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お悩み解決 東大卒の恋愛専門家から恋に煩う東大生へ 赤門恋愛相談室

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 東京大学新聞では昨年、クリスマス前の時期に合わせて東大生の恋愛相談記事掲載した。この記事の反響を受けてこの度、新コーナー「赤門恋愛相談室」がスタート。前回の記事と同様、東大生からの恋愛相談に対し、医学部健康科学・看護学科(当時)卒で「恋愛結婚学研究所」所長を務め、女性の恋愛・婚活を支援するサイト「愛カツ」を運営する新上幸二さんが答えていく。

 

ーーとにかく出会いがない。授業では接点がないし、部活では男ばかり、バイト先も男ばかり。どこで女性と出会えばいいのか、何も分からないです(文Ⅰ・2年、男性)

 

 男性が大多数を占める東大において女性との出会いが少ないのは分かります。でも、それなら女性がいる環境に自ら身を置く努力をしてみましょう。「出会いがない」は多くの人が抱える悩みですが、正直これは言い訳にすぎないのではないでしょうか。

 

 大学生ならば、女性のいるバイトやサークルを探せば良いし、仲の良い友達に紹介してもらうのもありです。恋愛上手になるには、友達を多く作ることも意外と重要です。

 

ーー私と恋人は同学年で、今後私は大学院に進学し、彼は就職しておそらく最初の数年は地方で勤務する予定です。今は週に何度も会うことができていますが、今後今のような仲の良い関係を続けられるのか不安です。会いたい時に会えないとどれだけ苦しい思いをするのかが分かりません(法・3年、女性)

 

 遠距離恋愛を続けるには、2人のルールを明確に決めておくことが大切。1カ月に1回会う、などと定めて、定期的に直接相手に会うことが大事です。

 

 ただ、遠距離恋愛を続けるのはかなり難しい。できるなら彼がいないときの楽しみ方を見つけ、彼に依存し過ぎないようにしましょう。もちろん人生設計を相談しながら、遠距離恋愛の期間を短くする努力もした方が良いですね。

 

ーー高校の部活で知り合ったある女性が好きで忘れられません。もうほとんど会うこともなく相手は彼氏持なので諦めた方がいいとは思っているのですが……(理・4年、男性)

 

 採れる方法は二つ。すっぱり諦めて次の女性を探すか、駄目元でアピールしてみるかです。後者の場合うまくいく可能性ははっきり言って限りなく低いですが、駄目だと自覚することも経験です。何も、女性は世界に一人しかいないわけではありません。

 

 次の異性を見つける気持ちが起こらない原因は、もしかすると「付き合う相手の全てを好きでなければいけない」と考えているからでは。最初はそこまで好きではなくとも、一緒にいるうちに相手を好きになることもあります。恋愛は経験を積まないとうまくなりません。もっと気楽に恋愛を楽しんでほしいです。(談)

 本企画は東大生の恋愛に関する悩みに対し、東大卒の恋愛専門家の新上幸二さんが相談に乗る不定期連載です。

***

新上 幸二(しんじょう こうじ)さん(株式会社TOBE取締役)

02年医学部健康科学・看護学科(当時)卒。IBMビジネスコンサルティングサービスなどを経て、16年より現職。株式会社TOBE(http://tobe.tokyo/)常務取締役。ハワイ最大級の結婚相談所「マッチメイキング・ハワイ」(https://mhawaii.net/)社長。「愛カツ電話・メール恋愛相談」(https://soudan.aikatu.jp/)にて恋愛相談受け付け中。

 

 


この記事は2018年4月3日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナル記事を掲載しています。

ニュース:「民間試験導入、再考を」 大学入学共通テスト 東大教員から批判の声
ニュース:日本学士院賞 松村教授・豊島教授ら5人が受賞
ニュース:2017年度卒業式学位記授与式 五神総長「変化を好機と捉え挑戦を」
ニュース:工・中須賀教授らが最高賞 宇宙開発利用大賞
ニュース:若者向け治療 若者に特化 施設設立
企画:公平・公正 どう担保 英語民間試験導入を巡るシンポジウム
企画:580億円流出も……仮想通貨の正体は 希望か、新たな火種か
企画:歴史のロマンをあなたにも 元「プロのサムライ」が語る歴史の楽しみ方
ミネルヴァの梟ー平成と私:2.安田講堂の復活
地域の顔 本郷編:チムニー本郷店
はじめての論文:青山和佳教授(東洋文化研究所)
東大今昔物語:1963年1月16日発行号より 自ら開塾する東大生たち
赤門恋愛相談室:お悩み解決 恋に煩う東大生へ
キャンパスガイ:伊藤悠貴さん(理Ⅰ・2年)

※新聞の購読については、こちらのページへどうぞ。

お悩み解決 東大卒の恋愛専門家から恋に煩う東大生へ 赤門恋愛相談室東大新聞オンラインで公開された投稿です。


【2018年3月アクセスランキング】3/10実施の合格発表に高い関心

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(左から時計回りに)合格者番号掲示当日の受験生ら、CHOCO=CROWのメンバー、受験生応援連載のロゴ

 

 東大新聞オンラインで3月に公開した記事の3月中のアクセスランキングを調べたところ、1位は3月10日に行われた2018年度入学試験(前期日程・外国学校卒業学生特別選考)の合格発表に関するニュース記事だった。今回は前期日程で3014人、外国学校卒業学生特別選考で40人が合格。同日の記者会見で東大は、今回から復活した理Ⅲ志望者を対象とする面接について「医療者としての適性を持つ学生を獲得できたと考えているが、効果については追跡調査をする必要がある」とコメント。記事ではその他にも復活後2年目を迎えた合格者番号掲示を見に来た受験生らの様子を、多くの写真を交えて速報した。東大入試の最後を飾る合格発表が、例年通り大きな注目を集めたようだ。

 

 今回のアクセスランキングでは受験生向けの記事が六つランクインした。「東大に実家から通えるのはどこまで?」と題して遠方から東大に通う経験を持つ学生の体験談を紹介する記事や、東大で履修できる外国語を紹介する記事も多く読まれていた。

 

 受験以外の話題では、2位に英教育専門誌『タイムズ・ハイアー・エデュケーション(THE)』発表の最新版アジア大学ランキングの記事がランクイン。大学ランキングの記事は、毎回多くのアクセス数を記録している。東大は直近3年で低迷が続き、今回は13年の発表開始以来最低の8位。記事では、5項目の評価軸のうち東大の強みとされていた「研究」「教育」で点数が落ちたことを説明している。

 

 7位の記事では、東大の女子学生によるアイドルコピーダンスユニット「東大CHOCO=CROW」が出場した、女子大生アイドル日本一を決定する大会の模様を数多くの写真と共に伝えた。東大CHOCO=CROWは17年12月に行われた関東予選を2位の成績で突破し、今回の決勝戦に挑んだ。ダンスのミスなど反省点が多かった関東予選後、倍近くの練習量を重ねてきたという東大CHOCO=CROW。アイドルコピーダンスに取り組みつつ勉強にも励むメンバーやプロデューサーが、活動にどのような思いを込めているのかを重点的に取材した。

 

【2018年3月アクセスランキング】

1   18年度前期日程試験3014人が合格 理科で最低点大幅低下、文科は昨年度並み

2   THEアジア大学ランキング 東大は過去最低の8位 研究、教育で評価落とす

3   【受験生応援2018】東大に実家から通えるのはどこまで?

4   【受験生応援2018】東大生の実態に迫る! 読者の疑問に答えます

5   【受験生応援2018】最も仲の良いクラス? 知られざるインタークラスの実態

6   【受験生応援2018】現役東大生が語るフランス語学習

7   東大CHOCO=CROW、最後のUNIDOLで決勝戦出場 ラストステージで見せた「攻めの姿勢」

8   【受験生応援2018】初修外国語を決めよう!各言語の特徴・クラスを徹底比較

9   【受験生応援2018】現役東大生が語る中国語学習

10   「当たり前」の目標並ぶSDGs 朝日新聞が大々的に推進するわけとは

※当該期間に公開した記事のみを集計

 

過去のランキング

【2018年2月アクセスランキング】入試関連記事に関心

【2018年1月アクセスランキング】近藤選手の箱根欠場に注目

【2017年アクセスランキング】まつりさんの記事が今年の年間1位に

【2017年12月アクセスランキング】東大生のSNS事情に高い関心

【2017年11月アクセスランキング】東大生の「銀行志向」に関心

【2017年10月アクセスランキング】「ボカロ」関連の記事が人気

【2017年9月アクセスランキング】哲学者の勉強論に高い関心

【2017年8月アクセスランキング】「駒場図書館冷房停止」が1位

【2017年7月アクセスランキング】宮台教授のメッセージに注目

【2017年6月アクセスランキング】「N高」に注目 論文不正問題に依然高い関心

【2017年5月アクセスランキング】高橋まつりさん関連記事に大きな注目

【2017年4月アクセスランキング】今年も新入生アンケートに高い関心

【2017年3月アクセスランキング】トップは東大生のテレビ 合格発表の記事も上位に

【2018年3月アクセスランキング】3/10実施の合格発表に高い関心東大新聞オンラインで公開された投稿です。

【東大発サークル「ごちそう会」寄稿】新歓・クラス会にぴったり!飲めない人も楽しめる食事会

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何かと集まる機会の多い4月。「ごちそう会」メンバーに、食事会にぴったりなお店について寄稿してもらった。

(関連記事=飲み放題に代えごちそうを 学生団体が提案する新しい食事会の形

 

新学期は出会いの季節! 初めてのクラス会にサークル新歓の食事会・女子会など、夜の集まりがたくさん。

でも、こんな悩みを持つ幹事さんも多いはず…

  • 未成年の人もいるから、飲み放題ができない
  • お店が、ちゃんと交流できる席配置なのか不安
  • せっかくなら、おいしいお店を選びたい

そんな悩みを持つ幹事さんに東大発のサークル「ごちそう会」が、自分たちで実際に使ったおすすめのお店を紹介します! 

  • ソフトドリンクだけの予約もOK
  • 席替えしやすくて、大人数でも入れる
  • なんてったって、おいしい!

