情報処理を行うCPUを8万個以上搭載し、緊密に連携させることで高い計算能力を有している。東大の白金台キャンパスには1秒間に400兆回以上の計算ができる「Shirokane3」が設置されており、遺伝子配列の処理など生命科学研究に用いられている。

 

医科学研究所にあるスーパーコンピューター、Shirokane3

 

遺伝情報などを網羅的に探索:オミックス

 

 オミックスとは、遺伝情報や遺伝子の発現、タンパク質などを網羅的に探索しようとする研究分野だ。その一つであるゲノミクスでは調べたい対象のDNA配列を全て読み、他と比較するなどして解析をする。

 

 オミックスの発達は測定技術の急速な革新に支えられている。ゲノミクスを例に挙げると、1人の人間が持つDNAは全部で31億塩基対に上り、2003年に人間のDNA配列が初めて解読されたヒトゲノム計画には13年の年月を必要とした。現在は3日ほどで読み取ることができる。また、ヒトゲノム計画はおよそ3000億円の費用を要したが、現在は十数万円でできる。ナノテクノロジーの知見を用いた新しい原理の測定器も開発が進んでおり、製品化されれば1時間以内、1万円以下で全遺伝情報を読み取れるといわれている。


唾液で体質を解析 「ジーンクエスト」

 

 オミックスデータを利用したサービスはすでに始まっている。「ジーンクエスト」は高橋祥子さんが大学院生の時に立ち上げた、日本発の大規模な遺伝子検査、解析サービスを行う企業だ。解析キットを購入して唾液を送付するだけで生活習慣病などの疾患リスクや体質に関わる情報を知ることができる。「生活習慣病などは生活習慣の改善によりリスクを下げることができます。適切な予防ができるからこそ、遺伝的にどれくらいリスクがあるかを知る価値があります」と高橋さんは語る。

 

高橋祥子さん(ジーンクエスト代表取締役)
15年農学生命科学研究科博士課程修了。博士(農学)。博士課程在学中の13年にジーンクエストを起業。

 

 人間の遺伝子は約30億の塩基対で成り立っているが、その99.9%は全員が共通して持っている。残りの違いの中でも、1000塩基に一つの割合で存在する一塩基多型(SNP)と呼ばれる部分は個人間で異なり、個体差の原因になっている。ジーンクエストでは唾液からDNAを抽出し、約30万カ所のSNPを調べ上げる。

 

 こうして得られたSNPのデータをゲノムワイド関連解析(GWAS解析)と呼ばれる研究で得られた知見と突き合わせることで、体質や疾患リスクなどの情報を知ることができる。GWAS解析とは特定の疾患の人とそうでない人を比較したときに、どの遺伝子が異なるかを統計的に調べる研究だ。GWAS解析の結果、お酒に弱い人は特定のSNSがAの場合が多い、といった相関関係が分かる。遺伝情報は人種の影響を強く受けるため、ジーンクエストでは日本人、アジア人を対象にしたGWAS解析を選定し、遺伝子解析の根拠としている。

 

遺伝子検査の流れ

 

 「GWAS解析の強みは仮説を必要としない点です」と高橋さん。生物学の研究では、これまでは特定の遺伝子に着目して仮説を立て、データを集めて検証するという流れで行っていた。GWAS解析では先に大規模なデータを集め、疾患と相関を見るため、特定の遺伝子に絞り込んだ仮説を設定する必要がない。「想定外の結果も多く、物事が明らかになるスピードが急激に上がっています」。ジーンクエストでは新しい研究成果が発表されると適宜情報をアップデートし、顧客が遺伝子検査を受けた後でも最新の情報を入手できるようにしている。

 

 今後遺伝子検査が普及し、誰もが自分の遺伝情報を知ることができるようになったらどうなるのか。高橋さんは「自分の体の状態が全て可視化されるようになります」と語る。遺伝情報に加えて遺伝子の発現具合やタンパク質の状態など他のオミックスデータを組み合わせることで、体の状態がより把握できるようになる。「何か調子が悪いけれど原因が分からないという状態も、オミックスデータを得ることで数値化することができるようになる可能性があります」

 

 こうして体の状態が可視化される結果、疾患の超早期発見が可能に。うつ病など、現在は医師の問診に依存している疾患も数値化が可能になり、より精度の高い診断ができるようになる。体の情報が全て分かると、病気の治療についても方針を立てやすい。「治療以外にも、どの運動をすべきか、睡眠はどれだけ取るべきか、どのような食事をすべきかなど、オミックスデータを活用することで多くのことについて方針が見えてくると思います」

 

 遺伝情報をどのように扱うかについては倫理的、法的な基盤が整っておらず、遺伝子情報の管理の仕方、遺伝子検査の結果精神的な負担を負った場合のケア体制、遺伝子差別の問題など議論すべき問題は多く残っている。それでも、遺伝子検査の普及は着実に進んでいる。誰もが自分の遺伝情報を知ることができ、生活に役立てられる。そんな世の中の到来はそう遠くないのかもしれない。

【東大新聞お試し】生命科学研究で情報科学を活用 大規模データで生命を数理的に捉える②東大新聞オンラインで公開された投稿です。


【サークルペロリ】丁友会 学生が東大工学部と社会を結ぶ

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 象牙の塔にこもり、研究室で黙々と実験にいそしむ印象が根強い理系の学部。そのうち最多の学生数を誇る工学部で、学生と学部、そして社会の間をつなぎ工学部と工学部生を活性化すべく活動している団体がある。「丁友会」だ。

 

 工学部生全員が会員となり、その中の有志が委員として業務に当たる丁友会。活動の中心は、さまざまなイベントの企画・運営だ。東大には特に少ない理系女子学生の交流会、工学部を目指す2年生向けの学科ガイダンスなど、工学部生のニーズに直結したイベントが多い。例えば、就職している理系OB・OGと交流できる「冬季産業セミナー」には三菱電機や新日鐵住金など多くの大手企業が出展し、理系学生向けに特化した数少ない就活イベントとして好評を博している。

 

 中でも最大のものが、小中高校生に「工学」の一端に触れてもらい、工学部の魅力を伝える「Techno Edge」。紙に描くと電気を通す「銀ナノインク」のペンを使ったワークショップなど、子どもも喜ぶ展示が並ぶ。昨年は自由研究の題材を求める小学生ら2万人もの来場者を集め、多くの研究室や科学系サークルが出展する「工学部の学園祭」として定着している。

 

丁友会が開催するイベント「Techno Edge」。子ども向けサイエンスショーは、立ち見客も出る盛況ぶりに(写真は丁友会提供)

 

 丁友会は、企業との折衝から行程表作りまで、これらのイベントの準備を一手に担う。その幅広さは、委員の高柳佳織さん(工・4年)が当初「学生でもこんなに多くのことができるんだ」と驚いたほどだ。

 

 学生代表の上条陽さん(工・4年)は、丁友会の魅力を「昨年度の成果にとらわれず、委員の裁量で一からイベントを企画できる」ことだと語る。昨年のTechno Edgeでは春から夏に開催時期をずらし、出展団体数もおととしの10から25に倍増。東京23区ほぼ全ての小中学校に計30万枚ものビラを配布するなど宣伝も拡充した結果、一部のブースが1時間待ちになるなど「来場者を呼び過ぎちゃった(笑)」というほどの盛況となった。「企画を作っていると、周りの委員から『自分たちでイベントをどんどん良くしよう』との思いが伝わってきます」と高柳さん。本年度も、フリーペーパーの制作や写真コンテストなど新たな試みを模索している。

