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Channel: COLUMN –東大新聞オンライン
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【駒場祭おすすめ企画】焼き芋BAR 焼き芋でお腹を満たし世界を救う!?

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焼き芋BAR

IMO project

@矢内原通りD3

全日全時間帯

 

定期的に開かれる交流会でサツマイモ料理を楽しむ

 

 おいしさはもちろんのこと、増え続ける世界の人口を支えることが期待される作物「サツマイモ」の無限の可能性を世に広めたい。そんな熱い思いの下で立ち上げられたサークル「IMO project」では日々サツマイモを栽培し、芋料理を楽しみながら語り合う会を定期的に開く。

 

日々サツマイモを栽培する

 

 サツマイモの魅力を広める格好の場である駒場祭では「焼き芋BAR」の名で出店。全18種類のサツマイモを焼き芋にして提供する。サツマイモの食感はでんぷん量の多い順に「ねっとり」「しっとり」「ほくほく」の三つに分かれる。BARではそれぞれの代表とされる「紅はるか」「シルクスイート」「紅あずま」の3種類を農家から大量に仕入れ、その他15種類のサツマイモは自畑で栽培したものを小さく角切りに。「丸ごと食べるのが焼き芋の醍醐味」との意見もあったが、手軽さと食べ比べのしやすさを追求した。

 

焼き芋BARのメニューの一例

 

 白米やパンに比べ日々の食卓であまり見かけないサツマイモだが、太平洋戦争中に多くの人々の飢えを救った「沖縄100号」があまりにまずかったことが影響しているのだそう。しかし現代では品種改良が進み、味の質は向上。同じ面積でコメの3倍も収穫できるほどの多収穫も見込め、栄養価が高く貧しい土地でも育つ優秀さを備える。「2050年には人口90億人を超える。時代が芋を呼んでいるんです!」と代表の田口一輝さん(理Ⅱ・2年)は話す。

 

 「焼き芋BAR」では、おいしいサツマイモの食べ比べはもちろん、芋をこよなく愛する東大生たちに、その魅力を熱く語ってもらうこともできる。 BARを去るころには、芋の魅力に取りつかれてしまっているかもしれない。


この記事は、2018年11月13日号に掲載した記事の転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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駒場Ⅰキャンパスマップ
キャンパスガイ:細江塔陽さん(文Ⅱ・2年)

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【駒場祭おすすめ企画】ジブン×ジンブン 人文学で価値観を相対化せよ

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ジブン×ジンブン

UT―humanitas2018

@1号館112教室 全日全時間帯

 

普段の活動でも活発に議論を交わし視野を広げる

 

 人文学者の研究は社会とのつながりが薄いとされ、世間で軽視されがちだ。人文学に関する予算や人員の削減が続く中、人文学側から手を打つ必要性を痛感した大学院生が、今年UT―humanitas2018を結成した。

 

 駒場祭では企画「ジブン×ジンブン」を通じて、将来を担う高校生をはじめとした多くの人々に人文学の面白さや意義を積極的に発信することを目指す。例えば「ジンブンアトラス」という展示では、哲学、史学など学問間の視座の違いを例示。「How to Make 論文」という展示では、教授へのインタビューを基に人文系論文の書き方を提示する。大学院生の学問に対する熱い思いが伝わってくる展示が満載だ。

 

 この企画の魅力は、さまざまな研究科に所属する大学院生が自分の分野についての問題を持ち込みながら、より広い視野で人文学の意義を考える様子を見られることだ。人文学の意義を「われわれが普段何気なく使う概念の価値を洗い直して、自分たちがいったいどんな価値観に縛られているのかを知ること」と語るのは大泉哲也さん(法学政治学・修士1年)。法律制定時に何が意図されたのかを歴史的にたどることで現行法の意味を明らかにする法制史を専攻する。須河原舜さん(総合文化・修士1年)も「人文学は文系の基礎研究。社会科学の思想・方法の基盤にもなっている」と自分の専門である人文地理学の立場から語る。

 

 このように「社会からいったん身を引いて社会を叙述、批判し、自分の立場を明確にすることで社会に戻っていくのが人文学者です」と大泉さんは話す。社会とつながる人文学の意義を、企画を通して是非実感してもらいたい。


この記事は、2018年11月13日号に掲載した記事の転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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【駒場祭おすすめ企画】点字名刺づくり体験 点字の世界へ扉開く

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点字名刺づくり体験

東京大学点友会

@5号館533教室

全日全時間帯

 

シールに点字を打ち込み、世界に一つだけの点字名刺を作る

 

 例年10万人以上の来場者を集める駒場祭。期間中、駒場Ⅰキャンパスは老若男女さまざまな人でにぎわうが、中には視覚障害を持った来場者も。彼らが駒場祭を楽しめるよう、駒場祭委員会と連携し、点字版のパンフレットと手触りで読める校内図「触地図」を作成している団体がある。40年以上の歴史を誇る老舗サークル・東京大学点友会だ。

 

 そんな点友会が毎年、駒場祭の来場者に点字のことを知ってもらうべく出展しているのが「点字名刺づくり体験」。名刺大に切った色紙に来場者の名前などを書いてもらい、上から点字シールを貼れば、世界に一つだけの点字名刺の完成だ。もちろん、専用の道具を用いてシールに点字を打ち込む作業も体験できる。

 

 「五十音表があれば、点字は読むのも書くのも難しくありません」と企画責任者の内田智也さん(理Ⅰ・2年)。日本語の点字はローマ字同様、母音と子音の組み合わせで構成されるため、ローマ字さえ分かれば覚えやすいという。

 

 とはいえ、使いこなすとなると話は別だ。「晴眼者は複数の文字を固まりで認識してぱっと読み進めることができますが、点字は1文字ずつしか読み取れません」。そのため、点字版のパンフレットでは、視覚障害者にも読みやすいよう情報を絞り込む必要がある。連絡係の坂口あんずさん(文Ⅲ・2年)も「必要最小限の情報を盛り込み、各文章の文体も崩さないように企画の紹介文を要約することを心掛けています」。

 

 分かりやすくも奥深い点字の世界。内田さんは「少しでも知識が付けば、身近にあふれる点字が目に入るようになりますよ」と話す。「点字の書き方を知って、来場者の方に点字を身近に感じてほしいです」


この記事は、2018年11月13日号に掲載した記事の転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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【駒場祭おすすめ企画】Irish cafe"ふあむ" 本場の味・音に包まれて

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Irish cafe"ふあむ"

UT-Fuaim

@1号館114教室

全日全時間帯

 

アイリッシュ音楽の生演奏でついつい会話も弾む

 

 駒場祭で数多く出店されるカフェの中で、異彩を放つものがある。UT―Fuaimによるアイルランドカフェ、Irish cafe 〝ふあむ〟だ。

 

 普通のカフェと違うのは、店内で部員が絶えずアイリッシュ音楽を奏でる点。アイリッシュ民謡の独特なリズムや、クラシック音楽とはまるで異なる新鮮な音の響きを楽しめる。アコーディオンの一種のコンサーティーナや縦笛形のティン・ホイッスルといったアイリッシュ楽器に限らず、何か楽器を持っていれば来店客が演奏に加われる点も大きな魅力。「お客様との関わりを大切にすることが毎年変わらぬこだわりです」と代表の鈴木優太さん(文Ⅱ・1年)は語る。

 

 提供される飲食物も一味違い、さらっとして雑味がないアイリッシュティーをスコーンと共に楽しめる。店内は三つ葉のクローバー形のアイルランド国花シャムロックで飾られ、アイルランドの魅力たっぷりだ。

 

 今年は楽器や料理などのアイルランド文化を来店者に詳しく紹介する試みも始める。「魅力あふれる文化を知って、たくさんの人にアイルランドを好きになってほしい」と笑顔で鈴木さんは言う。

 

 普段は毎週土曜日に約20人が集まり、アットホームな雰囲気の中音楽を奏で合う。楽譜がないことがアイリッシュ音楽の特徴の一つで、楽器の弾き方といった演奏法は上級生から下級生に実演で伝えていく。

 

 今年は高度な曲に挑戦する部員が多く「レベルの高い音楽を多くのお客様に楽しんでもらいたい」と鈴木さんは熱弁する。「お客様と共に音楽を作り上げる」という、他と一味違ったアイリッシュカフェの雰囲気に、あなたも浸ってみてはいかがだろうか。


この記事は、2018年11月13日号に掲載した記事の転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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【駒場祭おすすめ企画】ゲームとレゴで理解するSDGsの世界 持続可能性への気付き得る

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ゲームとレゴで理解するSDGsの世界

UTSS

@1号館150

23日、午前10時〜午後0時半、午後2時〜4時半の全2回(各回開始30分前に開場、事前予約制・当日枠あり)

 

 2015年に国連で採択された、2030年までの持続可能な開発目標「SDGs」。一見難しそうな話題だが、本企画では手と頭を使って楽しみながら、SDGsを「自分ごと」に実感できる。

 

 「SDGs×LEGO」は、持続可能な社会に必要な人材を育成する「こども国連環境会議推進協会」のイベントの一つで、これまでも学校や企業で行われている。参加者はまず、カードゲームを使ってSDGsを達成する道のりを体験。カードに書かれたプロジェクトを実行し、その行動による経済状況や環境の変化に対応しながら、グループごとに与えられた「人生の目標」の達成を目指すルールだ。その後ゲームでの気付きをレゴで表現し、互いの作品への問い掛けを通じて参加者同士の議論を深める。

 

レゴを駆使してSDGsについて議論を交わす

 