そんな渋谷・下北沢の、おすすめの4店です。

 

 

ちなみに、ごちそう会(略して「ごち会」)は

「夜の集まりで、どうして飲み放題しかないのだろう?」

「せっかく集まるなら、おいしいコースを楽しみたい」

という想いから生まれました。そこで自分たちでお店をめぐって、心からおすすめできるお店にプレゼン。【自慢の料理+おすすめの2杯】(ソフトドリンクも選択可)のとっておきのコースを一緒につくり、WEB掲載しています。 

 

【ごちそう会】飲み会に、ごちそうを

 

新歓・クラス会のおすすめ店

 

【渋谷】女性も入りやすいおしゃれ店、デ・サリータ

 

渋谷駅マーク下から5分ほど歩いた、道玄坂の途中にあるお店です。

まず、おすすめなのは料理! 写真は1人分です。(ソフトドリンクのみの提供もOKです)

あっつあつの「ぷりぷりエビのアヒージョ」やトリュフのホワイトクリームパスタなど、大学生に向けて特別な料理・値段のコースです。

 

一人一人出てくる、トリュフのパスタ。お皿は人数により変わります

 

40~60名なら1フロアで貸切りができて、スクリーンも利用できます。また、人数が10人程度なら、2階の奥に半個室があります。新歓の女子会などにもぴったりの雰囲気。お店の様子は、ごちそう会のコンセプト動画でも見られます。

ごちそう会専用のコースなので、詳しくは電話で「ごち会コースをください」と相談してみてください。

デ・サリータ(渋谷:2名~60名、2980円、日〜木)

 

【渋谷】じゅうじゅうラム肉などで満腹! キリンシティ

 

じゅうじゅう音を立てて出てくる、漬けラムのローストがメイン。カルボナーラや毎月変わる季節の料理などなど、惜しみなく出てお腹がいっぱいになるコースです(にもかかわらず2800円とお得!)。運動系サークルにもおすすめ。

シェアスタイルの料理なので、席替えしやすくなっています。

 

 

ここからさらに奥の窓際へと進むと、

 

 

奥の座席で、10名程度から数十名で交流できます。小〜中規模の会向けですが、人数はご相談ください。

ソフトドリンクも充実! 「自家製レモンスカッシュ」や「ももいろソーダ」など、おすすめドリンクを楽しんでください。

マーク下から南口方面(バス停のある方)へ5分ほど。歩道橋を渡ってすぐです。

キリンシティ渋谷桜丘店(渋谷:2名~、2800円、全曜日可)

 

【下北沢】ふわぁっと蒸したての牡蠣をみんなで。雷や

 

蒸したての牡蠣をみんなでシェアできるお店。しめは牡蠣のスープを使った雑炊です。雑炊以外の料理はシェアできるので、席替え・交流がしやすい場所です。

また、奥のスペースは周りと区切られて話しやすいです。人数次第ですので、お店と相談してみてください。

 

 

南口から徒歩3分。野菜が並んでいる目立つ入り口は、一度は見たことがある人も多いのでは。ここが「雷や」。

同じ鍋を囲んでお話しすると、自然と距離も縮まってきます(ちなみに、牡蠣が苦手な人がいたら、食材の変更も相談可能です)。牡蠣やお肉に、地産地消のフレッシュな野菜など、様々な味を楽しんでください。

雷や(下北沢:4~30名、3000円、月~金)

 

【下北沢】ここぞという会に。創作牛タン料理、夏火鉢

 

前菜、メイン、パスタまで牛タンの夏火鉢。創作牛タン料理を心ゆくまでどうぞ! 5年以上続き、地元でも人気のお店になっています。

 

 

写真の右列のように16名程度で席をとれます。地元の常連さんにも、大学生にも人気のお店です。

夏火鉢(下北沢:2~30名、3240円、月~木 )

 

おすすめのお店で、新歓・クラス会を成功させてください!

 

「ごちそう会」とは?

飲み放題で「物足りないな」「もっとおいしく食べたい」と思うこと、ありませんか? 新しい会の提案です。

私たちはお店をめぐり、心からすすめられるお店と【自慢の料理+おすすめの2杯】(ソフトドリンクも選択可)のとっておきのコースをつくりました。WEBサイトに公開しています。

メンバーも募集中(2年生以上も歓迎します)。今までの飲み放題コースにかわる、おいしくて楽しめる会を広める学生団体です。

 

こんな人におすすめです。

「おいしいお店でご飯を食べて記事が書きたい」

→ライター経験豊富なメンバーと、一緒にグルメ歩きしましょう。

「お店にプレゼンして、オリジナルのコースをつくりたい」

→2012年から6年間、活動してきたノウハウを直接、教えます。

「おいしいお店をもっと知りたい」

→一緒に、お店をめぐりましょう。

 

おいしいコースでお腹も心も満たされて、仲間と親しくなれる。そんな会を定着させます。

 

連絡先:ごちそう会 野並新 mail@gochikai.com

【東大発サークル「ごちそう会」寄稿】新歓・クラス会にぴったり!飲めない人も楽しめる食事会東大新聞オンラインで公開された投稿です。

【N高生のリアル】<子供たちだけの世界>に学校を 記者が見たN高がつくる未来

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 全10回でお送りした「N高生のリアル」の最終回をお送りする。今回は、連載を担当した学生記者からの「オピニオン記事」となる。

 

記者について:東京大学教育学研究科比較教育社会学コース修士課程修了(2017年)。東大新聞オンラインの立ち上げの経験も含め、インターネット×学校教育を対象として、社会学的に研究している。

 

 

<子供たちだけの世界>に学校を

 

 スマホネーティブ世代が今、中高生になった。今の子供たちのスマートフォンの使いこなしっぷりはすさまじい。多くの子が自らコンテンツを発信し、同級生のコンテンツに「いいね」をつけてコミュニケーションをしている。

 

 インターネット上に教育サービスを展開するというのは、いわばそういった<子供たちだけの世界>に割って入るということである。

 

 N高は、その世界にいかにして入っていったのだろうか。

 

インターネットによって出現した教育の「フロンティア」

 

 N高にまつわる記事といえば、VR入学式といった派手な演出と、「プログラミング教育」×「起業部」といった、情報が高度化する社会を生き抜く、新しい力を持った人材輩出への期待を取り上げたものが多い。

 

<参考記事>

N高、全新入生2800人にVRゴーグル配布して入学式

N高が起業家を育成する「起業部」設立–高校卒業後の進路に新たなスタンダードを

 

 このような先端テクノロジーの導入や、社会の先端人材輩出なども、確かにN高の特徴的な取り組みの一つだ。だが筆者は、多くのメディアが注目するこれらの「分かりやすい」魅力とは違う点に希望を感じている。それは、「若者のインターネット・コミュニケーション上に学校を立ち上げる」意義である。

 

SNSによって成立する学校空間

 

 全10回の連載の中で、最も反響を呼んだのが、連載第5回のSlackでのオンラインHRの取り組みである。

 

 普通の学校においては、スマートフォンやSNSは使用禁止であったり、あるいは教育的に忌避されたりする場合が多い。しかしN高においてはむしろ、スマートフォンやSNSが生徒と教師を結ぶ貴重なコミュニケーションの手段だ。

 

 それ故、普通の教師は「生徒がSNSばかりやっていてけしからん」となるところを、N高教師は「生徒がSNSを見てくれない」と、「悩み」が反転する。

 

 そこにおけるN高教師の仕事は、まずは「生徒がクラス運営用SNSにアクセスする」ことを仕掛けることだ。そのために担任教師は、親しみやすいキャラクターを演じたり、ゲームをする企画をしたりと、さまざまな工夫をしていた。教師は生徒にオンラインHRに来てもらうことで、学習への動機付けをしていた。

 

 N高のSlackでのコミュニティーづくりは、当初は生徒同士のコミュニケーションのトラブルがあったものの、生徒内での自警団が結成されるなど、インターネット・コミュニケーション上の秩序を作り出す試みだった(連載第9回)。

 

 また、生徒が自由に活動するネット部活の役割も見逃せない。連載第8回でも一部取り上げたが、ネット部活によって、生徒が社会的に立ち直ったケースも出てきている。

 

「いつでも・どこでも・だれでも」の先へ

 

 しかし、インターネット上で教育を行う取り組みは、N高が初めてではない。古くはアメリカのカーンアカデミーや、日本でもさまざまなサービスが世に出てきた。これら既出のインターネットでの教育サービスと、N高の違いはどこなのだろうか?

 

 多くのオンライン教育サービスは、教育者(大人)が作った授業や教材といった「コンテンツ」を学習者(子ども)に届ける。そこでのストロングポイントは、教室に通わずに済むという「どこでも」、授業時間に拘束されないという「いつでも」、また限りなく値段が安い(フリーな場合も多い)という「だれでも」の3点だといわれている。

 

 N高もこの3点の強みはもちろんあるが、筆者は「学習者同士のコミュニケーションを重視した」点に、N高の特有さがあるのではないかと考えている。

 

「非教育的なもの」への挑戦

 

 N高の指導のポイントは、物理的に離れている生徒といかに連絡・コミュニケーションを取り続けられるかという点にある。

 

 通常の通信制高校、あるいは広く通信教育においても、この点が教育上の課題となり続けてきた。物理的に会って指導するならば、ある種強制的に学習をさせることも可能だが、通信教育においてはそうではない。いかにして学習者を、学習へと動機付けし続けることができるのか。N高はそれを、多くの高校生が日常的に多用している「スマートフォン」「SNS」に見出した。ここに、スマートフォンは公教育の(補完ではなく)主役となる可能性を帯びたように思う。

 

 とはいえ、SNSを使えばすぐさま高校生を学習に駆り立てることができるわけではない。ただでさえ、若者がスマートフォンを見る「アテンション時間」を、さまざまなサービスや広告、あるいはコンテンツが奪い合っているのが現状である。ある意味でN高の敵は、生徒のアテンションを奪う全てのインターネットサービスなのかもしれない。

 

 だが、それは今に始まったことではない。教育、あるいは学習は常に、そのような「非教育的なもの」との戦いであったともいえる。(例:「勉強しなければいけないけど、漫画やテレビを見たい…」)

 

 多くの教育機関は、学習者を登校させ、教室で授業を受けさせることでそれら「非教育的なもの」から隔離し、教育を施してきた。しかし、学習者が日常に帰ると、途端にそれら「非教育的なもの」から刺激を受ける日々である。これまでの教育機関は、このような生徒の現実にふたをしてきた。

 

 しかしN高は、それに立ち向かうことにした。現代で最も「非教育的なもの」にあふれるといっても過言ではないインターネット世界に、学校空間を立ち上げた。N高は、学校教育業界が開けたくなかった扉を開けて、そこに立ち入る役割を果たしたのではないか。

 

 今年も新たに約2800人の生徒を受け入れ、開校3年目にして全校生徒約6500人になったN高。快進撃が続くが、N高の挑戦はまだ始まったばかりだ。N高で育った生徒が、社会でどう活躍するのか。期待して経過を見守りたい。

 

【N高生のリアル】

昼休み明けの恒例授業「サークルリーディング」とは?