 

 裁量が広い分、一人一人の責任も大きいが、慎重に検討を重ねて工夫を凝らした企画が成功したときの喜びはひとしおだ。研究室を飛び出し、学生自ら社会との接点を探る姿に、工学部の未来を見た。


この記事は、2017年4月4日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

 

 

ニュース:議論続け理念実現へ 軍事研究の禁止を継承 大学はどう向き合うか 「東大も制度設計を」
ニュース:9人と2団体が受賞 2016年度総長賞 大賞は院生2人
ニュース:梶田教授・十倉教授が初の「卓越教授」に
ニュース:卒業式 学位記授与式 五神総長「多様性を尊重し豊かな社会づくりを」
ニュース:昨年と同じ7位 THEアジア大学ランキング 全項目で得点上昇
ニュース:東大教授2人に日本学士院賞
ニュース:「人間拡張学」を始動 情報学環 ソニーと共同で
ニュース:資金源の所在が論点に 安全保障技術研究推進制度の狙いと課題
企画:東大卒業生が語る苦しい研究室生活 「ブラックラボ」の実態
企画:親睦の場は外食以外にも パーティー開催のすすめ
東大今昔物語:東大に咲く「不幸な」桜
サークルペロリ:丁友会
キャンパスガイ:小野田和生さん(文Ⅱ・2年)

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【サークルペロリ】丁友会 学生が東大工学部と社会を結ぶ東大新聞オンラインで公開された投稿です。

【こんなところに東大が】伊豆・下多賀地震観測地点 東海地震での強振動を観測

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 新年度を迎え、新たに1年生が入学してきた。彼らが最初に参加するのがオリ合宿。クラスの親睦を深めるため、2年生が引率して関東近郊のさまざまな場所を訪れる。

 

 記者も2年生として、静岡県の伊豆半島を訪れた。熱海市内のある施設でのレクリエーション後、外に出ると「東京大学地震研究所下多賀地震観測地点」なる表記を発見。

 

熱海市内で発見した地震研究所の観測点。東海地震での強震動観測のため設置されている

 

 地震研究所によると、近い将来に発生が危惧される東海地震での強震動を観測するため、伊豆半島〜駿河湾沿岸地域に18点の観測点が設置されているという。これら観測点で取得されたデータは弥生キャンパス内の地震研究所に伝送され、データベースとしてネット上で一般に公開される。「下多賀地震観測地点」もその観測点の一つだ。

 

 さらに同様の観測点は神奈川県西部の足柄平野などにも設置され、日本全体では67地点もある。大地震発生時の断層破壊や地盤構造の分析に観測網が用いられるという。

 

 それにしても、オリ合宿で訪れた先に東大の施設があるとは。偶然とはこのことだろうか。つい「こんなところに東大が」と発してしまった。


この記事は、2017年4月11日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

 

 

インタビュー:増田建教授(総合文化研究科)
ニュース:THE日本版大学ランキング 初実施で東大が1位 評価は教育力を重視
企画:自主ゼミ紹介
企画:忍び寄る「五月病」の影…君は大丈夫? 睡眠時間の確保が肝要
企画:東大の歩き方
企画:初めての1人暮らし、家事はどうする 小技と便利グッズで手軽に
企画:予備試験・国家総合職試験の勉強法 難関試験に向け今から準備を
著者に聞く:『物理学者の墓を訪ねる ひらめきの秘密を求めて』
こんなところに東大が:伊豆・下多賀地震観測地点
火ようミュージアム:21_21 DESIGN SIGHT「アスリート展」
キャンパスガール:由地莉子さん(文Ⅰ・2年)

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【こんなところに東大が】伊豆・下多賀地震観測地点 東海地震での強振動を観測東大新聞オンラインで公開された投稿です。

【2017年3月アクセスランキング】トップは東大生のテレビ 合格発表の記事も上位に

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4年ぶりの合格者番号掲示の再開を報じた本紙の紙面(右)と今年の合格発表で喜ぶ親子

 

 東大新聞オンラインで3月に公開した記事の3月中のアクセス数を調べたところ、1位は東大生を特集するバラエティー番組について取り上げた記事だった。番組出演経験のある学生数人に、出演した理由や番組の編集・構成に対する感想などを取材。記事公開2日前の3月1日には『さんまの東大方程式』(フジテレビ系)が放送されていた影響もあり、アクセス数を伸ばした。

 

 2位は、昨年に三島由紀夫賞を受賞し、1997年から01年にかけては第26代東大総長も務めた蓮實重彦名誉教授へのインタビュー記事。執筆活動や、総長就任から20年たった東大の現状、若者へのメッセージなどについて話を聞いた。

 

 3、4位は東大の合格発表に関する記事がランクイン。3月10日に実施された今回の合格発表では、4年ぶりに本郷キャンパス内での合格者番号掲示が再開された。3位の記事では過去の本紙の紙面を振り返りながら、中止から再開に至る経緯を解説。4位の記事では当日の様子を、合格者番号が記載された掲示板の前で喜ぶ親子の写真と共に報じた。

 

 5、9、10位では、東大合格者が入学手続き時に選択する第二外国語について、各言語を履修した学生が解説。文法や学習難易度、履修者の雰囲気など、多様な視点から各言語を紹介した。

 

 6位の記事では弊社主催のプログラミングコンテスト「東大ガールズハッカソン」に関わった東大女子に向け、協賛企業のヤフーが開催した「オフィスツアー」を取材。ツアーを通して記者が感じたことを、時に批判的に率直に書き起こしている。

 

 7位の記事では、東大卒のプロ雀士・井出洋介さんと麻雀サークル「白」代表に、麻雀の魅力や初心者へのアドバイスを聞いた。8位の記事では11年3月11日に発生した東日本大震災に関して、震災後に漫画が果たしてきた役割を藤本由香里教授(明治大学)に取材した。

 

 3月1日に就職活動の採用情報が解禁され、東大新聞オンラインでも就職活動に関する記事のアクセス数が増えている。公開日が当該期間ではないためランキングからは除外されたが、東大の15年度就職状況をまとめた記事が、全ての記事の中で最多のアクセス数を記録。また14、15年に連載された就活アドバイザーの霜田明寛さんによる「霜田明寛の就活十番勝負」シリーズも、安定的にアクセス数を伸ばしている。就職活動関係以外では、昨年4月公開の「東大の入学式は、なぜ12日開催なのか」も、今年の入学式が近づくにつれ注目を集めた。

 

【2017年3月アクセスランキング】

1       バラエティー番組の中の東大生 現役学生の視点から

2       【東大新聞お試し】「嘘を嘘と示せる自信を」 東大元総長の三島賞作家

3       【東大受験生応援連載】4年ぶりの合格者番号掲示 東大新聞で歴史を振り返る

4       4年ぶりに番号掲示 3012人が合格 理科で最低点上昇

5       【東大受験生応援連載】第二外国語を決めよう!履修者から見たドイツ語の姿

6       ヤフー!は東大女子に何を見せたい? オフィスツアーレポ

7       【東大新聞お試し】初心者のための麻雀入門 「不健全」は思い込み

8       震災後の漫画表現 3.11後、漫画の果たしてきた役割を考える

9       【東大受験生応援連載】第二外国語を決めよう!履修者から見たフランス語の姿

10      【東大受験生応援連載】第二外国語を決めよう!履修者から見たスペイン語の姿

 

※当該期間に公開した記事のみを集計

 

過去のランキング

【2017年2月アクセスランキング】東大女子の座談会特集、入試関連記事に注目

【2017年1月アクセスランキング】1位はブラックラボ検証 受験関連記事も人気

【2016年アクセスランキング】東大新聞オンラインで今年1番読まれた記事は……?