 駒場祭での実施を企画したのは、環境問題に関心がある学生を中心に昨年冬に結成されたUTSSだ。SDGsについて語り合う場として機能しながら、SDGsをさらに広める活動を模索している。代表の佐井以諾さん(工・4年)は、自身がイベントに参加したのをきっかけにこのゲームに興味を持ったという。「SDGsを普段から意識することは難しい。カードゲームという小さな世界に落とすことで、自分の行動がどう社会に影響するのか実感できます」。副代表の鎌倉真奈さん(養・4年)は、幅広い世代の人が「未来」について対等に語れることも魅力だと話す。

 

 「堅苦しく見えるが、まずはカードゲームを楽しんでほしい」と佐井さん。学生300円・社会人500円と通常より安価で気軽に参加できる。ゲームで遊ぶつもりで、SDGsの世界に立ち寄ってみては。

 

お申し込みはこちら→https://peatix.com/event/452011


この記事は、2018年11月13日号に掲載した記事の転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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【駒場祭おすすめ企画】中国茶カフェ 舌から始まる日中交流

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中国茶カフェ

東京大学中国茶同好会

@1号館120教室

全日全時間帯

 

手慣れた様子で中国茶を注ぐ講師。茶器も本格的だ

 

 味や香りを楽しむ中国茶。その種類は何千種もあり、製造方法や茶の入れ方によって風味は大きく変わってくるという。北京で買った茶器を使い、中国風に店を装飾した「中国茶カフェ」では、東京大学中国茶同好会が本格的な中国茶を振る舞う。

 

 中国茶カフェでは中国茶を提供する他、茶に関する知識や作法について店員が給仕時に紹介する。さらに、会員の中には留学経験者が多いため留学相談ができる他、留学生による中国語教室も開催される予定。もちろん中国に関する知識が皆無でも大歓迎だ。「洗練された味わいだけでなく、お茶を通して交流が深まることも中国茶の魅力です」と駒場祭責任者の浅野宏耀さん(養・4年)は語る。

 

 実は東京大学中国茶同好会が創設されたのは今年9月と、できたばかり。当初は第二外国語教育を重点的に行うプログラムであるTLPの学生など、中国に興味がある数人でお茶会を開いていた。しかし代表の磯尚太郎さん(養・4年)が北京大学へ交換留学をした際、中国茶の魅力を他の人にも伝えたいと思いサークル創設を決意。東大に多くはない日中交流サークルを新たに作りたい気持ちもあった。

 

 普段は中国に限らず米国などからの留学生も混在する環境で、さまざまな中国茶を飲み比べながら会話を楽しむ。茶葉を取り扱う店から専門家を招いた講習会の開催や、早稲田大学など他大学の日中交流サークルと連携した活動も行う。

 

中国茶と会話で盛り上がる茶会

 

 「学内だけでなく、学外の人にもあまり飲む機会のない中国茶を味わってもらえれば」と浅野さん。磯さんも「中国茶に興味がある人もない人も、気軽に楽しんでもらいたいです」と意気込んでいる。


この記事は、2018年11月13日号に掲載した記事の転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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【駒場祭おすすめ企画】台湾まぜそば 麺屋こまば 愛好家の期待を背に調理

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台湾まぜそば 麺屋こまば

台湾まぜそば同好会

@いちょうステージ前B1

全日全時間帯

 

具材がこれでもかと敷き詰められた台湾まぜそば。思わず食欲をそそられる

 

 卵の黄身やニラ、九条ネギ、ニンニクなどの濃厚で辛口の味付け、絶妙に絡まる麺……。知る人ぞ知る「台湾まぜそば」は刺激的な食事に飢えた大学生に人気の逸品だ。「台湾まぜそば研究会」には、そんな台湾まぜそばの愛好家が集う。

 

 中でも正責任者・塚田涼太郎さん(工・4年)が注ぐ愛情はひときわ熱く燃えたぎる。「発祥は台湾でなく名古屋なんです。新メニューの開発過程で生じた失敗作がたまたま好評を博し、『麺屋はなび』が一気に人気に火を付けました」と「台湾まぜそば史」はバッチリ。人気店の従業員との交流でレシピの秘密を探り、ツイッターで愛好家と「オフ会」を開き語り合うなどその愛は本物だ。

 

 台湾まぜそばの魅力は「食べ進めていく過程でいろいろな表情を見せる」点だと塚田さんは力説。ミンチと野菜の彩鮮やかな盛り付けに始まり、まぜる楽しみ、昆布酢の味付け、追い飯(スープにご飯を入れて食べる)……、と楽しみ方は無限の可能性を秘める。

 

 会員たちの熱意はついにオリジナルの台湾まぜそば制作にまで至り、駒場祭での出店も決定。「台湾まぜそばを食べたことがない新規層の開拓がしたいと思った」と副責任者の長谷川優貴さん(工・4年)。こだわりが強ければこその苦労は絶えない。駒場祭では規則の関係からシンボルである生卵が使えず、麺も焼きそばで代替するという。それでも「麺に粘り気を出す工夫を見つけた」と研究の成果は実を結びつつある。

 

 台湾まぜそば同好会があるのは東大だけ。それだけに、今回は全国の愛好家たちの期待を背負っての挑戦となる。「台湾まぜそばを知ってもらうきっかけにしてほしい」と、懸ける思いは十分だ。


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【駒場祭おすすめ企画】UTFFフォーミュラカー展示 車の仕組みに隠れた知恵

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UTFFフォーミュラカー展示

東京大学フォーミュラファクトリー

@矢内原通りB2

全日全時間帯

 

 年に1度、学生だけで制作した車を持ち寄って開催されるものづくりコンテスト、全日本学生フォーミュラ大会。そこで活躍するフォーミュラカーと呼ばれる車は「車輪とドライバーがむき出しになっている」などの厳格な基準を満たす、一般の自動車とは異なる車だ。東京大学フォーミュラファクトリーは年に1台、フォーミュラカーを学生の手でゼロから制作し、走行性能や経済性などを他大学と競う。

 

 駒場祭では、今年9月の大会に出した車両を展示。エンジンを始動させるデモンストレーションも行う予定だ。他大学の車両にクラッチ操作が必要なマニュアル車が多い中、東大は簡単に運転できるようクラッチ操作が不要なオートマチック車を制作。さらに安全性も重視し、ドライバーの足を前輪の後ろまで下げることで、正面衝突の際のドライバーの危険を減らす。「車両に触れても良いし、運転席に座っても良いので気軽に立ち寄ってほしい」と副責任者の本多詩聞さん(理Ⅰ・1年)は呼び掛ける。

 

展示される車は、今年の大会でも勇姿を見せた

 

 普段は大学内での活動が中心で、金属を加工して部品を作る活動もあれば、制作コストに関する書類などを作るデスクワークもある。加えて、サーキットで試走会を行うことも。「一つでも不具合があると車両は動かないので、どれもハードな活動です」

 

 「フォーミュラカーは一般の自動車より簡素な構造なので、車の仕組みを学ぶには最適です」と企画責任者の北原丈裕さん(理Ⅰ・2年)。設計に関わった部員が近くにいるため、疑問点はすぐに聞けるという。今年の大会に出場したフォーミュラカーの迫力を感じつつ、部員の隠れた知恵と苦労を探してみてほしい。


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【駒場祭おすすめ企画】東京大学キムワイプ卓球会 実験道具でまさかのスポーツ

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東京大学キムワイプ卓球会

@第一体育館2階卓球場(23日・24日)

第一体育館1階剣道場(25日)

23日・24日 終日

25日 午後0時30分~

 

 身動きが取りづらい駒場祭の人混みにうんざりして体を動かしたくなったら、卓球場(25日は剣道場)に足を運んでみよう。卓球台が置かれ、ピンポン玉が目まぐるしく動く。しかし、普通の卓球とは何かが違う。ラケットとネットをよーく見てみると、そこにあるのはキムワイプを入れる箱──。

 

ラケットもネットもキムワイプ。部員(右)の服もキムワイプTシャツだ

 

 東京大学キムワイプ卓球会が主催するキムワイプ卓球の体験会では、実験時に液体の薬品などを拭き取る理系学生の必携品・キムワイプの箱をラケット代わりにした「キムワイプ卓球」を楽しめる。友達同士対戦するもよし、部員に戦いを挑むもよし。キムワイプ卓球のためだけに、駒場祭に足を運ぶ人もいるという。

 

 ルールは通常の卓球と変わらないが、ラケットの違いからキムワイプ卓球ではボールが弾みにくい。「弾まないボールに慣れることが大事です」と代表の鈴木凌斗さん(理Ⅰ・2年)は解説。腕を伸ばさないと返球しにくいネット際にボールを落とす戦略も有効だ。

 

 24日の午前11時からは、キムワイプ卓球大会を実施。キムワイプを製造するメーカー・日本製紙クレシアから提供される、キムワイプTシャツやキムワイプボールペンなどのキムワイプグッズが景品や参加賞として贈呈される。今年は、堅固な化学強化ガラス「ゴリラガラス」を製造するコーニングが協賛として加わりいっそう豪華に。「景品はほとんど非売品。日頃なかなかお目にかかれないグッズが並びます」

 

 駒場祭で使用するキムワイプは実に100箱。3色の色違いも含め、大量のキムワイプの箱が卓球場に並ぶ姿は圧巻だ。「日本最大のサイエンティフィック・スポーツ団体」の本気をご覧あれ。

 

積み上がる圧巻のキムワイプ

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【2018年アクセスランキング】東大生の不祥事に厳しい視線

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(左上から時計回りに)取材中に取り出された森永ラムネ、「100年大学 開学記念特別講座」に登場した生駒里奈さん、「19歳が見た中国」の著者・松藤圭亮さん、UTokyo Sustainabilityのメンバー

 