東大受験から基礎固めまで レベルに合わせた英語教育

「N高は『道具箱』」 可能性を生むプログラミング

ITで教育はどう変わるか? 「N予備校」の理念や開発経緯に迫る

Slackで交わされる「オンラインホームルーム」とは

長期実践型教育「プロジェクトN」のリアル

「皆は俺の宝だ〜!」奥平校長の愛の叫びと海外からのまなざし

ネット部活のリアル N高クイズ研究会の生態系

「孤独な通信制」という常識を覆す Slackで育まれる友情

生徒の人生にホームを作る N高サッカー部が目指しているもの

【N高生のリアル】<子供たちだけの世界>に学校を 記者が見たN高がつくる未来東大新聞オンラインで公開された投稿です。

【推薦の素顔】塚原遊尋さん 哲学を軸に幅広い学びと出会いを

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 2016年度から、多様な人材の獲得を目的として導入された「推薦入試」。ペーパーテストが主な評価対象となる一般入試とは異なり、エッセイや面接などが課されており、毎年個性的な学生が推薦入試を利用して入学します。そんな彼らを一人一人取材するのが本連載「推薦の素顔」。東大に新たな風を吹き込む彼らに、あなたも触れてみませんか。

 

 

塚原 遊尋(つかはら・ゆうじん)さん

文Ⅲ・2年→教養学部

 

 持ち前の行動力で多彩な活動に参加し、多くの出会いを経験した。読書が好きで、自分の考えを書くことにも興味が湧いた高校生の頃、哲学エッセイのコンテストである哲学オリンピックに出場。他の出場者と今も続く親交を築き、普段話せないような哲学の問題を語り合った。近所の住人の誘いでスウェーデンに留学した際は、相手が誰であろうと、ありのままの自分をぶつけることの大切さを学んだ。

 

 こうした「受験勉強以外も評価される」ことが推薦入試受験の決め手。哲学科のある文学部と比べ教養学部は前年度の合格者数が少なかったが「不合格になるリスクが高いのはどの学部も一緒。哲学を中心に興味のあることを広く学びたい」と考え志望した。面接の感触は良くなかったが「東大の教授陣が、一高校生と30分も話してくれるなんてすごい」と感銘も受けた。合格した今は「面接での『何も知らないのでこれから勉強します』という発言に恥じないよう、本気で学ばないと」と意気込む。

 

 在学中の目標は、哲学の思考の方法を自分のものにすること。「原典をどんどん読ませるなど先生方の『鍛えよう』という熱意を感じ、奮い立ちます」。授業外でも読書会を企画するなど、哲学好きの友人も増えた。

 

 現在は「高校時代の自分が欲しかったような、腹を割った話ができる場を、多くの人に提供したい」との思いから、仲間と共に高校生向けのサマーキャンプを企画している。将来については「先のことを考えてもうまくいかない」と言いながらも「縁は大事にしたいです」。次はどんな出会いが待ち受けているのだろうか。

 

(取材・小田泰成 撮影・児玉祐基)


この記事は、2018年1月23日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナル記事を公開しています。

 

 

ニュース:就活が学業の妨げに 解禁日無視に東大も対策
ニュース:日本学士院学術奨励賞 工・山東教授を選出 次世代MRI技術を開発
ニュース:超音波で空中浮かぶLED光源を開発
ニュース:岡部さんがミス着物に 「研究者の夢に生かしたい」
ニュース:東大でセンター試験実施 約7千人が受験
ニュース:井上学術賞 医・大木教授と工・西林教授が受賞
ニュース:インフルエンザウイルスの遺伝解明
ニュース:日本学生野球連盟 宮台投手を表彰 東大から49年ぶり
ニュース:岡崎選手に個人賞 アメフトオールスター戦 6選手が出場
企画:日本の米の未来を占う 米の生産調整廃止へ 
企画:存在感急上昇中 YouTuberって何者? 新「近所のお兄ちゃん」
推薦の素顔:塚原遊尋さん(文Ⅲ・1年→教養学部)
火ようミュージアム:古代アンデス文明展
100行で名著:『東芝の悲劇』大鹿靖明著
キャンパスガール:横谷汐香さん(文Ⅱ・1年)

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【推薦の素顔】塚原遊尋さん 哲学を軸に幅広い学びと出会いを東大新聞オンラインで公開された投稿です。

【新入生アンケート2018 ①受験】 56%が入試解答非公表を支持

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 東京大学新聞社は3月29・30日、全新入生を対象にアンケートを実施し、新入生3132人の92%に当たる2866人から回答を得た。このアンケートは毎年諸手続き時に行う東大生対象の唯一の全数調査で、受験や大学生活、進路への意識、東大の諸制度や社会問題への賛否などを質問。アンケート結果から、今年の新入生の傾向を分析した。(本文中の割合は小数第1位を四捨五入)

 

(構成・一柳里樹)

 

出身地・出身高校

 

 出身高校は、中高一貫の私立校が52%と17年の50%を上回り、中高一貫でない公立校は29%で昨年を2ポイント下回った。共学校出身者が51%と約半数を占める一方、男子校出身者も39%いた。女子校出身者は8%。

 

 

 出身高校の所在地は、東京都の1043人(36%)が最多。以下神奈川県(307人、11%)、兵庫県(165人、6%)と続く。昨年5位の愛知県(127人、4%)が同4位の千葉県(125人、4%)を抑え2年ぶりの4位に。関東地方の高校出身者の割合は、昨年を2ポイント上回る58%だった。

 

 

東大入学について

 

 東大入学を意識した時期は高校1年が28%で最多。高校2年が25%で続き、高校入学前から意識していた新入生も25%いた。東大への入学理由は「研究・教育の水準が高いから」が64%と最も多く、「入学後の進路選択の幅が広いから」(43%)、「将来の進路選択に有利だから」(41%)も4割を超えた。

 

 

 実力以外で東大合格に必要なものを聞くと「周りの環境」が52%でトップで、43%の「運」、39%の「保護者の経済力」が続く。教育格差の拡大が取り沙汰されている影響か、「保護者の経済力」と回答した新入生の割合は5年前の29%から10ポイント上昇している。

 

 

入試制度

 

 前期日程合格者の推薦入試への賛否は、賛成77%に対し反対22%と賛成が大きく上回った。賛成は一昨年が53%、昨年が64%と年々増加。推薦入試導入から2年がたち、推薦入試への理解度が高まっていることがうかがえる。

 

 

 理Ⅲ志望者対象の面接試験復活を受け、面接試験実施の是非について聞いたところ「理Ⅲのみ行うべきだ」が61%を占め、「全科類で実施すべきでない」と答えた新入生は9%にとどまった。理Ⅲ生の中でも「理Ⅲのみ実施すべきだ」「全科類で実施すべきだ」合計で72%の新入生が面接試験に理解を示している。

 

 大阪大学・京都大学などでの出題ミスを受けて文部科学省が求めている、入試問題の解答例の公表について尋ねると「公表する必要はない」「公表すべきでない」合わせて56%が解答例を公表しない東大の方針を支持した。東大は非公表の理由を「多様な解答プロセスを重視するため」としている。この二つの回答の合計は、文科で60%、理科で54%と6ポイントの差がついた。

 

2018年4月20日12:20【記事訂正】出身地別割合のグラフを追加しました。

 

【関連記事】

2017年度の新入生アンケート

東大新入生アンケート2017① 推薦合格者、女子は4割 「エリート意識ある」半数割れ

東大新入生アンケート2017② 支持政党は自民36%、民進4.5% 無支持は43%


この記事は、2018年4月17日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

 

インタビュー:「駒場ワンダーランド」で知的欲求を満たす 若手実業家・御手洗さんインタビュー
ニュース:「変化楽しんだ先人に学んで」 学部・大学院で入学式
ニュース:国大協が共通指針を発表 大学入学共通テスト 東大は方針変えず
ニュース:最遠方記録大幅更新 90億光年先の単独の星を観測
企画:視野広げ 己知って 2年生が振り返る 東大生活この1年 
企画:英語の資格試験はいつ受けるべき? 目的見極め早めの準備を
企画:新入生アンケート2018 家賃支援 受験生に浸透 親の経済力、入学への必要度増す?
東大最前線:北極海の波浪観測 早稲田卓爾教授(新領域創成科学研究科)
東大今昔物語:1984年4月17日発行号より 酒に飲まれる東大生
サークルペロリ:SEDS UTokyo 留学生と宇宙目指す
キャンパスガール:髙木友貴さん(文Ⅰ・2年)

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【新入生アンケート2018 ①受験】 56%が入試解答非公表を支持東大新聞オンラインで公開された投稿です。

【新入生アンケート2018 ②大学生活】 奨学金受給者は16%

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 東京大学新聞社は3月29・30日、全新入生を対象にアンケートを行い、新入生3132人の92%に当たる2866人から回答を得た。このアンケートは毎年諸手続き時に行う東大生対象の唯一の全数調査で、受験や大学生活、進路への意識、東大の諸制度や社会問題への賛否などを質問。アンケート結果から、今年の新入生の傾向を分析した。(本文中の割合は小数点第一位を四捨五入)

 

(構成・一柳里樹)

 

大学生活

 大学生活で最も重視したいことは「学業」が68%で最多。第1選択肢以外の重視したいこととしては「部活・サークル」52%、「アルバイト」26%などを選ぶ新入生が多かった。

 

 前期教養課程のカリキュラムへの期待度は「非常に期待している」「どちらかといえば期待している」を合わせ94%と2年ぶりに9割を超えた。給付金をもらう予定の新入生は16%の453人で、中でも今年度から本格実施される日本学生支援機構の給付型奨学金を受給する予定の学生は全体の4%の125人。複数の奨学金をもらう予定の人も48人いた。

 

進学先

 

 近年制度変更が相次ぐ進学選択制度の賛否を尋ねると、「評価する」「どちらかといえば評価する」が合計94%。進学選択制度が非常に多くの新入生に支持されていることが分かった。

 

 前期日程と外国学校卒業学生特別選考で入学した新入生に、出願時に後期課程の進学先が決まっていたか聞いたところ、「全く決まっていない」人が昨年より2ポイント多い42%に上った。「学科・専修まで決まっていた」人は16%だった。

 

 

 学部・学科選びで重視するものでは、90%の新入生が「自分の興味」を選択。以降、「就職の強さ」(21%)、「教員」(8%)と続く。理系学部進学を目指す文科生は28人、文系学部進学を目指す理科生は66人だった。

 

 

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この記事は、2018年4月17日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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【新入生アンケート2018 ②大学生活】 奨学金受給者は16%東大新聞オンラインで公開された投稿です。