【2016年11月アクセスランキング】トップは図書館閉鎖問題 アメフト、制作展の記事が続く

【2016年10月アクセスランキング】ボカロ講義録が1位に 2位は新設の研究者支援制度

【2016年9月アクセスランキング】1位は進学選択 七大戦、秋のスポーツにも注目

【2016年8月アクセスランキング】ジェンダー企画、リオ五輪寄稿企画が上位に

【2017年3月アクセスランキング】トップは東大生のテレビ 合格発表の記事も上位に東大新聞オンラインで公開された投稿です。

障害者は生き苦しい、東大生だって生き苦しい

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 学習障害、脳性まひ、ハンセン病。毎回異なる障害を抱えた講師やその関係者が、障害とともに歩んだ人生について、学生に語りかけるゼミが東大にある。「障害者のリアルに迫るゼミ」だ。障害者と向き合う東大生は何を学び、何を考えるのだろう。ゼミ生と担当教員の野澤和弘さんに話を聞いた。

 

(取材・福岡龍一郎、竹田椋太)

 

ゼミ生の田川さん(左)、愼さん

 

東大生が障害者から学び取るもの

 

 ゼミ生の田川菜月さん(理・3年)は東大に入学してから「いろいろなことに悩んでいた」とゼミに参加した経緯について話す。

 

 

 大学に友達はいるが、深い話ができる親友はいなかった。大学の授業も退屈なものが多いように感じた。何より辛かったのは「周囲の東大生が優秀で、『自分は勉強で劣る』という事実を突き付けられたことです」。将来は理系の研究者になりたいと思っていた田川さんは「勉強ができる」自分のアイデンティティーを徐々に失っていったように感じ、「今後どう生きればいいかという苦しさがあったように思います」。そんな彼女は何か新しいことに挑戦したいという思いで「障害者のリアルに迫るゼミ」に参加した。そこで講師が語った言葉が強烈に印象に残っているという。

 

 「『何をしたらいいか』という悩みは『何でもできる』ということの裏返し」

 

 ALS(筋萎縮性側索硬化症)を患う岡部宏生さんの言葉だ。ALSは原因不明の難病で、徐々に全身の筋肉が動かなくなり、人工呼吸器なしでは呼吸さえもままならなくなる。「とても短い言葉でしたが、岡部さんの立場から語られる重さがありました」と田川さんは振り返る。

 

岡部さん(中央)と生徒たち

 

 ゼミ生であり、自身も脊髄性筋萎縮症という障害を患う愼允翼さん(文Ⅲ・2年)。愼さんは身体が不自由で、自身の手で水を飲むこともできなければ、額の汗を拭くこともできない。

 

 

 そんな愼さんは田川さんの発言に応えて、こう話す。

 

「『東大では勉強で劣ることを知った』という挫折について田川さんは話していたけれど、言ってみれば、障害者は人生最初から挫折しているようなものだと思う。僕もFacebookなどを通して、友人が海外旅行をしている写真を見て『楽しそうだな、いいな』と思うけれど、僕の場合、障害のため気軽に飛行機には乗れない。それが苦しい時もある。

 でも、挫折のない人生なんてない。ゼミでは、障害を抱えた講師がその人生について率直に語りかけてくれる。彼らは、挫折や絶望を、希望に変える力が本当にすごい。障害を抱え、挫折し、それでも立ち上がって生き続け、また絶望し、それでも立ち上がって。

 障害を抱えた講師たちの語る自らの人生は、学生に『自分も自分らしくやってみよう』という生きることの基本的姿勢を教えてくれているように僕は思う」

 

 ゼミに参加する東大生は障害と共に生きる講師の言葉を通して、自分自身の生き方を見つめ直すきっかけを得ているのかもしれない。

 

日本における障害者と東大生の生き苦しさ 根本は同じなのでは

 

 講師である障害者の言葉に、東大生が真剣に耳を傾ける別の要因として、講師の言葉がごまかしや建前ではない「リアルに迫った」本音であることが挙げられる。「このゼミにはタブーがありません」と田川さん。一般的には触れてはいけない、触れないほうがいい話題の境界を「講師たちがぶち壊してくれる」ためだ。

 

(2017年度に予定されているゼミ講義内容の抜粋。ゼミにはタブーが存在しないという)
  • 健常者で障害者デリヘルを経営しているY氏と、脳性麻痺者で元デリヘル利用者のK氏の対談。一般的にタブーとされる「障害者」と「性」について、その最も生々しい現場にいる(いた)お二人の話を聞き、受講生の「タブー」という価値観を揺るがす
  • ALS患者お二人による対談。末期患者である岡部宏生氏と進行中患者の方の二つの視点から、体が徐々に動かなくなっていく、人工呼吸器や気管切開手術など死を意識する、といったALSに関する話を聞く。この講義ではとりわけ「障害」「生と死」という問題に焦点を当てる
  • 盲聾者の福島智氏と脳性麻痺の熊谷晋一郎氏の対談。健常者と比べて、障害者が「恋愛関係」を築くのには大きな障壁が存在する。お二人には自身の恋愛経験を語っていただき、それを通して受講生が「障害者の恋愛」についてイメージを膨らませ、かつ自身の恋愛経験・恋愛観を振り返る機会を作りたい

 

 例えばある講義で、目と耳が不自由な福島智教授(先端科学技術研究センター)が話をした際、学生から「もし目が見え、耳が聞こえたら何をしたいですか」という質問があった。

 

 「福島教授は『目が見えたら天体観測をしたい』と答え、ロマンチックな答えだなと思っていたら、続けて『耳が聞こえたら夜にベッドの上で、愛する女性が発する声が聞きたい』と答えたんです。ゼミの別の講義では『善良な障害者ばかりではない。性格の悪い障害者だってもちろんいる』と話す講師もいました」。田川さんはゼミを通し、障害者に対して無意識に抱いていた固定観念や先入観が砕け散ったと振り返る。

 

 愼さんは、固定観念に縛られる苦しさについて、東大生と障害者のある共通点を指摘する。

 

 「そもそも、日本における東大生と障害者の生き苦しさ。根本は同じなんじゃないかな

 どちらも『東大生はエリート』『東大生は○○』、『障害者は大人しい』『障害者は○○』といったように周囲の勝手な人物像を背負う。しかし自分の実情と周囲からの人物像が異なるのに、それを一致させようとすることは苦しい。学歴や世間体を意識して、自分の夢を追求せず、エリートの道をなんとなく進む東大生。活発な性格を隠して、大人しくあろうとする障害者。僕はその生き苦しさに違いはないと思う」

 