 東大新聞オンラインで10月に公開した記事の10月中のアクセスランキングを調べたところ、1位は「ミスター東大コンテスト2014」のファイナリスト・稲井大輝被告が、逮捕・起訴されたニュースだった(表)。稲井被告は自宅に30代の女性を連れ込んで乱暴した疑いで9月15日に逮捕され、10月5日に強制性交等罪で起訴、現在は保釈されているという。慶應義塾大学の過去のミスターコン候補が性犯罪の容疑者として逮捕される事件が起こる中、ミスターコン出場経験のある稲井被告の逮捕が大きな注目を集めた。

 

 2位の記事では、社会人を経た後に東大に再入学した在学生・卒業生にインタビュー。再入学の経緯、良かったことや苦労したことについて2人に語ってもらった。3位の記事では、東大内の無線LAN「UTokyo WiFi」の利用状況を調査。多くの駒場生が不満を漏らす整備の現状について、学生と大学との間の認識の齟齬が明らかになった。

 

 4位に入ったのは、今年の夏に中国をバックパックで回った松藤圭亮さん(理Ⅰ・2年)による連載「19歳が見た中国」の第1回記事だった。松藤さんはフェリーで中国に渡った後、上海や深圳など7都市を巡り、東大で知り合った中国人学生を訪問。船上や観光地での迫力ある写真と現地の人々との会話を織り交ぜた臨場感あふれる文章が、多くの読者を魅了した。全7回予定の連載は、現在も続いている。

 

 5位には、森永ラムネとのタイアップ記事がランクイン。ロングセラー商品であり駄菓子屋やスーパーマーケットで必ずと言っていいほど見かける森永ラムネは、東大生協駒場購買部で近年売り上げを伸ばしており、一時は品薄状態になったこともあるという。記事では受験生時代から森永ラムネを食べていた東大生2人に、活用法や気に入っている点を話してもらった。多くの人に身近な存在である森永ラムネに興味を引かれて記事を読んだ人も多かったのではないだろうか。

 

 8位は学生団体「UTokyo Sustainability」による「東大生のSDGs意識調査2018」への協力を呼び掛ける記事だった。団体紹介と共に、調査の詳細を説明。全学生に調査についての周知メールが配信されており、学生を中心に記事も注目を集めたようだ。

 

 10位は「証券投資の日」である10月4日に本郷キャンパス安田講堂で開催された、お金の未来を考える公開講座「100年大学 開学記念特別講座」のレポート記事。特別講師として、小説家の羽田圭介さんと資産運用のロボアドバイザーサービスを提供するウェルスナビ株式会社の柴山和久さんが登壇して特別講義を行った。続くトークセッションでは元乃木坂46で現在タレントとして活動する生駒里奈さんが登場してお金との向き合い方を議論。東大生と生駒さんによる「お金のセンス」特別問題対決では、会場が大いに盛り上がった。

 

【2018年10月アクセスランキング】

1 元ミスター東大ファイナリスト 逮捕起訴される

2 人生の進路に新しい選択肢を 東大への再入学者2人にインタビュー

3 UTokyo WiFi 7号館に不満集中 学生と大学の間に認識の違いも

4 19歳が見た中国① フェリーに乗って、ぶっつけ本番中国語

5 東大生も愛用 ぶどう糖90%の意外なお菓子とは?

6 東大職員、人材登用改革の成果は? 高度化と多様化を目指す

7 【推薦の素顔】小山雪乃丞さん 地層求めて縦横無尽

8 「東大生のSDGs意識調査2018」 UTokyo Sustainabilityが実施

9 ラクロス男子 成蹊大に逆転勝ちで決勝へ 終了間際に同点、延長戦で勝負決める

10 「100年大学 開学記念特別講座」が開催 タレント・生駒里奈さんらが出席

※当該期間に公開した記事のみを集計

 

過去のランキング

【2018年9月アクセスランキング】「とりあえず東大」は終わった?

【2018年8月アクセスランキング】教授の語る大学の選び方

【2018年7月アクセスランキング】推薦生でも進学先を変えられる?

【2018年6月アクセスランキング】世界大学ランキングに関心

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みんなで暮らす一人暮らし? シェア型取り入れる学生宿舎

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 来年、東大では新しい学生・外国人研究者向け宿舎の目白台国際宿舎が生まれる。三鷹国際学生宿舎の建設以降進んだ学生宿舎建設は、どのような意図で設計され、実際の暮らしはどのようなものなのか。これからの学生宿舎の在り方はどうなるのか。東大や実際に住む学生、専門家への取材から、学生宿舎の可能性を探った。(取材・渡邊大祐)

 

学生語る交流の実態

 東大で初めて「寮」ではなく「学生宿舎」として建設されたのが、三鷹国際学生宿舎だ。全室が個室で、「アパートのようだ」という声も聞かれる。

 

三鷹国際学生宿舎外観(教養学部提供)

 

 宿舎は1990年代に個室制の約600室が整備され、居室棟と、自由に過ごせるホールを備えた共用棟がある。主に駒場キャンパスで学ぶ日本人学部生と留学生の学部生、院生が暮らし、家賃は月額約1万円。取材した学生の多くが家賃の安さを入居の理由に挙げた。

 

 宿舎建設に合わせ閉寮した旧駒場寮が相部屋制であったのに対し、個室制を採用した経緯を教養学部は「文部省(当時)の方針」として明言しない。

 

 宿舎生活について、ある日本人学生は大体自分の個室にいて、宿舎生との交流はあまりないと語る。ただ、クラスや部活での交流もあり宿舎での交流の少なさは不満ではないという。

 

 学部生の組織、宿舎生委員会の委員長ラーリック寿里晏さん(理Ⅱ・2年)も、宿舎生間の交流の少なさを認める。しかし、積極的に交流を望まない宿舎生もいるため、交流が少ないことは必ずしも問題ではないという。そこで委員会では交流を望む人が機会を持てるように、月に1度バーベキューなどのイベントを開催。このことを踏まえ、ラーリックさんは個室制を「個人的には個の強い東大生に適応していると思う」と話す。個室で自分の生活を送り、交流したければイベントや共用棟に行くなどの選択肢がある。実際、宿舎生活ならではの交流として、「宿舎でできた友人と外で寝転んで、流星群を見ながら語り合いました」と教えてくれた。

 

三鷹国際学生宿舎間取り図(教養学部提供)居室は全て個室制となった

 

 一方、豊島国際学生宿舎B棟はシェア型の宿舎だ。個人の居室を備えつつ、バスやトイレ、キッチン、リビングダイニングを10人のユニットで共有する。300の居室があり、完成は2017年と新しい。日本人と留学生の学部後期課程生と院生が暮らし、家賃は月額約4万円。ここでも取材した学生からは安さが入居理由として聞かれた。

 

 シェア型のメリットとして、奨学厚生課は、学生間の距離が縮まり、交流が活発になることを挙げる。また、留学生との生活で相互に異文化理解が深まり、国際交流につながるという。

 

 シェア型の宿舎について、ある日本人学生は当初、共同生活のストレスを強く感じたが、次第に同じユニットで仲良くなり、問題を感じなくなったと語る。今では、専門の違う人や年の離れた院生との飲み会や「ここでしか会わない人」との交流が魅力だという。留学生の院生も、ユニットで月に1度鍋を囲むなど交流があると話す。一方で、勉強や研究が忙しく必ずしも交流を望まない人もいるだろうという声も。生活リズムが合わず、ユニットでの交流はほとんどないと語る日本人学生もいた。

 

豊島国際学生宿舎B棟ユニットの間取り図(本部提供)リビングなどをシェアする
豊島国際学生宿舎B棟外観(本部提供)

 

個室制にない強み

坂井 猛(さかい たける)教授(九州大学)  1987年九州大学大学院修士課程修了。博士(工学)。綜合建築設計研究所や福岡県勤務などを経て、2007年より現職。九州大学伊都新キャンパス建設に関わった。専門は建築学と都市計画。(写真は坂井教授提供)

 

 他大学の学生宿舎はどうなっているのか。九州大学では近年、キャンパスの移転により、約1200人分の学生宿舎が建設された。伊都新キャンパス建設に関わった坂井猛教授(九州大学)は「九大でも近年ようやく『シェア』の考えが認められるようになった」と語る。

 

九州大学伊都新キャンパス(坂井教授提供)

 

 実際、2014年完成のドミトリー3(定員136人)はシェア型の宿舎だ。坂井教授は、シェア型を採用した狙いを二つ挙げる。一つ目は「キッチン、リビング、バストイレの共有で学生間のコミュニケーション、共同意識を醸成する」ため。これはアイビーリーグなど欧米の大学でも普及しているという。二つ目は個室制よりも建設費を抑え、寄宿料を軽減するためだ。

 

九州大学伊都新キャンパスドミトリー3外観(坂井教授提供)

 

 また坂井教授は、宿舎はキャンパス内か徒歩圏内にあることが望ましいと話す。「宿舎をキャンパス周辺に建設することは、『大学のまち』を形成する可能性を秘めています」。大学のまちとして挙げられるのは、御茶ノ水やパリのカルティエラタンだ。学生を相手にした安価な飲食店やカフェ、生活雑貨屋ができ、学生が過ごしやすい街となる。一方で、一般の住民に学生が迷惑を掛けないようにすることも必要だという。

 

 今後の学生宿舎の在り方について、坂井教授は多様な機能と経済性をポイントに挙げた。宿舎は寝食だけでなく、自習、ミーティング、リフレッシュ、購買、ブラウジング(宿舎内を歩くこと、コミュニケーションのきっかけとなる)などさまざまな活動を想定することが求められているという。「経済的で快適な環境をいかに構築するか」考えることが大切だと語った。

 