【蹴られる東大 番外編】ハーバード大生と東大生が見る東大の「国際競争力」

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 海外大学進学を目指す高校生の増加は、東大をはじめとする日本の大学の国際競争力低下と切り離せない関係にある。それを顕著に表しているのが、世界大学ランキングにおける東大の順位の低迷だ。

 

 一方、大学ランキングの順位に振り回されるべきではないという意見もある。東大は、大学ランキングとどう接すればいいのか。そして、世界各国から留学生を呼び込み国際競争力を高めるために取るべき方策とは。「蹴られる東大」の連載4回目に登場したハーバード大学の髙島崚輔さんと、髙島さんが留学前、東大で所属していた前期教養課程の高山ゼミで大学ランキングに関する報告を行った森海渡さん(法・3年)という国内外の学生2人の目から、東大の国際競争力や大学ランキングとの向き合い方を考える。

 

 

(本文中に付されている数字をクリックすると注に飛び、注の冒頭の数字をクリックすると本文の該当箇所に戻ります)

 

「幸せな」東大ブランドから抜け出せ

 

 

 「そもそも、東大は国際的地位を向上させたいのかな?その必要はあるのかな?」髙島さんは問いかける。「留学生を入れたり英語で論文を出したりすれば大学ランキングの順位は上がる。やりようはいっぱいあるけど、正直それがいいのかどうかはよく分からないし、そもそも『大学ランキング=国際的地位』なのかも分からない。それより、どうすれば東大生が世界で戦えるようになるか考えることの方が大事ではないか」

 

 世界大学ランキングを見ると近年、「世界各国から多くの学生が集まっている」シンガポールや中国の大学の台頭が著しい。一方、東大はこれまで「日本の大学生のために何ができるか、という観点で施策を進めてきた」と髙島さん。外国向けのアピールをあまりしてこなかったため、海外での東大の認知度は低いまま。夏休みに日本に留学する学生はハーバード大学にも多いが、多くの学生の留学先は、留学先として提携校になっている同志社大学だ。東大のPEAK入試に合格したものの、東大を蹴ったハーバード大生も。「つまり、東大はハーバード大生に選ばれていないのが現状です」

 

 しかし、いろいろな国の人が東大を目指す環境に変わり、留学生が増加すれば「東大生にもすごくプラスの影響をもたらすのでは」。海外の学生にとっても魅力ある大学になるために、東大がすべきことは多いと髙島さんは指摘する。

 

 まずは東大の認知度の低さの解消だ。例えば、米国大出願時のプラットフォームであるThe Common Application(Common App)[1]には、英国や中韓など米国外の大学も情報を登録している。しかし、日本の大学でCommon Appに登録しているのは同志社大学のみ。「ハーバード大学ではアジア系の学生や日本に興味がある学生を除いて、そもそも東大は相手にされていない。The University of Tokyoが日本のトップ大学だと知らないから、『東京にある大学』くらいにしか思われていない」。Common Appへの登録は、ハーバード大を目指すような米国の高校生の間で東大の認知度を上げるのに役立つ方策の一つといえる。

 

 さらに、「どうして東大で学ぶ意味があるのかアピールすることが大事」と髙島さん。「東大に行けば何が勉強できるのか、海外の学生どころか、日本の学生にすらよく分からない。東大ブランドに安住し過ぎているのではないか」と疑問を投げかける。

 

 「でも、この状況はとても幸せなんですけどね」。母国語でまともな高等教育を受けられるからこそ、優秀な日本人の多くは東大を目指し、東大も海外の学生を呼ばずとも成功してきたのだと髙島さんは分析。逆に中国・韓国出身の学生には、「本当に一流の教育を受けようと思ったら、米国に来るしか選択肢がなかった」と話す人も多いという。

 

 しかし、国際競争力強化が叫ばれる今、東大は、海外の学生にも魅力ある大学へと変わらないと生き残れない時代にあるのかもしれない。「日本だけで幸せになれる時代ではなくなったと自覚することが、東大の国際的地位向上への第一歩なのではないでしょうか」

 

正しい努力でランキング上昇を

 

 

 髙島さんは、海外の学生にとって大学選びの一つの指標となる大学ランキングは「こだわり過ぎる必要はないが、国際的地位向上のためには重要な要素の一つ」だと話す。では、東大は大学ランキングの順位を上げるために、どのような手を打つべきなのだろうか。

 

 森さんの提案は単純明快だ。東大は、大学ランキングの重要性と配点表を意識せよ――

 

 「日本には、『東大はすごい』という謎の信仰がある」。大学ランキングの順位は下がっても東大の「本当の大学力」は世界トップクラスだという言説が飛び交う日本の現状を、森さんはそう形容する。「もちろん多様な目的の下設立され、多様な学問分野を擁する大学を一定の評価軸に基づいてランキング化する行為自体、人によってかなり評価が分かれうる営みです。でも、大学ランキングの順位は『大学力』の指標として分かりやすい。実際毎年発表されるたびに世界中のメディアが報道し、一国の教育政策目標の基準にすらなっています。『ランキングなんて勝手に言わせておけば良い。ランキングを上げるための努力なんて本末転倒だ』と簡単に済ませてしまうべきではないでしょう」。仮に東大の「本当の大学力」が世界トップクラスだったとしても、世界中の人が分かりやすさより正しさを追求して、東大の「本当の大学力」に気付いてくれるとは限らないと懸念する。「『本当の大学力』を知るためにはその大学についてそれなりの関心をもって調べないといけないわけですが、わざわざランキング下位の大学についてまでそんなことをする人は少数でしょう」。また、大学ランキングも毎年、より公平で精密な分析のために基準や算出方法の改定が行われており「順位と『本当の大学力』の乖離なんていうものは、実際にはほとんどないのかもしれません」。

 

 しかし現在の東大の取り組みは、大学ランキングの順位上昇にはつながりにくいと森さんは指摘する。その原因は配点表の軽視。東大は留学生の増加策に熱を入れるが、留学生比率はTHE世界大学ランキングで2.5%、QS世界大学ランキングで5%の配点にとどまる。一方、日本の弱点である論文被引用数の配点はTHEで30%、QSで20%と非常に高い。「もちろん財源や組織間の調整などの困難は伴いますが、本気で大学ランキングの順位を上げたいなら、海外から高待遇で研究者をもっと呼ぶとか英語での発表を増やすとか、いくらでも『研究力』や海外での『論文被引用数』を高める施策を打てるはず。東大は、大学ランキングが世間に及ぼす影響を看過しているのではないでしょうか」

 

 

 対照的なのが、THE世界大学ランキングでここ2年、連続して首位を獲得しているオックスフォード大学だ。世界中から優秀な研究者を招聘して「研究力」「論文被引用数」を高め、チュートリアル[2]など学生の「教育」においても高い評価を受けている。さらに、世界中に卒業生のコミュニティーを張り巡らせ、広報を充実させて「国際性」を高めるなど、「大学ランキングの配点表を意識した努力」を重ねた結果、英国のEU離脱による留学生の減少が懸念された2017年も16年より得点が上がり、首位の座を守り抜いたという。「もちろん英語圏であること、伝統があること、自由な財源が豊富なことなど有利な点は多々ある」が、東大が参考にできる点も多いだろう。

 

 「ひとりでに海外から学生が集まることはありえない。東大にまだ、世界トップクラスの『本当の大学力』があるのだとすれば、それが適切に発信されていない現状はあまりにもったいない」と森さん。「優秀な仲間が東大ではなく海外大を選択する姿を、一学生ながらすでにたくさん見てきました。正直、一人の東大生として、東大の地位が下がり続けていることは非常に悔しいです。本当に手遅れになる前に、東大も、世界大学ランキングの影響力に対する危機意識と配点表に沿った努力が不可欠でしょう」

 

※次回は実際に海外大を目指す高校生がどのように大学を見ているのか、東大の学生団体主催によるイベントの取材を通じて読み解きます。次回掲載予定は5月4日です。

 

【蹴られる東大】

本音で語る、僕らが海外を選んだ理由(上) 海の向こうへの挑戦

本音で語る、僕らが海外を選んだ理由(下) 海の向こうで見たもの

学生目線で比べる東大と米国トップ大

ハーバードで2年間 気づいた「自分、東大、ハーバードの強み」


注 

※冒頭の数字をクリックすると本文の該当箇所に戻ります

[1] 米国大学出願時の書類提出を一括で行えるウェブシステムで、このサイトを通して受験生の個人情報や選考に使われるエッセイを大学側に送付することができる。受験生にとっては出願の手間が減り出願しやすくなるため米国の多くの大学がCommon Appを利用する一方、MITのように独自の出願システムを通じての出願しか受け付けていない大学もある。

[2] オックスフォード大学での教育の特色とされる、教員1人に対し学生2〜3人という少人数で行われる討論式の授業。

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【新入生アンケート2018 ③進路】41%が就職を不安視

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 東京大学新聞社は3月29・30日、全新入生を対象にアンケートを実 施し、新入生3132人の92%に当たる2866人から回答を得た。このアンケートは毎年諸手続き時に行う東大生対象の唯一の全数調査で、受験や大学生活、進路への意識、東大の諸制度や社会問題への賛否などを質問。アンケート結果から、今年の新入生の傾向を分析した。(本文中の割合は小数第1位を四捨五入)

 

(構成・一柳里樹)

 

大学院

 

 大学院への進学について聞くと、修士課程・博士課程いずれかに進学したい新入生は48%で、昨年の46%から微増した。大学院進学希望者の中でも「博士課程まで進学したい」人は新入生全体の18%、「修士課程まで進学したいが、博士課程に進学するかは分からない」が26%、「修士課程まで進学したいが、博士課程には進学したくない」が5%だった。「大学院に進学したくない」は12%で、39%が「未定、分からない」と答えた。

 

 

 科類別では、大学院進学希望率最多は理Ⅰの73%で、以下理Ⅱ(68%)、理Ⅲ(36%)と続く。大学院進学希望率が最も低かったのは15%の文Ⅱだった。文科生全体の大学院進学希望率は19%。文科の全科類で「未定、分からない」が過半数を占めた。

 

卒業後の進路

 

 

 学部・大学院を卒業後の希望進路は「民間企業」が25%で最多。「研究職」(24%)、「公務員」(18%)が続いている。「まだ一つに絞れない、未定」も34%いた。文系では「公務員」が31%で最も多く、「民間企業」は26%、「研究職」は8%。理系の最多は「研究職」(35%)で、「民間企業」(24%)、「公務員」(9%)が続く。

 

 「民間企業」が最も多いのは42%の文Ⅱで、「研究職」は36%の理Ⅱが一番多かった。「公務員」は43%の文Ⅰが最多だったが、財務省の公文書改ざん問題が影を落としてか、文Ⅰの公務員志望者は昨年から7ポイント減った。

