Quantcast
Channel: COLUMN –東大新聞オンライン
Viewing all 531 articles
Browse latest View live

新しい「オフライン就活」の場 知るカフェ東京大学前店

$
0
0

 学生がお得に利用できるスポットの一つが学生向けフリースペース。インターネット環境やコンセント、無料のドリンクなど、学生には魅力的な存在だ。東大では、本郷キャンパス周辺にも数カ所が進出。中でも、厳選された豆を店内でひいて作るというコーヒーやシックな内装など、あくまで「カフェ」として存在感を放つのが、知るカフェだ。

 

勉強などに合ったシックな内装(写真はすべて知るカフェ提供)

 

企業とつながる「カフェ」

 学生向けフリースペースの仕組みはこうだ。スポンサー企業がスペースの運営資金を負担し、各企業はスペースで学生向けの就職説明会や担当者との交流会を実施する。知るカフェのスポンサー企業はここ数年で数十倍に拡大し、現在では100社を優に超えるという。東京大学前店店長代理の穀本伸さん(法・3年)は「興味のなかった企業のイベントに参加したのをきっかけに実際に就職した学生がいるなど、交流会は学生の将来を大きく変える可能性も秘めている」と話す。10〜12月のピーク期には月に数十社が開くという企業担当者との交流会は私服かつ毎回4〜5人という少人数で行われ、一般的な就職活動とは違って「素で話せる」環境なのがポイントだ。

 

 企業イベントが盛んに行われている場とはいえ、知るカフェは「意識が高い」場所ではない。「あくまでカフェ」と言うように、一度会員登録を済ませれば、2回目からは来店時に携帯で表示したQRコードでの認証と学生証の提示だけで簡単に利用できる。東京大学前店には1日100人以上が訪れるといい、ほとんどが空きコマの時間潰しや勉強、友人との雑談など生活の中で自然に訪れている。運営側も「カフェとして利用しているうちに自然と企業や就職について詳しくなれる場所が理想です」(穀本さん)と話すように、あくまで「カフェ」としてのブランディングを目指す。

 

企業担当者との交流会。少人数で「素が出せる」。

 

理想は「オフライン就活」の場

 知るカフェの店舗の運営は全て学生が行っており、東京大学前店で働くスタッフは全員東大生だ。現在は京大・慶應・早稲田などの周辺に全国16店舗を展開しているほか、インドやアメリカにも進出している。

 

 知るカフェの誕生は株式会社エンリッション社長、柿本優祐氏自らの体験に由来する。柿本氏は大学時代、低学年の頃から多種多様な企業に勤める社会人と交流することが多かった。様々なバックグラウンドを持つ社会人たちの話を聞いているうちに、就活時期を迎えるころには自らの就職に対する明確なビジョンが自然と身についていたという。しかし周りの同級生はそのビジョンがあいまいなまま、就活サイトを使って大量にエントリーを行う「オンライン就活」に陥ってしまっていた。そこで、学生が企業担当者との交流によって自然とキャリア観を育むことのできる「オフライン就活」の場として、知るカフェを作ることを決意したという。

 

店舗の運営も学生が行う。

 

企業を「知る」新たな取り組みも

 現在知るカフェでは、SHIRUWORKと題する店内での1日インターンシップを展開中。このイベントは、実際に企業担当者を招いたディスカッションなどを通じて、企業や就職に対する理解を深めるものだ。まだ始まったばかりだが、今後さまざまな企業の協力を得て継続的に実施する予定だという。

 

 「オフライン就活」の場として存在感を見せる知るカフェ。就活に対する漠然とした不安や戸惑いを持つ人も、まずは空き時間に知るカフェを訪れてコーヒーを1杯飲むところから始めてみたい。

 

 

(取材・衛藤健)


大学入学後も受験勉強?仮面浪人の素顔に迫る

$
0
0

 大学に入れば誰にもバラ色の学生生活が待っているとは限らない。思い描いていた学生生活とは違っていたり、やりたい学問ができなかったりといったことは少なくないだろう。そうした現実の中、仮面浪人(大学に在籍しつつ他大を目指し受験勉強する)という選択肢を取る人がいる。実際に仮面浪人を経て他大から東大に、もしくは東大から他大に進学した3人と、東大を目指す浪人生が多く在籍する河合塾本郷校の青木緑校舎長に話を聞いた。(取材・長廣美乃)

 

 

 Aさんは九州大学法学部から文Ⅲへ進学。1浪して受けた東大に再び不合格となり、後期日程で九州大に入学したが、劣等感や自己嫌悪感を拭えずにいた。1年の夏にシンガポール国立大学の学生との交流で刺激を受け「もっとレベルの高い人々に囲まれた環境で学びたい」と思った。九州大は取得単位が少なくても進級できると知り、最後の挑戦を決意することにした。

 

 受験勉強開始が10月と遅れたため、12月中旬まで基礎固め、その後センター試験対策、2次試験対策をした。勉強の合間に家事をしたり授業に出たりした。授業は週5コマのみ出席。単位取得を諦め、東大が不合格なら次年度に再履修を考えていた必修授業もあった。友人と話す時間はなく、所属していた環境系のサークルも10月の学園祭への参加が最後で、アルバイトは10月末で辞めた。

 

 一人暮らしで家族には仮面浪人すると伝えておらず、合格を伝えると驚きつつ喜んでくれた。「身勝手な行動を許してくれて感謝しています」とAさん。大学の友人にも伝えなかったが、高校の同級生1人だけには打ち明けた。

 

 つらかったのは、2次試験対策の最中に大学の定期試験やレポート提出があったことと、「仮面浪人」とインターネット検索した際に否定的な記事ばかりがあったこと。1月以降は風邪予防で自宅に引きこもる日が続き「それまでの人生で最も孤独感にさいなまれた半年」だったという。

 長谷川明紀さんは早稲田大学法学部から文Ⅲへ進学し、今は文学部の4年生。東大不合格が分かってすぐ仮面浪人を決意した。中1から東大専門塾に通っていたため東大以外の大学への進学が親にも申し訳なく、自分を変えようと最も大変だと考える道を選んだ。親にも仮面浪人は伝えた。

 

 仮面浪人中は教科ごとに時間を決めて勉強。4月以降基礎的な参考書を用いて不正解の問題を洗い出し、夏からは現役時代の塾のテキストや過去問を用いた。11月からセンター試験対策に取り掛かり、センター試験後はそれまでの復習。東大型模試は全て受けた。大学図書館にこもり勉強したが、合間に必修の授業に出席し好成績を修めた。

 

 クラスの人に仮面浪人を隠すことには苦労した。「仮面浪人」=「自分の選んだ大学を蹴ろうとしている」であり、気分の良いものではないと思っていた。

 

 仮面浪人を経験して良かったことは、全力を尽くせば自分でも難しいことに粘り強く取り組めると思えるようになったこと。多くの人に支えられていると再確認できたこと。それから、東大を選ぶ理由を見つけられたこと。ずばぬけて博識な人や、賢い人がいるのは東大だと思ったという。

 

 「やはり一番に感謝すべきは両親だと思います」と長谷川さん。私立大学での仮面浪人は金銭面の負担も大きい。自分の選択を理解し応援してくれた両親と、当時の自分の努力に恥じないよう頑張るというのは、大学生活を通して長谷川さんの軸になっている。

 東大から他大に進学するために仮面浪人した人もいる。斉藤瑠音さんは文Ⅱから東京医科歯科大学医学部に進学した。高3の終わりごろ医者になりたいと思い始めたが、文系だったためいったんは文Ⅱに入学した。通い続けるつもりはなかったが、親から「半年通ってみてそれでも医者になりたいなら再受験しても良いのでは」と言われ、1年のSセメスターは全て出席。その後は一度も出席せず、1年修了時に留年手続きを行い、結果的に「仮面浪人」という形になった。

 

 仮面浪人1年目は家や図書館で勉強したが失敗。2年目は医学部受験に定評のある予備校に通学することにした。1年目は未修だった数Ⅲや化学、生物を教科書と初歩的な問題集で勉強し、予備校に通い始めてからは化学などは予備校の授業中心で、英語は自分のペースで勉強を進めた。

 

 「親をはじめ多くの人にお世話になったことはきちんと覚えていたい」と斉藤さん。「大人として、医者として、自分も人を支えていきたいという思いが強くなった浪人生活でした」

 サークルやアルバイト、友人関係など、犠牲にすることもある。回り道のようだが、その経験は彼らの糧となっているようだ。青春時代の1、2年をどう過ごすかは人それぞれだが、環境の許す限り、夢や自信のために妥協を捨ててみるのも良いかもしれない。

 

自分の適性見つめて後悔ない大学選びを

 仮面浪人の利点は、第1志望校の勉強に集中できる点。第1志望校に不合格だった場合のことを考えて併願校の対策をする必要がないためだ。一方、その大学に通い続けることになった場合に、仮面浪人期に友人関係やサークルを犠牲にしたせいで大学生活を謳歌(おうか)できないという欠点もある。

 

 河合塾本郷校の青木校舎長によると、毎年本郷校の生徒の約1%に当たる5、6人が、大学を休学し入塾する。入学式後や前期の授業が終わった後に決心するようだ。

 

 仮面浪人の理由には、受験校の調査不足や就職を見据えた現役志向などがあるようだ。取れると思っていた資格が実は取れなかった、現役で入れる不本意な大学に入ってしまったなどのケースである。「まずは自分自身で納得のいく大学選びを」と青木校舎長は言う。

 

 それでも、入った大学に違和感を持ったのであれば籍を置いたまま他大受験を目指す道もある。青木校舎長も昨年度、通っていた国立大学を休学し、東大を目指して見事トップの成績で東大への合格を果たした受験生を見てきた。「挑戦を続けている受験生はたくさんいます。悔いのない大学選びをしましょう」


この記事は、2018年9月25日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

ニュース:7号館に不満集中 学生と大学の間に認識の違いも UTokyo WiFi
ニュース:終盤に失点し連敗 硬式野球立大戦 打線あと1本が出ず
ニュース:決勝T進出決まる ラクロス日体大戦 矢野選手4得点の活躍
ニュース:七大戦 地震で3種目中止 総合3位に終わる
ニュース:第57回七大戦結果一覧
ニュース:秋季学位記授与式・卒業式 「俯瞰的な視点を」
企画:明治維新は大胆な近代化 『西郷どん』時代考証者にインタビュー
企画:大学入学後も受験勉強? 仮面浪人の素顔に迫る
ミネルヴァの梟−平成と私 ⑤新キャンパス計画
ひとこまの世界 廃線跡をたどる
研究室散歩@化学生命工学 山東信介教授(工学系研究科)
東大今昔物語 1953年11月23日発行号より 大講義への不満、今も昔も
東大CINEMA『運命は踊る』
立石ひなのさん(文Ⅲ・2年)

※新聞の購読については、こちらのページへどうぞ。

東大生も愛用 ぶどう糖90%の意外なお菓子とは?

$
0
0

 東大生協駒場購買部(以下東大生協)の駄菓子売り場へ行ってみると、他のお菓子よりも2倍以上のスペースで、棚一段まるまる取って売られているお菓子がある。森永製菓のラムネだ。東大生協の担当者によると、森永ラムネは2018年に入ってから売り上げを伸ばしており、同年5月以降、前年比約2倍の売り上げを記録しているという。森永製菓としても、2014年2月以降、毎年売上を伸ばし続け、特に今年3月以降からは品薄の時期もあったようだ。

 

 森永ラムネといえばロングセラー商品である上、町の駄菓子屋やスーパーで必ずと言って良いほど売られており、子どもの頃に食べたことのある人は世代を問わず多いだろう。しかし、なぜ子どもが好むようなラムネが東大生の来店する東大生協で売れているのか。

 

 実はただの「子どもの駄菓子」ではないのが森永ラムネ。ラベルを見ると「ぶどう糖90%」の文字が。ここに森永ラムネの人気のヒントがあるのではないか。実際に森永ラムネを食べて勉強しているもしくは勉強していたという東大生2人に話を聞き、その魅力に迫る。

 

勉強の合間に、手軽に栄養補給

 

西原 凜(にしはら・りん)さん(文Ⅲ・1年)

 

━━森永ラムネを習慣的に食べるようになったきっかけは

 受験生のとき友人が森永ラムネを食べていたのを見て、なぜ食べているのか聞いたらぶどう糖が豊富だからと言われて。友人が勉強の際に食べていることがきっかけで習慣化しました。周りの友人の間では何人か取り入れている人もいたようです。

 

━━どのように食べていましたか

 勉強の最中や勉強の合間に食べていました。元々何か口に入れて勉強するタイプだったので、安くて甘い上、一口で食べられるラムネはちょうど良かったと思います。噛まなくて良いところも好きでした。空腹をしのぐのにもちょうど良かったですね。ラムネを食べることで、勉強していても手軽に栄養補給できるのが良かったです。

 

カバンに携帯、今でもお気に入り

 

守本 蒼生(もりもと・あおい)さん(理Ⅰ・1年)

 

━━いつ頃から森永ラムネを食べるようになりましたか

 高3の5〜6月です。担任の先生からぶどう糖がおすすめだと聞いて、ぶどう糖90%の森永ラムネを見つけました。それ以来すっかり気に入って、現在でも勉強前やパソコンで作業する前、気分転換の時などに食べています。

 

 

━━受験生時代はどのように食べてしていましたか

 だいたい2日に1本食べていました。入試の日は、常にカバンに3本ほど携帯し試験会場に持って行っていました。

 

━━森永ラムネのどこが気に入っていますか

 コンビニでも売っているため、どこでも手に入る点です。持って来るのを忘れても出先で買うことができます。もちろん味もおいしいですし、安いのも魅力です。

 おいしさに加えて、栄養も取れるので、森永ラムネを食べておくと頑張れる気がします。

 

 2人とも、受験勉強の際にぶどう糖90%という点に惹(ひ)かれて、森永ラムネを食べるようになったようだ。東大生協で森永ラムネが売れている背景として、東大生がぶどう糖の魅力を知って購入していることが考えられる。

 

 森永ラムネはコンパクトな大きさで、値段も安く手軽に買える。たまには子どもの頃を思い出しつつ、ぶどう糖90%のお菓子を食べるのもいいかもしれない。

 

(タイアップ記事)

カフェと新聞で人々の交流をつくる 大牟田で始まった真の「地方創生」への挑戦

$
0
0

 カフェでの飲食や新聞などを通じて、人々の交流の場を提供する「ROOTH2-3-3」が8月24日、福岡県大牟田市にオープンした。「ROOTH」はオープンしてから1カ月で来客数が1万人を突破しており、現地の人々もその人気ぶりに驚いているようだ。