 ゼミで講師は「障害者」像を捨て、タブーを無視し、自分の人生や本心を率直に語りかける。触発された学生は、自身が無意識に背負っていた周囲からの「東大生」像を捨て、自分らしく生きることへの可能性を見出しているのかもしれない。

 

もちろん東大生の持つ苦悩なんて甘いとも言える、けれど

 

 「日本の教育ってリアルじゃないよね」。ゼミの担当教員を務める野澤和弘さん(毎日新聞論説委員)は語る。「古い教科書を読み進める授業に、学生の持つ『生』の社会に対する疑問の答えはあるのかな」。野澤さんは、障害を抱え苦悩する人々は、自分とは違う他人を認めない現在の社会の生きづらさを体現していると考えている。「このゼミで障害者の声を聞くことは、『生』の社会に触れる入り口になると思う」

 

ゼミの担当教員を務める野澤さん

 

 社会の息苦しさを敏感に感じ取る東大生は、障害者の苦悩に共鳴し、自分の抱える苦悩を投影する。

 

 「もちろん客観的にみれば東大生の持つ苦悩なんて甘いとも言える。けれど、社会の『生き苦しさ』に答えを求める東大生に、障害者は社会に対する同じ苦しみを共有できる仲間として接するようになるんだ。

 本当は反発を感じてもいいはずなのに、全然そうじゃない。ゼミが終わる頃には、東大生と障害者がお互いの違いを意識しなくなっていることが頻繁にあるよ」

 

 野澤さんはゼミを続ける中で、東大生には「悶々としている学生が多い」ことに驚いたという。「コンプレックスを抱えたり、あてもなくさまよったり…」。東大生は、世間が思う以上に悩み、苦しみ、物事を深く考えている。「そうしたゼミ生の多くは、講義や本に飽き足らず今の社会で何が起きているのかを見ようとして、講師が実際に活動している場に行くんだよね。障害者が働く工場で一緒に働いたり、グループホームに泊まったり。無限に好奇心を増殖させて、障害者と本気で接しようとする」

 

 彼らは、そこで障害者の内面の「深み」に多くを学ぶ。「障害者は、東大生以上に色々な経験をしている。騙された経験や、強いコンプレックスを持った経験、中には刑務所にいた経験のある人もいる。東大生は、経験の分だけ深い人生論を持つ障害者に、自分にはない内面の深さを感じているのだと思う」

 

 ゼミを通して、東大生は自分の生き方を見つめ直すきっかけを得る。一方、交流によって東大生ばかりが得をしているかと言えば、そうではない。自身も障害を抱えたお子さんを持つ野澤さんは、東大生が障害者問題を考えることは、障害者とその関係者にとって「希望」だと語る。

 

 「東大生というのは日本の将来の象徴の一つ。障害者には、『自分が社会の日陰に置かれている』という被害者意識が強い。自分たちが社会に相手にされていないとか、日陰に置かれているとか。でも、障害者との触れ合いは、確実に東大生に色々なことを感じさせ、考えさせている。僕自身、東大生が障害者の問題に興味を持ってくれたことで、何か大きな一歩を踏み出せた気がする。もちろん障害者と関わった経験をどう社会の中で活かすのかは各学生次第だけど、そこからしか物事は始まらない」

 

 だからこそ、「まずはゼミに来てみて」。障害者を取り巻く問題の所在は「これまで耳を傾けてくれる人さえいなかった」ことにある。「最初はどんな動機でもいい。動機はどうあれ、生きにくさを剥き出しにして生きる障害者を見たときに、何かハッと感じるものが人それぞれあるはず」

障害者は生き苦しい、東大生だって生き苦しい東大新聞オンラインで公開された投稿です。

東大新入生アンケート2017① 推薦合格者、女子は4割 「エリート意識ある」半数割れ

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 東京大学新聞社は、新入生全員を対象に3月29・30日にアンケートを実施した。このアンケートは東大生対象の唯一の全数調査で、毎年入学の諸手続時に実施。受験経験や合格発表の様子、東大の諸制度に対する意識など、内容は多岐にわたる。今回は新入生3120人の94%に当たる2946人から回答を得た。今年の入学生が何を考え東大入学を志し、大学生活にどのような展望を抱いているのか。集計したアンケートの結果を基に分析した。(本文中の割合は小数点第1位を四捨五入した)

 

  • 男女比

 男女比を見ると、女子学生の割合が21%となり、16年度とほぼ同じ水準ではあるものの、3年ぶりに20%を超えた。推薦入試での男女比は男子58%、女子42%。初の推薦入試となった16年度の割合(男子62%、女子38%)よりも女子の比率が高まり、4割を超えた。

 

  • 推薦入試

 前期日程で合格した新入生に対して推薦入試の賛否について聞くと、賛成64%に対し反対は35%で、前回の結果(賛成53%、反対47%)から大きく形勢を変えた。2年目を迎えた推薦入試が、受験生にも受容されつつあるといえる。

 

  • 合格発表

 

 

 今回の前期日程の合格発表では、4年ぶりに本郷キャンパスでの合格者番号掲示が再開された。当日の合否確認の方法について「インターネットで確認せず、掲示を見た」が12%、「インターネットで確認し、掲示も見た」が52%で、掲示を利用した受験生は6割を超えた。

 

  • エリート意識

 「日本の将来を担うエリートだという意識を持っているか」という質問に対して、「持っている」または「少し持っている」と答えた人は合わせて47%。この割合は、15年度から17年度の間で10%程度低下している。

 科類別に見ると、エリート意識を「持っている」と「少し持っている」を合計した割合は、理Ⅲの73%(昨年度は71%)が最高だった。他の科類は、割合が高い順に文Ⅰ(64%)、文Ⅱ(52%)、文Ⅲ(43%)、理Ⅰ(42%)、理Ⅱ(42%)という結果だった。

 

【関連記事】

東大新入生アンケート2017② 支持政党は自民36%、民進4.5% 無支持は43%


この記事は、2017年4月18日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

 

 

インタビュー:隈研吾教授(工学系研究科)
ニュース:7541人が新たな門出  学部・大学院で入学式
ニュース:硬式野球開幕戦 投打とも振るわず連敗 明大打線に計19失点
ニュース:総合図書館利用制限 安田講堂4階に代替場所開放
企画:先輩の「学生生活奮闘記」
企画:正しく利用し社会に還元を 来年度から本格実施、給付型奨学金は学生を救うか 
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東大新入生アンケート2017① 推薦合格者、女子は4割 「エリート意識ある」半数割れ東大新聞オンラインで公開された投稿です。

東大新入生アンケート2017② 支持政党は自民36%、民進3.4% 無支持は4%減

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 東京大学新聞社は、新入生全員を対象に3月29・30日にアンケートを実施した。このアンケートは東大生対象の唯一の全数調査で、毎年入学の諸手続時に実施。受験経験や合格発表の様子、東大の諸制度に対する意識など、内容は多岐にわたる。今回は新入生3120人の94%に当たる2946人から回答を得た。今年の入学生が何を考え東大入学を志し、大学生活にどのような展望を抱いているのか。集計したアンケートの結果を基に分析した。(本文中の割合は小数点第1位を四捨五入した)

 