 

将来への不安

 

 将来について不安なことを尋ねたところ、「就職」が41%で最も多かった。「後期課程への進学」(25%)、「結婚」(23%)、「収入」(22%)を挙げる人も多く、「不安がない」は14%だった。

 

エリート意識

 

 

 「日本の将来を担うエリートだという意識を持っているか」を質問したところ、「持っている」「少しは持っている」を合わせて48%で、2年連続で半数を下回った。この割合は15年から17年にかけて10ポイント低下していたが、今年は昨年の47%から微増し落ち込みに歯止めがかかった。科類別では理Ⅲ(64%)と文Ⅰ(63%)、文Ⅱ(51%)でエリート意識を「持っている」「少しは持っている」と答えた人が過半数を超え、41%の文Ⅲが最も低かった。理Ⅲ生でエリート意識を「持っている」「少しは持っている」と答えた新入生の割合は、昨年から9ポイント下がっている。

 

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【新入生アンケート2018 ③進路】41%が就職を不安視東大新聞オンラインで公開された投稿です。

【発掘!東大博物館】「東大の知を保存する」総合研究博物館編

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 東大は数多くの博物館を有している。そのほとんどは学内に設置されているが、加えてキャンパスの外にも、ユニークな特色をもつ東大の博物館が存在するのをご存じだろうか。東京大学総合研究博物館の関連施設として、それぞれ独自のコンセプトをもった博物館が、キャンパスの敷地を越えて設置されている。連載「発掘!東大博物館」では、総合研究博物館本館を出発点とし、キャンパス周辺にある東大の博物館を紹介していく。

 

 本郷キャンパスの南端、懐徳門を通って右手にひっそりとたたずむ「東京大学総合研究博物館」。決して目に留まりやすいとは言えない場所に位置するがために、学生の中には一度も訪れたことがない、という人も少なくないのではないだろうか。しかしせっかく学内にあるこの施設について、知らずに卒業するのはもったいない。「東京大学総合研究博物館」とはいったいどのような施設なのか。研究部所属の佐々木猛智准教授に話を聞いた。

 

(取材・持田香菜子、撮影・石井達也)

 

 

「資料館」ではなく「博物館」

 

――総合研究博物館の沿革について教えてください

 

 もともとは東京大学の学内に年々蓄積されていく学術的価値の高い資料を、散逸しないよう保管しておく施設として「総合研究資料館」が1966年に設立されたのが始まりです。この当時は単に「収蔵施設」としての性格しか持っていませんでした。

 

 しかし1996年の改組拡充により「総合研究博物館」として再出発してからは、資料を奥にしまっておくだけでなく、人に見せることにも積極的に取り組むようになりました。

 

――総合研究博物館の役割は何でしょうか

 

 博物館の仕事は大きく分けて研究・発信・教育の三つです。研究に関しては、博物館に所属する研究員がそれぞれの専門分野に沿って学術標本に関する研究を進め、論文を出しています。ヒマラヤの植物調査など50年近く継続して行われている研究もいくつかあるんですよ。

 

 また展示を通して博物館外部の方に学術標本の価値を伝えるという情報発信や、東大の授業・実習や一般向けの講座を実施するといった教育活動も大切な役割です。

 

――どのような狙いを持って展示を作っているのか教えてください

 

 展示品そのものを目立たせるため、説明書きを少なくするようにしています。また「実験展示」の呼び名のもと、常設展・特別展ともに型にはまらず新しい見せ方をしようと、あまり一般的でない手法を試すようにしています。具体的には展示室の一角に研究の様子が見えるコーナーを作り、展示されているような学術標本が実際に研究に使われている様子を見てもらえるようにしていますね。

 

 ここは大学博物館ですから、一般の博物館のように集客数などを気にすることなく「きれいに見せる」ことに注力できていると思います。東大生の皆さんには、在学中にぜひ一度総合研究博物館を訪れ、展示を楽しんでほしいですね。

 

 

常設展示「太陽系から人類へ」を見学

 

 入口を入るとまず目に入るのが巨大なガラスケース。中にはナウマンゾウの牙や大量の蝶の標本、人型の埴輪など、種類も時代も異なる標本たちが一緒になって並んでおり、博物館の来場者を出迎えているかのように感じられる。

 

 

 通路を抜けると、不意に現れる大きな動物の顔に一瞬どきりとする。

 

 

 これらはいずれも本物の皮を使ったはく製だ。重い馬車などを引くために改良されてきた輓馬(ひきうま)のはく製は、1.8メートルほどの高さがあり、その迫力に思わず足を止めて眺める人も多い。

 

 その先には、大きな黒い台の上に数十個もの白い骨が浮かび上がる展示スペース。アジアゾウとシロサイの骨格が組み立てられることなく整然と並んでいる。頭上に映し出されるモニターには、その骨を発掘した際のビデオ映像が流れている。

 

 雨の中少しずつ作業を進め、掘り出したときに歓声を上げる研究者たちの姿を見ると、目の前に広がる骨の集まりは彼らの努力の結晶なのだと気付かされる。

 

 

 2階まで続く展示は、国内外さまざまな産地から幅広い時代の標本が集められている。上のインタビューで聞いた通りシンプルな説明書きが展示物を際立たせ、薄暗い館内に浮かび上がるような見せ方が印象的だ。

 東大が創設された当初からの資料を保存し、活用されるよう情報発信を続ける総合研究博物館は、蓄積されてきた学術研究の歴史を守り続けている。研究を支える博物館の営みに思いをはせながら眺めてみれば、展示の見え方もまた違ってくるかもしれない。本郷キャンパスを訪れた際には、ぜひ立ち寄ってみてはいかがだろうか。

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【新入生アンケート2018 ④社会問題】憲法に自衛隊明記「賛成」52%

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 東京大学新聞社は32930日、全新入生を対象にアンケートを実施し、新入生3132人の92%に当たる2866人から回答を得た。このアンケートは毎年諸手続き時に行う東大生対象の唯一の全数調査で、受験や大学生活、進路への意識、東大の諸制度や社会問題への賛否などを質問。アンケート結果から、今年の新入生の傾向を分析した。(本文中の割合は小数第1位を四捨五入)

 

(構成・一柳里樹)

 

女子学生家賃支援

 

 東大が昨年の入学生から導入した、実家が遠方にある女子学生への家賃支援制度の評価を聞いたところ、「評価する」「どちらかといえば評価する」と答えた人は計57%で、昨年を9ポイント上回った。評価しない理由は「男子学生にとって不平等だから」(43%)が最多で、「女子学生比率向上につながらないと思うから」(24%)が続く。「取り組みを知らなかった」は10%にとどまり、東大受験者への周知も成功しているといえる。

 

 評価理由は「女子学生比率向上につながるかは分からないが、何かしらの取り組みを始める必要があるから」(44%)が「女子学生比率向上につながると思うから」(42%)を上回っており、新入生の多くが家賃支援制度の実効性に疑念を持っているといえる。現に、家賃支援制度が東大進学の「一番の決め手だった」「決め手の一つだった」新入生は合わせて家賃支援制度利用者全体の27%にすぎない。

 

 制度を「応募・利用した」新入生は女子全体の18%。当選したが利用しなかった新入生が女子全体の2%で、応募し落選した新入生も5%の26人いた。

 

成人年齢引き下げ・改憲

 

 

 

 成人年齢の18歳への引き下げについて聞くと「賛成」「どちらかといえば賛成」が計58%を占めた。自由民主党が実現を目指す、自衛隊の存在を憲法に明記する憲法9条改正案への賛否を問う質問では「賛成」「どちらかといえば賛成」が計52%で、「どちらかといえば反対」「反対」は計29%にとどまった。

 

 

支持政党

 

 

 支持政党を尋ねたところ、自民党が30%で最多。立憲民主党(10%)、日本共産党(1%)が続く。「支持政党はない」は41%、「分からない」は15%だった。立憲民主党は昨年の民進党の支持率を2倍以上に伸ばし、前身の民主党時代を含めても2005年(10%)以来13年ぶりに9%を上回った。財務省の公文書改ざん問題などの影響か自民党の支持率は昨年から6ポイント低下したが、16年とほぼ同じ支持率で、立憲民主党の3倍以上の支持を得ている。

 

 

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【日本というキャンパスで】劉妍① 同じ琵琶でも中身は違う

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 記者は中国の大学を卒業し、東大大学院に入って今年で3年目。現在は博士課程2年だ。留学前は、日本の情報は教科書のように他人の解釈が入る方法に頼っていたが、実際に自分の目で見ることで、何か新たな発見につながるのではと思い留学に踏み切った。

 

 記者が趣味である琵琶の演奏を始めたのは、小学校3年生の時だ。それ以来、指の使い方が何十種類もあり、民族楽器の中で最も難しい楽器とされている琵琶の演奏を継続。芸術等級評価試験の上級であるA級が取れるまで精進してきた。日本でも琵琶を続けたいと思い、来日後すぐに琵琶を購入。しかし来日してからずっと講義や試験、論文執筆、学会発表で忙しかったため、琵琶の演奏を披露する機会はなかった。

 

 2017年11月、農学部の「弥生インターナショナルデイ(弥生デイ)」に参加することで、ようやく琵琶の演奏を大勢の前で披露することができた。「弥生デイ」は農学部と農学生命科学研究科に所属する日本人学生・留学生・研究員の文化交流促進のため、07年から毎年開催されている恒例の国際文化交流行事だ。約10のグループや個人が、自国の文化や生活習慣を楽器演奏や踊り、スライドで紹介。11年間で総計数十カ国の約2600人が参加している。発表の冒頭では、英語で中国の伝統文化・名所旧跡・美食等を紹介。次にソロで『琵琶語』という曲を披露した。発表を通して、ある国の人にとって当たり前のことでも、他国の人にとっては違うことが分かった。例えば、琵琶は中国で非常に人気のある民族楽器だが、日本には琵琶の存在自体知らない人も数多くいた。

 

弥生デイで琵琶の演奏を披露した

 

 また、来日してから初めて気付いたのは、琵琶の構造や演奏技法が日中でかなり違うことだ。2千年以上の歴史を持つ中国琵琶は30個のフレットで西洋の音階に対応できるため、独奏楽器として流行している。右手の指全てに爪を付け音を出す。一方、日本琵琶はほとんど合奏楽器として使われる。撥(ばち)で弾かれ、「語り」を付けるのが特徴だ。

 

 「弥生デイ」を通し、草の根レベルの文化交流はやはり重要だと考えた。グローバル化が進む中、世界各国の文化や最新の動向を常に意識すると物事への多角的かつ客観的な判断につながり、グローバルな視野の形成に有益だろう。