(取材・撮影 石井達也)

 

店舗はれんが造りの建物を再利用している

 

 「ROOTH」は「ROOTS of THINKING.<思い、考える、が根付く>」がコンセプトで、誰もが気軽に訪れ、集える場所を目指す。米倉だったれんが造りの建物を再利用した店内では、レコードから流れるBGMを楽しみながら、コーヒーやドーナツなどを味わうことができる。

 

店舗の中心に置かれた開放的なキッチン
レコードからのBGMが店内に華を添える

 

 通路壁面のギャラリーには、大牟田の歴史を切り取った写真を数多く展示。小紙も協賛している新聞ライブラリーでは、業界紙の『日本食糧新聞』や『点字毎日』、地方紙の『日刊大牟田』『西日本新聞』など60紙(8月24日のオープン時点)を自由に読むことができる。

 

ギャラリーの写真からは大牟田の歴史を感じ取れる
珍しい新聞が並ぶ新聞ライブラリー

 

 「今まで大牟田にはなかった、こんな店ができてうれしい」と年配の男性客は話し、笑顔でドーナツを頬張った。初老の女性客は、職場に置いてあるチラシを見て、出勤前に訪れたという。家族連れや若者同士で訪れる客も。どの客も全く新しいコンセプトの店に興味津々だ。

 

ドーナツは小ぶりで食べやすく、ついつい別の味を試したくなる

 

 地方を盛り上げることで日本全体の活力向上を目指す「地方創生」は、人口や経済成長率などの無機的な数字で評価されがちに思われる。真の「地方創生」に必要なのは、数字では表せない、出会った人々の間で自然と会話が生まれて豊かな交流が育まれるような場ではないだろうか。米倉を再利用した建物、レコード、新聞──「ROOTH」を構成するのは、運営会社「Be The One」のCEOを務める後藤倫さんいわく「今ある物」。特に「読んでいる人の興味・関心が表れる新聞は、人々の会話を生み出す絶好の種になるのではないでしょうか」。現代人が失いつつある有機的なつながりを育む力を、「ROOTH」は秘めている。

19歳が見た中国① フェリーに乗って、ぶっつけ本番中国語

$
0
0

▲中国の朝は早い。6時には街角の店々から湯気が漂い出す。蒸したての饅頭(マントウ)を手に入れた(写真は深圳にて)

 

「中国にどんな印象がある?」「え……あんま印象ない」

 パンダ、麻婆豆腐、PM2.5、コピー商品、領海侵入、高速鉄道(高鉄)の脱線事故……。私が中学生の頃に抱いていた中国のイメージは、こんな感じだ。パンダと麻婆豆腐を除けばマイナスイメージが並んでいるが、これはテレビや新聞の影響が大きい。黄色く淀んだ空気の中を黒マスクの人々が行き交う写真や、毎日のように流れる「中国船が一時領海侵入」のニュース、高鉄の事故車両が何事もなかったかのように埋められる映像を見て、中国は息をするのも大変な無法地帯であり、そこに住む人たちとは信じ合えない、と思い込んでいた。

 

 もちろん今は違う。中国語を勉強し、中国からの多様な情報に触れたことで、私はもっと多角的に中国を捉えられるようになった。中学生の私に「将来は中国に友達が沢山できて、大学2年生の夏には中国を3週間も旅行するんだよ」と話しても、信じてもらえるとは思えない。ところがどっこい、現実にはそうなったのである。今年の夏休み、私はフェリーに乗って中国に渡り、バックパックを背負って上海や深圳など7都市を歩き回った。東大で知り合った中国人学生を訪ね、一緒にご飯を食べながらワイワイ語りあった。この連載は、19歳の若者が、頭と口と耳と足をパワフルに駆動させて中国の人々や社会を観察した、そのエッセンスを書き綴ったものだ。思考や経験が不足している部分もあるだろうが、読者の皆様には寛容な心でおつきあい願いたい。

 

▲私たちの中国観は、「コピー商品の氾濫」というような、メディアの提供する一面的なイメージに塗り固められていないだろうか?(写真は広州の文房具店にて)

 

 中国語選択ではない東大の友人に「中国にどんな印象がある?」と聞くと、「怖い」「危ない」「空気が汚い」と、かつての私のように一面的に考えている場合がある。「え……正直あんま印象ない」と言われることもあり、さらに不安になる。日本の各界のリーダーになりゆく東大生が、中国を多面的に理解していなければ、ますます密接になる日中の関わりのなかで、チャンスを遠ざけリスクを近づけることになりかねない。だから、この連載を通して、一人でも多くの東大生に「中国ってそんな一面もあるんだ」と驚いてもらい、興味をもってもらいたい。

 

フェリーに乗って、ぶっつけ本番中国語

▲長江デルタ、珠江デルタ、内陸部を通り、中国の多様性とダイナミックな発展を感じられるルートを組み立てた。

 

 3時間で東京から上海までひとっ飛びできる時代に、48時間かかるフェリー「蘇州号」(大阪⇔上海)を敢えて選んだ。運賃が格安航空券と同じくらい安かったからでもあるが、一番の理由は、船の上での会話と交流を楽しみたかったから。船の上で2日も過ごすうちに、手持ち無沙汰な乗客どうし、たくさん喋るだろう。私の旅の目的は中国語の力を鍛えること、つまりたくさん喋ることだから、ほとんどの乗客が中国人という「蘇州号」に乗るのはまさにうってつけの練習方法だったわけだ。

 

 「蘇州号」に乗り込むと、すぐに甲板に駆け上がった。船旅の醍醐味は何といっても、甲板で海風に吹かれながら大海原を見渡す、あの開放感だ。大阪の街がどんどん小さくなるのを眺めているうちに、甲板の別のところから、中国語の元気な喋り声が聞こえてきた。よく日に焼けた50代くらいのおばさんと、色白の30代くらいのお兄さん。喋っている様子を見ると、親戚だろうか、とにかく長い付き合いに見える。私は気軽に中国語で話しかけてみた。

 

 「你们好(ニーメンハオ;こんにちは)、お二人は親戚ですか?」

 「いやいや、違うよ、この兄ちゃんとは、さっき船の上で知り合ったばっかりさ」とおばさんが笑った。「中国では見知らぬ人どうしでもすぐに喋るようになるからね。数年来の仲良しに見える人たちでも、たった今知り合ったなんてことがよくあるよ。きみは大学生かな。日本に留学に来てるんでしょう?」

 「いえ、東京の大学生ですよ。これから中国に旅行に行くんです」

 「日本人かい?」お兄さんが驚いた顔をした。「全然分からなかったよ!中国語はどうやって勉強したの?」

 「中学生のときに、独学で始めたんです。NHKラジオとか聞いて。でも集中的に勉強したのは、大学に入ってからですね」

 「すごいな!きみの中国語のレベルなら、中国を一人で旅行しても困らないよ」とお兄さんは太鼓判を押してくれた。

 

▲「蘇州号」では夜更けまでお喋りが絶えない。ギターの音色をきっかけに交流が始まることも……

 

 「お兄さんは何の仕事をなさってるんですか?」

 「日本の会社でマーケティング部門の仕事をやってる。でも中国と違って年功序列が厳しくて、ちょっと疲れるね。それよりも、この方に話を聞きなよ」お兄さんはおばさんを指差した。「貿易会社の老板(ラオバン;社長)だよ!」言われてみれば確かに、おばさんには老板の風格がある。

 「小さい会社だけどね。中国から海事用品を輸入して日本で売るのさ。最近なら、船で使うシェンズとか、ブーユーワンとか、結構売れるねえ」

 ちょっと語彙が難しくなってきた。「え?何が売れるんですか?」と聞き返す。

 「绳子(シェンズ;縄)、捕鱼网(ブーユーワン;漁業用の網)だよ。商売ではね、お客さんは品質と価格を求めるのね。日本の縄や網は品質は飛び上がるほど素晴らしいが価格は高い。中国のものは品質はそこそこだが価格は驚くほど安い。だから人気が絶えない。おかげで我々の商売が長く続くってわけさ」おばさんは分かりやすく解説してくれた。

 

 3週間の中国の旅では、この貿易会社の老板をはじめ、中国全土を放浪する種子売り、伝統楽器の演奏者、長江の中洲の住人、小学校の教師、元警察官のおじさん、中国で一旗上げるためにやってきたアメリカ人、ロシア人、セルビア人、アルゼンチン人など、団体ツアーや研修プログラムでは出会わないような人たちと出会った。教科書にはおよそ載っていないような言い回しを、その場で聞き覚えて喋ることもしばしば。結果として、中国語によるコミュニケーションの力は格段に上がった。さらに、一人ひとりと話したことの奥にある、中国流の発想、中国社会のダイナミックな動きも感じることになる。

 

▲乗務員の安全デモを真剣な眼差しで聞く乗客たち。自分の命は自分で守るという「中国流の発想」を実感した(写真はフェリー「蘇州号」にて)

 

なぜ東大が用意している海外プログラムを使わなかったのか

 東大生は夏休みと春休みには全員日本にいないのではないかと錯覚するくらい、大学のプログラムに参加して海外に行く同級生は多い。特に中国関連のプログラムは、東大ではいわば「飽和状態」である。例えば中国語TLPの学生には、渡航費・授業料負担の一切ない、夏休み3週間の「南京語学研修」をはじめ、数えきれないほどのプログラムが用意され、選び放題だ。でも、こうしたプログラムには、授業の出席や集団行動など、制約が多いのも事実である。同じ3週間を使うなら、話す相手も行く場所も、100%自分の創意工夫で組み立てた、自分のための「研修」に使ったほうが、よっぽど成長できるだろう、と考えた。

 

▲3週間の旅行にかかった費用の内訳。船も鉄道も宿も、自分で予約する。

 

 さて、「研修」には先生が必要だが、どう確保すればよいか?私はある方法を思いついた。実は、7月から8月にかけて、東大には中国各地の大学から見学団が訪れる。彼らと仲良くなって、駒場キャンパスや東京の街を渾身の中国語で案内してあげる。別れ際に「この夏は中国を旅行するんだ」と言うと、彼らは必ずこう言ってくれる。「ぜひ私たちの街においでよ!今度は私たちが案内してあげるし、美味しいお店も教えてあげるから!」

 

 こうして、私が「蘇州号」で上海に着くと、頼りになる「先生」たちが行く先々で待ってくれているという、最高の状態ができあがっていたのである。

 

▲「蘇州号」は上海のど真ん中に到着した。果たして中国でどんな体験が待っているだろうか?

 

文・写真 松藤圭亮 (理Ⅰ・2年)

 

【関連記事】

【若き研究者たち②】松藤圭亮さん 研究者の人生はマラソン、寄り道しゴールを探す

読書を、仲間たちとともに 読書会、ビブリオバトル……それぞれの工夫

$
0
0

 読書と聞くと、個人的に黙々と取り組むものと思われる方が多いはず。しかし昨今、読書の新たな取り組みが広がっている。大人数で本を片手に感想を語り合う読書会や、参加者が本を紹介し合い、最も読みたくなった本を決める ビブリオバトルはその好例だ。今回の企画では、日本最大級の読書会の主宰者、千葉県柏市でビブリオバトルを開催している図書館に取材。一人での営みにとどまらない、読書の新たな可能性を探った。(取材・吉良椋)

 

読書会 読書を「かっこよく」見せる

 

 

 山本多津也さんが主宰する「猫町倶楽部」は、 2006年に名古屋で小規模な読書会として始動後、東京、京都、福岡など各地に展開している。今では1万1千人以上の会員 を誇る、日本最大級の読書会 組織に成長した。ジャンルも ビジネス書、文学、芸術、哲学、R-18 に至るまでさまざまだ。ここまで組織が拡大した理由について山本さんは 「想定外でした」と笑いつつ、「家族や社会などの共同体が不安定になっていく中で、人とつながる場所が求められていたのかもしれません」と話す。

 

山本多津也さん(「猫町倶楽部」主宰)

 

 読書会では単に集まって読書をするだけでなく、一風変わった試みも。読書会の分科会の一つ、「文学サロン月曜会」では、課題図書に合わせてドレスコードが設定される。例えば坂口安吾の『堕落論』が課題図書の回は、「デカダンス(退廃)」をテーマに 各々が趣向を凝らした服装で参加。他にもジャズやDJプレイを組み込んだイベントも実施する。「難解、しかし価値のある『汗をかく読書』が創設当初のテーマでしたが、骨のある読書を継続するには楽しくないといけない。読書会自体をコミュニティーとして魅力あるものにしなければ、と考えました」と山本さん。 読書に遊びの要素を取り入れ、新たな層の取り込みを目指している。

 

 読書会のルールは二つだけ。一つは「課題図書を事前に読了すること」。難解な本を自主的に読み切るのは簡単ではない。本から逃げない強制力を持たせることが狙いだ。「みんな『課題本疲れ』で大変とぼやきながらも、楽しい場に参加するために読んできますね」と笑う。もう一つは「他者の意見を否定しないこと」。 7、8人を一つの班とし、進行役を中心に感想を語り合う中では、「全然分からなかった」という率直な意見も。「参加者のほとんどの方が人見知りだとおっしゃいます。しかし、話したことを否定されず、うなずいてもらえる場所は居心地が良いのですぐ打ち解けます」。参加者からは「緊張していたけど面白かった」、「自分では絶対に読まない本を読む貴重な経験ができた」などの感想が聞かれるという。

 

 読書への関心が薄れ、活字離れが叫ばれる現代だが、山本さんは違う考えを持っている。アメリカの美術評論家、 グリーンバーグの『批評選集』が課題図書だった読書会に、60人もの人が参加した。美大生でもあまり手に取らない難解な本を、OLやサラリーマンが読んできたのだ。 「人々はきっかけさえあれば、さまざまな本を読みたいと思っているのです。その気持ちに火をつけるのが僕の役目です」。読書会の役割を「対話で身に付く教養」と考えている山本さん。「例えば文学はいくつもの読み方が存在します。読書会で他者の説得力ある意見から気付きを得ることで、 自然に身に付いていきます。これは人生での経験を違う見方で深化させることにつながる。他ではなかなか得難い体験です」

 

 孤独な取り組みだと思われがちな読書だが、手段の一つとして読書会がもっと普及するべきだと山本さんは語る。教育の場で実践されれば、若年層の読書量増加につながる。大人たちの読書会が魅力的ならば、憧れを抱いた子どもが本を手に取るはずだ。 「なぜ本を読む人が減っているのかというと、ひとえに読書をする人がかっこよく見えないからだと思うのです」と熱弁する。読書を単なる「権威」から「かっこいい取り組み」へ。山本さんの挑戦は続く。