 今後、東大の学生宿舎はどうなるのか。来年9月に入居開始予定の目白台国際宿舎では、シェア型と個室型両方の部屋が設けられる。パンフレットではシェア型の部屋について「一人暮らしでは得られない贅沢(ぜいたく)な空間」とうたう。奨学厚生課は、前期教養学部生が入居可能かなど、細かい対象者は検討中とした。

 

 教養学部は、教養学部創立60周年(2009年)事業の一環として三鷹国際学生宿舎で新棟建設を計画し、現在も「計画実現に向け、検討中」と語った。この設計では、「基本的に個室制が踏襲されているものと理解している」という。

 

目白台国際宿舎シェアブロックのイメージ図(本部提供)約20人で生活することを想定したこのシェアブロックでは学習、食事などの目的に合わせた複数のリビングなど共用スペースが充実している。

 

 学生宿舎でシェア型が導入された背景には、寝食に限らず、宿舎でしかできないことがより評価されていることがうかがえる。その一つは国際交流を含めた学生間の交流である。個室型では、これは多くが個人の裁量による一方、シェア型では、建築で自然に、しかし裏返せばいくらか強制的に生み出される。いずれの宿舎も、偶然にも同じ宿舎に住むことになった人々が、交流する場としての可能性が見えた。同時に、取材した多くの学生が求めた家賃の安さも重要だ。理想的な宿舎の在り方の模索が続いている。


この記事は、2018年11月20日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

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【発掘!東大博物館②】「建築ミュージアム」とは何か? 小石川分館編

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 東大の博物館を紹介する本企画の第2弾は、総合研究博物館小石川分館を取り上げる。丸ノ内線の茗荷谷駅から徒歩約10分。都心とは思えないほど緑豊かな景色の中に現れる、赤と白のかわいらしい建物が小石川分館だ。この博物館のコンセプトは「建築ミュージアム」。これにはどのような意図が組み込まれ、実際の展示にどう生きているのだろうか。構想に携わった松本文夫特任教授(総合研究博物館)に話を聞いた。

(取材 持田香菜子)

 

松本文夫特任教授(総合研究博物館)

 

──「建築ミュージアム」ができるまで

 

 小石川分館の前身となるのは、東京大学ができる前年、1876(明治9)年に建設された旧東京医学校本館という建物。当時は本郷キャンパス内にあり、2度にわたる移築を経て、理学部附属植物園(小石川植物園)内の現在地に設置された。明治初期の木造擬洋風建築を今に残す貴重な歴史遺産で、国の重要文化財に指定されている。加えて、東京大学における現存最古の学校教育施設という側面も持つ(建造物としては赤門が最古である)。このような、建物がもつ特殊な背景を加味し「学校建築ミュージアム」として2001年に一般公開された。

 

小石川分館外観

 

 当初は大学の研究教育で使われてきた学術標本や教育機材が展示されていたが、それらの展示物は2013年に丸の内に開館した学術文化総合ミュージアム「インターメディアテク」に移管された。その結果小石川分館には、特別展示用に東大の学生によって制作された建築模型が残された。これらをベースに新たなコンセプト「建築ミュージアム」を掲げてリニューアルされたのが、現在の小石川分館の展示だ。

 

世界の有名建築の縮体模型を展示したスペース。模型が入れられた鋼鉄製のケースは、かつて医学部で使用されていた備品だ

 

──縦割りを横割りへ

 

 しかし「建築ミュージアム」といっても、建築模型だけを展示しているわけではない。鶴見英成助教(総合研究博物館)が担当する民族学資料や、動植物・鉱物など一見して建築とはかけ離れたものも扱う。

 

「身体空間」と銘打たれたスペースにはカヌーの展示が

 

 「小石川分館は建築をテーマにしていますが、より正確にコンセプトを表すには『アーキテクチャ』という言葉の方が適当です」と松本特任教授は言う。「アーキテクチャ」とは、主に建造物を指す「建築」よりも広く、構成原理・設計思想といった抽象度の高い意味内容をも含み込んだ概念だ。

 

 「私は建築を専門にしていますが、動物や植物などの構造を見てすごく感動することがあります。新しいデザインに生かせるのではないかと考える。『アーキテクチャ』として感じ取ったことが、アイデアを生み出すきっかけになりえます。ここの展示は、自然物から人工物まで、一見関わりのないものを展示しているように見えますが、それらを『アーキテクチャ』という共通の視点で捉えてみると、違う分野のものが同じ言葉で語れるような特徴・性質を帯びてくる。それが面白いのではないかと思います」

 

入り口付近に展示されたクルマガイ。学名にArchitectonicaを含み、ここにもアーキテクチャが見出せる

 

 一般に博物館は、さまざまな分野のモノが集まってくる場だ。それらを分類・整理し、縦割りを精緻化していくのは博物館の主な役割の一つといえる。しかし「アーキテクチャ」というテーマで横断的に捉えなおしてみることで、新たな発想が生まれる「場」たりえるのではないか。そうした創造的な効果を期待して展示を作っているという。

 

──ミュージアム概念の「拡張」

 

 従来、博物館は一つの場所にあり人も物もそこに集まってくるものだというイメージが強かった。その固定観念から抜け出し、小さくコンパクトに作った展示を街の中に出していこうという試みが、総合研究博物館全体として重要視されている。具体的には、小規模な展示をオフィスビルのロビー空間に設置するといった企画を数多く行ってきた。

 

 また、小石川分館では定期的に「建築博物教室」というイベントを開催し、各分野の専門家を呼んで「〇〇のアーキテクチャ」というテーマで講演を行っている。同時に専門分野に沿った小さな展示を作ってもらい、それが展示室の中に一つずつ増えていっているという。可動性を重視した「モバイルミュージアム」の思想を表すことも、展示の目的の一つだ。

 

「チェリャビンスク隕石」。建築博物教室「太陽系のアーキテクチャーー隕石に刻まれた46憶年史」開催に合わせて作成された「モバイルミュージアム」の一例

 

 松本特任教授によれば、博物館は上述のように存在形態が変わり得るだけでなく、機能の面でも可能性を広げられる余地があるという。「博物館にはせっかく多種多様なものが集まってくるのだから、過去の記憶を保存する拠点としての役割にとどまらず、未来の創造に役立てる場所にしたい。情報が集約されている場所というのは、それだけで新しいものが生み出されるポテンシャルを持ちます。博物館でモノを見たときに出会うかもしれない『いいな』という感覚が、その人にとって何かのときに生かせる原石になればと思います」

 

──大学博物館として

 

 小石川分館は「大学博物館」だ。大学との関わりとしては、展示されている建築模型のほとんどが学生の手によるものであることや、講義をする場として館内を提供していることなどが挙げられる。しかしそうした直接的な関係以外にも、小石川分館をはじめ大学博物館は「大学という場とパラレルな関係をもつ」と松本特任教授は言う。

 

 大学は数多くの分野にまたがる知が集まり、新たな知を生み出す場として機能する。それは博物館において、集まってくるモノに横断的な視点を取り入れられる点や、どのように活用できるかわからなくとも、気になるものに出会える可能性がある点と通じる。

 

 「前期教養課程で空間や映像を作る授業を開いており、受講した学生には自分が作りたいものを考え、進め方を試行錯誤しながら作品を完成させるという体験をしてもらいます。アイディアを形にする体験は将来どの道に進んでも、何らかの形で生きるはずです。小石川分館を訪れる人にとっても、つかんだものをどう次につなげるかまでは立ち入れずとも、展示を通して何かを感じ取るきっかけを提供できればと思います」

 

松本特任教授による「建築の記憶」。古代から現代に至る30の建築物を集め、同縮尺で一つの直方体を形作った。建築の記憶を集めたことで空間の歴史的変遷が浮かび上がる。博物館に集まるモノも、活用の仕方次第で新たな顔を見せるだろう

 「建築ミュージアム」であなたは何を感じ取るだろうか。一つ一つの展示をじっくり見ることもおすすめだが、ぜひ展示空間全体に込められた意図も意識しながら館内をめぐってみてほしい。

東大教授が語るVTuberの可能性 VRで個性の限界突破

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 今年のノーベル賞受賞者発表の際、解説動画の聞き手を務めて議論を呼んだ「VTuber」の「キズナアイ」を知っているだろうか。VTuberとは「Virtual YouTuber」、すなわちコンピュータ上の仮想空間に用意した3Dモデルによって自らの動きを投影し、作成した動画をYouTubeなどの動画投稿サービスで発信する存在のことだ。大手メディアでも多数取り上げられ社会的現象となりつつあるVTuberの実態に迫る。

(取材・麻生季邦、田辺達也)

 

まだまだ発展途上の仮想空間

 

 稲見昌彦教授(先端科学技術研究センター)は、VTuberに強い興味を持つ研究者の一人。大学生の頃はまだ1990年代で「VR(仮想現実、人工現実感)コンテンツ制作のためには数百万円から数千万円かかる高価な機器が必要だった」と回想するが、今ではコンビニでアルバイトをしながらでもVTuberを始められるほど、手の届くものになったという。

 

 稲見教授いわく、元祖のVTuberとして挙げられるのは「伊達杏子DK-96」(表)。「キズナアイ」など最近のVTuberは、「伊達杏子」の流れをくみ、かわいくしたという感覚しか抱いていなかった。しかし今度は見た目は女の子、声は男性のVTuberである「のじゃロリおじさん」の出現に衝撃を受けたという。「コンビニアルバイトのおじさんが自作の女の子のキャラクターを使い、トークで人気を得ている」姿を見て「性別や見た目、種族を超えて、仮想の姿で生き生きと活動する様子には大きな可能性を感じた」と語る。

 

 

 稲見教授は、VTuberの経済的な可能性にも注目する。例えば大学生VTuberの「雨下カイト」は、スタジオや番組を自作するなど、他の学生を巻き込んだ挑戦を続けている。また「『輝夜月(かぐやるな)』さんのコンサートは、工学部計数工学科の学生もインターンで運営を手伝っています。コンサートは、お金を取れる規模になったという点でVTuberの歴史に残るものでした」。