 

弥生デイにはさまざまな国からの留学生らが集まった

 

 

  本企画は中国人留学生の記者が、日本での留学体験を記す連載です。

 


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【推薦の素顔】鈴木光さん 「何でもやってみる」国際派

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 2016年度から、多様な人材の獲得を目的として導入された「推薦入試」。ペーパーテストが主な評価対象となる一般入試とは異なり、エッセイや面接などが課されており、毎年個性的な学生が推薦入試を利用して入学します。そんな彼らを一人一人取材するのが本連載「推薦の素顔」。東大に新たな風を吹き込む彼らに、あなたも触れてみませんか。

 

 

鈴木 光(すずき・ひかる)さん
文Ⅰ・2年→法学部

 

 幼少期から、興味を抱いたことは何でもやってみる性格。高2で米スタンフォード大学の通信教育プログラムに取り組み、プログラム中に提出した小論文で優秀賞3人に選ばれた他、「アジア太平洋青少年リーダーズサミット」に参加し、日本代表として戦後処理をテーマに発表した。その場でインド代表から性差別などの人権問題について聞いたことがきっかけで、インドやパキスタンで多発する、一族の名誉を損なう行為を行った女性を家族が殺害する「名誉殺人」についての論文を執筆。「ウルドゥー語の資料しか見つからずに焦ったこともありました(笑)」と苦戦しながら半年を費やし書き上げ、推薦入試の資料として提出した。

 

 東大は高1から一般入試で目指し始めたが、高3のときに教員に勧められ、「推薦入試で求められる人物像と自分が近いように感じ」推薦での受験を決めた。面接では論文の学術的意義や日本における無理心中との関連性を問う予想外の質問もされたという。無理心中については専門外だったが「手持ちの知識で考え誠実に答えようとしたことが合格の要因だと思います」。

 

 東大に入学して講義の面白さを感じている。特に面白かったのは斎藤茂吉の短歌を新しい解釈で考える講義。常識を疑う楽しさを実感しているという。瀧本ゼミに所属し、企業や経済についての見識を深めている他、ダブルスクールで司法試験の勉強を進めるなど「何でもやってみる」性格は今でも健在だ。

 

 高校時代、国際弁護士の事務所訪問をきっかけに、世界的に活躍する姿に憧れを抱いた。将来は国際弁護士として企業や社会の権利を守っていきたいと語る。世界を舞台に日本を支える弁護士となる日も近い。

 

(取材・撮影 吉良椋)

 

【推薦の素顔】

塚原遊尋さん 哲学を軸に幅広い学びと出会いを


 この記事は、2018年1月16日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

 

 

ニュース:「進学先決めず入学」が半数超 学生生活実態調査 7割がカリキュラム改革要望
ニュース:日本学術振興会賞 東大から4人受賞 人社1人と理工3人に
ニュース:UTASで緊急メンテナンス OSの管理機能に障害 
ニュース:2競技を終え5位 七大戦 次は3/1からの航空
ニュース:近藤選手箱根出走せず インフルで無念の欠場
ニュース:近藤選手や宮投手らが登壇 スポーツ先端研シンポジウム
ニュース:視認性と景観を両立 新型点字ブロック 車輪の通過も容易に
ニュース:最古の首長竜を発見 首長竜は三畳紀から生存か
ニュース:論文不正追加調査 告発5報以外不正なし 分生研は組織見直し
ニュース:理・阿部豊准教授が死去 ALSと闘い研究続ける
企画:持続可能な社会の先へ 東大発の講座から「プラチナ社会」に迫る
企画:ペットブームの光と闇 相利共生で心身を健康に
推薦の素顔:鈴木光さん(文Ⅰ・1年→法学部)
東大新聞オンラインアクセスランキング:2017年12月 東大生のSNS事情に高い関心
東大教員の豆知識:吉種光助教(理学系研究科)体内時計 時計遺伝子が鍵握る
東大今昔物語:1989年1月31日発行号より 時と共に変わる入試 共通1次の終幕  
世界というキャンパスで:額田裕己さん(文Ⅲ・1年)ニュージーランド編⑤
キャンパスガール:築島綾音さん(文Ⅰ・2年)

※新聞の購読については、こちらのページへどうぞ。

【推薦の素顔】鈴木光さん 「何でもやってみる」国際派東大新聞オンラインで公開された投稿です。

【知のRecipe】なるとが主役? 食べる前から「うずうず」の一品

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先日開催された五月祭のテーマは「渦を巻く」だったが、渦を巻くといえば「なると」。脇役になりがちな「なると」を主役にしたレシピを、東大卒の食文化研究家、スギアカツキさんに聞いた。

 

「渦かくしそば」

 

渦の下には何がある? 

 

そんな好奇心の先には、おいしく味付けされた鶏肉が待っています。麹で漬けた鶏肉は簡単なのに絶品の味で、学生時代に覚えて欲しい料理法。今は便利な時代で総菜肉が手頃に売られていますが、自分で下味をつけて焼く鶏肉の味は格別の味。忙しい人にこそ、おいしさに妥協をして欲しくありません。

 

なるとをどれだけ薄く切れるかもチャレンジして欲しい工程。「麺に一枚」という常識にとらわれず、たっぷり乗せましょう。何かが隠れているというワクワク感は、食べる楽しみを与えてくれます。

 

【材料(1人分)】

・ゆでそば※1            1人前

・なると         5センチ分

・鶏もも肉        50g

・塩麹※2              小さじ1

・みりん         小さじ1

・しょうゆ※2            小さじ1

・キュウリもしくは青ネギ お好み量     

・めんつゆ(ストレート) お好み量

 

※1 そばは生麺や乾麺をゆでて冷やすのも良し、市販のゆで麺を使うのも良し。

※2 塩麹はスーパーで200円前後で購入可能。しょうゆ麹が手に入る場合は、しょうゆ麹小さじ1を加えて。

 

【作り方】

所要時間・10分(下味を付ける時間を除く)

 

(1)(前日に行う)厚手のビニール袋に塩麹としょうゆ、みりんを加え、小口切りにした鶏もも肉を入れて、外側からよくもんで下味を付ける。空気を除いてしっかりしばり、冷蔵庫で置いておく。忙しい場合は食べる1時間前に漬け常温に置く。

 

(2)なるとを薄く切る。キュウリは薄切りにしてから細切りに。青ネギは細かく刻む。

 

(3)下味を付けた鶏肉を、温めたフライパンで弱めの火で様子を見ながらゆっくり焼いていく。油はひかなくても、肉から油が染み出すので焦げずに焼ける。

 

(4)ゆでそばを皿に盛り、真ん中を少々くぼませて鶏肉を乗せる。その上からなるとをかぶせるようにトッピングしていく。仕上げにキュウリとネギを添えて、めんつゆをかければ完成。

 

記者が挑戦

「好きな分だけ盛り付けられる」という自炊の長所を生かしたレシピだ。鶏肉は食べる1時間前に漬け始めたが、塩麹効果で柔らかく、味もよく染み込んでいた。

 

迫力ある見た目とおいしい鶏肉が現れる仕掛けは、友人や家族に振る舞うのも楽しいだろう。

この企画は、東大農学部卒の食文化研究家・スギアカツキさんに「頭を使って一工夫した簡単レシピ」を教えてもらう連載です。

 


この記事は、2018年5月15日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

インタビュー:東大生よ、「革命家」であれ 葛西啓之さん(和太鼓グループ彩 代表)
ニュース:東大生協 中央食堂の絵画廃棄で謝罪 保存可能性共有されず
ニュース:3月の記者会見から一転 英語民間試験を入試活用へ
ニュース:硬式野球早大戦 先発好投も九回に決勝打浴びる
ニュース:アメフト国士舘大戦 最終Qに逆転許す
企画:赤門前が避難場所? 新発見 本郷と安政江戸地震の関係
企画:五月祭2日目に小社主催シンポジウム AIの応用研究と社会実装の射程
企画:~迷ったらここに行こう~ 編集部厳選 おすすめ企画11
本郷キャンパスマップ
知のRecipe:自炊でも「渦を巻く」 渦かくしそば
キャンパスガール:中牟田春美さん(育・4年)

【知のRecipe】なるとが主役? 食べる前から「うずうず」の一品東大新聞オンラインで公開された投稿です。

【2018年4月アクセスランキング】連載「蹴られる東大」が人気

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連載「蹴られる東大」に出演した学生たち(上)、チムニーの看板(右下)、入学式で式辞を読むキャンベル国文学研究資料館長

 

 東大新聞オンラインで4月に公開した記事の4月中のアクセスランキングを調べたところ、1位から4位までを大型連載企画「蹴られる東大」の記事が独占した。同企画では東大と海外大学の双方に合格し東大を半年でやめて海を渡る学生や、東大教授などに取材。東大と海外トップ大を中立的な視点から比較するとともに、東大の進むべき道を探っている。

 

 1位となった連載初回記事は3人の日本人米国大生による座談会記事の前編で、米国大・東大併願の経緯や、東大での半年間の学生生活が話題の中心。同記事の後編は4位に入り、こちらでは3人が自身の米国大での生活や、両大学の違いについて語っている。

 

 2位は海外大進学の先例がほぼなかった高校から東大に半年在籍した後、米国大に進んだ2人の学生の取材記事。3位の記事では日本人高校生の海外大進学支援を行うNPO法人の理事長も務めるハーバード大の学生・髙島崚輔さんに話を聞いた。7位にも髙島さんとある東大生の視点から東大の「国際的地位」について考えた同連載の番外編がランクイン。特集名の意外性に加え、どの記事でも学生の目から見た二つの国の大学それぞれについての率直なコメントを載せたことが話題となったようだ。同連載は現在も続いている。

 

 5位にランクインしたのは今年3月14日に閉店した本郷キャンパス近くの居酒屋・チムニーに関する記事。同店は多くの東大教員や学生に行きつけの店として愛されていた。閉店を惜しむ複数の教授の声を紹介した他、チムニーの店長からのコメントも掲載し、SNSでも大きな反響を呼んだ。

 

 6位には東大の2018年度入学式の模様を伝える速報記事がランクイン。ロバート・キャンベル国文学研究資料館長の式辞の内容などを紹介した。キャンベル氏は、他者への理解や共感は喜ばれるのか否かという問いを提示。他者と接する際の言葉の論理と共感のバランスこそが教養だと話した。入学式の速報記事は昨年も多く読まれており、東大の入学式への関心の高さがうかがえる。

 