 

ビブリオバトル 読書家同士の交流深める

 

 出場者が制限時間5分間で自ら選んだ本の良さを語り、一番読みたくなった「チャンプ本」を決定するビブリオバトル。毎年市内の中高生、大学生を対象としたビブリオバトルを実施している、柏市立図書館の司書、利光朝子さんに取材した。

 

 柏市立図書館がビブリオバトルを初めて開催したのは12年。中高生の利用者数が落ち込む中で、読書推進活動の一環として導入した。当時は市内の10余りの中学校・高校・大学による小規模な大会だったが、年々参加校が増え、今年は総勢30校以上が参加する一大イベントに成長した。参加者増に対応するため、今年度から中学生の発表を3分に短縮。大会のコンパクト化を図りながら開催当初本来のルールに近い形での開催を模索している。

 

 ビブリオバトルは柏市の大型複合施設のホールを貸し切り、100名ほどの前で発表する。出場者にとっては、読書という日の当たりにくい趣味にスポットライトが当たる晴れ舞台。「発表を通して大きな達成感を得る生徒が多いです」と利光さん。過去の大会では、中学生が古典作品、高校生が安部公房など硬派な本を取り上げて観客を驚かせ、大学生が国語辞典を紹介するひねりを見せるなど、刺激的な発表で会場が沸いたという。チャンプ本に選ばれた本は、図書館からの貸し出しが続出する。

 

 読書好きが周りになかなかいない生徒たちにとっては、自分と同じ読書家に出会う貴重な場としての機能も果たしている。「会場を閉じる時間が近くなっても、出場した子同士でいつまでも喋っているのをよく見かけます」と利光さんは笑う。

 

 「自分の好きな本について語ることは、すなわち自分を語ることになります」と利光さん。参加者にはうまく本を語ることを意識し過ぎないようにしてほしいという。「ビブリオバトルは、いかに技巧的に本を語るかを競うものではなく、読みたくなった本を選ぶ大会。自分の本への素直な思いを語ってくれれば、それはおのずと魅力的になるはずです」

 

 

 実際にビブリオバトルに参加し、優勝した東大生にも話を聞いた。山川一平さん(工学系・修士2年)は、小学館主催の大学対抗書評バトルに 東大代表として出場し、見事優勝した実力者だ。

 

山川一平さん(工学系・修士2年)

 

 書評バトルには、小説家河野多惠子の芥川龍之介賞受賞作『蟹』で挑んだ。「いかに読みたくさせるか」考え、本番では自らの研究する古典力学に言及。「F=ma」という単純な式を基本としながら、いまだ解決に至らない問題が多いゆえに研究が続く奥深さを、鮮烈な文章でなく、ストーリーも地味ながら感銘を与える『蟹』になぞらえて発表した。審査員の一人だった、芥川賞選考委員の島田雅彦さんからは「華麗なる一発芸」との選評を受け、「芥川賞を受賞した気分になりました(笑)」と語るほど会心の出来だったという。

 

 「純文学を他人の興味をそそるように紹介する、という行為自体ある種の矛盾をはらんでおり、難しいですね」と 山川さん。とはいえ、難しさ故の深みがあるのも事実。「文学を語ることもまた文学になりえます。ビブリオバトルを文学の一ジャンルとして捉える人が出てくると面白いですね」


この記事は、2018年10月2日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

インタビュー:お金以上の自由求めて 山本周五郎賞受賞の東大生 小川哲さんインタビュー
ニュース:成績提出義務付けず 英語民間試験 調査書で代用可能
ニュース:要所押さえ大勝 アメフト駒大戦 守備陣が奮闘
ニュース:秋季入学式 802人が入学
企画:読書を、仲間たちとともに 読書会、ビブリオバトル……それぞれの工夫
企画:東大生協本郷書籍部売り上げランキング(2017年8月〜18年7月)
企画:本は、あなたを変える 編集部員厳選の4冊を紹介
企画:変わりゆく書籍の在り方 紙で深め、電子で広げる
キャンパスガイ:阪本昂平さん(理Ⅰ・1年)

※新聞の購読については、こちらのページへどうぞ。

【推薦の素顔】小山雪乃丞さん 地層求めて縦横無尽

$
0
0

 2016年度から、多様な人材の獲得を目的として導入された「推薦入試」。ペーパーテストが主な評価対象となる一般入試とは異なり、小論文や面接などが課されており、毎年個性的な学生が推薦入試を利用して入学します。そんな彼らを一人一人取材するのが本連載「推薦の素顔」。東大に新たな風を吹き込む彼らに、あなたも触れてみませんか。

 

小山 雪乃丞(こやま・ゆきのじょう)さん
(理Ⅰ・2年→理学部)

 

 小学生の頃から家にあった地学関係の図鑑を読んで「自然の力だけで美しい鉱物の結晶ができることに、神秘を感じていました」。中学では地学部に入り鉱物の採集や地層の見学を開始。中・高で100以上の観察地点に出掛けたという筋金入りの地学好きだ。

 

 地学部の活動の中でも特に力を入れたのが、高1から高3の春まで続けた研究。神奈川県三浦半島の「初声層」の形成年代を特定することを目指して、初声層に含まれるナノプランクトンの化石の発見に挑戦した。

 

 東京の自宅から片道2時間かけて初声層へ行き、ひたすら歩いて化石が含まれる可能性のある泥岩層を見つけて地層の一部を持ち帰る。持ち帰った試料を不純物と化石に分離する作業は、遠心分離機などを用いる行程を約30回繰り返すため1カ月半ほどかかる。この試料採取と分離作業を計15回行い、いくつかの試料からは化石のようなものが出たが、化石の保存状態が良くなかったこともあり、挑戦は成功しなかった。しかし「自分のやりたいことができましたし、根気強さも付きました」と笑顔で振り返る。

 

 推薦を目指した契機は高3で地学オリンピックの世界大会に出場したこと。元々東大を目指していたところ世界4位の成績を収め「推薦で受かるかも」と感じた上、1年次から研究に触れられるという制度に引かれて受験を決めたという。

 

 現在は地文研究会地質部に所属。週末の実地調査では糸魚川などに出掛け、金曜日の午後10時に東京を出て日曜の午後8時に帰るハードスケジュールをこなす。地質への興味は健在で、将来は岩石の研究によって地震や火山噴火のメカニズムを解明したいと話す。災害大国日本を救うのはこの人かもしれない。

 

(取材・撮影 児玉祐基)


この記事は、2017年8月1日号に掲載した記事の転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

 

 

インタビュー:当たり前の幸せ伝えたい あいはらひろゆきさん(絵本作家)
ニュース:理Ⅲ面接 筆記高得点者の不合格も 学力試験翌日の27日に実施
ニュース:23年度まで共通試験存続 新テスト英語 民間試験と併用可
ニュース:医・野村助教ら健康指標を分析 都道府県間の健康格差が拡大
企画:東大生×絵本アンケート 一般との違いは?
企画:大人の知らない絵本の今 デジタル、美術 広がる魅力
企画:お店のプロが直伝! 絵本の読み方楽しみ方
推薦の素顔 小山雪乃丞さん(理Ⅰ・1年→理学部)
火ようミュージアム:ちひろ美術館・東京「高畑勲がつくるちひろ展 ようこそ!ちひろの絵のなかへ」
東大今昔物語:1986年8月26日発行号より 主管校なぜ強い
東大発ベンチャー:リディラバ
キャンパスガール:岡林紗世さん(文Ⅲ・1年)

※新聞の購読については、こちらのページへどうぞ。

「東大生のSDGs意識調査2018」 UTokyo Sustainabilityが実施

$
0
0

 

UTokyo Sustainability(TSCP学生委員会)とは?

 

 最近、「サステイナビリティ」「SDGs」などの言葉を耳にすることが増えてきています。環境や社会に配慮し、持続可能な社会を目指そうという世界の動きが活発になってきました。そのような時代の流れを背景に、サステイナビリティの考え方をキャンパスの中で捉えて、「サステイナブルキャンパス」の実現を目指しているのが、UTokyo Sustainability(TSCP学生委員会)です。

 私たちは、キャンパスのサステイナビリティに関わるさまざまな活動をしていますが、ここでは主な二つの取り組みをご紹介します。

 

活動① キャンパスの消費電力の削減

 

 一つ目の主な活動は、キャンパスの消費電力の削減に向けた取り組みです。

 私たちは、ドラフトチャンバーに着目した電力削減の取り組みを行っています。ドラフトチャンバーは、化学実験時に有害気体を排気する装置です。しかし、使っていない時にそのサッシュ(開閉部分)を開けておくと、電力消費のムダが生じてしまいます。図1のように「排気ファンの電力のムダづかい」「空調の電力のムダづかい」という二つのムダづかいが生じるためです。

 そこで私たちは、非使用時にサッシュを閉めることを啓発する「SHUT the SASH」キャンペーンという活動を行っており、啓発ポスターの作成や掲示をしています。ちょっとの工夫でキャンパスの電力消費による環境負荷を低減することができます。みなさんも、ぜひご協力ください。

 

(図1)ドラフトチャンバーと電力消費のムダ

 

活動② SDGsの普及、学生のサステイナビリティ意識の向上

 

 もう一つの活動は、学生のサステイナビリティ意識の向上に向けた取り組みです。具体的には、SDGs(持続可能な開発目標)の理解を普及させることで、サステイナビリティの考え方を学生に広める活動を行っています。SDGsは、2015年に国連が、地球環境や経済活動・人々の暮らしを持続可能なものとするために2030年までに世界が取り組むべき行動目標として、17の目標と169のターゲットにまとめたものです(図2)。しかしSDGsは行動目標であるだけでなく、現代が抱えるサステイナビリティの課題を広く取り扱っているため、分野横断的なサステイナビリティの全貌を把握する一助となるものでもあります。

 2017年度は、学生の意識の現状把握のため、「東大生のSDGs意識調査2017」を行いました。その結果を受けて、2018年4月には、SDGsとキャンパスサステイナビリティについて解説したパンフレットを作成して配布しました。今後も、サステイナブルキャンパスの実現を目指し、キャンパス最大の利用者である学生の意識向上に向けてさまざまな活動を展開していく予定です。

 

(図2)SDGsの17の目標

 

「東大生のSDGs意識調査2018」実施中!

 

 現在、昨年と同様、「東大生のSDGs意識調査2018」を実施しています。東大生のSDGsの認知度、キャンパスにおける電力消費、緑地保全、消費における環境配慮など、さまざまな観点から東大生のサステイナビリティ意識を明らかにし、今後の活動につなげていこうと考えています。ぜひ、回答よろしくお願いいたします!

 

「東大生のSDGs意識調査2018」

コチラから回答お願いいたします → https://goo.gl/forms/02lQZlwLWuIFzllf1
期  間:10月17~31日
実施主体:UTokyo Sustainability
協  力:東京大学経営企画部経営戦略課、施設部施設企画課TSCPチーム

☆調査結果を一緒に分析するメンバーを募集中ですので、お気軽に下記の連絡先にご連絡ください。
☆12月に発表予定の分析結果について興味がある学生・学生団体の方も、お気軽にご連絡ください。また、昨年度の分析結果は、下記団体ホームページから閲覧できます。

UTokyo Sustainability(TSCP学生委員会)
ホームページ:https://utsustainability.wixsite.com/utsustainability
メール:ut.sustainability.tscp@gmail.com

 

 

☆いつでも学生委員会メンバーを募集しています。省エネ・環境問題・サステイナビリティに興味がある学生は、お気軽にご連絡ください。

 

寄稿=UTokyo Sustainability委員長 鬼頭健介(農・4年)


19歳が見た中国②  学校の近くに、安くてうまい飯あり

$
0
0

中華料理は中国の料理じゃない!?

 

 「日本の中華料理ね、あれぁ中国菜(チョングオツァイ;中国の料理)とは全くの別物だよ」

 「どういうことですか?中華料理は中国から来たんですよ!」

 フェリーで隣だった中国人のおじさんに言われたときはピンと来なかったが、3週間中国の街角でご飯を食べて、おじさんの言い分は正しかったことが分かった。

 

 中華そば、天津飯、青椒肉絲、麻婆豆腐……日本で人気の中華料理と同じものが中国にも勿論ある、と考えている読者の皆さんは多いだろう。だが、中華料理はあくまでも、日本人向けにアレンジされた日本の料理文化だ。私たちの中華料理のイメージと中国の食文化とのかけ離れ具合には、びっくりさせられる。

 

▲広東地方の食文化、饮茶(ヤムチャ;飲茶)。好きなお茶を選んで、点心(ディムサム;軽食)とともにいただく。饮茶は社交のツールとしても使われる(写真は広州で)
▲お得感のある自助餐(ビュッフェ形式)。ひと皿12元(=204円)で、どれだけでもよそって良い(写真は深圳で)

 

 まず、本場の味付けは圧倒的に強烈だ。武漢で、地元の人たちが何気なく食べている火锅(フオグオ;火鍋)を一口試してみて、私は辛さで椅子から飛び上がってしまった。日本の「激辛」は中国の「ふつう」。日本の「程よい塩加減」は、中国では「味がしない(=まずい)」という評価になってしまう。甘さ勝負でも中国に軍配が上がりそうだ。というのも、中国の人たちは、私たちにとっては無糖が当たり前の緑茶も含めて、あらゆる飲料に砂糖を入れたがるのだ。上海のスーパーで、ミネラルウォーター以外の無糖飲料の種類を指折り数えてみたが、数十種類並ぶ中でわずか2種類しかなかった。

 

 何人かで食べるときは、大鍋や大皿を皆でつつくというのが中国流。取皿はないし、直箸なんて勿論気にしない。シェアするから、自然といろいろなメニューが食べられる。それに、皿洗いの量も少なくなる。一人ずつ別々に注文したり、一人ひとりの皿に料理を取り分けたりする私たちのやり方よりも、中国流はある意味合理的といえる。中華料理屋さんでよくお世話になる「セットメニュー」は、中国の飲食店では目にしなかった。セットにする必要がないからだろう。

 

 日本との違いに最も驚いたのが、中国では朝ごはんを外で済ませる(あるいは、外から買ってくる)のが普通だということ。日本では想像できないことだが、早くも朝7時には街角の飲食店が営業を始めていて、店頭で饅頭や油条(ヨウティァオ;揚げパン)のテイクアウトができる。これは、朝に余裕がない学生やビジネスパーソンにとっては特別に便利だ。私は一人暮らしで自炊に精を出しているが、朝目が覚めて、何も考えずに外に出たらおいしい朝飯が待っている中国の街角が、恋しくて仕方がない。

 

▲朝7時。街角の至るところにある小吃(シャオチー;軽食堂)から、食欲をそそる匂いが漂ってくる(写真は深圳で)
▲卤肉饭(ルーロウファン)のテイクアウト。中国の街角では、早朝でも夜中でも、簡単にご飯を調達できる(写真は広州で)

 

 今まで、中国の食文化の特徴を見てきた。ところで、私の旅先の「先生」いわく、おいしいお店の見つけ方にも、中国流のコツがあるというのだ。

 

趙さんのセオリー「美食は学校の近くにあり」

 

 「おいしいご飯を食べたいのなら、まず学校を見つけるの」

 おいしいお店を見つけるには、という私の問いに、武漢大学の趙さんは意外な答えを返してきた。

 「大学でも中学でも小学校でもいいから、とにかく学校を見つけるの。見つけたらその周辺を歩き回る。きっと地元の人でぎゅうぎゅうのお店があるわ。そこなら絶対においしいし、値段もすごく安いのよ!学校の近くには、自然と美食(メイシー;うまい飯)が集まってくるの」

 逆に、外国人が食事を済ませるような、駅や空港や観光スポットの飲食店は、趙さんに言わせれば「おいしくないのに値段が高い、せっかく中国に来たのになぜそんなところに行くのかしら?」

 

 私は趙さんのセオリーを試してみたくなった。翌朝ユースホステルを出ると、ちょうど目の前が小学校ではないか!小学校に沿った道を歩いて行くと……あるある、小さな飲食店が並んではいるが、どの店もすっからかんで、店主が椅子に座ってスマホをぼうーっと眺めている。忘れてはいけない、趙さんは「ぎゅうぎゅうのお店を探せ」と言ったのだ。次の角を曲がると、さっきとは打って変わって、老若男女が目まぐるしく出入りする活気溢れる店が現れた。

 (きっとここだ!)