  • 女子学生家賃支援

 東大が本年度から導入した、実家が遠方の女子学生を対象とする家賃支援制度への評価を聞いたところ、「評価する」「どちらかといえば評価する」と答えたのは48%で、「どちらかといえば評価しない」「評価しない」の37%を上回った。評価理由は「女子学生比率向上につながると思うから」(45%)、「女子学生比率向上につながるかは分からないが、何かしらの取り組みを始める必要があるから」(41%)に集まった。逆に評価しない理由は「男子学生に不平等だから」が44%と最多で、「女子学生比率向上につながらない」「女子学生比率が低いことが問題だとは思わないから」が続いた。

 

 

 制度を「応募・利用した」学生は女子全体の12.8%。「応募して当選したが利用しなかった」「応募したが、当選しなかった」は合わせて5.6%だった。利用した学生に制度が東大進学の決め手となったか聞くと「決め手ではなかった」が70%と大半を占め、「一番の決め手だった」「決め手の一つだった」の合計は30%だった。

 

  • 天皇陛下の退位

 天皇陛下の退位について聞くと「賛成」「どちらかといえば賛成」が86%を占めた。「反対」「どちらかといえば反対」は4%、「分からない」も9%いた。

 

  • トランプ米大統領の就任

 トランプ米大統領就任の評価を聞くと、「評価する」「どちらかといえば評価する」が27%なのに対し「どちらかといえば反対」「反対」は58%で、反対が賛成を大きく上回った。

 

  • 支持政党

 

 

 支持する政党を尋ねると、自由民主党が36%で最多。民進党(3%)、日本共産党(2%)、日本維新の会(2%)が続いたが、昨年同様自由民主党が圧倒的支持を集めた。「支持政党はない」は39%、「分からない」は15%だった。

 

【関連記事】

東大新入生アンケート2017① 推薦合格者、女子は4割 「エリート意識ある」半数割れ

 

2017年4月22日15:50【記事訂正】タイトルで数値が誤っていました。お詫びして訂正します。


この記事は、2017年4月18日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

 

 

インタビュー:隈研吾教授(工学系研究科)
ニュース:7541人が新たな門出  学部・大学院で入学式
ニュース:硬式野球開幕戦 投打とも振るわず連敗 明大打線に計19失点
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東大新入生アンケート2017② 支持政党は自民36%、民進3.4% 無支持は4%減東大新聞オンラインで公開された投稿です。

【2017年2月アクセスランキング】東大女子の座談会特集、入試関連記事に注目

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「東大受験生応援連載」のタイトル画像(左)/東大ガールズハッカソン参加者の座談会

 

 東大新聞オンラインで2月に公開した記事の2月中のアクセス数を調べたところ、1位は2016年開催の「東大ガールズハッカソン」に参加した女子学生と社会人の座談会を特集した記事だった。座談会では、東大内の女子率が2割弱にとどまる中で学生が抱える悩みや、将来の働き方などが話題に。東大女子の本音が垣間見えた座談会に注目が集まった。

 

 2位には、日本語ラップ界を牽引(けんいん)するダースレイダーさんのインタビュー記事がランクイン。東大を中退した経歴を持つダースレイダーさんに、ラップとの出会いや自身の学生生活について語ってもらった。音楽活動での挫折や脳梗塞で倒れた過去などを振り返る中で、違う道を模索していくことの大切さを強調。「困難迎えれば誰でもヒップホップできる」という見出しに表されるダースレイダーさんの生き方や考え方が話題を呼んだ。

 

 5位にランクインしたのは、2月8日に最終合格者が発表された東大の17年度推薦入試の結果を伝えるニュースだった。今回の推薦入試では、全学部・学科合計で100人程度の募集に対し前回より6人少ない71人が合格した。東大の担当者は「一般入試より女子学生、地方学生の比率が高く、多様性を確保できた」と評価。一方、高校との連携の必要性など今後の課題にも言及した。アクセス数の多さから、2年目を迎えた推薦入試に高い関心が寄せられていると分かる。

 

 7位には、硬式野球部の宮台康平投手(法・3年)をデータで読み解く寄稿記事がランクイン。打者との対戦で三振を取った割合である「K%」といった指標を用い、過去のドラフト候補投手と比較しつつ宮台投手の現状を分析した。昨季はけがに苦しんだ宮台投手が今季どのような投球を見せてくれるのか、期待が高まる記事だった。

 

 その他には【東大受験生応援連載】が10位以内に複数ランクインした。2月25、26日に行われた東大の2次試験前には、文系と理系で異なる試験会場の注意点や、ミス・ミスター東大による応援メッセージなどを公開。受験生など受験への関心が高い読者に多く読まれたようだ。

 

【2017年2月アクセスランキング】

1       東大女子の座談会 ―私たちの悩みと理想の働き方―

2       東大中退ラッパーを直撃 「困難迎えれば誰でもヒップホップできる」

3       【東大受験生応援連載】16年度ミス・ミスター東大から受験生へ送る応援メッセージ

4       【東大受験生応援連載】2次試験会場、ここに気を付けよう!~文系受験生編~

5       推薦入試、前回比6減の71人合格 「高校との連携途上」

6       【東大受験生応援連載】2次試験会場、ここに気を付けよう!~理系受験生編~

7       データで読み解く東大のドラフト候補・宮台の現在地

8       【東大受験生応援連載】現役東大生が語る!東大合格の秘訣とは

9       【東大受験生応援連載】現役東大生が語る!入試当日の後悔とは

10      【東大受験生応援連載】2次試験の次は入学準備を 東大生協が入学準備説明会を開催

 

※当該期間に公開した記事のみを集計

 

過去のランキング

【2017年1月アクセスランキング】1位はブラックラボ検証 受験関連記事も人気

【2016年アクセスランキング】東大新聞オンラインで今年1番読まれた記事は……?

【2016年11月アクセスランキング】トップは図書館閉鎖問題 アメフト、制作展の記事が続く

【2016年10月アクセスランキング】ボカロ講義録が1位に 2位は新設の研究者支援制度

【2016年9月アクセスランキング】1位は進学選択 七大戦、秋のスポーツにも注目

【2016年8月アクセスランキング】ジェンダー企画、リオ五輪寄稿企画が上位に

【2017年2月アクセスランキング】東大女子の座談会特集、入試関連記事に注目東大新聞オンラインで公開された投稿です。


【こんなところに東大が】チリ・アタカマ砂漠 世界最高水準の望遠鏡設置へ

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 南米チリ。その北部には「世界一乾燥した場所」として知られるアタカマ砂漠がある。そこに東大が天文台を建設する計画が進んでいることは意外にも知られていない。この場所は、東大の入試問題の題材にもなった。

 

「世界で一番乾燥」するアタカマ砂漠。ここの高度約5600メートルの地点に望遠鏡が設置される

 

 アタカマ砂漠に東大が天文台を建設する計画はTAO計画と呼ばれ、現在進行中だ。世界最高となる標高約5600メートルに望遠鏡を設置するこの計画。今後設置される世界最高水準の口径6.5メートル望遠鏡に先駆け、2009年には既に口径1メートルの望遠鏡が設置された。

 