 

稲見教授が開発に携わった眼鏡型デバイス「JINS MEME」(写真は稲見教授提供)

 

 現在VTuberの制作には、モーションキャプチャ技術(人や物の動きを捉えコンピュータ内の情報とする技術)が用いられている。ウェブカメラだけでモデルを動かせるものや、スマホ画面に写したものを生配信するサービス「ミラティブ」では手軽なアバター作成ができるなど、簡易にVTuberになれる手段も充実しつつある。また、稲見教授も制作に関わった眼鏡型デバイス「JINS MEME」は、眼球や頭の動きから人間の集中度などを解析するものとして開発されたが、これもVTuberの制作に使われる。今後もより人間の動きを精緻に反映できる技術が構築されていくことだろう。

 

 

愛されキャラで発信力増幅

 

稲見・檜山研究室/UT-virtualが共同開発したバーチャルくまモン(写真は稲見教授提供)

 

 VTuberは日本でこそ少しずつ注目されているものの、海外では英国の公共放送BBCで取り上げられたくらいで、単に珍しいことが起きているという認識だ。ただ「価値に気づいていない海外の人々が多いのは、逆にいいことで、これから見いだされる新しい価値がある」と稲見教授は肯定的に捉える。人気のあるキャラが海外進出を狙う際、地域ごとの好みや対象とする年齢層に応じたキャラの見た目のローカル化も考えられ「生身の人間と違って、変換が容易であることはVRの利点」と語る。

 

 発信手段としてのVTuberの用途は「増幅器とか変換器と考えるのがいい」と話す稲見教授。VTuberになることで、対象に受け入れられやすい形、自分が発信しやすい形で活動できる。今後VTuber制作を考える上でも、既に持っている自分の活動分野や、オンライン上にあるコンテンツをVTuber化することが考えられる。

 

 一方で、見た目や知覚が変化するVR空間内では、自分のキャラを一貫させるよりも「人格としてリアルと分けて考えた方がいい」と指摘する。「客観視して線引きした扱いができないと、アイデンティティが曖昧になるようなこともあると思います」。心理学的に見た目が心に影響することはこれまでも示されてきたが、VTuberがどんな影響を持つかはいまだに分からない。ただ「VTuberという存在が社会からうさんくさく思われたり、変に遠ざけられたりするのは悲しいです」と話す。

 

 先日「キズナアイ」がノーベル賞の解説動画に出演した際には、詳しい説明は研究者の男性が担当し、キズナアイは相づちを打つ役目が多く、女性的なシンボルに不平等な印象が植え付けられているという声があった。VTuberが社会に受け入れられやすい形で広まって行くような工夫が、今後必要だろう。

 

稲見 昌彦(いなみ・まさひこ)教授(先端科学技術センター)
99年工学研究科博士課程修了。博士(工学)。慶應義塾大学教授などを経て16年より現職。東大VR教育センターでは応用展開部門長を務める。VTuberに対しても造詣が深い。

 

本郷のそば屋店主「VTuberは芸術」

 

 VTuberは今や誰もが手軽に楽しめるコンテンツだ。本郷キャンパス近くでそば屋を経営する田名部康介さんも、VTuberとして活動する一人。田名部さんは元々「人とコミュニケーションを取るのが好き」だそうで、機材の購入をきっかけに個人VTuberが集う「VRChat」(インターネットを使いVR空間で他者とつながるサービス)の利用を始めた。そこでアバターを持ち、多くの人と知り合いになったという。

 

 デビュー後の感想として田名部さんは「自分の中に層のようなものが一つ増えた感じ」と語る。「何か自分の得意分野を『VTuber』という存在に代弁させるというのは、ある種芸術の一分野と言えるかもしれません」。VR空間での振る舞いが、現実世界に影響を及ぼすことも期待できる、とVTuberの可能性に期待を寄せる。

 

 自身がそば屋ということもあり、「VRChat」のユーザーで「オフ会」を店内にて開催するなど積極的な活動を続けるが、「自分はあくまでいちユーザー」と語る田名部さん。それでも今度は「店内のスクリーンにVR空間を映し出し、VTuberが教える東大の授業を開きたい」と意欲を見せる。無限に広がるVTuber界から今後も目が離せない。

 

田名部 康介さん(「手打そば 田奈部」店主)
(たなべ こうすけ)

この記事は、2018年11月6日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

ニュース:弁当箱回収率は約1割 駒場生協による周知には限界も(東大のゴミ問題(下))
ニュース:延長制し決勝進出 ラクロス成蹊大戦 終了間際に同点弾
ニュース:人工知能で自動検出 小腸粘膜傷害 誤診リスク軽減に期待
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企画:2018年柏キャンパス一般公開
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企画:VRで個性の限界突破 VTuberの可能性を探る
ミネルヴァの梟−平成と私:⑥事業仕分け❶
サークルペロリ:ペタンクサークル
教員の振り返る東大生活:小関泰之准教授(工学系研究科)
キャンパスガイ:松村謙太朗さん(法・3年)

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東大の海外プログラム特集 世界に踏み出すきっかけに

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 学生のうちに、国際経験を積んでおきたいという人は少なくないだろう。そんな学生のために、東大にはさまざまな海外プログラムが用意されている。それらの魅力とは何なのか。本企画では参加者の生の声を紹介する。また、今年の1年生から新たに国際総合力認定制度(Go Global Gateway)が導入された。同制度の企画者や利用者に取材し、すでに多くの海外プログラムがある中で同制度を導入した狙いに迫る。

 

(取材・楊海沙)

 

普段と違う視点で海外を見る

 

 海外プログラムに参加した学生は、活動を通じて何を感じたのだろうか。3人に話を聞いた。賀友如さん(文II・2年)は今夏、第2外国語を集中的に学ぶTLP(トライリンガル・プログラム)の一環としてフランスで語学研修に参加。社会問題を題材に、ロールプレイや議論を交えながらフランス語を学んだ。普段は難しい単語を学ぶことが多く生活用語に疎かったため、ホームステイではホストファミリーとの会話で苦労したという。「身近な単語の勉強の必要性を痛感しました」

 

 観光や現地人との交流を通じて「フランスの文化や社会を学べたし、フランス人は自国の文化や自由平等の精神に大きな誇りがあると感じました」。フランス語能力が上がった実感はないが「とりあえず話せば何とかなる」という度胸はついた。ただ、2週間という期間は短く、ホストファミリーや共に授業を受けた他国の学生と十分に仲を深める余裕がなかった。

 

フランスの西部カトリック大学前での記念写真(賀さん提供)

 

 9月にタイのチュラロンコン大学でサマープログラムに参加した岩永淳志さん(文II・2年)。タイ語に加え、タイの文化や社会の講義で仏教の概念などを英語で学び、最終日は宗教について発表した。「仏教が形を変えずに日常に根付く一方、多くの国々の文化を受容する風土があると知りました」。休日は第二次世界大戦中に日本軍が強制労働を強いた遺跡を訪れ、今まで知らなかったタイと日本の昔の関係を学べたという。

 

 本屋に日本語の漫画があったり、日本語話者が多かったりと「予想以上にタイでの日本の存在が大きいことに気付きました」。また、タイで働く東大卒の社会人と交流し大きな刺激を受けた。偶然の出会いが楽しみに発展することも多く「いろんなところでいろんな人と会うのが大事」と実感。「今まで行ったことない国に行く良いきっかけになり、今度は自分で海外に行こうと思いました」

 

 ただ、2週間では学びが広く浅くなりがちであり、専門性を十分に深めたいのであれば入念な事前準備が必要だと話した。「何かを学ぶというよりはその場の雰囲気を知るためだと割り切ってもいいと思います」

 

バンコクのナイトマーケットの夜景(岩永さん提供)

 

 野中崇遥さん(文III・2年)は2月に北京大学やソウル大学校の学生とともにキャンパスアジアのソウルウィンタープログラムに参加。韓国語学習に加え、映画を見て討論したり、グループ活動で文化の保存をテーマに民俗資料館などを訪れたりした。北京大学とソウル大学校の学生の英語が東大生に比べて非常に流ちょうなことが印象的で、語学に対する意欲が向上。休日は世界遺産や博物館、繁華街を訪れ、博物館では韓国側の視点から、朝鮮戦争などの歴史を学べたという。

 

 街並みや生活様式、文化や価値観が日本と類似し「海外だからと壁を作らずに、自国との類似点を見つけるのも大事だと気付きました」。ソウル大学校や北京大学の学生との交流は今も続き「海外に気軽に会える友達ができ、海外に行く抵抗がなくなりました」と話した。

 

一大観光地である明洞(ミョンドン) (野中さん提供)

 

東大生全員に国際体験を

 

矢口祐人(やぐち・ゆうじん)教授 (総合文化研究科、グローバルキャンパス推進本部国際化教育支援室長)
 89年、ゴーシエン大学卒。99年、ウィリアム・アンド・メアリ大学大学院でPh.D.(American Studies)取得。北海道大学助教授(当時)などを経て、13年より現職。

 

 今年度から始まった国際総合力認定制度(Go Global Gateway)。学生は外国語学修、授業・コース、海外経験、国際交流活動の四つのうち三つ以上に取り組んでレポートを提出し、承認を受ける。最後に、活動を通じてどのように国際総合力が身に付いたかをレポートとして提出し、認定を受ける仕組みだ。導入の狙いや利用者への期待を、グローバルキャンパス推進本部国際化教育支援室長の矢口祐人教授(総合文化研究科)に聞いた。

 

国際総合力認定制度の流れ(国際交流課提供)