 趙さんのセオリーを信じて店に入ると、大当たり!わずか140円で、できたてアツアツの牛肉ビーフンと饅頭とおかゆでお腹いっぱいになることができた。

 

▲100円できたてアツアツビーフンのリピーターになって、お店の人に顔を覚えられた(写真は深圳のお店で)

 

 ところで、趙さんのセオリーには、腑に落ちない点があった。大学の近くには、学生向けの安い飲食店が自然と集まるのは日本でも同じだ。だが、趙さんが「中学(日本の中高に相当)や小学校の近く」とも言ったのは、私の常識には若干そぐわない。どういうわけだろうか。

 

 理由が分かったのは、ある日の昼間、広州の路地を散策していたときだった。人だかりができているので、何があるのかと近づいてみると、小学校の門前である。ちょうど、学校から出てくる子どもたちを、保護者や学童保育所の人たちが迎えるところだ。どの子も荷物を持たず手ぶらで出てくるのが気になった。近くの保護者に聞いてみた。

 

▲小学校の校門には、昼休みになると人だかりができる。子どもたちは保護者に迎えられて、これから外で昼食をとるのだ(写真は広州で)

 

 「子どもたち、学校はもう終わったんですか?」

 「いやいや、まだ昼休みだよ。これから昼飯に連れて行くのさ」

 しばらく歩いて行くと、近くの中学からもお腹を空かせた生徒がどっと溢れ出してきた。

 あとで復旦大学の友人にも聞いて確かめたのだが、中国の小学校や中学では、全員が給食を食べるわけではない。小学生なら昼休みに迎えに来る保護者と、中学生なら同級生と、一緒に学外で食べる子も多いのだそうだ(日本ならば、昼休みの外食は勿論、放課後の買い食いさえ許されない小中学校もあるだろう)。

 

 「学校の近くには、自然と美食(メイシー;うまい飯)が集まってくるの」

 

 趙さんは、自らの子ども時代の経験を思い出してそう言ったに違いない。中国を旅して、中国の当たり前を知ったことで、言葉の細かなニュアンスを理解できたのである。

 

 ちなみに、上で見てきた外食の盛んさからも分かるように、親(とくに母親)が子どものために弁当を作るのは、中国では一般的でない。中華圏では出産・育児のタイミングで離職する女性の割合が日本に比べて少ないが、女性が働き続けられる背景の一つには、頼れる街角の飲食店が沢山あることで、弁当作りなどの家事の時間を減らせることがあるだろう(子どもを世話できる祖父母が近くに居住しているなど、他の重要な要因もある)。

 

▲寝ぼけていて料理する気力がなくても、街に出れば朝食が食べられるのは楽だろう(写真は南京で)

 

 

▲趙さんのセオリーのおかげで出会えた、安くてうまい「中国菜」の数々

本郷キャンパス建築めぐり 東京大学広報センター編

$
0
0

東京大学広報センター

 前回のコミュニケーションセンターに引き続き、キャンパスにひっそりと佇む、小さな建築を紹介します。

 

 

 龍岡門東側の門衛所のような建築は、現在広報センターとして活用されていますが、大正15年大学附属病院の外来患者夜間診療所として建設されました。当初は夜間のみ受け付けていましたが、後に日中も救急患者を受け付けるようになります。当時の外来患者診療所は現在の本部棟辺りにありましたので、より門に近いこの場所に救急診療のための施設が建てられました。内部は改修され当時の面影は残っておりませんが、正面右側の「東京大学広報センター」表札の下には、当時の名残として、現在なお「東京帝国大学附属医院急病者受附所」の表札が掲げられています(現在は見ることができません)。

 

 

 日本の救急医療の歴史を紐解くと、昭和6年の日本赤十字社大阪支部が始まりらしいのですが、東京帝国大学附属病院の夜間診療も先駆的事例として挙げることができるでしょう。

 

 明治期の本郷キャンパスの建築は、造家学科(建築学科)の教員としてイギリスより来日した御雇外国人ジョサイア・コンドルの設計にかかる建築が大半を占めていました。コンドル設計の校舎は煉瓦の組積造でしたので、大正12年の関東大震災により、校舎群の大半は大きな被害を受けました。実際のところ、全壊した建物は必ずしも多くはありませんでしたが、火災により多くの建物が使用不能となり、復興再整備が早急に求められました。この復興事業の大役を担ったのが、建築学科教授であり当時営繕課長を兼担していた内田祥三です。後に東大総長も務める内田は新たなキャンパス全体計画を描き、安田講堂をはじめとする「内田ゴシック」と呼ばれる建築群を次々と建設してゆきます。

 

 内田営繕課長のもと建てられたこの外来患者夜間診察所ですが、他の「内田ゴシック」とは趣が異なります。内田の設計にかかる校舎はカレッジ・ゴシックを基調とした様式建築であり、当時の建築界の潮流からは少々時代遅れの感があります。しかし、この外来患者夜間診療所のマッシブな外観は、中世ヨーロッパの城塞を想起させ、内部には数理模型のような曲面がある階段を持ち、正面入口の両側にはスクラッチレンガを付柱のように装飾的に重ねます。このようなレンガの装飾法は帝国ホテル(大正10年竣工、現在明治村に移築)でもみられ、同時代の流行ともいえるでしょう。

 

スクラッチタイルを付柱のように装飾的に用いた入り口

 

 実はこの診療所は、内田の教え子でもある岸田日出刀の設計によるものといわれています。内田祥三は岸田の設計能力を高く評価しておりましたが、彼の好む表現主義的な意匠は「気に入らない」ため、岸田が自由に設計できたのは、ごく一部の建物に過ぎませんでした。

 

 

 大正という時代において、様式主義からの脱却を目指した若い建築家の気迫が、この診療所から力強く感じられます。

 

 

文・角田真弓(つのだ・まゆみ) 工学系研究科技術専門職員

(寄稿)

 

【本郷キャンパス建築めぐり】

東京大学コミュニケーションセンター編

【2018年9月アクセスランキング】「とりあえず東大」は終わった?

$
0
0
連載「蹴られる東大」の公開取材イベントでは東大生3人が鈴木教授(左端)を交えて議論した

 

 東大新聞オンラインで9月に公開した記事の9月中のアクセスランキングを調べたところ、1位は連載企画「蹴られる東大」の公開取材イベントで行われた、鈴木寛教授(公共政策大学院)と東大生3人との座談会の模様を伝える記事だった。まずは3人にどのような理由で東大に進学したかを聞き、次いで大学のサポート体制や学生の多様性について議論した。全体を通して「とりあえず東大」の時代は終わり、生徒自らが問題意識を持って高等教育に臨むことの重要性が認識された。東大を蹴って海外大に進学する学生に迫り、これからの時代に東大が取るべき道を探る「蹴られる東大」は、今回で最終回となった。

 

 2位は、厳しいといわれる東大の休講条件を、歴史的視点も交えて考察する記事。大学当局にとって、学生の安全確保と授業スケジュールの双方を考慮した判断は難しく、最終的に授業に出席するかは学生自身が判断する必要がある。

 

 3位には、大学に籍を置いたまま再び大学受験を目指す、いわゆる「仮面浪人」の素顔について、経験者や河合塾本郷校の青木緑校舎長に話を聞いた記事が入った。「仮面浪人」には、併願校の対策をする必要がないため第一志望校の勉強に集中できるというメリットがある反面、その大学に通い続けることになった場合、仮面浪人期に友人関係やサークルを犠牲にしたせいで大学生活を謳歌できないというデメリットもある。

 

 4位は、2020年度から始まる新しい大学入試制度で、東大が英語民間試験の成績を必須の出願資格としないことを報じた記事。センター試験導入以来約30年ぶりの入試制度改革に東大がどのように対応するかが注目されたようだ。新たな出願要件の詳細については、今年12月ごろをめどに公表される。

 

 5位と8位にはラクロス部男子の活躍についての記事がランクイン。3戦連続でチーム初得点を挙げ、日体大戦では4得点を記録した矢野皓大選手(法・4年)の活躍が光った。

 

 6位は、宿題の有用性に迫る記事だった。漢字・計算ドリルなどの覚える対象が明確な習得型と、自由研究などの学習者自身が「問い」を立てて解決する探究型の2種類の宿題を実施することで、後の高等教育でも生かされる高度な学びにつなげることができる。

 

 7位はアルコールが人間の共感を促進し、共感の低下が見られる自閉スペクトラム症の治療にも役立つ可能性があることを伝える記事。実験では共感と脳回路の関係も明らかになり、実用化が期待される。

 

 9位は、学生および若手演奏家を中心としてオペラを上演する団体であるHAMA project(はまぷろ)の秋公演についての記事。職業や大学といった垣根を越えた多様な若者が集まり、時には定番の解釈をあえて裏切るような、新たな演出を披露する。

 

【2018年9月アクセスランキング】

1 【蹴られる東大⑩】蹴られて当然?東大生もうなずく「とりあえず東大」の終わり

2 東大の休講条件、厳し過ぎる? 東大の休講制度の歴史と背景

3 大学入学後も受験勉強?仮面浪人の素顔に迫る

4 東大、英語民間試験の成績提出を必須とせず 2020年度実施の入試で

5 ラクロス男子 昨年学生日本一・慶大に快勝 11得点で寄せ付けず

6 宿題に追われるあなたへ 学習効果の理想と現実

7 アルコールが共感促進 自閉スペクトラム症の治療に

8 ラクロス男子 日体大に勝利し決勝トーナメント進出 矢野選手が4得点の活躍

9 学生の自由が生み出す新演出 オペラ企画はまぷろがドニゼッティ「愛の妙薬」を上演

10 受験の生かし方考えて カリスマ講師・犬塚壮志さんから受験生へエール

※当該期間に公開した記事のみを集計

 

過去のランキング

【2018年8月アクセスランキング】教授の語る大学の選び方

【2018年7月アクセスランキング】推薦生でも進学先を変えられる?

【2018年6月アクセスランキング】世界大学ランキングに関心

【2018年5月アクセスランキング】「推薦の素顔」に関心

【2018年4月アクセスランキング】連載「蹴られる東大」が人気

【2018年3月アクセスランキング】3/10実施の合格発表に高い関心

【2018年2月アクセスランキング】入試関連記事に関心

【2018年1月アクセスランキング】近藤選手の箱根欠場に注目

【2017年アクセスランキング】まつりさんの記事が今年の年間1位に

【2017年12月アクセスランキング】東大生のSNS事情に高い関心

【2017年11月アクセスランキング】東大生の「銀行志向」に関心

【2017年10月アクセスランキング】「ボカロ」関連の記事が人気

東大職員、人材登用改革の成果は? 高度化と多様化を目指す

$
0
0

 「東大で働いています」と言われれば、ほとんどの人が教員として研究・教育に従事する姿を思い浮かべるだろう。しかし、教育支援、研究推進、社会貢献、組織運営……、と部局の仕事を現場で動かす職員の奮闘を忘れてはいけない。学生・教員と並んで東大を支える存在、事務職員の姿に迫る。

 

 

改革の気運高めて

 

上杉 道世(うえすぎ・みちよ)さん
(大正大学理事長特別補佐)

 

 従来国立大学として国の内部組織だった東大が、「国立大学法人」として自律的な大学経営に移行したのは2004年のこと。少し前の2003年に文部科学省から東大に着任し、事務局長・理事として法人化に携わった上杉道世さんは、改革の一環として職員の働き方の見直しを始めた。

 

 打ち出したのは「職員の高度化と多様化」。「教員の言うことを聞いていれば大丈夫」という職員の空気を一掃し、職員それぞれに多様な専門性を身に付けさせることが始まりだった。「昔は教員の側も職員に期待していない部分があった。佐々木毅総長(当時)から改革の命を受けたのです」と上杉さん。

 

 例えば、自らの職務が学生へのサービス業でもある点を職員たちに理解させること。主体性・協調性のなさを改善し、あいさつ一つから見直そうという気運を生んだ。学生生活実態調査に書かれた学生から職員への悪口も、上杉さん本人から職員に報告したという。「愛想が悪いとか、すぐに書類を突っ返すとか、いろいろ書いてありましたよ」と当時を振り返る。

 

 最も重点を置いたのは、人材登用の改革だ。これまでの公務員試験の系譜を継ぐ国立大学法人等職員採用試験合格者のみならず、民間企業の就活と変わらない独自採用を始めた。「東大なら単独で採用しても優秀な人材が集まるだろう」と踏み、1期生採用時には上杉さんが自ら説明会に出向いた。「これまでとは違い職務はチャレンジング、ゆったりとした雰囲気の職場ではないと強調しました」

 