 東大入試に登場したのは15年度の英語大問3(A)。長文リスニング問題の題材として紹介された。アタカマ砂漠では世界各国が天体観測施設を建設しており、取り上げられたのも欧州諸国が共同で建設する口径39メートルの望遠鏡。「アタカマ砂漠の空気がとてもきれいで、乾燥している」という環境的利点や「天文学者にとっては、南半球から見える星空が興味深い」という学問的利点が紹介された。

 

 いずれにせよ、まさに「地球の裏側」であるチリに東大の施設が建設されているとは。初めて知った時は驚きを隠せなかった。なおTAO計画については、4月11日発行の新入生歓迎号Ⅰで詳しく扱う予定だ。


この記事は、2017年3月21日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

 

 

ニュース:交付金削減で増える非常勤 基礎科学研究の現状は
ニュース:駒場キャンプラなど解体か 自治会「代替施設の検討を」
ニュース:代替措置詳細を公表 総合図書館 十分な学習席確保
ニュース:日本学術会議声明案 軍事研究禁止を継承 4月に採決予定
ニュース:新コーチに元日本代表 ア式蹴球 社会人クラブと連携
ニュース:合奏のテンポ加速に体内メカニズムが影響
ニュース:駒場に新ジム開設 スポーツ先端科学研究拠点 研究成果を還元
企画:ゼミで迫る障害者問題 障害者は生きにくい 東大生だって生きにくい
企画:視聴者に親近感抱かせる 「東大生テレビ」人気の秘密
東大新聞オンラインアクセアスランキング:2017年2月
研究室散歩:応用生命化学
こんなところに東大が:チリ・アタカマ砂漠 世界最高水準の望遠鏡設置
東大CINEMA:ラビング 愛という名前のふたり
キャンパスガール:田中茉由子さん(文Ⅰ・1年)

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【こんなところに東大が】チリ・アタカマ砂漠 世界最高水準の望遠鏡設置へ東大新聞オンラインで公開された投稿です。

飲み放題に代えごちそうを 学生団体が提案する新しい食事会の形

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 大学生の夜の集まりといえば、大抵飲み放題の食事会。しかしコースに付く料理では満腹にならず、解散後にラーメンを食べに行くという光景がよく見られる。「飲み会には参加したいけれど、せっかく数千円払うならおいしいものを食べたい」。心の内にそんな不満を抱える人々のために、学生団体「想食系幹事」が提案する「ごち会」を紹介する。

 

(取材・石沢成美)

 

「シックな雰囲気」の中、満腹に

 

 想食系幹事と飲食店が協力して現在14店舗で展開する「ごち会」コース。飲み放題ではなく、3千円程度でごちそうと飲み物2杯を味わえるコースだ。今回はその中でサークルの新入生歓迎イベントなどでの利用を想定し、飲み物をソフトドリンクとした新歓「ごち会」コースを、実際に編集部と新入生が体験した。

 訪れたのは、下北沢駅南口から徒歩4分ほどの「IBIZA」。明る過ぎない照明、穏やかなBGMが落ち着いた雰囲気を醸し出している。新入生からは「シックな雰囲気」「こんなところにデートで来たい」という感想が聞こえてくる。

 

 新歓「ごち会」コースはカプレーゼなどの3種のタパス(スペインの小皿料理)盛り合わせから始まる。おしゃれな前菜に期待が膨らむ中、皿いっぱいに盛られたサラダ、チキンやポテトなどの揚げ物盛り合わせが続く。主食はピッツァとパスタが付き、コースが終わる頃には満腹だ。

 

 IBIZAお薦めの飲み物は、グレープフルーツとライムにトニックウォーターを合わせた「ピュアフレスカ」、クランベリーとグレープフルーツの酸味が効いた「バージンブリーズ」の2杯。食事の味を邪魔しない、さっぱりとした後味のノンアルコールカクテルとなっている。

 

 十分な量の食事に新入生は満足した様子。おいしい食事を前に会話も弾み、上級生からも「またこのコースを利用したい」という声が多数上がった。


駒場付近でも舌鼓

 

 駒場キャンパス付近の渋谷や下北沢でごち会コースを提供している店について、想食系幹事に紹介してもらった。

 

 

■デ・サリータ(渋谷)

 

「デ・サリ―タ」のコース料理1人分(左)、パスタの例(写真は想食系幹事提供)

 

 トリュフのホワイトクリームパスタが一人1皿出るお店。ごち会だけのコースです。初めは北海道産ロースの生ハムや、スモークチーズのサラダ。お次はぷりぷり海老のアヒージョです。温かいスープに、ほどけるように柔らかな海老たち。アヒージョはにんにくとオリーブの煮込みのことで、一緒に出てくる焼きたてのフォカッチャをひたして食べるのもおいしい。メインのトリュフのホワイトクリームパスタが一人1皿なのは、ごちそうをたっぷり味わってもらうため。ちなみにワインセラーが2階まであり、世界中のワインふくむドリンクが2杯、選べます。

 

アクセス 渋谷駅から徒歩5分
電話 050・3482・0705
定休日 なし
ごち会コースは日〜木曜、2980円、2人〜

 

■雷や(下北沢)

 

「雷や」のコースで味わえる料理の例(写真は想食系幹事提供)

 

 牡蠣のカン缶焼き(1キロの牡蠣を蒸し焼きにしたもの)が名物のお店。牡蠣のおいしさが詰まっています。

 コースは、サラダっちょ、ローストビーフ、店長のおまかせおばんざい盛り、カン缶焼き、締めの雑炊。野菜は鮮度にこだわっていて、みずみずしい。そしてなんといってもおいしいのは、店長のおまかせおばんざいの盛り合わせ。店長のお薦めが少しずつ食べられる一品です。最後は牡蠣の旨みが詰まった雑炊で満足。

 

アクセス 下北沢駅南口から1分

電話 03・3413・0452

定休日 なし

ごち会コースは月〜金曜、3000円、4~30人

 

■夏火鉢(下北沢)

 

「夏火鉢」ではタンづくしの料理を楽しめる(写真は想食系幹事提供)

 

 創作牛タン料理が楽しめるお店。前菜から最後までとにかく牛タンづくしです。お肉好きにはたまらない。

 コースには、バケット前菜盛り合わせ、牛タンと狛江野菜のグリーンサラダ、牛タン薄切り炭火焼き、牛タンポテトグラタンまたは牛タンバーグ、牛タンのミートスパゲティが含まれています。右を見ても、左を見ても牛タン。なかなかお目にかかれない創作牛タン料理をここでは味わえます。おいしいのが牛タンバーグ。コリコリした食感とハンバーグならではの凝縮された旨みが楽しめます。ワインにもこだわりをもつ贅沢なお店。

 

アクセス 下北沢駅南口から5分

電話 03・3414・5206

定休日 なし

ごち会コースは月〜木曜、3240円、4~33人

 

(寄稿)


飲酒中心の食事会に疑問、ごちそう通じた交流を文化に――仕掛け人の思い

 

 「想食系幹事」は、飲み放題の数千円でごちそうを味わう「ごち会」を提案し社会への浸透を目指す学生団体だ。飲み放題で安い酒をたくさん飲むのではなく、食事も味わってもらいたい人向けに、ごちそうと食事に合う2杯がついた「ごち会コース」の作成を行っている。

 

想食系幹事メンバー。左から東さん、會澤さん、野並さん

 