 

 「社会に出てから国際化の影響を受けない人はいないでしょう」。同制度を導入したのはそんな時代で生きる力をつけるために「国際体験の門戸を広くし、トップ層だけでなく東大生全員にチャンスを与えたいから」だ。例えば、TLPは入試の英語の成績が上位1割の学生に参加が限られる。また、部活で忙しく海外プログラムに参加しづらい学生もいる。そして、既存の海外プログラムは一度行って終わりということが多い。一方で同制度は1年中継続的に参加できる。

 

 学内でさまざまな国際交流イベントを開催。ベルリン、オーストラリア、ハワイにおけるウィンタープログラムも企画し「パスポートもない学生が海外に踏み出す敷居を低くできれば」と話す。語学だけでなく、言語学やジェンダーについても学べるなど、学問的にも中身がある企画だ。

 

 このように、大学側は学生がさまざまな国際体験を得られるように仕掛ける。海外に行く必要はなく、身近なところからどのように国際経験を積むか、身に付けるべき国際総合力とは何かを学生に考えてほしいという。レポートや活動履歴はポートフォリオとして蓄積され、後から自分の成長の軌跡を振り返ると同時に自己PRや就職活動などにも使うことを期待。活動内容に優劣はつけず「学生が自由に交流活動をできる舞台を作るのが我々の役割で、主役は学生です」。

 

 既に約400人の1年生が登録。レポートを読む中で、国際化について真剣に考える意欲的な学生が多いと感じた。「彼らの声に応えるとともに、より多くの学生が参加するような仕掛けを増やしたいです」

 

Taiwan Nightでの交流を深める学生たち(国際交流課提供)

 

 登録者の森映樹さん(理I・1年)は台湾人留学生と交流する「Taiwan Night」を通じて台湾の文化や大学事情を知った。同制度の別のイベントでの交流がその場限りで終わった反省を踏まえて積極的に連絡先を交換。その結果、駒場祭を一緒にまわるつながりができ、積極性の大切さに気付いた。ウィンタープログラムにも参加予定で「自己負担が交通費だけなのがありがたいです」。

 

 別の登録者は留学経験者との交流会で留学の楽しさや意義を知り、留学への意欲が高まった。ネーティブを招いた無料のIELTS対策講座にも参加し「試験の攻略法を知ることができて良かったです」。

 

留学経験者の話を聞く学生(国際交流課提供)

 

 ただ、2人とも「当初は制度の内容や趣旨がよく分からなかった」と指摘。学生に対するより明確な説明が必要になるだろう。また、最初に出す所信表明のレポートの期限も大学生活が始まって間もない4月中で、慌ただしかったそうだ。イベントやウィンタープログラムの対象者が登録者に限定されていることに対し「もっと全学に開かれたものにしてもいいのでは」という意見も。このようにまだ改善や検討の余地はあるが、2人とも「気軽に参加できるのが良い」と口をそろえる同制度。今後の展開に注目だ。


この記事は、2018年12月18日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナルの記事を掲載しています。

 

 

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ニュース:過去最低の合格率 推薦入試第1次選考 農で初の不合格者
ニュース:磁気の渦構造を実証 直接観察に世界初の成功
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ミネルヴァの梟ー平成と私:⑦国立大学法人化❷
日本というキャンパスで:劉妍(農学生命科学・博士2年)⑥
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キャンパスガイ:永山龍那さん(理Ⅰ・1年)

 

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【2018年アクセスランキング】テレビと受験・教育関連に注目が集まる

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 東大新聞オンラインで2018年に公開した記事の18年1月1日〜12月13日のアクセス数を調べたところ、テレビ番組と受験・教育に関連した記事が注目を集めたことが分かった。

 

(左上から時計回りに)合格に歓喜し抱き合う受験生、テレビで大人気の鈴木光さん、「蹴られる東大」初回に登場した学生、入試の意義を語る上田教授

 

 1位に輝いたのはテレビアニメ『宇宙よりも遠い場所』のいしづかあつこ監督へのインタビュー記事だった。『宇宙よりも遠い場所』は18年1〜3月に放送していた、女子高生4人が南極を目指す物語。17年に本紙で展開した南極特集の拡大版として、いしづか監督に印象的なエピソードの制作秘話を聞いた。高い人気を誇るアニメ本編の内容を押さえた丁寧な取材が、ファンを中心に大きな話題を呼んだようだ。

 

 2位にランクインしたのは、クイズ番組「東大王」にレギュラー出演する鈴木光さん(文Ⅰ・2年)へのインタビュー記事。個性的な推薦生を取材する連載「推薦の素顔」の一環として書かれたこの記事では、テレビに映る姿とは一味違う鈴木さんの学問的背景を掘り下げた。インドやパキスタンの「名誉殺人」について論文を書き推薦入試に挑戦した受験生時代や、東大に入学後面白いと感じた講義について語った鈴木さん。テレビ出演を通じて多くのファンを獲得した鈴木さんが、改めて多くの読者を引き付けた形だ。

 

 3位、5位、8位、10位には、連載「蹴られる東大」の記事が入った。東大と海外大双方に合格し、東大で1学期過ごした後海外大に入学する学生に焦点を当てたこの連載。学生のみならず東大教授や教育の専門家にも話を聞き、国内でも求心力が落ちつつある東大の問題と伸ばすべき強み、さらには学生の学習意欲にも影響を与える日本社会の構造的問題にも目を向けた。国の教育改革が進む中、高等教育の問題を真正面から扱ったことが注目を集めた。

 

 「蹴られる東大」からランクインした四つの記事のうち、3位、8位の記事では17年度に東大に入学した後実際に米国のトップ大学に渡った学生にインタビュー。併願の経緯や、二つの大学の比較から見えてくる東大・米国大それぞれの強みと弱みを聞いた。5位の記事は最多の東大合格者数を誇る開成高校の柳沢幸雄校長に近年の開成高校の海外大進学事情を取材したもの。10位の記事では東大を休学しハーバード大学に進学した髙島崚輔さんに二つの大学の違いを取材した。

 

 4位には、推薦入試に合格した学生の入学後の進学先変更について報じた記事がランクイン。推薦生は入試時に希望した学部に進むのが原則だが、推薦入試第1期生のうち6人が学部もしくは学科を変更していたことが判明した。進学予定の撤回の可否が各学部に委ねられている事実や、方針周知の不徹底さも明らかに。推薦入試の根幹に関わる混乱に注目が集まった。

 

 6位はクアクアレリ・シモンズ(QS)世界大学ランキングで東大が過去最高の23位に入ったことを伝える記事だった。順位は上がった一方、国際性の指標が依然として低いことや、アジア内でも4位に甘んじている実態も報じた。7位は18年度学部前期試験の合格発表について伝える記事。合格者番号掲示板を見て歓喜する受験生を捉えた写真と共に、合格最低点などの詳細な数字を報じた。

 

 9位には上田正仁教授(理学系研究科)へのインタビュー記事がランクイン。入試改革が進む中、大学入学共通テストの制度設計に関わった上田教授に東大入試の持つ意味を改めて聞いた。若年人口減少でトップ層にとって東大に入りやすくなっている現状や、塾が入試対策をマニュアル化してしまう問題を指摘した上田教授。受験生は受験勉強だけでなく自分の興味を伸ばす方向に時間を使い、受験のノウハウを買うのではなく自分で勉強の方法を考えるべきという教授の言葉は、多くの人の関心を集めた。

 

【2018年 年間アクセスランキング】

1  TVアニメ「宇宙よりも遠い場所」制作秘話 いしづかあつこ監督インタビュー

2  【推薦の素顔】鈴木光さん 「何でもやってみる」国際派

3  【蹴られる東大①】本音で語る、僕らが海外を選んだ理由(上) 海の向こうへの挑戦

4  推薦一期生の進学選択 6 人が進学先変更 学部間で対応に差異

5 【蹴られる東大⑧】開成生はなぜ海外大を目指すのか・開成学園柳沢校長インタビュー

6  QS世界大学ランキング 東大は過去10年で最高の23位 国際性の評価深刻

7  18年度前期日程試験3014人が合格 理科で最低点大幅低下、文科は昨年度並み

8  【蹴られる東大③】学生目線で比べる東大と米国トップ大

9  【受験生応援2018】東大教授が語る2 次試験の意味 「知識ではなく考える力を試す」

10  【蹴られる東大④】ハーバードで2 年間 気付いた「自分、東大、ハーバードの強み」

※当該期間に公開した記事のみを集計

 

過去のランキング

【2018年10月アクセスランキング】東大生の不祥事に厳しい視線

【2018年9月アクセスランキング】「とりあえず東大」は終わった?

【2018年8月アクセスランキング】教授の語る大学の選び方

【2018年7月アクセスランキング】推薦生でも進学先を変えられる?