 効果はてきめんで、採用者には優秀な学生が並び、自ら課題を発見、企画を提案する能力を職場で遺憾なく発揮していった。他の国立大学も独自採用を始めて効果を出し、従来「公務員Ⅱ種試験」というイメージだった「大学職員」という職種が、就活生内で隠れた人気を誇るまでになった。

 

 

 優秀な新人を採用し職場の雰囲気を変えるという目標への道のりは、実はまだ道半ばだ。「改革された選抜方式をくぐり抜けた若手たちは優秀でも、その上司が以前のまま変わっていないというケースがあります。若手部下がやりにくかったり、下手すると悪影響を受けたりする」と言い、今度はベテラン職員の啓発が求められている。

 

 今後特に職員の力が必要になるのは「教職協働」の推進だ。事務仕事に教員が忙殺され、本業の学術研究に打ち込めない現状がある。「以前のように『職員は会議の末席でメモだけ取る』のではダメ。職員側主導で業務を処理できるようにしないと」と、教員・職員の「フラット化」が必要だと唱える。

 

 東大で4年間改革に携わった上杉さんはその後慶應義塾大学に入職、現在は大正大学の運営を手掛ける。「自立した運営をせざるを得ない私大の職員の方が、大学にとっての学生の重要性を実感している気がしますね」。職員の姿勢をとっても大学ごとに特色はあると上杉さん。例えば立命館大学では職員間の議論が活発な傾向があるという。

 

 「今後も職員の方には、情熱と愛着をもって職務に当たってもらえれば。常に改革することを頭に入れておいてほしい」と上杉さん。大学職員という仕事は、学生と教員を相手にする特殊性がある。3者で手を取り合い、大学改革を進める必要があるだろう。

 

新規の取り組みに挑戦

 

小野里 拓(おのざと・たく)さん (本部経営戦略課)

 

 大学経営に携わる現役の東大職員はどのような思いを抱いているのか。独自採用試験合格者1期生の小野里拓さんに話を聞いた。

 

 小野里さんは東大出身で、2006年に入職。国際・研究支援・役員秘書など幅広い分野の業務を手掛けてきた。職員研修の充実化など新規の取り組みにも深く関わり「やれるものならやってみろと言われつつ、挑戦を後押ししてくれる上司に恵まれた」と振り返る。

 

 海外留学研修の制度もあり、小野里さんは米国に1年渡ったが「1年で修士号を取ってくるのは仕事以上に大変だった」。その分、高等教育論や組織論など「大学経営に生かせるさまざまな学びがあった」と収穫は大きかったという。

 

 ただ入職後は「想像以上に学生との関わりがなかった」と小野里さん。本部所属だと特に、学生担当でなければ学生と接する機会はほとんどない。「とはいえ学生に関わるだけが大学の仕事ではありません。支援業務を通じてもさまざまな面白い経験をしています」

 

 業務をこなす中、東大が想像以上に大きい組織で、各部局の独立性が強いという印象も生まれた。部署によって繁忙期や求められる能力のばらつきも大きく「業務の効率化や人員配置の適正化が重要」と語る。

 

 一方で「教職協働」の推進は小野里さんも重要視する。「教員が教育研究以外の業務で忙し過ぎるので、教員の理解を得ながら職員ももっと積極的に仕事を担っていくべき」と語気を強める。「組織論で言えば、大学では教員は専門職権威に、職員は管理的権威に立脚すると整理できます。両者が共存する複雑な組織で、その摩擦をうまく組織全体の力に変えられる優秀な人材が必要です」

 

 今後ますます高度で多様な業務の遂行が求められる大学職員。五神真総長も職員がこれまで以上に活躍できるような制度改革を進めており、職員もその期待に応えることが求められる。

 

(取材・田辺達也)

 

【関連記事】

【蹴られる東大⑥】東大を勝たせた教授が語る、東大に足りない「危機感」と改革

五神総長、私たちは希望を持って大学の研究者を目指せるのでしょうか?


この記事は、2018年10月16日号に掲載した記事の転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

 

 

ニュース:利権争いが改革を阻害 日本版NCAA実現への障壁(変わる?大学スポーツ上)
ニュース:硬式野球明大戦 引き分けで連敗阻止 有坂投手は1失点完投
ニュース:後半に得点重ね大勝 アメフト専修大戦 3戦連続の40点台
ニュース:ストレス下で成長促進 作物の減収防止に期待
ニュース:情報理工 行動パターンで個人認証目指す
ニュース:卓越大学院プログラム 東大から1件採択 海外大・企業と連携
ニュース:100年大学 開学記念特別講座 投資への向き合い方考えて
企画:娯楽と科学の二人三脚 打ち上げ花火に見る研究の多様性
企画:人材登用改革の成果は 職員の高度化・多様化を目指す
東大新聞オンラインアクセスランキング:2018年9月
日本というキャンパスで:劉妍(農学生命科学・博士2年)⑤
火ようミュージアム:イグ・ノーベル賞の世界展
キャンパスガール:緒方優紀乃さん(理Ⅱ・2年)

※新聞の購読については、こちらのページへどうぞ。

19歳が見た中国③ 石橋を「叩く前に」渡る

$
0
0

待って、私を乗せてくださぁーい!

 

 国内では「ムーンライトながら」や「サンライズ出雲・瀬戸」を除いてほとんど廃止された夜行列車が、中国では今でもびゅんびゅんと走り回っている。上海、深圳など沿海部の大都市と内陸地帯を結ぶ路線が多い。広州とウルムチを2泊3日で結ぶような超長距離列車には驚かされる。

 

 出稼ぎ労働者や学生が数億人単位で帰省する春節(旧正月)には、春运(チュンユン;春運)と呼ばれる特別増便ダイヤが組まれるが、「2ヶ月前くらいに予約しなければ、切符をとるのは至難の技」と武漢大学の友人は嘆いていた。輸送力強化のために、高铁(ガオティエ;高速鉄道)が猛烈なスピードで中国全土に張り巡らされつつある。

 

▲高铁の利用者は、ビジネスマンなど中・高所得層が多い(写真は南京駅で)

 

 中国旅行では、長距離夜行列車と高铁に乗ることを楽しみにしていた。期待通り、夜行列車は3段ベッドが狭いものの寝転ぶと快適だし、高铁も日本の新幹線と同じくらい清潔で快適だった。

 

 中国の鉄道の特徴は、圧倒的な「標準化」だ。日本列島は、北は「宗谷」から南は「指宿のたまて箱」まで、名前も構造も個性豊かな列車が走り回っているのに対し、中国は全土で同じ構造の深緑色の車両が使われ、列車名も「Z47」「T204」「K1033」などと素っ気ない(停車駅の少なさや運行速度に応じてコード化されている)。高铁もまた標準化の権化であり、中国のどこに行っても「和諧号」か「復興号」が走っている。高度な標準化が、輸送キャパシティの急速な拡大と複雑な運行を可能にしているのだ。

 

 私のような鉄道オタクが喜ぶ話はこれくらいにして、今回の本題に入りたい。

 

 長沙駅で広州行きの夜行列車を待っていたときのことである。ちょうど夏休みの終盤で、広州行きの第6待合室は、椅子はおろか、座る床を見つけるのさえ難しい混雑ぶりだ。一方、隣の第5待合室はスッカスカ、椅子を5人分使って寝られる。迷うことなく第5待合室に入った。中国の鉄道駅の構造は空港に似ている。列車が着くと搭乗口が開き、第6待合室の乗客が列をなしてホームへ降りていった。列がなくなるまで私は待った。

 

 ひとりでホームへ降りたとき、出発予定時刻まではあと10分。時間に余裕があるから第5待合室で待ち続けたのである。しかし、何かがおかしかった。乗務員がタラップを引き上げ、笛が高らかに響き、列車は今にも出発しようとしている!駅員は、まとまった乗客の列が途切れた時点で「皆乗った」と判断し、予定時刻にお構いなく合図を出したのだ。

 

 「等一下!(ダンイーシァ!;待って!)」と叫び、目の前の車両に飛び乗るやいなや、ガタンという振動を感じ、駅員の姿が後方に流れていった。間一髪で、空っぽの長沙駅で一晩明かさずに済んだ。

 

▲旅客の多い中国では、列車は20両編成になることもある。全席指定なので、自分の車両まで、ホーム上を数百m歩くこともある。山手線のような駆け込み乗車は本来ありえない(写真は上海南駅で)

 

 中国旅行で得た大事な知恵の一つは、集団と共に行動するということ。中国では、時と場合によっては、集団の秩序に沿って行動しなければ、思わぬ不利益を被ることがあるようだ。

 

▲乗り遅れなくて良かった…おじさんとおばさんの四方山話を聞きながら、夜行列車の長い夜を明かす。

 

「短い列より長い列に並ぶ」機械の故障と人々の知恵

 

 こうやって夜行列車に乗って到着したターミナル駅で、前回注目した食文化や学校の制度よりももっと面白い(と同時に骨の折れる)中国の当たり前を体感した。「機械が頻繁に故障する」という当たり前だ。武漢駅の地下鉄の切符売り場での事件を語りたい。

 

▲旅客の多い中国のターミナル駅は、いつでも混んでいる(写真は広州駅で)

 

 あくびをしながら早朝の武漢駅に降り立つと、中国全土から私と同じように夜行列車で到着した人々が通路を埋め尽くしていた。市内へ出る地下鉄の切符売り場にも長蛇の列ができる。20台もの券売機がぎっしりと一列に並んでいるが、数百人が一斉に押し寄せ我先にと並び、銀行の取り付け騒ぎかと見紛うほど。自らも切符を求め混乱に飛び入ろうと決心したとき、私は変なことに気付いた。

 

 新しく来た人たちが、短い列よりむしろ長い列を選んで並ぶのだ。当然、長い列ほどますます長くなる。長い列に並んだ挙句、前の人に「早くどけ!早く!」と叫ぶ人もいる。「そんなら短めの列に並べばええやん」とツッコみたくなる。列によって券売機のタイプが違うようにも見えない。少数派より多数派に帰属したい、という群集心理でも働いているのだろうか?私は、しめたとばかりに5人くらいの短い列に行った。

 

 自分の番になった。罠は券売機にあった。紙幣挿入口のロールが動かない。券売機の画面には「正在使用(正常に使用できます)」の文字。これを信じて何回も試すが、ダメだ!すぐに後ろの方から叫び声が響いてきた。紙幣がダメなら硬貨で払えるが、たまたま硬貨の持ち合わせがなく、ゲームオーバー。がっかりして、20人くらいの長めの列に並び直した。

 

 冷静に観察すると、短い列の先の券売機には、タッチパネルが反応しないとか、紙幣や硬貨を受け付けないとか、何かしら故障があるようだった。面白いことに、不具合がある券売機にも列はできる。人が密集しており、自分の番まであと2、3人にならなければ前の人が困っているのが分からないからだ。もっとも、異変を察知した人は他の列に移動するので、短い列は短いまま。中国では、券売機に限らず、ドアやトイレやエレベーターも頻繁に故障するのを見た。人々は経験的に、敢えて長い列に並ぶほうがうまくいくことを知っているのだろう。

 

速やかに故障するが、復旧も速やか

 

 ここで終わってしまえば、中国の機械はよく故障するというだけの話だ。だが「機械が頻繁に故障するのに、人々の生活にそこまで支障がなさそうなのはなぜか」と考え続けると、表面に見えるものの一段奥にある「中国流の発想」が見えてくる。

 

 実は武漢の別の地下鉄駅でも、券売機の不具合を見かけたが、作業員が来て修理していた。ショッピングモールではエスカレーターが止まっていたが、ここでも作業員が数人がかりでその内部をこじあけて修復していた。私はこう考えた。機械が速やかに故障する代わりに、作業員が来るのも速やかであれば、人々にとってそこまで不便ではないだろう。

 

 帰国後に参加した日中関係学会の青年勉強会で、中国での豊富な事業展開経験をもつ化学メーカーの元会長がこう話されたので、私は自分の仮説に多少自信をもった。

 

 「我々が中国にプラントを建てるときにね、これも一つの実験だと思って、信頼性の高い日本製部品を敢えて使わないで、ほとんど中国製部品を使ったのね。案の定、バルブは止まらないし、パッキンは漏れる。私が見たかったのは、そういうときに中国の従業員がどう対応するのか、と」

 

 「彼らは壊れたらすぐ取り替えたらいいじゃないか、と考えるんだね。高すぎる部品を使うより、安い部品を何回も取り替えていったほうがいい、とね。いつの間にか、工場の中でうまく使い回していく」

 

 「日本人はあらゆるリスクを考えてプラントを設計するんだけど、中国の人はとりあえず動かしてみて、壊れたらすぐにラインを止めて修理すればいい、という発想なんだね。それだから、運転中に予期せぬ故障が起きた時の対応力は、中国の従業員のほうが強いかもしれないよ」

 

 「石橋を叩いて渡る」の日本流に対し、すぐさま一歩踏み出し、橋が落ちても這い上がる中国流。この鮮やかな対比に、旅の至る所で気づくことになる。

 

▲石橋を「叩く前に」渡る…?(写真は広州市内の水路に架かる橋で)

本郷キャンパス建築めぐり 内田ゴシックの特徴を見る

$
0
0

 今回は内田ゴシックの特徴について紹介します。

 

 米国の大学建築を中心に19世紀後半より広まったカレッジ・ゴシック様式を基調とする内田ゴシックですが、本郷キャンパスにおける内田ゴシックの代表作を挙げるのであれば、正門から安田講堂につながる銀杏並木の左右に展開する、工学部列品館、法学部3号館、法文1,2号館、工学部1号館、総合図書館の十字エリアでしょう。

 

 建築学科教授と営繕課長を兼ねていた内田祥三は、「よい建築は必ず施工しやすい」と考えていました。合理主義者である内田のこの考えは、震災復興で早急な対応が求められていた当時の大学側の要求に、見事に合致したともいえます。この内田の思想は、スクラッチタイルを多用したことにも顕著に表れています。

 

 一般的なタイル貼建築はレンガ積建築を模したものであることから、レンガ積建築に従い縦目地が通らない破れ目地を採用しますが、内田は工事がより容易である芋目地(縦目地が直線で通る)を採用しています。また、タイルの色ムラや施工の不揃いも、スクラッチタイル表面の凹凸による陰影で気にならず、かえって面白いと内田は評します。つまり内田がスクラッチタイルを採用したのは、施工のしやすさはもちろんのこと、精度の低さを感じさせないという合理的な考えのもとでした。

 

 