 想食系幹事創設者の東成樹さん(15年総合文化研究科修了)は学生時代、飲み放題で食べ物はえびせんや枝豆、という飲み会で3千円もの金額を払うことに疑問を感じていた。「満腹にならない飲み会に行くなら家でご飯を食べたいけど、飲み会での交流が大事ということも分かっていました」。そんな中、少し高価なフレンチを食べて「お金を払えばおいしいものが食べられる」と実感。飲み会の幹事を務めた際、食事中心で飲み物は数杯というコースの作成を店に依頼したことから活動が始まった。現在は複数の大学から理念に共感した学生が集まり、協力店舗数も広がっている。

 

 前代表の會澤美佳さん(東京学芸大学・3年)はごち会コースの魅力として、大学生が自分の舌で選んだ店を扱っていることを挙げる。想食系幹事メンバーが創設時から100軒以上を回り、「おいしい」で終わるのではなく記事を書けるほど良い店にごち会コースへの協力を依頼しているという。東さんは「学生ミシュランのようなものです」と自信をのぞかせる。

 クラスやサークルのコンパなど、大学生の飲み会は飲み放題のコースで行われることがほとんど。現代表の野並新さん(養・4年)は「コースの選択肢として飲み放題しかないのが問題」と話す。飲み放題を好まない人がいても、従来通り飲み放題にするのが安全策という幹事の思いから、消極的に飲み放題が選ばれることもある。「ごち会コースの提案で、その選択肢を増やしたいです」(野並さん)。加えて飲み放題の場合、酒を「酔うための液体」として摂取する人もおり飲酒事故が起こりやすい。料理と数杯の酒を味わうことは、安心して同席者との会話を楽しむことにもつながる。

 

 今年新たに導入したのが、新入生向けにソフトドリンクを充実させた「新歓『ごち会』コース」だ。會澤さんは入学当初、あるサークルの飲み会で一気飲みやコールが何度も行われるのを目にし「これが楽しいのかと疑問になった」という。まだ新入生の多くは未成年だが、初めて飲み会に接する機会はその後の飲酒との向き合い方に大きな影響を及ぼす。「新歓『ごち会』コースで、新入生においしいご飯を食べて仲良くなることを知ってほしい」と期待する。

 

 東さんは「ごち会」が想食系幹事の手を離れて広まってほしいと考えているという。「『ごち会』を文化にして、自分たちが言わなくても自然に開催されるようにしたい。『今日はごち会しよう』と言われる日が来たら成功です」


この記事は、2017年4月25日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

 

 

ニュース:研究できない東大教員 東大教員の研究時間 雑務に忙殺、疲弊 研究水準低下に懸念
ニュース:慶大に計20失点で連敗 硬式野球 両試合序盤が課題
ニュース:心不全発病の新メカニズム発見
ニュース:40歳・伊藤投手 神宮で初登板
ニュース:研究できない東大教員 「不当な研究時間不足本来は存在しない」
ニュース:悪玉コレステロールは薬も運搬
ニュース:学生向けプログラムを開始 現地調査通じ課題解決へ
企画:研究室訪問では分からない 調査報道「ブラックラボ」②
企画:飲み放題に代えごちそうを 学生団体が提案する新しい食事会の形 
東大CINEMA:ムーンライト
100行で名著:『思考の整理学』外山滋比古著/ちくま文庫
東大今昔物語:2004年7月27日発行号より 校歌制定検討も実現せず
キャンパスガール:最上絵里さん(文Ⅰ・2年)

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【東大最前線】「栽培適地」なくし収穫量向上へ 新たなイネ系統を創出

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 園芸書には「○○はこの時期に種をまくとこの時期に花が咲き……」と書いてある。そのような記述はもう当たり前ではなくなるかもしれない。井澤毅教授(農学生命科学研究科)らは、ある種の市販農薬を利用したイネの開花時期の人為制御に成功した。(図1)

 

 

 イネは、一日のうち明るい時間がより短い方が花が咲きやすくなる短日植物であり、開花時期が緯度による日長の違いに左右される。例えば、本州で栽培されるコシヒカリを北海道で栽培すると10月ごろまで花が咲かず、実らない。今回の研究の背景にはこの「栽培適地」をなくしたいという思いが根底にあった。

 

 井澤教授らは、まず花芽の形成を抑制する遺伝子の働きを高めた系統を作成。これらのイネは通常より開花が顕著に遅れ、多くは何年も咲かない植物体になった。さらに抵抗性誘導剤と呼ばれる農薬を散布したときのみ、花芽形成を促すホルモン(フロリゲン)を発現するようにアレンジした遺伝子を設計し、イネに導入。その結果、抵抗性誘導剤を散布したときのみ、花が咲き実るイネができた。(図2、3)

 

 

 「海外にも植物の開花時期の制御を目指す研究者がいますが、多くの場合は基礎研究の一環です」と井澤教授。扱う植物もシロイヌナズナなどのモデル植物が大半で、イネのような重要作物での研究はほとんどないという。一方でイネは多種多様な機能の遺伝子が既に解析されており遺伝子組換えも比較的容易だ。「ゲノム解読も早い段階で終わっており、優れた実験材料です」

 

 実用化には安全性の確保も重要だ。「ステロイド剤で開花時期を制御する研究もありますが、今回は環境への安全性が確認されている市販の農薬を使ったため実用化しやすいです」。処理をしなければ開花が抑制されるため組換え遺伝子が野生に広がる心配も少ない。

 

 「今後はトウモロコシなど他作物への応用の他、イネの育種の幅が広がることが期待できます」と井澤教授は語る。今回の研究で開花時期を制御したイネでは収量も向上しており、開花時期と収量それぞれの遺伝子の相互作用があったという。(図4)

 

 

 このように、開花時期の遺伝子を改変すると収量など他形質の変化も期待できるが、通常の交配育種では、栽培地域に適した時期に開花させなければ収穫できないため、これまでの育種選抜には限界があった。しかし、今回の技術を用いれば収量や品質の遺伝子がどのタイプでも、自由に開花させることができる。これまで栽培地域に合わず埋没していた新たな遺伝子資源を発掘し、さらなる収量性や品質の向上に役立つ。

 

(小原寛士、研究に関する画像は井澤教授提供)

 

井澤 毅(いざわ たけし)教授 (農学生命科学研究科)

 88年理学系研究科修士課程修了。博士(理学)。奈良先端科学技術大学院大学助手、農業生物資源研究所などを経て16年より現職。


この記事は、2017年5月16日号に掲載した記事を再編集したものです。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

 

 

インタビュー:まつりさんの死は人ごとか 東大OGの過労死を巡って
ニュース:五月祭2日目に小社がシンポジウム開催 共に考える新しい働き方
ニュース:立大に計29失点完敗 硬式野球 今季最下位が確定
ニュース:強豪・明大に完封負け 粘れず34失点
企画:~迷ったらここに行こう~編集部厳選おすすめ企画11
企画:技術革新を継続的に 東大発ベンチャーを支える
インタビュー:安定の眠りから目覚めよ 五月祭委員長→興行師 康芳夫さん
世界というキャンパスで:塘田明日香さん(育・4年)デンマーク編2
東大最前線:イネの開花制御 井澤毅教授(農学生命科学研究科)
キャンパスガール:小松詩織さん(文Ⅰ・2年)