【2018年6月アクセスランキング】世界大学ランキングに関心

【2018年5月アクセスランキング】「推薦の素顔」に関心

【2018年4月アクセスランキング】連載「蹴られる東大」が人気

【2018年3月アクセスランキング】3/10実施の合格発表に高い関心

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【2017年12月アクセスランキング】東大生のSNS事情に高い関心


【駒場のアツいゼミ特集①】高山ゼミ 徹底した研究と議論でゼミ生と至高の時間を

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 駒場の前期教養課程の授業は、大半を一方的な講義授業が占め、退屈に思っている学生も多いだろう。しかし中には学生が目を輝かせて参加する、双方向的なゼミも開講されている。今連載ではそんな駒場の熱いゼミの実態に迫る。

 

27年の歴史 「高山ゼミ」

 

(取材・武沙祐美)

 

 扱うテーマは国内外の政治から最新の科学技術についてと幅広い。授業の大半は学生の発表と議論で構成され、議論が白熱し授業時間が延長することも。授業終了後も、ほとんどの学生が帰り支度も片手間に教室に残って議論を再開する熱心ぶりだという。

 

合宿でのひとこま(写真は高山教授提供)

 

 ゼミの目的は、メディアが発信する国際社会のさまざまな情報の取得・分析方法を学ぶこと。「国際社会における日本の立ち位置を把握し世界を主導できるノブレス・オブリージュの精神を持った人材を育成したい」と、高山博教授(人文社会系研究科)は話す。メンバーは毎年4月に1年生から募集され、応募者約40~70名のうち9人が選出される。ゼミ生としての活動期間は原則2年で、やむを得ず欠員が出た場合にのみ追加選考を行う。授業は1・2年生各9名の計18名が主体だ。

 

 学生は毎週、高山教授が指定する欧米の雑誌・新聞記事を読み、授業での討論に臨む。さらに学生は世界の各地域を割り当てられ、担当地域に関する外国語の記事を見つけ内容の報告と分析を発表。その内容についてのゼミ全体での議論が続く。こうして2年間で読む外国語の記事は140本以上。「これで学生はだいたい世界で今何が起きているかを知り、議論を重ねることで今後の勉強の基本となるような知識と自分なりの考えを持つようになります」。議論中、高山教授はほとんど口を挟まないそうだ。

 

毎年、OB・OGも参加する総会が行われる(写真は高山教授提供)

 

 毎週課題の英語の記事を読んで内容について調べ、年2回担当する自分の発表に向けA4の用紙20枚にも及ぶレジュメを作成するのはかなりの負担だろう。それでも「一週間で高山ゼミの時間が一番楽しみ」と学生に言わせる、ゼミの最大の魅力は「他のゼミ生」だ。皆熱心かつストイックで、「ゼミの準備で読んだり調べたりしている時間も楽しいので『負担』ではない」と断言するほど。自主的に授業時間外にも集まり、互いのレジュメに対し意見交換しているという。「議論を通じて自分にない考えを得られるし、自分も負けていられないと奮い立たせられる」とある学生は声を弾ませる。「議論終了を告げるタイマーが鳴った瞬間、『もっと議論したかった』と思う時が一番楽しい」ともう一人。

 

2001年から毎年度末に発行しているというゼミの論文集『飛翔』(写真は高山教授提供)

 

 27年も続く高山ゼミにはOB・OG組織もあり、就活の手助けもするなど縦横のつながりは深い。3年後に定年を控える高山教授だが、教授の熱い思いは脈々と引き継がれていきそうだ。

 

 

高山博(たかやま・ひろし)教授

90年米エール大学大学院歴史学博士課程修了。Ph.D.。英ケンブリッジ大学客員研究員や一橋大学助教授などを経て、04年より現職。16年紫綬褒章受章。(写真は高山教授提供)

 


この記事は、2018年12月11日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナル記事を掲載しています。

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【駒場のアツいゼミ特集②】「ココロのトリセツ」ゼミ 交流重視の授業通じて心との向き合い方学ぶ

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 駒場の前期教養課程の授業は、大半を一方的な講義授業が占め、退屈に思っている学生も多いだろう。しかし中には学生が目を輝かせて参加する、双方向的なゼミも開講されている。今連載ではそんな駒場の熱いゼミの実態に迫る。

 

「ココロのトリセツ」ゼミ

 

(取材・上田朔)

 

 「自分のメンタルも他人のメンタルもケアできる人を育てたい」。こう語る細野正人特任助教が実施する主題科目「ココロのトリセツ」は実践に重きを置く。心との向き合い方を学ぶこのゼミでは実際の精神障害の事例が取り入れられ、受講生は実体験とも照らし合わせて議論を深める。臨床例を中心とする学びは「悩みを抱える人の支援者になったとき、相手に合った対処法を考える上で役立つ」と修了生の一人は話す。

 

ゼミ終了後、初年時活動センターで交流を深める学生・TAと細野特任教授

 

 ゼミの学習が日常の場面に還元されたという学生も多い。ある修了生は大学で人間関係をつくれず悩んだが「精神的につらい時の、自分の心への対処法を学べた」と振り返る。別の受講生は「例えば目が不自由な人を支援するとき、いきなり手を握っては相手を怖がらせてしまう。人の心に配慮した支援の方法を学んだ」と話した。

 

 授業形態もただの座学ではない。本年度のAセメスターでは100人を超える受講生が4人ほどずつのグループに分かれ、「自尊心」や「生きづらさ」といったお題について議論する。各グループは議論の内容を他の受講生の前で発表し、発表時にはポスターを使うことも多いという。

 

 「アクティブラーニング」を取り入れたゼミは学生からも好評だ。受講生の一人は「自分と他人の意見を突き合わせる機会が与えられることは他の講義にない面白さ」だと語る。「交流を重視」するという細野特任助教はセメスター内に3回以上は外部の講師を招待。政治家秘書や聴覚障害の当事者の家族など、さまざまな講師の話に耳を傾け質問を投げかけることで、受講生は普段会うことのない他者の人生と触れ合う。学生や大人との豊かな交流もこのゼミが学生を引き付ける魅力の一つだ。

 

 受講生は前期教養課程の1年生が中心。昨年度のゼミでは70人ほどが受講を志望し、志望理由書によって約40人が選抜されたという。本年度のAセメスターでは志望者が123人に及び、ついに選抜しきれずそのほとんどを合格とした。

 

 受講生の志望理由はさまざまだ。人間関係の悩みを抱えた学生、精神障害の当事者を親に持つ学生、医者として精神障害の治療に携わりたい学生などがゼミに集まる。「多様な背景を持つ学生をバランスよくとることが選抜時の方針」と細野特任助教。学生の多様性と活発な対話が、100人を集めるこのゼミの活力源なのだろう。

 

細野 正人特任助教(ほその まさひと)

(総合文化研究科)

精神保健福祉士。10年より、石垣琢磨教授(総合文化研究科)に師事。14年より現職。精神科リハビリテーションの研究と新しい技法の開発に従事している。

 


この記事は、2018年12月11日号からの転載です。本紙では、他にもオリジナル記事を掲載しています。

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【駒場のアツいゼミ特集③】ハイデガー哲学 思想家の大著から人間関係を考える

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 駒場の前期教養課程の授業は、大半を一方的な講義授業が占め、退屈に思っている学生も多いだろう。しかし中には学生が目を輝かせて参加する、双方向的なゼミも開講されている。今回はそんな駒場の熱いゼミの実態に迫った。

 

ハイデガー哲学を研究

 

(取材・円光門)

 

 「前期教養課程でも哲学の大著を読む訓練の場を提供したい」という景山洋平講師(教養学部附属教養教育高度化機構初年次教育部門)の希望によって始まった全学自由研究ゼミナール「哲学の問いをはじめる:ハイデガー『存在と時間』を手引として」。題材には、ハイデガーの『存在と時間』を選んだ。思想史の知識を駆使して批判的な読解を行ったり、授業外でドイツ語の原典を読んだりする熱心な学生も現れ「彼らに応答する中で私自身の考えもはっきりしていきます」と景山講師自身にとっても刺激的な時間となっている。

 

(左から)TAのノさん、ゼミ生の倉科さん、竹内さん

 

 21世紀に求められるハイデガーの新たな解釈を教員と学生が一緒に考えることも、目的の一つだ。当事者の視点から自分自身を理解し、自己と世界の関係を問い直すハイデガーの思考は、20世紀フランスの思想家たちに人間中心主義的だと批判された。ハイデガー哲学には自己と他者を線引きし、少数派を排斥する危険性が確かにあるというが「あらゆる事象に関わるのは結局は自分自身であり、自己の視点から人間概念を改めて捉え直すことが21世紀に求められるハイデガー解釈です」。

 

 ノ・スビンさん(文・3年)は、入学直後に受けた景山講師の授業でハイデガーの独特な言葉遣いに引かれ、今ではティーチング・アシスタント(TA)も務める。「他者と共に存在すること」を論じるハイデガー哲学を手掛かりに、社会とは何かを考えることが自身の研究目標だ。

 

 高校時代から関心のある哲学を深めようとこのゼミに参加した倉科俊祐さん(文Ⅲ・2年)はハイデガーの魅力として、物事の判断基準の根底でもある存在と個々人の視点の多様性の双方を考慮していることを挙げる。今後は複眼的な視点から実在を理解する哲学の探究を目指す。

 

 社会生活で求められる一貫した人格と多様な自己を折り合わせる問題に興味がある竹内彩也花さん(文Ⅲ・2年)は、近代日本を代表する哲学者西田幾多郎の大ファン。クリスマスプレゼントに西田全集をもらった時は狂喜乱舞した。「将来は原理的にしか記述されていない西田哲学をかみ砕きたい」と話す。

 

 倉科さんと竹内さんは学会発表を聴きに行ったり、高校生と哲学的な対話をする催しを運営したりと、授業外の活動にも積極的だ。「私が学生の頃、哲学者はひたすら本だけに向き合っていました」と景山講師。「今私の学生たちは社会と関わることにも意欲的です。これが21世紀の哲学者像なのかもしれません」

 

景山洋平(かげやま・ようへい)講師

12年人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。埼玉大学・千葉大学非常勤講師などを経て、16年より現職。著書に『出来事と自己変容 ハイデガー哲学の構造と生成における自己性の問題』(創文社)など。

 


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【駒場のアツいゼミ特集④】軍縮ゼミ 軍縮を多様な視点で客観的に捉え直す力を

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 駒場の前期教養課程の授業は、大半を一方的な講義授業が占め、退屈に思っている学生も多いだろう。しかし中には学生が目を輝かせて参加する、双方向的なゼミも開講されている。今連載ではそんな駒場の熱いゼミの実態に迫る。