 他にも、内田ゴシックの特徴の一つに通称「犬小屋」と呼ばれるポーチ(入口)部分が挙げられます。頭頂部(フィニアル)には松かさ(松ぼっくり)様、その下には拳葉飾(クロケット)を配したこのデザインは、関東大震災により使用不能となったジョサイア・コンドル設計にかかる旧法文校舎に用いられていた意匠でした。かつてのキャンパスの姿を継承し、建築家コンドルへのオマージュとしての意味も含まれているのでしょう。

 

 ゴシック建築の尖塔のような急勾配の屋根を持つこの「犬小屋」ポーチは、内田祥三の好みであったらしく、設計担当者は内田の好みに合わせ各所に配してゆきます。法文1,2号館はもちろんのこと、工学部船舶試験水槽など本郷キャンパス各所に見られます。実は工学部1号館にも北側の背面入口に「犬小屋」がありましたが、1996年の改修の際に取り壊し、現在はフィニアルが工学部1号館正面玄関に飾られています。

 

 

 さらに「犬小屋」ポーチは弥生キャンパス(農学部)や駒場Ⅰキャンパス(教養学部)、医科学研究所など、東大の各キャンパスにもアレンジした物がみられます。各キャンパスめぐりの際には、「犬小屋」探しをしてみてはいかがでしょうか。

 

文・角田真弓(つのだ・まゆみ) 工学系研究科技術専門職員

(寄稿)

 

【本郷キャンパス建築めぐり】

東京大学コミュニケーションセンター編

東京大学広報センター編

【日本というキャンパスで】劉妍⑤ 聞き上手になる重要性を実感

$
0
0

 2018年2月2日、ピアサポーター養成研修の全課程を修了し、学生相談ネットワーク本部から「ピアサポーター」として正式に認定された。ピアサポーターとは、精神科医・臨床心理士・精神保健福祉士の資格を有する専任教員のバックアップの下、他の学生を支える学生ボランティアだ。記者は新規企画サポート部や交流研修部、ぴあサポ相談室班に所属している。

 

 ピアサポートの起源は1990年前後の米国の非行防止プログラムとされている。これは非行少年の更生を目的に、同世代の少年が支援を提供するボランティア活動だった。日本では、90年代中ごろから福祉・保健・医療・教育といった領域で浸透し始めた。

 

 ピアサポーターの活動拠点は、学生同士(ピア)が支え合い、共に成長するキャンパスを目指す、東大の公式機関「ピアサポートルーム」だ。サポートの形態は、相談支援型サポートや、全学に支援を提供するアウトリーチ型サポートなどがある。構内には専門家による「学生相談所」「精神保健支援室」などもあるが、立場が近い学生に気軽に相談できるピアサポートルームは、助けを求める抵抗感を軽減すると期待される。

 

 ピアサポートルームの活動は多岐にわたる。その一つが6月22日に開かれた、学生のメンタルヘルス向上を目的とするストレスチェックキャンペーンだ。専用の測定器で、東大生らのストレスを数値で測定し、バランスの取れた生活を意識するきっかけづくりに努めた。

 

本郷キャンパスでのストレスチェックキャンペーン

 ピアサポートルームの主な活動は、ぴあサポ相談室。相談内容は学業、進路、人間関係、学内案内に関する相談に乗ることだ。相談に向け、カウンセリング技能の勉強会・研修を通じて、人と交流する際の大事な姿勢である「FELORモデル」を学んだ。「FELOR」は「Face,Eye contact,Lean,Open,Relax」の頭文字とされる。顔を相手の方に向け、視線を穏やかに合わせ、相手に対して少し身を乗り出し、腕組みをしないといった開いた姿勢で、リラックスできる雰囲気づくりを意識するということを意味する。

 

 記者は実際の相談を受けた後、ピアサポーターとしての自覚がずいぶん高まった。話し好きの記者は恐らく講義などを除けば、口を出さずに他人の話を落ち着いて聞けたことはあまりない。相談を通じて、他人の話をきちんと聞くことも重要な対人能力の一つであり、育てるべきだと思うようになった。話を聞く中で、共感する部分をまとめ、不明な点を焦らずに聞き返すことで相手の状況や気持ちを客観的に把握することも重要だろう。

 

【関連記事】

【日本というキャンパスで】劉妍① 同じ琵琶でも中身は違う

【日本というキャンパスで】劉妍② 区の行政文書に留学生の視点

【日本というキャンパスで】劉妍③ 異文化の壁を乗り越えて

【日本というキャンパスで】劉妍④ 日中の学校生活の違いを見る


この記事は、2018年10月16日号に掲載した記事の転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

 

 

ニュース:利権争いが改革を阻害 日本版NCAA実現への障壁(変わる?大学スポーツ上)
ニュース:硬式野球明大戦 引き分けで連敗阻止 有坂投手は1失点完投
ニュース:後半に得点重ね大勝 アメフト専修大戦 3戦連続の40点台
ニュース:ストレス下で成長促進 作物の減収防止に期待
ニュース:情報理工 行動パターンで個人認証目指す
ニュース:卓越大学院プログラム 東大から1件採択 海外大・企業と連携
ニュース:100年大学 開学記念特別講座 投資への向き合い方考えて
企画:娯楽と科学の二人三脚 打ち上げ花火に見る研究の多様性
企画:人材登用改革の成果は 職員の高度化・多様化を目指す
東大新聞オンラインアクセスランキング:2018年9月
日本というキャンパスで:劉妍(農学生命科学・博士2年)⑤
火ようミュージアム:イグ・ノーベル賞の世界展
キャンパスガール:緒方優紀乃さん(理Ⅱ・2年)

※新聞の購読については、こちらのページへどうぞ。


19歳が見た中国④ 爆走出前バイクに見る「超級」便利社会の裏側

$
0
0

念願のシェアバイクに乗って気づいた中国の交通事情

 

 中国で爆発的に発展したシェアバイクサービスは日本でも有名になった。30分につきたったの1元(=17円)で、街のどこにでも乗り捨てられる、アレである。旅行中には、その便利さを必ず体験したいと思っていた。シェアバイクは、微信支付(WeChatPay)や支付宝(Alipay)などでモバイル決済する必要があり、中国の銀行に口座を持っていなければ使えないのだが、武漢の街を案内してくれた武漢大学の友人の好意で、地下鉄駅とユースホステルとの2 kmの行き来にシェアバイクを使うことができた。

 

▲シェアバイクは、もはや街の風景に溶け込んでいる(写真は広州で)

 

 シェアバイクに乗るという念願が叶い、武漢の街中をスイスイと走る私は有頂天だった。気分爽快でいられなくなったのは、ある交差点に差し掛かったときだ。折しも夕方のラッシュアワー、車道は渋滞していた。信号のタイミングが悪く、路線バスが右折しきれずに交差点を塞ぐ格好で止まってしまった。たちまち、バスを追い越そうとするバイクや乗用車のクラクションが鳴り響き、すり抜けようとする自転車や歩行者も混じって、交差点は大混乱に陥った。誰もが我先に我先にと交差点に殺到するのは、日本ではおよそ想像できない光景だ。私が乗っているようなちっちゃなシェアバイクでは本当に押しつぶされそうだったので、混雑が解消するまで、私は歩道で待ち続けざるを得なかった。

 

 中国を旅していて、交差点や横断歩道を渡るときは常に気を張っていた。一番注意すべきはバイクだ。日本の道路でならありえない方向から、ありえないタイミング、ありえないスピードでやってくる。シェアバイクに乗せてくれた友人に

 「道を渡るのは冒険だよね。渡るたびに決心しないといけなかった」

と話すと、

 「ここで暮らしている私たちにとっても、道を渡るのは冒険なのよ」

と返してきた。

 

 ところで、バイクの中でも特にせわしく走り回っているのが、外卖(ワイマイ;食事宅配)のバイクだ。黄色いカンガルーの「美团外卖(メイトゥァンワイマイ)」と、青色の’e’がロゴの「饿了么(アーラマ)」が二大勢力である。私が訪れた大都市では、街中で見かけるバイクの実に半分以上が、イエローかブルーの外卖バイクだった。配達員は、決まって10代〜20代の若いお兄さん。注文待ち中なのか、車道の脇に何人かでたむろして談笑しているときもあるが、基本的には一日中、街をあくせくと走り回っている。ずっと観察していたのだが、配達員の急ぎ具合は少々度を越していると感じた。というのも、歩道に乗り上げてまで渋滞をかわそうとしたり、一方通行と思われる道を逆走したりしているのを見かけたからだ。

 

 南京では、実際に危ない思いをした。歩道を歩いていると、前から突然バイクが突進してきた。相手を見る間もなく、ぎりぎりの距離ですれ違った。「前を見て歩け!」という怒声に振り返ると、例のブルーのバイクだった。どうして外卖の配達員はあんなに焦っているのか、という疑問が自然と湧いてきた。

 

バイク配達員「安全を気にかける暇なんて」

 

 疑問を掘り下げていく前に、外卖がどんなサービスであるか、解説しておきたい。外卖は日本の出前によく似ているが、不特定多数の店の料理を配達するというのが、出前と決定的に異なる画期的な点だ。出前の場合、飲食店は配達員を雇う必要がある。一方、外卖のシステムでは、飲食店は美团外卖や饿了么のオンラインプラットフォームに登録するだけでよい。顧客からアプリを通して飲食店への注文があると、数分のうちに黄色か青色のバイクが店に料理を受け取りに来て、店の代わりに配達してくれる。

 

▲こちらに向かってくる黄色いウェアのお兄さんが外卖の配達員。右手に商品を持って、スマホで届け先を確認している。狭い歩道には、外卖のバイクが5台も止まっている(写真は深圳で)

 

 外卖の驚くべき点は、少ない量でも(たとえばコーヒー一杯でも)運んでくれることだ。外卖の登場によって、家族経営の小さな飲食店でも、価格やメニューを工夫して顧客の関心を引き、従来の数倍の顧客を獲得できるようになった。私が卤肉饭(ルーロウファン)を食べた広州の店では、店内の客はまばらなのだが、外卖のバイクがひっきりなしに立ち寄り、オンラインでの人気の高さを物語っていた。外卖は、顧客の側から見ても、いつでもどこでも作りたての料理が食べられるので、とても便利なサービスといえる。外卖はもともと、大学のキャンパス内での食事配達サービスから始まったが、シェアバイクと同様、ここ数年で社会全体に広まった。

 

 しかし、外卖は中国社会に便利さをもたらすと同時に、歪みももたらした。私が現地で買ったニュース雑誌『Vista看天下』(2018年9月8日号)には、「俺は安全が大事だと知らなかったわけじゃないが、気にかける暇がなかった」という見出しで、外卖の功罪が特集されている。それによると、外卖の配達員は、決められた時間内に配達できなければ、そのたびに一定の罰金が課されるという。外卖企業は、競争を勝ち抜くために、顧客に約束する配達時間を短くする傾向にあり、配達員の心理的プレッシャーは重くなり続けているのだ。

 

▲「俺は安全が大事だと知らなかったわけじゃないが、気にかける暇がなかった」(『Vista看天下』(2018年9月8日号)より)

 

 まさにこれが、「なぜ外卖のバイクのお兄さんはそんなに急いでいるのか?」という問いへの答えだ。何としても配達時間内に届けるために、一方通行の道を逆走する無理な運転をして事故を起こし、結果的に月給の何倍もの治療費や損害賠償費を負担した配達員の例が、『Vista看天下』の特集には紹介されていた。もっとも、事故直前の彼にとっては、遅延罰金をいかに免れるかで頭がいっぱいであり、見出しの通り「安全を気にかける暇なんてなかった」はずである。

 

 特集によると、上に挙げた外卖2強の資本投入競争が激化するなかで、配達員のなり手が不足している。バイクに乗れさえすれば採用され、安全研修を受けずに仕事を始めさせられることもあるという。配達員の多くが、農村世帯や都市の低所得世帯など、社会的に立場の弱い層出身の若者たちだ。「オフィスに10分で昼食が届く」という外卖の便利さは、彼らが資本主義の圧力のもとで、身の安全を保障されることなく働いている、その歪みの上に成り立っている。

 

日本の海に流れ着く赤いペットボトル

 

 外卖は、環境負荷の面でも問題がある。中山大学の友人はこう打ち明けてくれた。

 

 「本当はね、バイクで運んでくる分だけエネルギーを浪費してるし、配達用の容器や袋でゴミも多くなるし、かなり無駄遣いをやっている。でも便利だからね、僕はやっぱり外卖のアプリを開いちゃうんだよ」

 

 外卖の普及に代表されるように、中国の都市住民には、日本と同様、エネルギーや資源を大量消費するライフスタイルが定着しつつある。中には日本人以上に浪費が大きいのではないかと思われる局面もある。

 

 例えば、中国の飲食店で、人々が沢山の料理を残すのを見た。食べきれなくて残すというよりは、もっと積極的に残しているというか、分かっていながら食べきれない量を注文している風なのである。復旦大学の友人と上海で会食したとき、このことを聞いてみた。

 

 「中国の会食では、客人を満腹にさせることが最高のおもてなしだと聞いたことがある。だから、あえて食べきれるよりも多めに食事を注文して、万が一にも客人が空腹のまま帰らないようにする。いま周りのテーブルを見てみると、沢山の食物が残されているけど、これも中国の伝統文化によるものかな?」

 

 「いえいえ、とんでもない!」と彼女は驚いた顔で言った。「客人を満足させるのは伝統だとしても、食事を残すのは伝統じゃないよ!50年前(文化大革命の時代)の人々は、限られた食物を決して無駄にしなかったらしい。いま私たちが食べ物を捨てるのは、社会と経済が発展し、食料に余裕ができ、捨てても別に生きるのに困らなくなったからだと思う。日本では、小さい頃から「残さず食べよう」って教えられるんでしょう?私たちが見倣うべきところね」

 

▲「食事を残すのは中国の伝統じゃない」と友人は強調した(写真はイメージ)

 

 もう一つ、浪費が大きいと感じたのは、ペットボトルである。中国の上水道は飲用に適した水質ではない。このため、ペットボトル飲料水は、街角のどんな小さな飲食店や雑貨店にも陳列してあり、飛ぶように売れている。一人1日3本のペットボトルを消費するとして、14億人で1日42億本に積み上がる。問題は、そのうち数%がリサイクルも焼却もされず、海に流れ出してプラスチックごみになっている可能性があることだ。

 

 农夫山泉(ノンフーシャンチュァン)という赤いラベルの飲料水がある。中国国内で1、2位のシェアを争うブランドで、私も3週間の旅行中で10本はお世話になった。帰国のフェリーが上海市内を流れる黄浦江を出発するとき、水面に农夫山泉のペットボトルが数本浮かんでいた。黄浦江には他にもいろいろなゴミが浮かんでいるから、特に気に留めなかった。

 

▲上海市内を流れる黄浦江。水面をよく見るとペットボトルなどのゴミが浮かんでいる

 

 フェリーが進んで長江の河口に達したときも、黄色く濁った水面に赤いペットボトルが目についた。このときも、まだ中国の水域だから、と思って、気にしなかった。

 

 1日後、フェリーは私の故郷九州の沖合を進んでいた。海の色は子どもの頃からよく馴染んでいる美しい青色に戻り、遠くに島影も見えた。日本に帰ってきた感じがして嬉しくなって海を眺めて続けていると、真っ青の中にチラッと赤が見えたような気がした。幻覚かな、と思ってじっと見てみると、確かに赤い破片が浮かんでいて、白字で「农夫山泉」の文字。

 

 衝撃的な発見だった。中国の人々のライフスタイルの変化が、海を通して世界中の環境に影響を与えつつあるのだ。

 

【19歳が見た中国】

フェリーに乗って、ぶっつけ本番中国語

学校の近くに、安くてうまい飯あり

石橋を「叩く前に」渡る

東大生虎党に聞く、なぜ弱かった今年の阪神 主砲不在、若手は甲子園の大観衆に萎縮?