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【東大最前線】「栽培適地」なくし収穫量向上へ 新たなイネ系統を創出東大新聞オンラインで公開された投稿です。

【2017年4月アクセスランキング】今年も新入生アンケートに高い関心

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(右上から時計回りに)総長賞受賞者らの集合写真、入学式での五神総長による式辞、新入生の支持政党を集計したグラフ

 

 東大新聞オンラインで4月に公開した記事の4月中のアクセスランキングを調べたところ、1位は2017年度の東大新入生アンケートの分析記事だった。東京大学新聞社は毎年、新入生全員を対象にアンケートを実施し、結果を分析している。オンラインでは東大内の諸制度や支持政党などの質問を抜粋し、2回に分けて公開した。東大新入生の社会意識に広く関心が集まったようだ。

 

 2位には「障害者のリアルに迫るゼミ」への取材記事がランクイン。このゼミでは講師である障害者やその関係者が、実際に歩んできた人生について、学生に語り掛ける。ゼミ生2人と担当教員の野澤和弘さん(毎日新聞論説委員)に話を聞き、障害者と向き合う中で東大生が何を学び、考えるのかに迫った。

 

 3位は4月12日に挙行された17年度学部入学式の速報記事だった。五神真総長の式辞や、大隅良典・東京工業大学栄誉教授の祝辞などを取り上げた。4月中には「東大の入学式は、なぜ12日開催なのか」と題した16年公開の記事もアクセス数を伸ばしており、東大の入学式への注目度の高さが見て取れる。

 

 4、5位には、英教育専門誌『タイムズ・ハイアー・エデュケーション(THE)』発表の大学ランキングの記事がランクインした。4位の記事では日本版、5位ではアジア版の結果を扱った。大学ランキングに関連した記事は、公開ごとに注目が集まっている。

 

 6位にランクインしたのは、16年度東京大学総長賞に関する記事。授与式での五神総長の学生に対する激励の言葉や、総長大賞に選ばれた福本塁さん(工学系・博士3年=受賞時、以下同様)と村田優樹さん(人文社会系・修士1年)の研究内容を紹介した。

 

 8、9位にはスポーツ記事がランクイン。8位の記事では、4月15日実施の硬式野球慶應義塾大学戦を、試合と同時進行で速報した。9位の記事では、アメフトの桜美林大学とのオープン戦の結果を伝えた。今後もオンラインでは、積極的にスポーツ速報を行っていく予定だ。

 

【2017年4月アクセスランキング】

1       東大新入生アンケート2017② 支持政党は自民36%、民進3.4% 無支持は4%減

2       障害者は生き苦しい、東大生だって生き苦しい

3       東大で入学式 ノーベル賞・大隅教授「まだ知らない世界求めて」

4       THE日本版大学ランキング、初実施で東大が1位 評価は教育力を重視

5       THEアジア大学ランキング、東大は昨年と同じ7位 全項目で得点上昇

6       2016年度東京大学総長賞、9人と2団体が受賞 大賞は院生2人

7       東大新入生アンケート2017① 推薦合格者、女子は4割 「エリート意識ある」半数割れ

8       【東京六大学野球・速報】東大―慶大1回戦

9       アメフト部 今年から1部昇格の桜美林大に3―17で完敗

10      【東大新聞お試し】生命科学研究で情報科学を活用 大規模データで生命を数理的に捉える①

 

※当該期間に公開した記事のみを集計、10位の記事は4月28日までの限定公開

 

過去のランキング

【2017年3月アクセスランキング】トップは東大生のテレビ 合格発表の記事も上位に

【2017年2月アクセスランキング】東大女子の座談会特集、入試関連記事に注目

【2017年1月アクセスランキング】1位はブラックラボ検証 受験関連記事も人気

【2016年アクセスランキング】東大新聞オンラインで今年1番読まれた記事は……?

【2016年11月アクセスランキング】トップは図書館閉鎖問題 アメフト、制作展の記事が続く

【2016年10月アクセスランキング】ボカロ講義録が1位に 2位は新設の研究者支援制度

【2016年9月アクセスランキング】1位は進学選択 七大戦、秋のスポーツにも注目

【2016年8月アクセスランキング】ジェンダー企画、リオ五輪寄稿企画が上位に

【2017年4月アクセスランキング】今年も新入生アンケートに高い関心東大新聞オンラインで公開された投稿です。

【サークルペロリ】東京大学アマチュア無線クラブ 自分の力で通信

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 駒場Ⅰキャンパスの学生会館の一室の扉を開けるとモールス信号の音が聞こえ、棚に並んだ無線機が目に飛び込んでくる。訪れたのは、東京大学アマチュア無線クラブだ。

 

モールス信号を使って交信する部員

 

 アマチュア無線は、金銭上の利益のためではなく個人の趣味として行う無線通信。電波を通して、国内だけでなく海外の人とも通信できる。

 

 アマチュア無線の交信には、主にアルファベットなどを長さの異なる符号で表したモールス信号を使う場合と音声で直接交信する場合の2通りがある。代表の佐渡友康さん(工・3年)は「モールス信号は使いこなせるようになるのが大変ですが、慣れると音声よりも遠くまで届き、疲れにくいのが利点です」と話す。アマチュア無線クラブではモールス信号による交信と音声による交信の両方をしている。

 

 「電波はかけがえのない財産」(佐渡さん)であり、不当に利用することを禁じるため、無線の操作には「アマチュア無線技士」の資格が必要。アマチュア無線クラブの機器を十分に活用するには第1級の免許を取得しなければならない。新入生は例年未経験者が多いが、大半が2年生になるまでに第1級の免許を取得する。多くの大会で上位に入賞したり、過去には総長賞を授与されたりしたこともある強豪だ。

 

 記者が訪れたのはコンテスト当日。コンテストでは決められた時間の中で交信した局数が競われる。交信の内容は自分の局のコールサイン(局ごとに割り当てられた識別番号)や信号の聞こえ具合など。多くの局と交信するには、電波を飛ばすアンテナの向きを工夫するなどの戦略を立てる必要がある。

 

 今回は部室から大会に参加したが、夏に行われる全国大会では山にキャンプに行って標高の高い所から電波を飛ばす。佐渡さんは「高い所、見晴らしの良い所のほうが遠くまで電波が届きます」と説明する。交信を夜通しで続けるため、体力や精神力も必要だ。

 

大会のため山でアンテナを立てる(写真はアマチュア無線クラブ提供)

 

 サークルの活動は無線通信だけではなく、アマチュア無線で使用する周辺機器などの電子工作も手掛ける。さらに毎週水曜日には部員が集まってプログラミングなどの技術の習得に励み「コンテストの得点を集計するためのアプリの開発を目標にしています」と意欲を見せる。

 アマチュア無線の楽しみ方はいくつもある。見知らぬ海外の人とのコミュニケーションを楽しむ人もいれば、電波を飛ばすために山に登る過程をハイキングのように楽しむ人もいる。

 

 しかし最も重要な点は「通信の全てを自分で準備する点」だと佐渡さんは話す。例えば携帯電話は通信会社が引いた回線を利用しているに過ぎない。「技術さえあれば全てを自作の機器で賄うこともできます」。学生会館の小さな一室で「生の交信」の世界を体験した。


この記事は、2017年5月23日号に掲載した記事を再編集したものです。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

 

 

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