 

国際研修「軍縮ゼミ」

 

(取材・尾方亮太)

 

 平和についてさまざまな視点から議論したり実際に問題が起きている場所まで研修に行ったり……。教室で議論するだけのゼミとは一線を画すのが、全学ゼミ・国際研修「平和のために東大生ができること」、通称「軍縮ゼミ」だ。

 

カザフスタンのセメイにある核実験場閉鎖記念碑の前で現地の学生と撮影(写真は岡田准教授提供)

 

 開講されたのは2011年。きっかけは国連の軍縮部で働いていた大学院時代の友人との会話の中にあったと、岡田晃枝准教授(総合文化研究科)は言う。「将来日本の外交を担う人材を輩出する東大の学生も核軍縮について考える機会がないといけないという話になったのですが、『核兵器』や『平和』という言葉を聞くと学生は特定のイデオロギーや運動をイメージして避けてしまいます」。そこで岡田准教授は思い込みではなく、データや資料に基づいて平和や安全保障について客観的に議論する力をつけてもらおうと、このゼミを始めた。

 

 扱うテーマは毎年異なる。初年度は被爆証言から平和を考えることを試みた。受講生は授業に招いた被爆者の方に質問をし、得られた証言を英訳して国連軍縮部に伝えるためにニューヨークに赴いた。帰国後には在日中の外交官の前でもその内容を発表したという。別の年の授業では国内の不発弾処理が困難なラオスに焦点を当て、不発弾などの小型武器について議論した。さらに実際に不発弾処理を担当しているラオス政府の部署を訪問。他にも海外での原爆の捉えられ方を知ろうと海外の歴史の教科書を読んで論文を書いたり、国連が出した軍縮への関心を高めるための冊子を翻訳して『軍縮のためのアクション』(国際連合)を制作したりもしたという。

 

 多様なテーマから軍縮にアプローチするこのゼミだが、受講生全員が最初から授業内容に興味があったわけではないという。授業に付随している海外研修を利用してカザフスタンやトルクメニスタンに行ってみたかったから受講したという人も多い。その上授業準備の負担は総じて重いと口をそろえる。「初回に出された3000字のレポートは英語の資料を調べたり読んだりしたので、仕上げるのに10時間はかかりましたね」。課題をこなすのが大変なために受講生が激減することも少なくはない。

 

 それでも受講生を引きつけてやまないゼミの魅力とは何か。ある受講生はこう語る。「大学では高校までと違い唯一の正解というものがなく、自分なりの正解を見つけないといけません。自分の考える正解を根拠を持って主張する力を身につけられるのがこのゼミの一番の魅力です」

岡田晃枝(おかだ・てるえ)准教授(総合文化研究科)

04年、総合文化研究科国際社会科学専攻博士課程単位取得満期退学。修士(学術)。総合文化研究科「人間の安全保障プログラム」助手、教養教育高度化機構特任准教授などを経て17年より現職。(写真は岡田准教授提供)

 


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ニュース:英BBC「世界の女性100人」に東大生
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【受験生応援2019】現役東大生が語る!センター直前攻略ポイント

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 今年も大学入試センター試験まで残すところ約1週間となりました。東大新聞では、今年も受験生に役立つ情報をお届けする「受験生応援連載」を通じて、東大を目指す受験生を応援します。今回は、現役東大生がセンター試験直前の過ごし方で意識していたことや、勉強の工夫をアドバイスします!

センター直前の過ごし方

 

夜型の生活を改め、試験開始時間に合わせた朝型の生活を送っていました。自分の場合は朝食を食べると眠くなるので量を抑え、代わりに眠気覚ましの濃いコーヒーを飲みました。勉強の合間には、受験生の友人とLINEをして励まし合いました。これは結果的に緊張を和らげる効果があったと思います」(文Ⅲ・2年)

 

「絶対に風邪をひかないように、できる限り家にこもり常に加湿器を付け、早寝を徹底しました。少しでも考えが煮詰まったときは、家族とおしゃべりをしたり、明るくテンポの良い音楽を聞いて気分転換しました」(文Ⅲ・1年)

 

センター1週間前からは、自習時間確保とインフルエンザ等の感染症に罹患しないように学校の授業を休みました。睡眠時間を8時間確保し、毎日R1ヨーグルトを飲みました。気分転換には外を散歩し、当時流行していた恋ダンスを練習してリラックス。勉強を頑張り過ぎず体と脳のコンディションを第一に考えていました」(文Ⅱ・2年)

 

「センター試験本番で力を出し切れるように、年が明けてからはそれまで夜型だった生活を朝型に変えました」(文Ⅲ・2年)

 

「センター試験直前だからと言って特に意識はせず、今までと同じ時間の使い方をしていました。風邪をひかないようにマスクは着用していました」(文Ⅲ・1年)

 

「生活リズムを正すことを意識していました。夜更かしはせずに朝から勉強を始め、実際の試験時刻には頭が働くようにしました。また、東大受験においてセンター試験は単なる通過点だと考え、成功しても失敗してもどちらでも良いと割り切っていました。『私大センター利用チャレンジゲーム』のようなノリで臨むのが良いと思います」(法・3年)

 

「センター直前は、風邪をひかないように体調管理をいつも以上に心掛けていました。それから、2次試験前もそうだったのですがいつもチョコレートを持ち歩いていました。何か好きなお菓子があるのなら試験の時にも持って行くことをお勧めします」(文Ⅲ・1年)

 

「生活面では特にそれまでと変わったところはありませんでした。ただ、気持ちの持ち方として、間違えた問題があってもネガティブに考えるのを避け、『本番ではきっと上手く行くだろう』とポジティブに考えながら勉強するようにしていました」(文Ⅲ・2年)

 

「普段と変わらずリラックスして過ごしていた。風邪、インフルエンザ、疲労等の予防のためになるべく家から出なかった」(文Ⅲ・1年)

 

 直前期は本番を最高のコンディションで迎えるため体調管理を徹底し、精神面でもポジティブな気持ちを意識的に持ち続けることを重視する意見が多いようですね。

 

センター直前の勉強の工夫

 

「とにかく数学が苦手で、そこで失点したくなかったので、センター数学専用の参考書に取り組みました。本番前々日には大手予備校の予想問題を、前日には前年度の過去問を、それぞれ全科目解きました」(文Ⅲ・2年)

 

「駿台の青パックやZ会の緑パック(予想問題集)を、実際の試験の時間帯で解いて当日の感覚を掴むことを意識しました。英語は、英単語のアクセントと発音を直前まで確認していました。数学は勘が鈍らないように1Aまたは2Bいずれかのセンター模試を1日一つ時間を計って解いていました」(文Ⅲ・1年)

 

「数学のセンター試験独特の誘導を苦手としていたので、慣れるため何度も過去問やセンター型模試を用いて演習しました」(法・3年)

 

「ひたすらセンター本番を想定して過去問やセンターパックを解いていました。臨場感を出すためにも、YouTube上にある試験中の雑音を流しながら解きました。間違えた問題も参考書等を使ってしっかりおさらいし、穴がないようにしました」(文Ⅱ・2年)

 

「基礎の再確認を徹底し、センターで取りこぼさないことはもちろん、2次でも生かされるような勉強をしようと考えていました。例えば数学では、2次でも頻繁に出題される確率漸化式や微分・積分の基本問題を解いていました」(文Ⅲ・2年)

 

「過去問や学校で配られた予想問題をひたすら解いていました。間違えた問題はどこを間違えたのかをノートに書いたりしていました。地歴等の4択の問題は一つの選択肢に対してどこが誤っているのかを説明できるくらいになるまでやっていました」(文Ⅲ・1年)

 

「疲れがたまり点数が悪いと落ち込むと思ったので、5教科セットで解くのは年末くらいまでにしました。代わりに各教科について、一度解いた問題を5分から10分短い制限時間で解く練習を重ねました。練習で短い設定時間に慣れておけば、本番で余裕が持てるはずです。間違えた問題は、『解説を読んで解ければ良い』と開き直ることを意識しました。自分の実力で取れる問題を落とさないことの方が大事だと思います」(法・3年)

 

「各教科それなりに時間を割いたのですが、特に苦手だった数学、年明けから対策を始めた生物基礎に費やした時間が多かったです。国語、特に現代文は直前にどうにかなるものでもないと思ったので年明けからはほとんど手を付けませんでした」(文Ⅲ・1年)

 

「数学が大の苦手だったので勉強時間の大半をセンター数学の過去問に費やしました。60分では到底終わらず、悩んでいる時間がもったいないので、詰まったらすぐに見切りを付け別の問題に移ろうと心掛けました。時間感覚を身につけようと思ってある年度の過去問を一度すべて解いて、その直後に同じ問題を今度は時間内に解き切ってみるという練習もしました」(文Ⅲ・1年)

 

「センター直前は数学の基本的な考え方をずっとさらっていました。理科基礎も直前に詰め込んでいました」(文Ⅰ・1年)

 

「全範囲を広く浅く復習するようにしていました。深い知識を集めようとすると知らないことがたくさん出てきて焦ってしまいそうだったので、深入りは避けていました。特に直前は、教科書を見た分点数に直結しやすい社会科を詰めていました」(文Ⅲ・2年)

 

「過去問をひたすら解いた。時間が足りなくなりがちな英数国は時間を計って、足りなくならない理社は計らずにやった」(文Ⅲ・1年)

 

 直前期は過去問等を使って本番を想定した練習を積みながら、自分の課題意識に応じて最後の追い込みをかけていたようですね。

                                            ◇

 いかがでしたか?ご自分にとって納得できるものがあれば是非参考にしてください!

 

【受験生応援2019】

入試担当理事が語る、東大の求める学生とは

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