$
0
0

 菅野(智之=巨人)に勝った──。虎党記者が優勝を確信した今季の開幕戦から約半年、17年ぶりの最下位という屈辱を味わった阪神タイガース。猛虎打線は子猫と化し、投手陣も苦しいやりくりとなった。何でこんなに弱かったんや……。東大生の阪神ファンから成る阪神タイガース応援サークル「帝虎会(ていこかい)」のメンバーと虎党記者との座談会企画。その第1回では、低迷の要因について語ってもらった。(構成・児玉祐基)

 

参加者

三木大知(みき・だいち)さん(文Ⅲ・2年)

 

帝虎会会長。好きな選手は鳥谷敬。「帝虎会は(巨人ファン以外は)誰でも今日からでも入れる気軽なサークルです!」


渡邊俊行(わたなべ・としゆき)さん(文Ⅰ・1年)

 

今季41試合を生観戦した猛者。関西への帰省時に甲子園に通いつめるも、チームの借金がふくらむばかりだった。鳥谷敬の早稲田大学時代からのファン。


栗山博雅(くりやま・ひろまさ)さん(文Ⅰ・1年)

 

阪神電車が好きだったことから阪神タイガースのファンになったという異色の経歴を持つ。好きな選手は「スター性はないが、自分のできることをひたむきにやっている」糸原健斗。


山﨑達弥(やまざき・たつや)さん(文Ⅲ・2年)

 

赤星憲広のファンになったことから阪神を応援し始める。注目選手は大山悠輔。「入団時のざわつかれ方などから、新井さん(新井貴浩=広島)と似ている気がします」

 

児玉祐基(こだま・ゆうき)(法・3年)

東京大学新聞記者。阪神タイガースの優勝を10年以上待っている。

 

勝負弱さにけが人続出の不運重なる

 

児玉

まず、今季何が一番悪かったのでしょうか。

 

 三木

ずばり投打の噛み合わせだと思います。前半戦は、秋山(拓巳)をはじめ投手陣がまずまず守れていたのにしこたま貧打で点が取れない。後半戦は大山(悠輔)らの爆発で打線としては形になったのに、秋山がいなくなり、メッセンジャーも抜けて守れなくなった。

 

 渡邊

監督とフロントですね。巨人は四番・岡本(和真)って何があっても固定してたじゃないですか。それで成長したのに、阪神の四番は4タコ(編注・4打席凡退)したら次の試合で外されるから、萎縮して打てない。あとフロントがロサリオに期待かけすぎたっていうのもある。ロサリオがだめやったときのために保険をかけていなかったのが問題なのかなと思いますね。

 

 三木

焦ってナバーロ取った感じがあったよね。そこそこ打ってくれたけど。

 

 渡邊

ゆうたらロサリオでナバーロ10人雇えた(笑)。

 

 栗山

不運な部分もあったかな、というのが正直なところですかね。9月くらいまでクライマックスシリーズ(CS)を狙えるか狙えないかの位置につけていたのに、北條(史也)離脱でガタガタっとボロが出て。メッセ・秋山・北條の離脱がなければ、CSにすべりこむくらいはできていたと思います。9月は神宮に行くたびにヤクルトに負けていた(笑)。選手層の薄さって言われればそれまでなんですけどね。金本(知憲・前)監督もちょっとかわいそうだった。

 

 山﨑

上本(博紀)の離脱に始まってけが人続出で去年のヤクルトみたいだった。あれで勝てっていうのもなかなか厳しいのかな。あと、例年通りの勝負弱さ。得点圏になればなるほど打たない(笑)。シーズン前半の大山とかひどかったですよ……。満塁で13打数0安打だった(編注・8月8日の巨人戦終了時点)。

 

 三木

8月だもんね、初めて満塁で打ったの。

 

 栗山

やたらと満塁で大山に回ってきてもただ凡退するっていう。

 

 山﨑

もう見てらんなかったです。3点入れられたらもう見なくていいかな、みたいな。

 

 渡邊

ほんとおっしゃる通りですよ。阿部(慎之介=巨人)にスリーラン打たれたら今日は帰ろって(笑)。

 

この日も延長12回を戦って無得点(=9月24日、阪神甲子園球場で、写真は渡邊さん提供)

 

抑えのドリスが7敗喫する

 

児玉

中継ぎ、抑え投手については。

 

 山﨑

ドリスがね……。さすがに抑えで7敗はちょっといただけない。抑えるときは3人で抑えるのに、先頭バッターを出すと勝手に乱れて3点くらいあげるんですよ。

 

 渡邊

球が強い分、守備が下手なドリスの周りにばっかり打球が飛んで、打球をドリスが処理して悪送球になるっていう(笑)。

 

児玉

ドリスは制球もいまいちだった。

 

 渡邊

真ん中に投げとけば抑えられるのに。

 

 栗山

ツーシームで155キロ出るんだから、ど真ん中投げててもそうそう打たれねぇだろって思っちゃうんですけどねぇ。

 

3年目の金本監督に誰も物申せず?

 

 山﨑

金本監督就任時には3年くらい最下位でも我慢するはずだったが、フロントが我慢できなくなって金本監督を切ってしまった。

 

 栗山

フロントが我慢できなかったのはしょうがなかったかも。最終年は金本さん自身がロサリオを獲得したり、育成という方針からずれて迷ってしまっていた。いきなり監督になったわけですから、金本さんをサポートするような経験豊富な人がいれば違ったのかもしれませんね。

 

 渡邊

若手を育てないといけないのに糸井(嘉男)を獲ったのもよく分からない。あと金本さんは現役時代かなりの成績を残してるから、周りがみんなイエスマンになってしまったのかも。ヤクルトだと小川(淳司)監督と宮本(慎也)ヘッドコーチで、宮本さんの方が結果残してるから小川さんに文句言いやすいと思うんですよ(笑)。

 

 三木

去年とおととしは矢野(燿大)ヘッドコーチ(=現監督)が物申す役割だったらしいんですけどね。今年は矢野さんが2軍監督だったから……。

 

日本に来るレベルの外国人選手に大金を払って賭ける、という発想を見直すべき

 

児玉

特に期待外れだった選手は。

 

 三木

いろいろいらっしゃいますが、ロサリオ。ホームランバッターではあるけど「振らない」ことをもっと意識してほしかった。当たればショートゴロゲッツー、当たらなければ外のスライダーに三振。韓国時代の日本人コーチは、外角は打たずに内よりの球を待て、と言っていたので、そこを継続してくれれば良かったんですけど、日韓の投球スタイルの差に苦しめられたのかな、と。

 

児玉

阪神の外国人はキャンプで好調でもシーズンで打てなくなることが多いような気がします。

 

 栗山

外国人はどの球団でもその傾向はある。これは言っちゃおしまいなんですけど、日本に来るレベルの外国人と心中だっていうのは、それ自体を見直した方がいいのかなっていう気もしなくもない。日本に来るってことはメジャーでやっていけなくなったということですからね。

 

 山﨑

ロサリオは当然として、「右の大砲」大山、中谷(将大)あたりが軒並み不調に陥ってしまったのは残念でしたね。あそこらへんの選手が引っ張って甲子園のスタンドに入れてくれないとホームラン数が伸びていかない。噂によると片岡(篤史)バッティングコーチの右打ち指導が原因?

 

 渡邊

左打ちのバッティングコーチしかいなかったのも問題。

 

 栗山

金本監督も左打ち。だいたい甲子園で3割30本打てる左打者なんて金本さんくらいしかいない(笑)。その人が教えてもうまくなるのかなって。

 

 三木

金本監督がみんなを長距離砲にしようとしていた。監督に就任したとき、鳥谷(敬)にホームランを打てみたいな指令をしたらしい。それで2016年シーズン鳥谷が調子を崩したというのはあると思う。髙山(俊)にしても、ホームランバッターなのか。マートン(2015年退団)の後釜で安打製造機であるべきだと思うんですよね。一人一人に合った指導というのはなされていなかったのかなっていう感じはしますかね。

 

 栗山

髙山の初年度とか、センスあふれるバッティングをしていたのに、指導が合わなかったのかな。結構変態的なバッティングしてましたよね。技術は光るものがあったと思うんで、僕はまだ髙山に期待しています。

 

甲子園の大観衆は、阪神には荷が重い?

 

甲子園の大観衆(=8月29日、阪神甲子園球場で、写真は渡邊さん提供)

 

児玉

たまに横浜に大勝するのによく僅差で負けていたのはなぜでしょうか。

 

 渡邊

クラッチヒッターが少ない。得点圏打率が高い選手はいるんですけど、10─0で勝っているときに打っても得点圏打率は上がりますよね。頼むここで打ってくれっていうところで打つのが本当の「得点圏で打つバッター」。大勝しているときは相手がしょぼいピッチャー出してくるから調子乗って打てるのかな。

 

 山﨑

150キロを出すような勝ちパターンのピッチャーを打てないっていう印象はありますね。

 

 三木

僅差で負けてはいるんですけど、最後追い付かない程度の追い上げをして負けるっていう試合が多かった(笑)。初回に5点くらい取られて6、7、8回に1点ずつ取って惜しかった、みたいな。

 

児玉

プレッシャーに弱いのか。

 

 三木

個人的な意見なんですけど、収容人数3万人の浜スタ(横浜スタジアム)、その半分を占める1.5万人くらいの阪神ファンの声援がちょうどいいんじゃないかと(笑)。甲子園の4万人の阪神ファンだとちょっと荷が重いのかなと(笑)。

 

 渡邊

鳥谷さんなんかはどんどん野次ってくれって言ってるらしいんですよ。でも最近の若い選手は野次られるのが辛いのかなぁ。自分も(野次る)一味なんであんま言えないんですけど(笑)。横浜スタジアムは最近横浜ファンが多くて、阪神ファンが適度に少なくていいのかな。

 

 山﨑

藤浪が仙台(楽天生命パーク宮城)だと野次が少なくて投げやすいって言ってた。

 

一同

爆笑

 

 三木

2年前にも完封、今年も6回3分の1を無失点でしたもんね。

 

 栗山

阪神ファンって負けても優しく応援するタイプじゃないから(笑)。それで発奮するタイプだといいんですけど。

 

今の阪神の選手にはこれくらいの声援がちょうどいいのかもしれない(=8月10日、横浜スタジアムで、写真は渡邊さん提供)

 

我らが阪神タイガースよ、強き姿を再び見せてくれ。次回は帝虎会のメンバーに、来季への展望を聞く。

 

【関連記事】

東大生虎党に聞く、どうなる来年の阪神 藤浪よ「脱・いい人」で復活や

東大生虎党に聞く、どうなる来年の阪神 藤浪よ「脱・いい人」で復活や

$
0
0

17年ぶりの最下位という屈辱を味わった阪神タイガース。矢野燿大新監督が指揮を執る来年に向け、どのように巻き返しを図るべきか。その前提となるプロ野球ドラフト会議の結果をどう評価するか。東大生の阪神ファンから成る阪神タイガース応援サークル「帝虎会(ていこかい)」のメンバーと虎党記者との座談会企画。その第2回では、来季の展望について語ってもらった。

(構成・衛藤健)

 

参加者

三木大知(みき・だいち)さん(文Ⅲ・2年)

 

帝虎会会長。好きな選手は鳥谷敬。「帝虎会は(巨人ファン以外は)誰でも今日からでも入れる気軽なサークルです!」


渡邊俊行(わたなべ・としゆき)さん(文Ⅰ・1年)

 

今季41試合を生観戦した猛者。関西への帰省時に甲子園に通いつめるも、チームの借金がふくらむばかりだった。鳥谷敬の早稲田大学時代からのファン。


栗山博雅(くりやま・ひろまさ)さん(文Ⅰ・1年)

 

阪神電車が好きだったことから阪神タイガースのファンになったという異色の経歴を持つ。好きな選手は「スター性はないが、自分のできることをひたむきにやっている」糸原健斗。


山﨑達弥(やまざき・たつや)さん(文Ⅲ・2年)

 

赤星憲広のファンになったことから阪神を応援し始める。注目選手は大山悠輔。「入団時のざわつかれ方などから、新井さん(新井貴浩=広島)と似ている気がします」

 

児玉祐基(こだま・ゆうき)(法・3年)

東京大学新聞記者。阪神タイガースの優勝を10年以上待っている。

 

ドラフトは合格点 型にはめず魅力活かした育成を

 

児玉

今年のプロ野球ドラフト会議が終わりましたが、みなさんは阪神のドラフト戦略をどう見ていますか。

 

 山﨑

「まずは外野手がほしい」という方針は一貫してましたよね。藤原(恭大=大阪桐蔭高)を1位指名して、抽選で外して辰己(涼介=立命館大)を、さらに外して社会人No.1の近本(光司=大阪ガス)を獲得できた。そして小幡(竜平=延岡学園高)と木浪(聖也=Honda)を獲得して、最低限のドラフトはしたのかなって思います。

 

 栗山

今年課題だったセンターラインを固めることには成功していると思う。

 

 三木

メディアで言われているほどひどくなかった。やっぱり、糸井(嘉男)と福留(孝介) っていう外野のベテラン2人を置き換える方向性は見えてましたね。

 

 栗山

近本が出てる都市対抗野球を見たけど、外角ばかり投げてくる中で逆方向へのホームランも打ってたし、大学3年から外野手に転向したみたいだから伸びしろもありそうで期待できると思う。

 