 9位は好評連載「N高生のリアル」の最終回。この記事では連載を担当した記者が取材を通して考えたことを述べている。N高は学習者の集中を阻害するインターネットサービスを生徒から遠ざけずに、あえて教育に取り込み挑戦を続けていると総括した。

 

【2018年4月アクセスランキング】

1       【蹴られる東大①】本音で語る、僕らが海外を選んだ理由(上) 海の向こうへの挑戦

2       【蹴られる東大③】学生目線で比べる東大と米国トップ大

3       【蹴られる東大④】ハーバードで2年間 気付いた「自分、東大、ハーバードの強み」

4       【蹴られる東大②】本音で語る、僕らが海外を選んだ理由(下) 海の向こうで見たもの

5       さよならチムニー

6       東大入学式 ロバート・キャンベル国文学研究資料館長「論理と共感のバランスこそ教養」

7       【蹴られる東大 番外編】ハーバード大生と東大生が見る東大の「国際競争力」

8       中央食堂 ドコモ・auの電波5月中旬に開通へ

9       【N高生のリアル】<子供たちだけの世界>に学校を 記者が見たN高がつくる未来

10      「東大生よ、神宮に集え!」4月14日六大学野球開幕戦で、硬式野球部・応援部主催の学生無料招待試合開催

※当該期間に公開した記事のみを集計

 

過去のランキング

【2018年3月アクセスランキング】3/10実施の合格発表に高い関心

【2018年2月アクセスランキング】入試関連記事に関心

【2018年1月アクセスランキング】近藤選手の箱根欠場に注目

【2017年アクセスランキング】まつりさんの記事が今年の年間1位に

【2017年12月アクセスランキング】東大生のSNS事情に高い関心

【2017年11月アクセスランキング】東大生の「銀行志向」に関心

【2017年10月アクセスランキング】「ボカロ」関連の記事が人気

【2017年9月アクセスランキング】哲学者の勉強論に高い関心

【2017年8月アクセスランキング】「駒場図書館冷房停止」が1位

【2017年7月アクセスランキング】宮台教授のメッセージに注目

【2017年6月アクセスランキング】「N高」に注目 論文不正問題に依然高い関心

【2017年5月アクセスランキング】高橋まつりさん関連記事に大きな注目

【2017年4月アクセスランキング】今年も新入生アンケートに高い関心

【2017年3月アクセスランキング】トップは東大生のテレビ 合格発表の記事も上位に

【2018年4月アクセスランキング】連載「蹴られる東大」が人気東大新聞オンラインで公開された投稿です。


【日本というキャンパスで】劉妍② 区の行政文書に留学生の視点

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 本郷キャンパスが位置する文京区には東京23区内で最多となる約8千人の留学生が在住。文京区側は増加する外国籍住民に対して行政サービスの情報提供・諸手続きの円滑化の充実を図る。さらに東大側では英語プログラムの増加でチューター・教職員のサポートが必要な状況が増してきている。そこで2015年8月に、文京区アカデミー推進課と東大国際本部の協同プロジェクトとして文京区行政文書多言語化サポート事業が実施された。

 

 主な作業は区の文書を英語や中国語、韓国語に翻訳すること。外国人が理解しづらい住民登録、税金、年金といった自治体での手続きは自己申告が中心のため、翻訳で行政情報・サービスを外国人に確実に把握してもらうことが目的だ。担当者は日本人学生2人(英語)と留学生6人(中国語の繁体字・簡体字、韓国語)から成り、記者は中国語の簡体字部分を担当した。

 

 作業は、まず前回の翻訳で工夫した点や問題点を月例会で報告することから始まり、次に今回の翻訳資料に関する質疑応答・内容確認を行う。さらに、必要に応じて「文京区対訳表」に参考意見を提供する。

 

 中国語チームは部署名や書類名を中国語に訳す際、原則として日本語の文字そのものに忠実な訳をした上で中国語での一般的な書き方も併記した。中国語に翻訳された書類を見ながら手続きが行われる際、日本人職員と中国人双方の意見交換に支障が出ないようにするためだ。例えば、「戸籍謄本」はまず「户籍誊本」と訳し、注書きで中国語の一般的な書き方の「户口本复印件」を記した。しかし「户籍誊本」のように、日本語に忠実な訳で中国人が理解できる言葉がある一方、「扶養手当」や「介護」のように、日本語に忠実な訳だと意味が伝わらない言葉もある。その場合は「抚养补贴」、「看护」のように直接中国語での一般的な書き方にし、日本人職員にも意味が分かるよう必ず日本語を併記した。

 

文京区の窓口案内チラシを中国語に翻訳したもの(上)と翻訳前のもの

 

 翻訳では、国ごとの実情の違いも明文化した。例えば日本では4月~3月の会計年度は、中国では1月~12月と異なっているため、その点を明記した。

 

 中国は日本と同じく漢字圏の国であるからこそ、中国人は日本の漢字を中国語の意味通りに捉えがちだ。すると、中国語にない表現はもちろん、日本語と中国語の両方にある表現であっても意味を逐次確認しないと理解の相違が生じ得る。今回の翻訳事業は行政側が外国人に関して気付きにくい部分を補完する一方、日本社会の仕組みや日中間の文化の相違点を深く実感できる珍しい機会だった。

 

【関連記事】

【日本というキャンパスで】劉妍① 同じ琵琶でも中身は違う


この記事は2018年5月29日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

インタビュー:学生の支援が最優先 任期折り返し・五神総長に聞く施策と今後の狙い 
ニュース:過去最高の98.0% 大卒就職率 7年連続で上昇
ニュース:駒場コモンズ 掘削工事を開始 6月20日まで
ニュース:にぎわい見せた五月祭 16万人が来場
企画:写真で見る五月祭
企画:1年次から研究に打ち込む
日本というキャンパスで:劉妍(農学生命科学・博士2年)②
キャンパスガール:嶋村綾さん(文Ⅲ・2年)

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【2018年5月アクセスランキング】「推薦の素顔」に関心

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東大OGでプリンストン大に留学経験のある船引さん(左上)と演奏を披露する東大オケ(左下)、推薦入試で合格後活躍を続ける鈴木さん

 

 東大新聞オンラインで5月に公開した記事の5月中のアクセスランキングを調べたところ、1位は推薦生に一人一人取材する連載「推薦の素顔」の記事だった。高校時代に米国大学の通信教育を受け、国際的な交流プログラムにも参加した鈴木光さん(文Ⅰ・2年)。テレビでも活躍する鈴木さんの精力的な活動の様子が注目を集めた。

 

 先月に引き続き連載企画「蹴られる東大」の記事が2、3、6位にランクイン。2位の記事はプリンストン大学への留学経験がある東大OGの船引まどかさんへのインタビュー。「勉強していない時はなかった」という留学時代を経て、勉強に対してより真面目になったという。両校生の「大学での学び」に対する姿勢の違いが浮き彫りとなった。

 

 3位は東大とプリンストン大を比較した本の著者・佐藤仁教授(東洋文化研究所)に取材した記事だ。東大の教育環境改善には教員の負担軽減が必須で、授業数削減や事務職員の活用などの方策をとるべきだと語った。東大が世界を意識することの重要性も強調した。6位は高校生と東大生、ハーバード大生の交流会を取材した記事。交流を通じて両校の魅力や改善点が明らかになり、高校生にとっても有意義なイベントとなったようだ。

 

 4位には東大が入試に英語民間試験の利用を検討中と伝えた記事がランクイン。民間試験を合否判定に用いないと明言した3月10日の記者会見から方針が変わると明らかになった。

 

 5位は音楽部管弦楽団(東大オケ)の告知記事。7月下旬から全国5都市を回るサマーコンサートを実施する予定だ。

 

 7位は経済学部卒で若手実業家の御手洗瑞子さんに学生時代の経験や新入生へのアドバイスを聞いた記事。前期教養課程は安い授業料でトップレベルの教授の授業を好きなだけ取れる「駒場ワンダーランド」だと言い、新入生には存分に楽しんでほしいと語った。

 

 8、9位には本紙主催の五月祭シンポジウムに関する記事が入った。8位は登壇者の海津裕准教授(農学生命科学研究科)に人工知能の農業への導入について聞いた記事、9位はシンポジウムの概要を伝えた告知記事だった。

 

 10位は、SNSやテレビでも話題となった東大中央食堂の絵画廃棄問題について伝えた記事。背景には、東大生協と教員の間での情報共有の不足があったようだ。

 

【2018年5月アクセスランキング】

【推薦の素顔】鈴木光さん 「何でもやってみる」国際派

【蹴られる東大⑦】勉強に対する姿勢の差 東大生は勉強していると胸を張って言えるか

【蹴られる東大⑥】東大を勝たせた教授が語る、東大に足りない「危機感」と改革

大学入学共通テスト 英語民間試験を入試に活用へ 方針を転換

「プロ集団」の本格演奏を地元でも 東大オケがサマーコンサートを開催

6 【蹴られる東大⑤】拝啓 悩める高校生へ 〜東大生とハーバード大生が伝える、2大学の魅力〜

「駒場ワンダーランド」で知的欲求を満たす 若手実業家・御手洗さんインタビュー

8 【五月祭シンポジウム①】AIで農業機械を自動運転 海津裕准教授

【五月祭シンポジウム】人工知能を用いた応用研究の射程と社会実装の課題

10 中央食堂 生協が画家の作品を廃棄処分に 「軽率な判断」と謝罪

 

過去のランキング

【2018年4月アクセスランキング】連載「蹴られる東大」が人気

【2018年3月アクセスランキング】3/10実施の合格発表に高い関心

【2018年2月アクセスランキング】入試関連記事に関心

【2018年1月アクセスランキング】近藤選手の箱根欠場に注目

【2017年アクセスランキング】まつりさんの記事が今年の年間1位に

【2017年12月アクセスランキング】東大生のSNS事情に高い関心

【2017年11月アクセスランキング】東大生の「銀行志向」に関心

【2017年10月アクセスランキング】「ボカロ」関連の記事が人気

【2017年9月アクセスランキング】哲学者の勉強論に高い関心

【2017年8月アクセスランキング】「駒場図書館冷房停止」が1位

【2017年7月アクセスランキング】宮台教授のメッセージに注目

【2017年6月アクセスランキング】「N高」に注目 論文不正問題に依然高い関心

【2017年5月アクセスランキング】高橋まつりさん関連記事に大きな注目

【2017年4月アクセスランキング】今年も新入生アンケートに高い関心

【2018年5月アクセスランキング】「推薦の素顔」に関心東大新聞オンラインで公開された投稿です。

「尖った知識や能力、募集します」東大発ベンチャーNEXCITEの挑戦

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 「受験向けではなく、あくまで子供たちの好奇心に寄り添った教育を」との熱い思いの下、教育学部4年の土井皓介さんは今年2月、教育系ベンチャー・NEXCITEを立ち上げた。会社が運営するのは家庭教師マッチングサービス「DREE」。このサービスでは、例えば「ドローンを作りたい」「漫画家になりたい」「プログラミングを極めたい」など子供たちの夢を現実にすべく、その分野の異才を家庭教師として紹介する。

 

 「DREE」のコンセプトは「異才との出会いで、夢を身近に、好奇心に爆発を」。各分野を極めた異才との出会いにより、実現しにくく「遠いもの」と思われがちな子供たちの「夢」を身近にしたいとの思いが込められる。「DREE」が、子供たちの才能を開花させる出会いと教育の場になってほしい一心で、土井さんは活動を続ける。

 

 サービス考案のきっかけは、昨年知人のフリースクールの立ち上げに関わったこと。フリースクールには好奇心が高いがゆえに周りになじめない子供たちが通っており、土井さんはそこである小学5年生の男の子に出会った。簡単なゲームやサイトを作れるほどプログラミングが得意な彼は「もっと高度なゲームを作りたいけど、やり方を教えてくれる人がいなくて挫折してしまった」と話していたという。土井さんがプログラミングを少し教えただけで予想以上に喜んでくれたのが印象的で「プロを紹介したらこの子はどんなに成長するだろうと胸が躍りました」と振り返る。

 

 「努力の天才」という言い回しがあるが「実際のところ、一人一人の能力には努力量だけではなく、環境の影響も大きい」と土井さんは話す。例えばアインシュタインは、叔父から数学や化学を教えてもらったおかげで15歳で解析幾何学の問題を解けるようになった。またスティーブ・ジョブズは子供の頃、米企業・ヒューレット・パッカードのエンジニアが近所に住んでいて、よく遊びに行っては電子工作を教えてもらっていたという。今も昔も天才は、若い頃から自身の好奇心をサポートする環境に恵まれていたのだと知ったことが、現在まで土井さんの活動の支えとなっている。

 大学で知り合った友人と会社を立ち上げた当初は、運営について何も分からないところからのスタートだった。どういう言葉を使えば顧客層の心に突き刺さるか、どのようなサービスにすればもっと使いやすくなるかなど、考えるべき課題は常に山積み。メンバー間で意思疎通がうまくいかず苦労した側面もあったという。しかし「自分のやりたいことが少しずつ形になり、外部の人が共感してくれるようになったことで自信をもてるようになりました」。

 

 家庭教師マッチングサービスとはいえ「DREE」がサポートしたいのは子供だけではない。「周りから異才と思われているために居場所がなくなってしまった人もいるはず。そういう人材を拾い上げ、教育者としての居場所を提供したいです」。現在は「異才の家庭教師」として、またインターンでエンジニアとして共に活動してくれる社会人や学生を募集中だ。「環境により可能性がつぶされている子供たちの才能を開花させ、世の中へと羽ばたく手伝いをしたい。そんな思いに共感してくれる方がいれば、ぜひ私たちと一緒に活動してほしいです」

ご興味を持った方、話だけでも聞いてみたいという方は、以下のURLのお問い合わせからご連絡ください。

https://goo.gl/WBGZTL

 

教育学部4年・土井皓介(どい・こうすけ)

(合同会社NEXCITE代表)

 

「尖った知識や能力、募集します」東大発ベンチャーNEXCITEの挑戦東大新聞オンラインで公開された投稿です。

【推薦の素顔】下村光彦さん 人工知能全盛の時代で活躍目指す

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 2016年度から、多様な人材の獲得を目的として導入された「推薦入試」。ペーパーテストが主な評価対象となる一般入試とは異なり、エッセイや面接などが課されており、毎年個性的な学生が推薦入試を利用して入学します。そんな彼らを一人一人取材するのが本連載「推薦の素顔」。東大に新たな風を吹き込む彼らに、あなたも触れてみませんか。

 

 

下村 光彦(しもむら・みつひこ)さん
(理Ⅰ・2年→工学部)

 

 小学5年生のときロボット教室で、センサーのついたロボットの動きを制御するプログラムを設計。「直進」「左に転回」など動きを示すアイコンを組み合わせるだけの簡単なものだったが「作ったものが形になって動く」と魅了された。

 

 中学3年時には独学で本格的なプログラミングを学び始め、メモ帳アプリやゲームで約30万円を売り上げるほどの実力に。高校時代には、近所の人に代行を頼める点で従来にない買い物代行サービスのシステムを開発し、起業も果たした。

 

 推薦入試を強く志望するようになったきっかけは『ポスト・ヒューマン誕生』という1冊の本。1台の人工知能が人類の総知能を上回る瞬間を予言する。その後の人類は、人工知能を搭載した微小な機器を体内に取り込むことで超人的な能力を手に入れるという。「その時代に第一線で活躍していたいと強く思いました」。本で描かれた世界の実現のために不可欠となる遺伝子工学やナノテクノロジーの発展に寄与すべく、東大で分野横断的に研究したいと強く感じたという。2次試験で受かる自信が100%ではなかったことも推薦入試の受験を後押しした 。

 

 「何回『分かりません』と言ったか……(笑)」と漏らすほど厳しい面接を通過し、無事入学。今は「人工知能に効率的に人間の行動を学習させる道具となる」というバーチャルリアリティ(VR)に関心を寄せる。VRを製作するサークルに入った他、推薦生ならではの利点も生かし専属の教員を通してVRを研究する研究室を訪問するつもりだ。VRの他にも「ビハインドしかない」という学業や起業した会社の運営に大忙し。来たる新たな世界に向け「三足のわらじ」で走り出す。

 

(取材・撮影 児玉祐基)


この記事は、2017年6月13日号に掲載した記事を再編集したものです。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

 

 

ニュース:自由な履修を実現 法学部新カリキュラム 志望者減は悲観せず
ニュース:論文不正疑惑 本調査を終了 不正なければ公表せず
ニュース:将棋学生名人に理Ⅱ・1年の藤岡さん
ニュース:統合失調症患者に神経伝達異常を確認
ニュース:薄く柔軟なモーター開発 ソフトロボットへの応用へ
企画:隠れた最先端研究を生体験! 駒場リサーチキャンパス公開2017
企画:ノウハウ生かし安全に輸送 2027年開業予定のリニア中央新幹線 特徴と効果は 
企画:地域住民との結び付き 開園100周年・井の頭公園の魅力 
新研究科長に聞く:②理学系研究科 武田洋幸教授
推薦の素顔:下村光彦さん(理Ⅰ・1年→工学部)
100行で名著:『「言葉にできる」は武器になる。』梅田悟司著
東大今昔物語:1988年6月14日発行号より リクルート人気の絶頂
東大CINEMA:『結婚』
キャンパスガイ:西沢樹さん(文Ⅰ・1年)

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【推薦の素顔】下村光彦さん 人工知能全盛の時代で活躍目指す東大新聞オンラインで公開された投稿です。

【日本というキャンパスで】劉妍③ 異文化の壁を乗り越えて

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 「世界の仲間とゆく年くる年」は国立青少年教育振興機構が2010年から毎年末に開催している事業だ。日本で年を越す世界各国の留学生が、日本の高校生・大学生と一緒に日本の伝統文化に触れることで理解を深め、異文化交流を促進することを目的としている。

 

 私が参加した18年の活動は3泊4日で、国立オリンピック記念青少年総合センターで行われた。24カ国から集まった約300人の参加者は10人程度のグループに分かれ、活動を展開した。今回のテーマは「つくろう! みんなの『わ』」であった。仲間とのコミュニケーションである「話(わ)」を重視し、日本文化の「和」に親しみ、仲間同士の絆の「輪」を広げよう、という意味が込められている。

 

約300人の参加者は人文字を作った

 

 扇子の絵付け体験、縁日体験、手形アートの作成、お正月東京散策とさまざまな活動を重ねるにつれて、仲間同士の絆は着実に深まっていった。同時に、教育背景などの異なる他国の人と積極的に交流することで多様な視点・文化を学ぶことができた。

 

グループでだるま落とし活動を行った

 

 最初は他国の文化に理解が及ばず、仲間に誤解を生むこともあった。悪気はなかったのだが、知識不足でモロッコの仲間を傷つけてしまったことは深く反省している。彼は自国をみんなに紹介する時、「モロッコはどこにあるどんな国なのか」「どんな言語を使用しているのか」などあまりに初歩的な質問を連発されて悲しくなったと話した。我々は時に、よく知らない文化を軽視する感覚を無意識に与えてしまうのではないだろうか。この経験のおかげで、常に他人の立場に立って物事を考えることの大切さを学んだ。

 

 年越しタイムにはみんなでこたつを囲み、紅白歌合戦を見て語り合いながら日本風の正月を迎えた。中国では旧正月(今年は2月中旬)を送るため、年の瀬ににぎやかな雰囲気を味わうのは非常に新鮮だ。和気あいあいとした中、心の奥底に秘めた話をとことん語り明かした感動は今でも鮮明に覚えている。

 

 その後、世界各国から一堂に会した仲間と一緒に迎えたカウントダウン・ニューイヤーパーティーの豪華さに心を打たれ、世界がぐっと近くなったと感じた。その瞬間、初めに抱いていた、異なる言葉・文化を理解する困難さへの不安は払拭(ふっしょく)された。代わりに、信頼感・共感・思いやり・愛すること・人間同士のつながりの重要さに気付いた。我々は広大な世界にいるが、心を開いて歩み寄れば、世界の仲間との距離はさほど遠くはないはずだ。

 

【関連記事】

【日本というキャンパスで】劉妍① 同じ琵琶でも中身は違う

【日本というキャンパスで】劉妍② 区の行政文書に留学生の視点


この記事は、2018年6月26日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

 

 

ニュース:6人が進学予定撤回 推薦1期生の進学選択 学部間で対応に差異
ニュース:過去10年で最高の23位 QS世界大学ランキング 国際性の評価深刻
ニュース:国大協 英語民間試験活用例を発表
ニュース:情報学環が高知県と協定締結
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企画:高温多湿の夏、対策を 食中毒ウイルスに要警戒
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NEW GENERATION:統計学 入江薫講師(経済学研究科)
研究室散歩@建築計画:横山ゆりか教授(総合文化研究科)
取材こぼれ話:横山ゆりか教授
日本というキャンパスで:劉妍③(農学生命科学研究科・博士2年)
キャンパスガール:池田寧夢さん(文Ⅲ・2年)

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【日本というキャンパスで】劉妍③ 異文化の壁を乗り越えて東大新聞オンラインで公開された投稿です。

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