 山﨑

小さくてもパンチ力があるのがいいよね。負け惜しみじゃなく、甲子園の広さを考えると辰己より近本の方が合ってる(笑)。確かに「1位で吉田(輝星=金足農業高)を一本釣りして、他を繰り下げても取れたんじゃない?」っていう気はするけど……。やりたいことは伝わってきたドラフトだったし、そこまで悪くないんじゃないんかなあって。

 

 渡邊

ドラフト直後には「誰や」って声もあったけど、阪神は有名な高校生より名前知らない人のほうが安心なんだよね(笑)。掛布(雅之)はドラフト6位だし、新庄(剛志)だってドラフト5位。報道で騒がれてる人は、ここ数年の藤浪(晋太郎)みたいに阪神ファンに潰されちゃうんで……。

 

 栗山

とはいえ、やっぱり藤原くん獲得したかったなあ。

 

 三木

まあ、まだ評価できませんね。来年以降どうなるかを見ないことには……。3位まで全部野手指名だったのは意外でした。

 

 栗山

もちろん100点ではないんですけど、「合格」はしてると思います。やっぱりドラフトはどうしても運が入ってきちゃうから。

 

児玉

阪神が逸材を獲得しても、その才能を伸ばして育成することはできるんでしょうか。

 

 三木

無理に型にはめないことが大事ですよね。新入団選手はあまりいじらない、と。走力が魅力の近本選手は塁に出てかき乱すとか、自分の特徴を生かした選手になってほしいと思います。だからこそ、コーチのアドバイスを鵜呑みにしないことが必要なのかなあ。イチロー(マリナーズ)もそうやって大成したと聞きますし。結果は自分に返ってきてしまうのがプロの世界だと思うので……。

 

 渡邊

人間はみんな違うしね。

 

 三木

横浜(横浜DeNAベイスターズ)の高田(繁)GMは、(2017年オフに阪神から横浜にFA移籍した)大和に「打率は2割5分でいいから、守備でチームを助けてほしい」って明言してた。そういう感じで、合った役割をきちんと与えてあげれば順応していけるんじゃないですか。近本選手だと、矢野(燿大)監督は赤星みたいな「2番・センター」になってほしいと思っているみたいだし、そのイメージを持ったままで進んでほしいですね。

 

矢野新監督は積極性と執念を見せて

 

児玉

矢野監督への期待はどうですか。

 

 山﨑

ヘッドコーチ時代も金本(知憲・前)監督にいろいろ意見を言ってたみたいだし、2軍でも「超積極的」野球で日本一になったので、1軍でも何かやってくれるんじゃないかって期待してます。2軍でやってたことが1軍で通用するかはわからないけど、まずは1年見てみたいな。

 

 渡邊

野村(克也)さんは、外野手の監督は大成しないって言ってましたよね。金本前監督は外野手だったけど、矢野監督は捕手出身。その分、期待感はあります。

 

 栗山

矢野監督は、「自分がやりたい野球」をしっかり持っている方かなあって思うので、選手とうまく折り合いをつけながらやっていってほしい。阪神ファンは勝手に外野からいろいろ言うけど、それに左右されず……。

 

 三木

やっぱり一番のファンサービスは試合に勝つこと。矢野監督は、広い甲子園で勝つためにはまず守備を固める必要があるってことを理解していると思うし、併殺の間に1点をとるみたいな「勝つ」ことに特化した野球を見せてほしいな。

 

 渡邊

例えば高校生は「試合で頑張ったらOK」になるかもしれないけど、プロはやっぱり勝たないと。来年こそ、相手より1点多く取る「執念」を見せてほしいなって。

 

監督交代とともに「勝てる」藤浪のカムバックに期待

 

児玉

じゃあ、来年の先発は誰に期待したいですか。

 

 栗山

衰えが見えるとはいえ、まずはメッセンジャー。来年も開幕投手はメッセでしょう。それに、今年はちょっと調子が悪かったけど、秋山(拓巳) 。それに……。

 

一同

藤浪。

 

 三木

藤浪は「たまたま金本政権とそりが合わなかった」んですよ。監督が代わったんだから、和田(豊)監督時代の「2ケタ勝ってくれる藤浪」が戻ってくるんじゃないかなって。

 

 渡邊

極論をいえば、9回投げて完封するなかで3回デッドボールを出してもいい。当てたランナーを返さなければいいんですよ。「避けられないほうが悪いんだ」くらいの強い気持ちを持って、彼の伸びのあるストレートを投げ込んでほしい。

 

 三木

藤浪のことを「フォアボールを出しすぎてリズムが悪くなる」って言うけど、その分三振もたくさん取れるんだから、結果的に抑えてればいい、くらいの気持ちで見ておかなきゃ。「1点取られるのはしょうがない」くらいの気持ちでゆったり投げててくれれば。

 

 栗山

外野から言うのは勝手なんですけどね(笑)。完封するスタミナは持っているから、何度フォアボールを出しても抑えてくれればいいんですよ。

 

 渡邊

藤浪は、いい人であることを捨てなきゃいけないのかなって。もしデッドボールで乱闘になっても、矢野監督が守ってくれるから(笑)。

 

藤浪が先発したこの日、5回5失点ながらも打線が16点を取って勝利投手となった(=6月27日、横浜スタジアムで、写真は渡邊さん提供)

大山を四番で固定して「心中」してほしい

 

児玉

来年四番を打つ選手は。

 

一同

大山(悠輔)ですかね。

 

 栗山

一番いいのは四番・新外国人選手のあとで、五番・大山。糸井はもう違うかなあ。大山くんはプレッシャーに強い方だと思うし、将来の「虎の四番」として成長してほしい。

 

 山﨑

固定は絶対してほしい。

 

 三木

あれだけ成長した岡本(和真=巨人)だって、31打席連続無安打があったし。陽川(尚将)や中谷(将大)といった候補がいる中で大山を推すのは、やっぱり入団のときにいろいろあったのに1年目から四番を打つようになったから。確かにドラフトの時はみんな「誰やねん」って思ったけど(笑)。今年も前半は結果が出なかったけど、後半調子が上がって全体成績は去年よりいい。来年は首脳陣も「大山と心中する」くらいの気持ちでいてほしい。逆境にも強いだろうし。

 

 渡邊

鳥谷ファンとして一つ言っておくと、鳥谷は4打席立ってコンスタントに結果を残すタイプだから、来年もスタメンで出てほしいなって思います。

 

 栗山

僕はちょっと違っていて、鳥谷には今年の内川(聖一=ソフトバンク)みたいにスタメン出場することは少なくてもチームの精神的支柱として全体をまとめてほしい。なら、別にスタメンじゃなくていいのかなって。

 

新たな体制のもとで来シーズンの巻き返しを狙う我らが阪神タイガース。来年こそはクライマックスシリーズ出場、そして優勝へ――。ファンとしても温かい目で見守りたい。

 

グッズを身に付けて座談会に参加した帝虎会のメンバー(左から三木さん、渡邊さん、栗山さん、山﨑さん)。来年の巻き返しに期待大だ。

 

【関連記事】

東大生虎党に聞く、なぜ弱かった今年の阪神 主砲不在、若手は甲子園の大観衆に萎縮?

【地域の顔】b-lab  ”ナナメの関係”の大学生が作る、中高生の秘密基地

$
0
0

 「大学生が中高生と関わる活動」といえば、塾講師や家庭教師が思い浮かぶ。しかし、「先生」とは違う立場で中高生を支援する場所がある。本郷キャンパスから徒歩1分、文京区からの業務委託を受けNPO法人カタリバが運営する中高生の秘密基地「文京区青少年プラザ b–lab」だ。

 

b-labが入る文京区教育センター

 

 試験前の高校生が参考書を広げる隣で、別の生徒が好きな歌手について熱心に調べる。見守るのはb–labの職員と、生徒より少し年上の大学生。そんな不思議な空間のb–labは、中高生が安心して過ごせる場所を作るため2015年に開設された。放課後や休日に利用できる談話スペースの他、運動・バンド練習ができる場もあり1日約80人の中高生が訪れる。

 

 b–labの特徴は、中高生自身が主体となって運営や企画立案を行うことだ。中高生のやりたいことを詰め込む毎学期末の「フェス」や、ダンスイベント、読書会などが開催されている。イベントの一つ、「探究アソビ場」は中高生が自由に自分の趣味について調査・発表するもの。近年学校で盛んに行われる「探究学習」をより自由な形で行い、ロックバンドの髪型についての研究など多彩な発表で盛り上がったという。

 

b-lab内観

 

 2018年から館長を務める白田好彦さんは、b–labを「中高生の居場所であり、ステージ」と称する。b–labでは、親や先生のような「タテの関係」ではなく「ナナメの関係」となる大学生らを中心に、中高生が安心できる空間を作り上げる。さらに中高生が自己肯定感を得るきっかけとして、自分の「やりたい」を実現する舞台としても機能する。「青春の1ページをデザインする使命を持っているな、と思います」

 

 東大生も学生職員として活動に参加する。「どんな人にも居場所がある社会を目指したい」という馬場悠介さん(養・4年)は、8月からイベント運営などを担当。b–labは中高生の自己肯定感を高める場だが、馬場さん自身の助けにもなっているという。「中高生と友達になり、信頼されることがやりがいです」

 

b-lab館長の白田さん(右)、学生職員の馬場さん

 

 子どもの頃は不登校気味で家族関係にも苦しみ、居場所がなかったという馬場さん。さまざまな環境にいる中高生の話を聞く立場となった今、多くの東大生が学内の人としか交流しないことに危機感を持つ。「多様な背景を持つ人と交流し殻を破ってほしい」と、b–lab職員への応募を勧める。

 

 この場での大学生は、中高生の上に位置する「先生」ではない。b–labには、身近な「友達」として地域の中高生と、そして自分自身と向き合う大学生の姿があった。

 

b-labボランティア・スタッフ応募はこちら


この記事は、2018年10月30日号に掲載した記事の転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

ニュース:分別の意欲喚起が課題 食品容器「リ・リパック」の再生利用促進へ(東大のゴミ問題(上))
ニュース:硬式野球法大戦 新人が活躍も連敗 今季勝利挙げられず
ニュース:今季初の完封勝利 アメフト学芸大戦 次戦がヤマ場
ニュース:稲井被告が逮捕・起訴 かつてミスター東大候補に
ニュース:電力会社を介さない電力取引へ 工学系研究科など
ニュース:稷門賞 渋沢栄一のひ孫ら1個人・1団体へ
ニュース:高校生向けのサイト開設
ニュース:大沼保昭名誉教授が死去 専門は国際法
ニュース:卒業生「建物増え隔世の感」 17回目のホームカミングデイ
企画:謎の架空人物の書簡 正体と意義に迫る
企画:留年・降年の実態に迫る 怠惰の先に待つ落とし穴
推薦の素顔:内野澤安紀さん(文Ⅰ・1年→法学部)
地域の顔 本郷編:b-lab
研究室散歩:@基礎有機化学 内山真伸教授(薬学系研究科)
東大今昔物語:1991年11月12日発行号より 東大生の変化知る街
東大CINEMA:『プーと大人になった僕』 
キャンパスガイ:徳野鷹人さん(理Ⅰ・2年)

※新聞の購読については、こちらのページへどうぞ。

【駒場祭おすすめ企画】〜Sonido de Los Andes〜アンデスの響き 観客と一体で盛り上がる

$
0
0

①街頭演奏
②〜Sonido de Los Andes〜アンデスの響き

東京大学民族音楽研究会

①@1号館北東
②@7号館722号室

①午後0時半〜午後5時
②午後1時開場、午後1時半開演、午後4時半終演(予定)

 

活気を帯びた演奏は毎年人気を博している

 

 祭りに欠かせない、気分を盛り上げてくれる音楽。駒場祭でその一翼を担うのが、南米の民族音楽「フォルクローレ」だ。ポップスなど多様なジャンルの要素を取り入れた音楽性は、多彩な企画の個性が混ざり合う駒場祭とどこか重なる。

 

 自然の産物で作られた楽器が多いのが、フォルクローレの特徴。代表的な楽器「サンポーニャ」は長さが違う竹筒が並び、竹筒に息を吹き込むとプオーとそれぞれ別の高さの音が出る。代表の西脇和哉さん(理Ⅰ・2年)は「時に温かく時に勇猛果敢な音色が魅力です」。チャフチャスという楽器にはアルパカの爪を使うことも。爪を集めて振ると爪同士がぶつかり、カタカタとアンデスの風を思わせる乾いた音が響く。

 

フォルクローレの代表的な楽器、サンポーニャ。音色もさることながら、竹ならではの温もりがある質感も魅力だ

 

 「まずは街頭演奏で、泥臭いパワーや勢いを体感してください」。カラフルな民族衣装でにぎやかな曲を披露する姿は、活気あふれる祭りにぴったりだ。観客との一体感を重視して、手拍子を求める他、チャフチャスを観客に渡して振ってもらうこともある。中には踊りだす観客がいるほど好評で、西脇さん自身これを見て入部を決めたというが「やってみると意外と体力勝負で大変です(笑)」。

 

 街頭演奏は屋内での演奏の宣伝も兼ねる。今年は宣伝ビラを配るなど、例年以上に熱心だ。屋内は音響設備が充実しているため、屋外では音が響かないしっとりした曲に挑戦。「その分機材の設定が大変ですけどね(笑)」。曲調に合うフォーマルな服を着たり、歌詞の和訳が書かれた紙を観客席の机に置いたりと、観客を楽しませる仕掛けを施しつつ「自分たちが楽しむのも忘れません」。演奏者と観客が一体となって楽しむこの企画自体、一つの祭りといえるのかもしれない。


この記事は、2018年11月13日号に掲載した記事の転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

インタビュー:好奇心をクイズに生かす 三浦奈保子さん(タレント)
ニュース:全勝対決制し昇格へ前進 アメフト横国大戦 第4Qで逆転
ニュース:植物の乾燥耐性向上へ 理研や農・篠崎教授ら
ニュース:金子名誉教授に文化勲章 租税法で功績
ニュース:情報セキュリティ教育 未受講でWiFi停止
企画:〜迷ったらここに行こう〜 編集部厳選 おすすめ企画11
企画:女子学生21人がアプリ開発に挑戦! 東大ガールズハッカソン2018
企画:個性豊かな10人の候補者が大集合 駒場祭3日目開票 ミス&ミスター東大コンテスト
駒場Ⅰキャンパスマップ
キャンパスガイ:細江塔陽さん(文Ⅱ・2年)

※新聞の購読については、こちらのページへどうぞ。

Viewing all 531 articles
Browse latest View live


<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>